知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
カカロット、まずお前から血祭りにあげてやる。
――『そんなこと言わんでも、もう血祭りにした後でしょ』
いたいけな美少女を救う男、小湊大地ッ!(1カメ)(2カメ)(3カメ)
と言う訳で、この謎の部屋に放り込まれた後、黒ずくめ共を叩きつぶし、騒ぎを聞きつけた他の連中諸共ちぎっては投げを繰り返して、気が付けば相手方は全滅した。今は人間の姿に戻って周囲を確認している。どうやら敵はもういなさそうだ。
「ッ…!」
ふと少女と目が合う。とても怯えている様子。うーん、どうしたものか……。こうも警戒されていると近づくのも躊躇われる気がする。だからと言って、今彼女を縛っている縄と猿轡をどうにかしないといけないのも事実。うーん……。
周囲に敵の気配はない。文字通り、俺と女の子だけの空間。
少女の年齢はおおよそ12,3と言ったところか。そんな思春期に突入する時期の女の子がこんな目にあったなら、それこそトラウマもんやろ。こう、穏やかにいかないと、余計に心に傷を負わせかねん。
――『じゃあ、一発キスでもいっておく?』
殺すぞ、クソ女神。
――『おお、怖い怖い。で、どうすんのよ実際問題?この子、強引に行くしかないわよ?』
どうしてそんなことが分かるんすか?
――『あなたの運命の人だから』
はぁ?急にセンチになって、熱でもあるんですか?
――『ちょっとしたジョークよ。でも、この子の様子を見るに相当怯えているわよ。しかもそもそも奥手なタイプの女の子』
なら余計にどうすればいいか分かんないっすよ。
俺は女の子の方を向いて頭を抱える。そんな時にユノハ様は気になることを言った。
――『この子、今まで相当孤独だったらしいわ』
へ?
――『どうやらあの子の中には『神滅具』って言う聖書の神が作った兵器とも言える存在が眠っているわ。おそらく、その力を忌み嫌われてずっと一人ぼっちだったんじゃないかしら?』
そんな……神はなんてことを……。子供になんて業を背負わせてるんだよ。流石に異教とか関係なしに許せんぞ、おい。
――『……あ、出たわね。この子の名前は……グェ!!?』
ユノハ様が轢き潰されたカエルみたいな声を出す。どうしたんすか、そんな気味の悪い声を出して?
――『あ、いえ……この子の名前を調べてただけ。よりによってこいつかよ……』
ほうほう、そうっすか。それで、名前は?
――『自分で聞きなさい。急に『あなた、○○ね!』なんて言われたら逆に警戒するわよ、普通は』
ああ、それもそうか。ほなら、聞くか……いや、その為にも近づかねばならないし、その近づく行為がーって話だったんだよな。うーん……。
――『もう強引に行くしかないわよ。ほら、どうであれ縄と轡を外してあげなさい』
うっす。それもそうだよな。いつまでも縛られっぱなしなんて見てられないし。それでも警戒されないように工夫はせんと。
俺は咄嗟の思いつきを実行する。禁断パワーで背中に100パーモモキングのあのデカい扇みたいなのをポンと音を立てて出す。ついでに花吹雪も。Vの態勢もおまけでつけよう。
扇に書いてある文字は『Pesto alla Genovese』。分からない方に向けて説明すると、バジルソースのパスタのジェノベーゼのことだ。
「……?」
――『馬鹿かこいつ……』
完全にきょとんとして女の子からの警戒がなくなった。よし、今なら近づける。近づけなきゃこんな道化になった意味がない。
――『あ、つまんないって自覚あるのね』
そりゃそうでしょうよ。何でいきなりパスタの名前を出されるんだよって話じゃないっすか。これは、あくまでも『こいつ阿呆だな』って思わせて警戒を解くための行動ですよ。
俺は変な恰好をやめて近づく。明らかに変なものを見る目に変わっているが気にしない。俺はそのままゆっくり近づき、そして女の子の目の前にまで来た。
すんません、ユノハ様。ちょっと伺いたいことがあるっす。
――『あによ』
俺の言語ってどうなってます?ジェノベーゼ出した手前であれっすけど、この子ってどこの言語圏かなって。それ次第で俺の言葉が伝わらないとかありますし。
――『ああ、それなら問題ないわよ。あなたの言葉はその世界全ての現代の言葉に通じているわ。あなたがどれだけ日本語を話しても、その時次第であなたにとって最適解な言語になるから。ま、いわゆる『気にするな!(魔王並感)』って奴ね』
おお、それは便利でありがたい。それじゃあ、早速行きましょうか。
「君を縛っているもの、外すね」
「……?ッ……!」
ちょっと驚いた様子の女の子。俺は構わず手を伸ばし、そして縄を強引にちぎる。そのままのノリと勢いで、猿轡もちぎった。うん、何てパワーだ。ジョナサン・ジョースターかシュワちゃんか何かか俺は?
