知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
うp主は俗っぽいと言いますか、煽てると簡単に調子に乗るタイプなので、ありがたすぎて筆が乗ります。
Side in
そうして歩く森の中。『創聖のアクエリオン』を歌いながら歩いている。熊避けにも多少は役立つだろうしな。気配察知のためのセンサーは張り巡らせているから問題はない。ないのだが……。
「愛してるぅう」
ラヴィニアも歌いだした。まだサビだけだが覚えたらしい。こんなに可愛い金髪美少女にジャパニーズサブカルチャーを叩き込んでしまった。何と言うか、罪悪感がちょっと残る。彼女の歌声が見事なことが余計にそうさせる。もうちょっとオペラとかにすりゃ良かったか?でも、俺の引き出しがそんなものを知らないって言っているし……。割り切ろう。うん、そうするしかない。
「一億と二千年経っても愛してるぅう」
ラヴィニアを見る。目が合い、笑みを向けられた。綺麗な笑顔だ。その笑顔に思わず大切な何かを感じる。深い愛と言うか、何と言うか……。
――『あ、マジで運命の人パターン?』
んなわけあるか。相手は高校生にもなっていないであろう子供やぞ。手ぇ出したらこっちが死ぬわ。
――『そうですかい』
それに、俺はこの子を送り届けたらさっさとどっか行くって決めてんだ。
――『一応聞くけど、何故に?今の時代でも別に悪いことはないはずだけど』
元々ユノハ様が送ってくれるはずだった時代と違うんでしょ?だったらそっちにちゃんと行きますよ。
――『律儀ですねー。あと、厳密に調べたらどちらかと言うと『時代』って言うよりは『場所』の方が違うわね。元々、日本に飛ばす予定だったけど違う場所だったって話。違う未来と言えばそうだけど、少し違う。『未来に飛びすぎた』って言っても過言じゃないわね。微調整するだけよ』
ありがとうございます。
――『まぁ、それにしたってあなたが望むならラヴィニアと一緒にいてもいいのだけど』
それならこちらにも言い分があります。って言うのも、この子は俺といちゃいけない気もするんすよ。
――『と言うと?』
多分だけど、この子はもう一人で飛べるだけの力がある。だけど、その一歩が踏み出せない状況だと思います。今の様子を見るに、ラヴィニアはちょっとだけ未熟なだけで、芯はしっかりしているかと。
だからこそ俺がいて、足を引っ張るのは良くない。そう考えているんです。だったら猶更深く関わるのは良くないんじゃないんすかね?
――『そこは『この子が大きくなってデカパイになったらガチで惚れちゃうから』とかそう言うことにしておきなさいよ』
うるせぇ。
てなわけで森を歩く。
「君を知ったその日から僕の地獄に音楽は絶えない」
二人で歌った歌が終わる。歌声から分かったが、『創聖のアクエリオン』が随分お気に召したご様子だ。
「他の歌でも歌う?」
俺はラヴィニアにそう訊く。いやね、流石に一曲ばかりだと飽きると思うんです。と言っても、用意してあるのは『響の調べ』くらいなんですけど。
そんな風に心配していると、ラヴィニアは首を横に振る。
「ううん。この歌がいい。優しくて、温かい、この愛の歌がいい」
「そっかぁ。分かった。じゃあ、一緒に歌おう」
歌は続いた。あれだけ暗闇を恐れていたか弱い女の子はもういない。いやぁ、歌は偉大だね。
しばらく歌を歌って歩いていると、大きな道に出た。明らかに人の作った道だ。おや、ここは?
――『どうやら森を抜けたらしいわよ。ホラ、見て』
俺は光の球の方を見てみると、随分近くに街の明かりが見えた。どうやら、案内は正確だったようだ。
さて、俺のお役目はもうそろそろ御免らしい。
光に導かれ、道なりに進んで行く。心なしか、ラヴィニアの掴む手の力が強くなる。
もしかして、寂しいのか?いや、そんなことあるわけない。ポッと出のこんな男にホイホイ釣られていちゃダメだぜ、お嬢ちゃん。
なーんて思って歩いている内に街まで目と鼻の先になった。案内の光も消えたのでここっぽいな。
「ここがラヴィニアの街かな?」
「そうよ」
どうやらここでいいらしい。さて、俺の仕事は終わった。お別れの言葉でも言って帰ろう。お土産も持たせてあげるか。
俺は埋め込まれたプログラムと言う名の偽りの経験値から、禁断の力を結晶化させる技術を引き出す。そのためにラヴィニアと繋ぐ手を離す。すると彼女は『あっ』と言う声を出した。
俺は合掌のポーズを取り、手に力を込める。すると赤い光が浮かびあがり、そして赤い宝石の首飾りとなる。烏滸がましいが、いわゆるアミュレットだな。
俺はそのアミュレットをラヴィニアにつけてあげる。うん、似合っている。金だと嫌味に感じるから銀の鎖にしたのは正解だった。
「これは?」
「お守り。君に降りかかる困難を打ち払うもの」
そう言うと、嬉しそうに宝石を見つめるラヴィニア。ごめんね、それ禁断の力って言うちょっと危ないものなんだ。一応無害化はしてあるけれど。
口惜しいが、本題に入ろう。
「ラヴィニア、ここでお別れだよ」
「え?」
「俺はここから先は君とはいられない」
