知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
朱乃と色々あった翌日の休日。今日は何もない。せいぜい会議に備えて心持をどうにかするくらいだ。
リアスは朝早くから出かけている。理由はお仕事らしい。あの年で早朝出勤とか頑張るね。経験と言うにはちょっと若すぎる気もするけど。
という訳で、朝食を食べた俺は遥輝と一緒にウルトラマンを見ている。
「むふふー」
遥輝も俺の隣に座ってご機嫌だ。遥輝を挿むようにアーシアも同席している。実に素晴らしい朝だね。
父さんは今、コーヒーを淹れている。母さんは昨晩結菜のお母様との飲みで飲みすぎたのか、今も寝ている。水を飲みましょう、水を。母さん、日本酒のチェイサーでレモンサワー飲んでるのは流石にヤバいからな?
――『おい、ここどうするよ?』
――『我はもうちょっと盛った方がいいと思うぞ』
――『私もそれに賛成ね。こいつのことだから、どれだけ盛っても許されるわ』
三馬鹿が会議している。内容は『俺の過去』。何言ってんだと思った人も多いだろう。俺もそう思った。
まず何故そんなことをしているかと言う話になるのだが、それは俺の活躍による名の大きさや広がり方がちょっと尋常じゃないのが原因だとか。
今後、と言うか会談で確実に俺の過去について聞かれると三人は判断している。俺もそう思う。そこで、俺が現状お出し出来るのは『元妻帯者の一般人』と言うだけのつまらない話だ。それに対して俺がやってきたことがつり合わず、どう頑張ってもその真実が嘘にしか思われないと考えているのが三馬鹿だ。
そこで三人が考えたのは、『俺の過去を下地にして、世界を騙す大嘘をつけばいい』と言うこと。俺が知っている内容の骨組みは『異世界の王子様』ってこと。そこからドンドン肉を付けていくそうだ。要するに異世界転生してきたヤバい奴だと言うことを伝えるってことだ。
いやぁ、俺もね、嘘を重ねるのは心が痛いよ?でも、そうしないと納得してくれないって皆言うんだもん。そこから不信を買っても嫌だしね。俺がその嘘を永遠に背負うことで俺達は合致したよ。
因みに、嘘の内容は現在進行形で三人が考えている。会議当日までに創り上げ、出来たら俺にも一回通すとのことだ。どうやって発表するのかは、ドキンダムとアポロヌスにいい考えがあるそうだ。
とりあえず、任せることにしよう。俺に出来ることなんて、たかが知れているしな。
そんなわけで、彼らが俺のことについて何とかしてくれるから、俺は心配しない方針で行く。俺のやるべきことは遥輝たちとウルトラマンに集中することだ。
ああ、こんな平穏な毎日がずっと続けば……
ピンポーン
よかったのに、それを破壊するような嫌な感じのチャイムが鳴る。何ですか、こんな時に……
「大地、出られる?」
「うん。俺が行くわ」
俺の分のコーヒーも淹れてきたくれた父さんがそう訊ねてきたので、俺が出ることにした。
インターホンをのぞく。こんな時間に一体……
「いッッ!!!?」
「どうしたの、大地?」
「ダイチさん、どうかしましたか?」
「い、いやぁ……ちょっとね……」
俺の反応に食らいつく父さんとアーシア。俺はインターホンの画面を隠す。流石にこの来客はまずい!色々疑われる!