引きちぎって解放された女の子。不思議そうと言うか、緊張している様子。そうだな、軽くジョークでも言ってその緊張をほぐすことにしよう。
俺は両腕を広げる。
「他に人もいないし……大丈夫?抱き着く?」
小粋なジョークを言ってみる。いや、これってセクハラでは?俺は一体何をしているんだろうか……。
自分の愚かさと先を見ない姿に嫌気が差し、腕を下ろそうとした時だった。女の子が涙目になって俺の胸に飛び込んできた。おっと、これはどういうことだ?『セクハラだ』って言ってシバかれるかと思っていたんだが?
驚きの余り黙ってしまう俺。ふと耳に静かな泣き声が聞こえる。胸の中の女の子の声。
……はぁ。この子も相当参っていたんだな。
俺はそっと抱きしめ、頭を撫でてあげる。女の子が落ち着くまで、俺は抱きしめ続ける。そんなことも出来なくて何が男だ。
それに、俺は可愛い女の子の涙には弱いもんでな。
○○○
「ラヴィニア。ラヴィニアって言うの」
「そうか。俺は大地、よろしく」
涙も止まったところでお互い自己紹介。この子の名前はラヴィニアだと。良い名前だ。
彼女の今までの話も聞いた。どうやらユノハ様の言う通り、ラヴィニアには不思議な力があって、それで孤独であったんだとか。で、家族がいなくなって、自分の引き取り先が見つかった。そうしていたら誘拐されて今に至る、と。
随分苦境にあったんだな、この子は。いっぱい幸せになるんだぞ。
ひとしきり泣いたラヴィニアは動けるようになったので、俺は彼女と一緒に外に出ることにした。地下にいたらしいので、今は近くの階段を上がって一階と思しき場所に到着し、そして外に出る扉の前にいる。
「それじゃ、ここから出ようか」
「うん」
扉を開ける。さっきからラヴィニアとずっと手を繋いでいる、と言うか彼女が左腕に抱き着いているんだけど気にしない。不安も全部拭いきれたわけじゃないだろうよ。今はこのままにしてあげよう。
俺はドアノブに手を当て、そしてドアを開ける。
先に広がるのは暗い空間。でも、空にはキラキラと輝くものと大きな丸が一つ。どうやら外は夜だったらしい。さっきまで地下にいたから分かんなかったけど、随分夜の深い様子だ。
しっかし、綺麗な夜空なことだ。幾千の星々が輝いている。月も見事な満月だ。このままずっとラヴィニアと一緒に見ているのもいいが、そうもいかんだろう。この子を人のいる場所まで返してあげないと。
今の居場所は小高い丘らしく、遠くに街の明かりが見える。
「あそこが君の街かな?」
俺がそう訊くとラヴィニアは頷いた。腕に力がこめられる。彼女が強く抱きしめたからだ。
……そりゃそうだよね!怖いよね!
