知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
アザゼルさんが来てから、ヴラディ君と色々頑張ってみた。特に兵藤がよく働いており、一緒に顔合わせの仕事に出たり、木場も交えて猥談をしたり、いい先輩をやっている。猥談はさておいて、あいつもあいつでしっかり男として成長してんだなって感じたよ。
――『お前がいない場合の世界線、つまり原作だとどうなっちまっていたか聞きたい?』
ドキンダムさん。
――『何だよ?』
その言い方だと、マジでヤバい方向にいっていたような言い方じゃん。そんなだと聞きたくないよ。
――『うん、それでいいよ。原作のことは知らんでいいよ、マジで』
……?ま、いっか。
そんなわけで休日。俺と兵藤は姫島さんに呼び出されてある場所へ向かっていた。あとでリアスも合流するらしい。忙しいのに頑張るね、リアス。労おうにも、俺はどうすればいいか分からないよ。
「ここら辺ですね、先輩」
「ここら辺、か。随分街はずれに来たな」
そんなやり取りをしながら歩いていると、目の前に鳥居が見えた。石段の下に一つの人影がある。見れば、見知った顔の女性が巫女服に着替えて待っている様子だった。
「いらっしゃい、岸波君、イッセー君」
「あ、朱乃さん?!」
何と、我々の身近な女性である姫島さんが、巫女服を着て立っていた。いや、まさか彼女がわざわざ応対してくれるなんて思ってなかったからさ。あくまでも仲介かと想像していたもんで。
とりあえず、合流した俺らは姫島さんに連れられて、石段を上がっていく。
「ごめんなさいね、二人とも。急に呼び出したりして」
「まぁ、やることがなかったしな」
「俺もっすね。仕事もなかったですし」
それにしても巫女服がよく似合う。まるで本職みたいだな。
俺がじろじろ見すぎない程度に姫島さんを見ていると、兵藤が姫島さん訊ねる。
「そう言えば、部長さんは大丈夫なんですか?たしか、何か会議の打ち合わせがあるって言っていた気がするっすけど」
「ええ、勿論です。あちらにはグレイフィア様もいますから、ある程度のフォローはしてくださるでしょうし、私がいなくとも大丈夫ですわ。それ以上に、私は応対をせねばならない方がいましたので」
「それ以上に?」
兵藤が首をかしげる。俺もそう思う。『女王』とか色々放り投げてやらないといけないことってなんだ?そんなにVIPな奴がこの上で待っているのか?えー、俺、今日は制服ですよ?
石段を上がると、そこには立派な鳥居があった。俺は姫島さんに着いて行く。が、兵藤の足がそこで止まった。何があった?
……ああ、あれか。『悪魔だから神社がダメ』的な奴か。いや、でもそれなら何で姫島さんは先に行っているんだってことになるしな。
そんなどうしたらいいか分からない兵藤の様子を見て、姫島さんはクスっと笑い、言った。
「ここは大丈夫ですわ。裏で特別な約定を結んでありまして、悪魔でも入ることが出来るのです」
へ、へぇー。そんな器用なことがあるんだ……。俺も知らなかったから驚いたよ。
「それに、ここの神社は今の私の住居でもありますので。リアスが確保したものですから、安心してください」
「う、うっす」
恐る恐る足を踏み入れる兵藤。その様子は絶妙に滑稽に思えるが、
足を踏み入れても何も起こらないことに安心感を覚えた兵藤。すぐに俺達の元へと駆け寄った。
「しかし、立派な神社っすね」
兵藤の向ける視線と同じ方向を見ると、そこには立派な本殿がある。この町は一通り歩いたつもりだが、まさかこんな所があったなんてな。
俺と兵藤が呆気に取られていると、後ろに気配を感じた。振り向くとそこにいたのは、金色の翼を持った青年。
「彼が今代の赤龍帝ですか?」
懐かしい声だ。俺が知っている声だ。ここ最近、懐かしい顔ばかりを見るな。
青年は兵藤の前に立つと、握手を求める。困惑する兵藤を見て、何かに気付いた様子の青年。
「失礼しました。初めまして、赤龍帝・兵藤一誠君。私はミカエル。天使の長をしております。そのオーラ、間違いなくドライグのものですね。懐かしいものです」
そう言うと、ミカエルさんはこちらを見る。
「本当に、懐かしいです。ブラックゾーン殿」
「何年前の話だっつーの」
このブラックゾーン呼びも慣れないといけないのかなぁ……
〇○○
姫島さんに連れられて本殿へと上がらせてもらった。ミカエルさんのブラックゾーン呼びもやめさせたのだ。
しかし、兵藤に会おうってのがミカエルさんだとはな。いや、別に敵対云々に言うことはない。ちょっと懐かしさと縁の集約に怖さすら感じていただけだ。
「今日はこれをあなたに授けようと思いまして」
ミカエルさんはそう言って指をさす。その方向にあったのは、光っている剣だ。何だか木場の聖魔剣を思い出すな。何なら、ゼノヴィアさんのデュランダルの親戚にすら思える。
「これは聖ゲオルギウスの所有していた聖剣です。
アスカロン。あれか、誰でも龍判定してくるあれか。
それ、結構ビッグネームじゃね?