俺は隠しながら、インターホンの音声をONにする。
「ちょっとそこで待っていてください!」
俺は急いでそう言うと、インターホンを消してこの家で起きている3人に言う。
「頼むから、玄関に来るなよ!」
それだけ言い残し、俺は急いで玄関の方へ行く。ガチャリと鍵を開け、ドアを開ける。
ドアの向こうにいたのは、金髪の美しい、まさしく『天使』の女性だった。
「お久しぶりです、ブラックゾーンさん」
「お久しぶりです、『ガブリエル』さん」
俺が色んな意味で目を奪われた女性、ガブリエルさんがそこにいた。
「岸波大地で結構ですが……えーっと、今日は何用でして?」
汗をだらだらと流しながらそう訊くと、ガブリエルさんは天使の笑顔で答えた。
「近くに来たので、ぜひともご挨拶にと思いまして」
天使のような優しい声で悪魔のようなことを言うガブリエルさん。今の俺にとって、あんたのような美人が来たら、父さんに何を言われるか分かんないのよ……。そうでなくても母さんに『女たらしは程ほどにしておけ』って釘を刺されているってのに。俺だって別にたらしているつもりはないのに、何故か女性が周りに集まるんだよ……。
「そ、それはご丁寧に……えっと、ちょっと着替えてくるので、これから町の方に……」
とにかく、この家から離れた場所に行こう。
俺が何とかして家族に誤魔化そうとしていると、後ろからテトテト歩く音が聞こえた。振り向くとそこには遥輝がいた。その目は、ちょっと面白いものを見たような目をしている。
ああ、好奇心に負けたか……。
「兄さんがお姉さん口説いてる!!」
「待て、遥輝ぃ!!」
〇○○
「粗茶ですが」
「ご丁寧にありがとうございます」
遥輝が原因でガブリエルさんの存在が父さんとアーシアにも知られてしまった。俺達は今、リビングでガブリエルさんの対応をしている。とりあえず、紅茶を出しておこう。
正直、母さんに知られなくて良かった。母さんが知ったら、間違いなく『また女をたらしこんだか』と言って鉄拳制裁だった。俺に効かないと思う奴は表に出ろ。愛ある拳は大いなる神さえも砕くんだよ。
何はともあれ、バレた以上は仕方ない(悪代官並感)
「えっと……大地とは一体どのようなご関係で?」
父さんが話を切り出す。それに対してガブリエルさんは毅然とした態度で答える。とりあえず、『大地でいい』とは言っている。この家でブラックゾーン呼びはきついものがあるからな。
「彼に心を奪われた者、と言えばいいでしょうか」
「大地?」
「違う!昔ちょっと縁があって助けた人!サーゼクスさんと同じ!」
父さんがやばいもんを見る目で俺を見てきたので必死の抗議を行う。
「はわわ……」
アーシアもアーシアで驚きからいつもの状態に戻れていない。いや、冷静に考えたらガブリエルさんってアーシアの信仰の対象だしそうもなるか。
「兄さん」
「何、遥輝」
遥輝が相変わらず可愛い様子で俺の名を呼ぶ。頼む、変なことを言うなよ。
「この人、兄さんのかのじょさん?」
空気が凍り付いた。明らかに『ピシッ』って音がした。
「どこで覚えた、その言葉」
「先生が言ってた!たつみちゃんのお姉さんのこと、兄さんのかのじょさんだって!」
なるほど、俺と寿水さんは幼稚園でそう言う風に見られているのか。
怒るな。遥輝は遥輝なりに社会勉強したから言っている言葉なんだ。そもそも、そんな言葉を教えた奴が悪いのであって遥輝は悪くない。
「大地、悪いことは言わない。女性との付き合い方を考えた方がいい。母さんに殺される」
「父さんまで?!」
もう四面楚歌だ。これが、項羽の過去と同じ状況だと言うのか!助けて虞美人のパイセン!
「言い訳に聞こえるかもしれないけど、ガブリエルさんは俺が昔助けた人で、ついでに言うとアーシアが前に住んでいた場所の管理人の上司の上司なの。俺にそんな人と男女の関係に慣れるほどの格があると思う?」
「ありますね」
「ガブリエルさんは黙ってて」
俺がそう言うと、父さんも少し考えた後に、納得した様子を見せる。
「僕も母さんに散々怒られた身だからね。今回はそう言うことにしておくよ」
「こいつぅ……」
もう一回反抗期してやろうかと思いながら、俺はガブリエルさんの方を向く。うーん、おっぱい。じゃなくて、彼女は呑気にコーヒーを飲んでいる。
――『この胆力。と言うか、一途に貴様を想うが故の強さ。貴様の嫁に相応しいな』
太陽神、後で殺す。
「それで、ガブリエルさんは今日何用で?」
俺は早速本題に切り込む。それに対してガブリエルさんは臆することなく答えた。
「二つあります」
ほう、二つ。何かな?