多分だけど、この子は俺があそこまで送ってくれると思ったんだろう。俺だってこの場で『行け、ラヴィニア!』をするつもりはない。その上で言うけど、この周りの暗い森よ。何があるか分かったもんじゃない。それこそ熊にでも襲われたら目も当てられない。
――『ならばぁ、答えは一つ!』
あなたにぃ……!忠誠をぉ……!誓おぉおおお!!(テンプレ)(流れ出すBe The One)(内海ィ……)(これだから人間は面白い!)
はい、じゃあ俺も一緒に街の近くまで行くことにしましょう。
俺はそっとラヴィニアとつないでいる手に力を込める。どうやら俺の変化に気付いたようで、ラヴィニアの方を見た時に目が合った。
「大丈夫、一緒に行こう」
そう言って心を落ち着かせる。が、そんな薄っぺらい言葉でどうにかなる程のものじゃないことくらい分かっている。ラヴィニアだって全然不安そうにしているし。
うーん、こうなったら奥の手だ。
俺は息を吸う。そして歌いだす。
「世界の始まりの日 生命の樹の下で」
歌はいいものだ。心を強くしてくれる。寂しい時も、常に一緒にいてくれる数少ない存在だ。
何となくチョイスした『創聖のアクエリオン』。ふと思い浮かぶ前世での記憶。会社の飲み会の後に行ったカラオケで歌っても大丈夫そうなのが『Take me higher』と『EXITE』くらいだった悲しみを思い出す。
……などと言うと思ったか!あいにく俺のいた会社はオタク趣味に優しくてな!部長が遊戯王5D’sのOPを朝っぱらの会社にて鼻歌で歌い出して特に問題がなかったような会社だったよ!
「傷つかないで僕の羽根 この気持ち知るため生まれてきた」
それでは皆様ご一緒に。
「一万と二千年前から愛してるぅうう」
きっと今頃コメ欄は『愛してるぅうう!!』の文字でいっぱいだろう。
そんな前世での酒の肴を思い出しつつ、俺は歌を続けていく。
「君を知ったその日から僕の地獄に音楽は絶えない」
一番を歌い終わる。ラヴィニアの方を見ると、その目から恐怖はなくなっていた。やはり歌は偉大だ。人の生み出した文化の極シャングリラだ。
「俺が歌い続けよう。そうすれば、きっと怖くないさ」
ユノハ様。
――『ん?』
マーキングって言うか、案内用の何かってありますかね?流石に夜の森を無策で歩くのは怖いんです。
――『それくらいならあなたでも出来るわ。視線の先の街を印に強いイメージをして。そうしたら手から案内用の光の球が出てくるわ』
おお、それはありがたい機能だ。
俺は強く念じる。狙うは視線の先の街。そうして、俺は右手をそっと突きだす。手から光の球を出てきた。これが案内してくれると?
――『ええ、それなりにゆっくりだけど動くわよ。ほら』
ユノハ様に言われて光の方を見ているとフワフワと浮きながらスゥーっと飛んでいく。そんなに速くない速度だ。
「あれは?」
ラヴィニアが俺にそう訊く。
「街までの案内だよ。ラヴィニアが怖くないようにね。さ!一緒に行こう!歌も歌ってさ!大丈夫、俺がいる!」
若干夢の国のアニメーション映画のノリになってしまったが、そう言う。ラヴィニアも頷いて一歩前に足を進める。その目は恐怖と不安で染まってはいなかった。
さて、じゃあ俺は約束通り歌を歌うことにしましょう。何なら、エスコートもしないとね。
――『モテる男はつらいわね(笑)』
うるせぇ。
そう言う訳で始まる夜間の森歩き。ラヴィニアだけは何としてでも守る。俺はそう心の中で誓った。
Side out
アクエリオンを採用した理由ですが、別に深い理由とかはないです。自分の記憶が間違っていなければ、たしか『ハイスクールD×D』のアニメ第1期と『アクエリオンEVOL』が同期のアニメだったからに加えて、両アニメの主人公の声優が同じだったからと言うだけで選んだだけです。