知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
さらっととんでもないことを言い出した。え、ぐ、グリゴリ?ヘルエグリゴリ?
「上司が言うには、多分そのグリゴリがバックにいるにゃ」
グリゴリって言った?あのアザゼルさんの組織が?え、嘘?
「ぐ、グリゴリって……」
「ごすも知って……いや、あれって冷静に考えたら聖書の奴だもんね、ウィキとかにあるか。そのトップであるアザゼルが今回の件で何か関係があるのは予想しやすいって感じにゃ」
いや、そう言うことじゃなくてさ、俺には信じられないって話なんだよ。だってよ、散々『頼むから暴れないで』って言っていたアザゼルさんがこんな喧嘩の売り方をしてくるとは思えないんだよ……
ちょっと彼の名誉のために弁明……出来ねぇ!あの人の約束で『悪魔と天使には黙ってろ』ってのがあったわ!え、どうしよう……ばれたらヤバいよな?ってことはバレるリスクは減らした方がいいわけで……
「ダイチさん?」
アーシアが挙動不審の俺を心配そうにのぞき込んでくる。や、やべぇ……こうなったら……!
「いや、俺がネットで知ったアザゼルってよ、もっとこう……『迷惑かけるなら徹底的に』って感じって言うか……それこそ、『教会の持っている聖剣をありったけ奪って、全部溶かして固めて二度と元に戻せないようにしてやる』ってのを興味本位でやるタイプだと思っていたからさ」
「あなた、実際どうかは別としてアザゼルに対してすごい解像度を持っているわね……」
「何か、ごめん」
リアスだけじゃない、遠くにいるアザゼルさんもだ。
「ご主人様のごもっともな言い分は置いておいて、にゃ。とにかく、今回の聖剣関係は相当ヤバいことになってるのが現状よ。それこそ、リアスの『騎士』だけの問題じゃなくなってる。今すぐリアスのお兄ちゃんを呼び出さないといけない案件なくらいね」
そう言ってコーラを飲み干した黒歌。その目は真面目そのものだ。まるで剣のようにも思える鋭さを感じる。
「『火のない所に何とやら』って奴ね。上司が言うには、グリゴリも一枚岩じゃないらしいわ。今まで冷戦状態を愛していたアザゼルだから、奴は手を出していないかもしれない。だとしても、アザゼルに連なる力を持った堕天使がその火を起こしているって見ていいと思う」
「……ありがとう、黒歌。あなたのおかげで今回の敵の巨大さが少し分かったわ」
リアスがメモを取り出して、黒歌の言ったことを書いていく。
「ねぇ、リアス。一ついい?」
「何かしら?」
黒歌がリアスに頼み事があるようだ。別に俺は関係ないから、アザゼルさんについて考えるか。
正直、ここで直接聞けば一発で下手人は分かるだろう。だが、そうもいかない。リアス達がいるから。家に帰れば、リアスや黒歌がいるし、学校では悪魔だらけだ。アザゼルさんとの約束を反故にしかねないリスクがある。どうやって連絡を取ったものか……
「今回の一件、もし有名な堕天使……例えばアザゼルやシェムハザレベルの大堕天使が本当に関わっていたとするわ。そうなったら、リアスの『騎士』でつながった白音も必然的に大きすぎる危険に巻き込まれる。そうなったら、殴り込みも辞さないわ」
いやでも耳に入る黒歌の塔城さんとの関係について。ちょっとこれは聞いておかなきゃ不味そうなので、聞いておく。
「そうなった場合は、堕天使とは別の案件で騒ぎになるわ。迷惑かけるけど、許して」
「そうね、小猫には本当に申し訳ないけれど、あなたの現実味のありすぎる予想が本当なら……死人が出かねない。少しでも戦力が欲しいけれど、お兄様をゆすってもすぐに戦力は来ないと思うわ。だからこそ、『猫の手も借りたい』」
そう言って、ノートを閉じるリアス。
「指名手配である以上対価を出すことは出来ないけれど、手伝ってもらえる?」
「当然よ。今度こそ、妹を守るんだから」
腹を括った黒歌。俺も馬鹿じゃないから分かっている。今回のことに黒歌が首を突っ込むってことは、『ここにいられなくなる』ってことを意味しているって。彼女はそれを分かっていて、戦う意思を見せたんだろう。
だったら
おれも
おとこ みせるしか ないだろうよ !!
――『急なファミコン調なんだよ』
――『こやつ、テンション上がるとろくでもないな』
「黒歌」
「ご主人様、悪いけどこればっかりは……」
「皆に居場所がバレても大丈夫」
「ゆずれ……は?」
俺の言葉に呆気を取られる黒歌。はっはー?さてはお前、『無理するな』とか『お前の居場所がバレたらどうする?』とか言われると思っていたんだなぁ?
残念だったな!違うよ!