「一つは、アーシア・アルジェントへの謝罪です」
「わ、私への?」
アーシアが驚きを隠せない様子を見せる。
「これは私の独断です。後日、ミカエルが謝罪をするでしょう。もしくは、誰かに問い詰められてするかのどちらかになるかと思います。ですが、それでは私は納得いかないのです」
そう語るガブリエルさんの目は真剣そのものだった。マジで、謝罪をしに来ている。
「あなたの秘密についてはよく知っています。あなたの『異質さ』で、周囲から追いやられたことも。ですが、それは全てあの時彼が言った『強さ』とかけ離れたこと。我々が教えてきた教導に背く行為。それであなたを苦しめてしまった」
彼。間違いなく俺だろうな。流石に馬鹿でも分かる。俺だ。
「この場をお借りして謝罪をしたいです。あなたを追い詰めたこと、本当に申し訳ございませんでした」
そう言い、頭を下げる。ガブリエルさん。その気持ちは尊いものだ。素晴らしいと思う。ただ、俺が言えたもんじゃないけど、あんたは身分ってのを考えた方がいい。
「え、えぇ……」
ほら、案の定アーシアが困っている。偉い人がただ頭下げるだけで済む時代じゃないんだよ。
俺が何か助け船を出そうと考えていると、先にアーシアが動いた。
「気持ちはありがたいです、ガブリエル様。でも、私は大丈夫なので、顔を上げてください」
アーシアがそう言うと、ガブリエルさんは顔を上げる。
「私は、これでも今の生活に満足しているのです。教会にいた頃と違って、色んな人に恵まれて、色んな人に愛されて。何より、ダイチさんと出会えた。それだけでも満足しているんです」
「アーシア・アルジェント……」
「不敬、ですよね……分かっています。それでも、ここでの生活は、それだけ幸せに思ってしまえたんです。だから、謝らないでください。今いる場所こそ、主の下さった幸運なのですから」
そう言うと、アーシアの言葉を噛み締めるガブリエルさん。
「主の幸運、ですか……本当に惜しいことを……」
「ガブリエル様?」
「いえ、こちらの話です。あなたの慈悲に、感謝します」
どうやら話が終わったようだ。俺はコーヒーを飲む。うん、いつものインスタント。たまに父さんがストレス発散にコーヒー豆から挽くこともあって、そのおこぼれを貰うこともある。
「さて、話は終わったようだが、話が二つあるってどういうこと?」
俺がそう訊くと、何やら頬を赤く染めるガブリエルさん。何があった。俺、そんな恥ずかしいこと言ったか?
「大地さんに会いたかった。それの為にここまで来たのは間違いではないです」
そう言うと、呼吸を一つし、意を決した表情で父さんの方を見る。
「大地さんのお父様」
「はい」
どうやら、話の相手は俺じゃないらしい。俺じゃないなら、一体何だと言うのだろうな。
「息子さんと結婚を前提のお付き合いをさせてほしいです」
リビングが、凍り付いた。
「兄さん、結婚するの?」
「大地……」
何やら寂しそうな目でこちらを見てくる遥輝。父さんは父さんで何やら諦めかけている。待って、話を聞いて。俺もよく分かってないけど。
「長い間、ずっとずっと大地さんのことを想ってきました。何百年と変わらない想い、それをずっと抱いて」
随分熱く言うね。その熱量に父さんも圧されているよ……。ちょっと待ってほしいんですけど、絶対待たないよね、俺には分かるよ。その何百年も変わらない想いってのも、比喩じゃなくてマジなんだよね。
「それでも、大地さんと一緒にいた時間は短い。ですので、まずお互いを知ってから、結婚の段取りをしたいのです」
一旦コーヒーを飲んで落ち着こう。何でだろうね、いつも使っているはずのマグカップが持ちにくいな。何か手も震えが止まらないし。
「兄さん、どこか行っちゃうの?」
「ダイチさん……」
悲しそうな目でこっちを見るな、遥輝とアーシア。俺は当分どこへも行かないよ。行かないつもりだよ。お願いだからそう思わせて。
「えーっと、その……」
困惑している父さん。それでも何とか言葉を繋ぐ。
「それは大地が望んでいるのであればですね。この子がいいのなら僕ら夫婦は止めないですし、最低限の応援は必ずするつもりですが……一応、大地はまだ学生の身ですから、結婚とかはまだと言うことでお願い出来ませんかね?」
父さん、社会人人生で培った渾身の一文。これを受けて、ガブリエルさんは少し瞑目して、口を開いた。
「承知しました。今のお互いをよく知らない状況では、きっと大地さんは私との婚姻も嫌でしょう。もう少し大地さんと交流をして、またお願いさせて頂きます」
「あっはい」
「父さん……」
あ、諦めねぇつもりだ、この人……!俺も別にこんなにもすんごい美人さんに好かれるのは悪い気はしないけど、それはそれだと思うのよ。俺の心が混乱で狂うの。
どうしよう、会談前だってのに気が遠くなってきた。まだ正念場じゃないってのに、何でこんなことになっているんだよ……。
Side out
ガブリエルをこんな風にした自分が言うのもあれですが、何でこの天使は堕天しないんですかね?
......それも二次創作か!(思考放棄)