何せ、俺はこれから未来へ行くのだから。俺が思いを伝えると、ラヴィニアは悲しそうな表情をする。
「何で……?何でダイチは一緒にいられないの……?」
「それは、秘密だ。人には知られちゃいけないことがある。それが今、君といられないことの理由なんだ」
「そんな……!」
涙目になるラヴィニア。ほんまごめん、罪悪感が半端ない。
――『なら一緒にいる?』
……いや、彼女の為だ。俺はここからいなくなる。
――『……了解』
ユノハ様、未来への移動、お願いします。ラヴィニアとの出会いは余りに良いものだった。このまま彼女と一緒にいるのも悪くないと思ってしまうほどに。でも、それではいけない。俺の方こそ未練が残りそうなので。出来れば早めにお願いします。
――『ったく、随分憎まれ役を押し付けるものね。不器用者』
すいません。
ラヴィニアの悲しみが直に伝わってくる。そんなに俺の優しさがうれしかったのか。これは、男冥利に尽きるな。だったら、せめて別れの時まで彼女を寂しくさせないようにしよう。
何を話そうか。そんなことを考えていると体がズンと重くなった。手を見ると光の粒子が出ている。えっと、これはどういうことですかユノハ様?今にも消えそうな感じなんですけど。
――『ごめんなさい。急いで調整したからこんな感じになっちゃったわ。あなたの体を光の粒子にして次元の狭間に戻して、目的地へ飛ばす。ここでの残された時間は少ないわ。話したいことをしっかり話しなさい』
まずいな、寂しくさせないと言った手前でこれか。
彼女を見る。俺が消えることを察しているのか分からないが、寂しさと困惑が入り混じっている。せめて、言葉だけでも伝えないと。
「ラヴィニア、ごめん。もう時間がない」
「え、え?何で?」
「もうお別れの時が来た」
そう言うと、強く抱き着いてくるラヴィニア。
「そんなの嫌だ!私は……私はダイチと一緒に……!」
何かを言いかけるラヴィニア。俺は抱きしめてくる彼女をそっと突き放す。
「俺はね、ここにいちゃいけないんだ。だから、消える。ここからいなくなる。君と出会えたのは、俺に残された最後の幸運だったんだと思う」
「そんなの……!だったら……!」
心が締め付けられる。馬鹿だよな、前世の妻に見捨てられたと思ってしまったら彼女への未練も薄まってしまった。そんな心の隙間をラヴィニアは埋めてくれた。優しい子だ。
だからこそ、これ以上俺が苦しめるわけにもいかん。
「短い冒険だった。それでも俺には一万二千年の旅にも思えるほどの長い、優しい時間だった。本当にありがとう」
「いやよ……!何でそんな急に……!一緒にいてよ……!一人にしないで……!」
……ユノハ様、未来でも俺はラヴィニアに会えますかね?
――『……会えるわよ。これは神の決めた運命とかじゃない。あなたの掴み取る未来よ』
そうか。じゃあ、今から言うことは無責任じゃないな。
「ラヴィニア、約束してほしい」
「何……?」
ラヴィニアの可愛い顔が涙に濡れる。俺はそっと指で涙を拭ってあげる。アミュレットもあってか、彼女がとても綺麗だと思ってしまった。
「君はこれから、色んなことを知っていく。そして、もっと大きくなっていく。もっときれいな女性になる。友達だっていっぱい出来る。色々知って、美人になって、周りにたくさんの人がいる。そんな未来で、また会おう」
俺はラヴィニアをそっと抱きしめる。さっきまでは彼女に抱き着かれてばかりだったが、今回は違う。
光が強くなっていくと同時に体がより一層重くなる。そろそろ限界か。
「ありがとう、誰よりも優しくて強い女の子。君の心に俺は救われた。君はもう、一人で飛べる」
「ダイチ……」
言いたいことは言えた。俺はラヴィニアから離れる。
「自分はここで消えてしまう。だけど、ラヴィニアのことは……ずっと忘れない」
噓偽りない本心でそう言うと、俺の目の前に光が広がる。思わず目を瞑ってしまう。光が弱くなり、目を開けるとそこはラヴィニアと出会う前までいた謎の空間だった。なるほど、戻って来たか。
――『全く、随分罪作りな男ね』
ユノハ様がからかってくる。
よく言われます。しかもどうやら無自覚らしいです。前世の知り合いたちにも叱られたことがありますし。でも、治せないっす。すいません。
――『はぁ……しょうがないわ。話は終わり。それじゃあ、本来の行先に送るけどいいかしら?』
はい、お願いします。
――『と言っても、誤差だったから、本当にすぐよ。期待して待ちなさい』
はーい。
俺はユノハ様の言う未来に思いを馳せながら少しだけ寝ることにした。未来に行くことによるバグないし仕様なのか、体がドンドン縮んでいくのも分かる。このままだと、小学生くらいまで縮みそうだ。
目を瞑る。瞼の裏にはラヴィニアの笑顔が焼き付いている。短い冒険だった。それでも俺の心に焼き付いて離れない。とんだロマンチストでロリコン野郎に成り下がったもんだな。
双眸から涙が少し零れ落ちた。
Side out
人生で一番感動したゲームは『ポケダン闇・時・空の探検隊』と断言できる程に、うp主の心に刻まれています。