『ドラゴンを始末するのに特化した輩、およびそれに関連した武具の総称が龍殺しだ』
「え、それって俺にとってヤバい奴じゃね?」
『そうだな』
「お前、気軽に言うな!」
何だか楽しそうにしている兵藤とドライグさん。それのやり取りを見て、ほほ笑むミカエルさん。
「安心してください。特殊な儀礼を施してありますので、悪魔のあなたでもドラゴンの力があれば扱えるはずです。あなた自身がアスカロンを振るうと言うよりは、神器に同化させると言う方が正しいでしょう」
へぇー、そんなご都合主義みたいなことが出来るのか。融通が利いていいね。
「ドライグ、そんなことって……」
『お前次第だ。神器は想いに応えるものだ。お前が望みさえすれば、それは応える』
「器用だなぁ」
俺と同じことを思っている兵藤。ミカエルさんに疑問があったのか、質問をする。
「ミカエルさん、何故これを俺に?アスカロンって聖剣なんですよね?確か聖剣って貴重だったんじゃ……」
今までの知識から考えるとそうなるだろ。実際、ゼノヴィアさんも『エクスカリバーみたいな自由に使える聖剣は貴重だ』って言っていたし。
兵藤がそう訊くと、ミカエルさんは答えた。
「私は今度の会談を、三大勢力が手を取り合うことが出来る大きな機会だと思っています。既にご存じでしょうが、我々の創造主たる神は先の戦争でお亡くなりになりました。敵対していた旧魔王も戦死し、残る彼らの子孫もサーゼクス達に敗北した。堕天使幹部たちは沈黙を貫くだけ。アザゼルも一応建前では戦争の拒絶を語っています」
その言葉は、真実に思える。ミカエルさんは本気で冷戦状態の今から和平へと漕ぎ着けようとしているんだって。そう思う。
「だからこそ、これは好機なのです。こうして話し合う機会を得て、そしてその話し合いを監視するブラックゾーンこと岸波殿がいる今こそ、無駄な争いを無くすためのチャンスなのです。例え小規模でも、戦いが続けば、三大勢力そのものが滅ぶ。そうでなくとも、他勢力からの横やりで滅びかねないでしょう。その聖剣は、私から悪魔側へのプレゼントです。勿論、堕天使側にも送りましたし、悪魔側からも噂の聖魔剣をもらいました。こちらとしてもありがたいのですよ」
そう言うミカエルさんの言葉を受けて、首をかしげて唸る兵藤。そこにドライグさんがコメントを入れていく。
『『聖書』に記された連中以外にも神話体系はある。それこそ、北欧のオーディンなんてお前でも知っているだろう?』
「あ、その名前は知ってる」
『そう言う奴らは、普通自分の領域を越えてくることはない。だが、『聖書の神』が死んだ今、他がどう動くかなんて分からない。あれの不在を漏らさないようにするのも、納得だよ。尤も……』
何やら含みを込めるドライグさん。
『そこの狂気のチート野郎なら、神の代行くらいなんてことないだろうがな』
「実際、岸波殿を神として祭り上げることで天使であり続けている派閥もあります。割と冗談ではないのですよ、あなたを神にすることは」
ミカエルさんの言葉に思わず額に手を当てる俺。そういやアザゼルさんが昔、俺が天界で相当数の信仰を得ているとか何とか言っていたな。んでもって、その先頭にいるのがガブリエルさんだってことも。
「兵藤一誠君は『歴代最弱』の赤龍帝と聞いています。悪魔になったからこそ、これから龍王クラスや
「なるほどな、俺ってより俺の周りがって感じか……泣けるな」
遠い目をする兵藤。すぐに意識を戻してきた。
「でも、俺でいいんすか?それこそ、ドライグが言うには、こいつって三大勢力に迷惑をかけたって言ってましたし」
「確かに、赤と白との戦いの時は大変なんて言葉で済まされませんでしたからね」
『そうだな。俺だって強かったんだ。それを……それをぉ……!』
ドライグさんの泣き声が神社に響く。……ごめんとは言わんぞ。
「しいて言うなら、ある種の願掛けと言う奴です。ほら、日本には強い龍を信仰の対象にする文化があるでしょう?別の体系の神に縋るのも必要かと思いまして」
「……この情けないのでよければ」
『おぉん……』
それからアスカロンの神器との同化作業が始まった。と言っても、重要なことはすでに姫島さん達が終えていたので、特に兵藤が何かをするとかはなく、ドライグさんのサポートですんなりと同化は終わった。
うーん、いいね、平和。こうして手を取り合うことが出来るって素晴らしいね。強さの証だよ。俺が信じた甲斐があった。
〇○○
アスカロンが兵藤の神器と同化してからミカエルさんは帰った。彼も彼で忙しいらしいし、仕方ない。