「悪いが、俺はブラックゾーン。今の悪魔達のお偉いさんの大恩人だ。あれこれ言い訳を付ければ、そいつらの生殺与奪の権だって握れる。そいつを使って、お前を守る」
「ちょっとダイチ……!」
過激な発言すぎたことを諫めようとリアスが横入りするが、俺は片手で制止する。
「……君は俺にとって大切な人だ。リアス達と同じ、俺が俺らしくいられるための替えの無いパーツの一つなんだ。それを、俺が手放すと思うか?」
「ご主人様……」
「言っておくが、俺は大切なものを守るためなら世界に喧嘩を売るだけじゃ済まさないからな。この力で、誰から何を奪おうとしたか分からせてやる」
奪う、か。思えば、今回の一件は教会の過去のあくどい行為に加えて教会の警備のザルさが原因だったんだよな?
あれ?何で、俺ら悪魔サイドが奴らの尻拭いをしてんの?
「ダイチ?」
「ごめん、リアス。アーシアのこともあった上にさ、木場の因縁もあって。しかもその尻拭いを俺らがさせられるって不当じゃね?そう思うと、怒りが止まらない」
「まぁ、そうね。これが終わったら何かしらの対価を求めても当然だけど……何する気?」
「教会の解体命令の要求」
俺がそう言うとアーシアは絶句するし、リアスは額に手を当てて呆れた様子だ。黒歌は……どうした?
「何なら、黒歌の恨みもある。魔王ゆするついでに悪魔にもダメージを与えるのもやぶさかじゃない。それだけ各所に恨みつらみがありすぎてな……」
俺がそう言うと、リアスがため息を一つついて言う。
「やめてよね。あなたが戦ったら、誰も勝ち目がないのよ?本当に世界が滅んじゃうわよ……」
「……すまん。特大級の厄が降って来た上に後輩の受けた仕打ちのせいで冷静じゃなくなってた」
「いいわ。今回の一件、複雑怪奇にも程があるから。それに、祐斗のことは怒って当然よ。それこそ、あなたの言う『人間』ってものじゃなくなってしまうから」
「ありがとうな」
「どういたしまして」
リアスにそう諫められる。俺はいい友達を持ったものだ。夜な夜なスキンシップに来るせいでムラムラするのがきついことも文句が言いたいけど、言ったら確実に軽蔑されるので言わないでおく。
「黒歌さん?どうしたのですか……?」
アーシアがさっきから俯いている黒歌を不安そうに様子見している。お前、何があった?コーラの飲みすぎで胃腸をやったか?
なんて思っていたその時だった。黒歌がばねのように跳ねて、俺に飛びついた。
「く、黒歌?どうしたんだ?」
「ちょ、ちょっと黒歌!?ずるいわよ!」
「黒歌さん!?」
リアスもアーシアも驚いた様子だ。黒歌はと言うと、俺の胸に顔を強くうずめている。
俺はどうすればいいか分からないでいると、黒歌は喋った。
「ご主人様って、やっぱ優しすぎるよ……」
「黒歌?」
「優しすぎる。だから、私も……私だけじゃない。寿水も、リアスも、アーシアも絆された」
その言葉を聞いて、静まり返るリアスとアーシア。
「だからこそ、怖いの。あなたがいつかどこかで、一人寂しく死んじゃうんじゃないかって……『皆に迷惑をかけたくない』って言って、いつの間にか皆の前からいなくなりそうで……」
……何だろう、俺が心のどこかで思っていたことを言うのやめてくれませんか?
俺が強すぎる故に周囲と乖離していることに不安を覚えてくれたのなら、うれしいよ。たださ、それを口にしたらリアス達まで悲しむようになっちゃうじゃん。
実際、目の前で悲しみの表情になっている二人がいる。全く、世話の焼けるレディ達なことだ。
俺は黒歌の頭をそっと撫でる。
「安心しろ。俺は死なない」
「……何よそれ」
「事実を言っただけだ。それに、俺は俺を愛してくれた人を悲しませるようなことはしたくない。その為に戦うだけだ」
何だか兵藤っぽい声の不死身の男のセリフを言ってしまった。
「……分かった。今はそれで我慢してあげる、傷だらけのライオンさん」
どうやら、俺が簡単には死なないことを理解してくれたようだ。俺の言葉を聞いて、リアスとアーシアも心なしか笑顔になっている。
それにしても黒歌は離れてくれない。不安になったから俺に抱き着いて、俺の言葉を受けて納得してくれたんよな?
「……」
「黒歌?」
「スゥウウウウウウウッッ!!」
黒歌がすごい勢いで俺の匂いを嗅ぎだした。え、ちょっと?俺、そんなに匂う?さっき風呂に入ったばかりなんだけど?
「黒歌!それはダメよ!反則じゃない!」
「そ、そうですよ!私だって……!」
二人も突撃してきて、さぁ大変。俺、どうなっちゃうのよ……
Side out
当初から『サブカルクソヤンキー』のイメージで大地君を書いているつもりでしたが、改めて見てみると『ただのデカ乳好き』になっている気がしてならないです。それでもいいとは思っていますが、それはそれでどうなんだ?