ただ、去り際に言っていた『ガブリエルに気を付けろ』と言う言葉の意味はよく分からなかった。何なのか今一分からん。
まぁ、その時が来た時に何とかしよう。ガブリエルさんだって、そんな悪いことをするわけじゃないだろうし。
そんなわけで今日のやることは終わり。俺が何故同席したのかはちょっと分からないが……あれだろう、兵藤とのことについて一応同席してくれってことなんだろうな。うん、そうしておこう。
で、俺は今何しているかと言うと、姫島さんにお茶に誘われたのでホイホイ着いて行き、彼女の住んでいると言う境内にてお茶をいただいていた。緑茶美味しい。
スルスルとお茶を啜る俺。正直呑気にしたいのは山々なのだが、今の姫島さんがすごく険しい表情をしているのを見ると、そんなことを言っていられる余裕はない。
さて、彼女のその様子について色々聞きたいのだが……どう話を切り出すか。
俺が話の切り出しに苦慮していると、姫島さんが口を開いた。
「岸波君」
「はい」
すげーシリアスなのは伝わって来たので、俺も真剣になる。
「あなたは、堕天使のことをどう思いますか?」
何故、今それを?もしかして、ミカエルさんの言う和平の中に堕天使がいるから、何か思うもんがあったのか?ってことは、姫島さんも堕天使に因縁のあるタイプ?
それにしても堕天使がどうこう、か。別にこれと言ってないんだよな。
「特にないな」
「堕天使がイッセー君を殺したのですよ?あなたの可愛い後輩を。それでも特にないのですか?」
お、おう……随分堕天使を貶そうとしてくるな……。でも、ほんと特にないんだよ。個人個人に色々思うことはあるけど。
「そりゃ、あいつをぶっ殺した馬鹿は許せんよ。それに、コカビエルってのも。だけど、そいつらだけで『堕天使=クソ』と言うには早計じゃね?」
一応アザゼルさんみたいな話が分かる人もいるし、バラキエルさんみたいな真面目な方もいるわけだし。そもそも俺がどうこう言えた身分でもないしな。
「そうですか……」
落ち込む姫島さん。あれ?バッドコミュニケーションだった?嘘でしょ?
「でしたら、質問を変えましょう。もしも、堕天使があなたの身近にいて、あなたを騙していたとしたら?」
姫島さん、ちょっと堕天使へのヘイトが高すぎませんこと?俺、バラキエルさんみたいな前例を知っているからどう頑張っても君を肯定することは出来ないんだけど。それに、その質問にも思うものはあるし。
「まぁ、俺だけが被害を被るならそんなに気にしない。家族に手を出されたら話は変わるがな。その程度だな」
「で、ですが、あなたを騙していたのですよ!騙し続けて、あなたを裏切るような形になっていたのですよ?」
し、しつこい!しつこすぎる!一体何が君をそこまで動かすんだよ!
「別に騙して何かしていたわけじゃないんだろ?だったらいいよ」
お茶を啜る。この茶葉何だろう。普段飲んでいるものより絶対上等なものだとは分かるけど、それ以上が分からない。俺の知識不足だな。
「それに、騙し続けているのに色んなことに気が付かない俺が馬鹿なだけだ。そもそもだ、家庭の事情とかで騙さなきゃいけない線だって考えるべきだろ。世の中そんな単純じゃねぇんだ、そう言うことくらいあるだろうよ」
流石に姫島さんの言い方だとアザゼルさん達も傷つけることになるので、ちょっと苛立った。
「ま、俺の友人がそうだったとすれば、俺は何も言うまいよ。寧ろ、そいつの事情をくみ取れなかった俺にも非があるってことだ」
俺がそう言うと、静かになる姫島さん。俺としては何故そんなに堕天使への憎しみが大きいのかを聞きたいが、堕天使とか言う世間一般では悪の軍団が相手だし、そう思うのも無理ないか。
何て思っていると、姫島さんが口を開く。
「もしも、その騙していたのが私だったら?」
「は?」
「私があなたを騙してた堕天使だとしたら?」
え、君悪魔でしょ?堕天使なの?そっちの方が驚きなんだけど。
「まぁ、驚くくらいはするな」
そう言うと、少し間を置いて意を決した様子になる姫島さん。
「ならば、そんなあなたを驚かせましょう」
そう言うと、翼を広げる姫島さん。リアス達と同じ、見知った悪魔の翼を広げ……いや、片方が違う。悪魔の翼じゃない。堕天使のものだ。
思わず、呆気にとられる俺。そんな俺を余所に姫島さんは語り出す。
「私は元々……堕天使幹部のバラキエルと人間の間に産まれた子です」
はっはー、バラキエルさんの娘さん……なるほどな!
「えぇ……?」
いや、マジかよ!あの人、娘さんいたのかよ!しかも、俺の同級生じゃねぇか!ままままま、マジか!
落ち着け、俺!堕天使ってのは長生きなんだ!娘くらいいたっておかしくない!ただ、それが俺と同い年だったってだけだ!
いや、その事実に驚いてんだろうが!
「母はこの国にあるとある神社の娘でした。ある日、傷つき倒れていた堕天使幹部のバラキエルを助け、その縁で私を身ごもったと聞きます」
内心焦りに焦っている俺に対して、瞳に陰を作ってうつむきながら語る姫島さん。あ、これ相当重い話だな。
それにしても神社の娘と堕天使か。ここだと分かりにくいが、普通なら敵対関係にある両者だもんな。ロミジュリみたいなもんか。
「私は、汚れた翼を持っている。この羽が嫌だったから、私はリアスと出会って、悪魔になりました。でも、現実は甘くなかった。悪魔になり、生まれたのは堕天使と悪魔の翼を持った半端者。どこまでもおぞましい生き物でした。ふふっ、汚れた血を引く私にはお似合いなんでしょうね」
その言葉を聞いて、ちょっと怒りかけた俺。汚れ汚れってそんなこと言ってなぁ……
とりあえず、湯飲みのお茶を一気飲みし、盆に置く。
「姫島さん、聞いてくれ」
俺の言葉を受けて、顔を上げる姫島さん。その顔に、涙の筋があった。この子もこの子なりに悩んでいたんだなとは思う。だけど、俺にだって言いたいことはある。
「俺が助けたバラキエルって堕天使とあんたの父親が同一人物だとするなら……あんたは別に言うほど卑下する存在じゃない」
「岸波君……」
「『お前はお前だ』で片付けてもいいならいいが、今回はパス。その上で言うんだが……俺が知っている姫島さんは、リアスをおちょくって笑っているような今時の女子高生だし、お茶を淹れるのが上手な、繊細な技術を持った人だ。そこに堕天使の要素が入った所で、別に非難するようなことにはならん」
姫島さんの目を見つめて、俺は真剣さを出して言う。ここでふざけるほど、俺は馬鹿になった覚えはない。
「あんたが真面目なのは知っている。だから、そうして苦しんでいるんだろう。簡単に切り替えられないのも分かる。でも、少なくとも俺は姫島さんを味方だと認知しているし、あんたの優しさも知っている。そう自分を卑下するな。そうされると、俺も悲しくなる」
偽りのない本心だよ。まぁ、ちょっと気障ったいなとは自分でも思うな。
「あんたが苦しんでいるってのに、それに気が付かない自分の愚かさも嫌になるね。その綺麗な翼が、悲しみの涙に濡れて輝くなんて、そんなのごめんだ」
そう言って、俺は締める。俺の言葉を聞いた姫島さんだが、涙を流し出した。ドキンダム、こう言う時ってどうすればいい?
――『また女たらしたのか』
ねぇ、聞いてますか?
――『聞いてる。まぁ、キスでもしたらいいんじゃね?』
よし、こいつはあてにならん。
「そんな……そんなこと言われたら……本気になっちゃうじゃない……!ダメだって言うのに……!私じゃ不相応なのに……!」
はい?何が本気?俺、分かんないんだけど……何で皆俺を置いていくの?悲しいのだ。
俺がどうすればいいか分からずに困惑していると、顔を上げた姫島さん。いい笑顔だった。いや、笑顔なのはいいのだが……
「大地君」
「はい」
突然の下の名前呼びだ。リアスと言い、不意の距離の詰め方がえぐい。
「私のことは『朱乃』でいいわ」
「え?何を言って……」
「いいでしょ?」
俺はその圧に、負けた。
「あ、朱乃?」
「はい……!」
そう言って、俺に抱き着いてくる。お、おぱ!
それからしばらくしない内に様子を見に来たリアスがやってきて、今の光景を見られた。しこたま怒られた。あれか、『わしの『女王』に手ぇ出そうとは、ええ度胸やないか』ってことか。ごめんなさい。
それと朱乃。君はリアスに喧嘩を売るな。俺にまでとばっちりが来る。
Side out
こんなテンションでやる回でもないって言うのになぁ!!