知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
イッセーside in
ドキンダムが『まだ続く』と言って、映像を変える。そこに映されたのは、月面に佇むレッドゾーンと呼ばれた先輩。
「ここから先はいわゆる『異世界転生』って奴の話だ。こいつは完全にロボットに生まれ変わって、異世界に飛んだ。肩の力を抜いて見るといい」
ドキンダムはそう言って映像を流し出した。
「おい、ドキンダム。異世界って……」
アザゼルの問いにドキンダムが答える。
「こいつは一度転生している。何の運命かは分からないがな。だから、この世界に来たのは二度目の転生ってことになる」
さらっと言うが、先輩の経歴ってとんでもねぇな。
『ふふふ……これで四千年目だぁ……』
「こいつ、自分が与える影響を考えて目の前の星の衛星上でずっと生きていたんだよ。大した奴だろ?俺に言わせれば異常者だがな」
ドキンダムがそう言う。俺達は映像に目を向けると、映像の中でふと呟いて生気のない目で体育座りをし出す先輩。
『アクエリオン……皆……会いたいよ……でも、俺なんかが会う資格なんてないんだ……俺なんて……』
その声は、余りに悲しさを持っているものだった。先輩が今言った『四千年』ってのが本当なら、先輩はその期間をずっと一人寂しく耐えていたってことだよな?見た感じ、何もない月面っぽい場所で。そんなの、拷問とかじゃないか……
「あの星は『惑星エンペギエル』。多くの命がある、眩しい星だ」
ドキンダムがそう言う。
先輩が空……なのか?見上げると、そこには地球に似た星がある。きれいな星だ。それを見て、映像の中の先輩は手を伸ばして言う。
『キレイダナァ……ナンデ オレハ アアジャナイ……』
先輩は何もかもを失って、異世界に放り込まれた状況だ。俺達が知っているようなチートなんてものも授けられていない。絶望するのも当然だと思う。その声で、全てを察せるくらいに。
そんな中で、一筋の光が地球に目の前の星に落ちていく。それを眺める先輩は妙に優しさを感じた。
「ちょっと数日程飛ばすな」
ドキンダムがそう言って映像を飛ばすが、変わった様子はない。俺は木場の方を見て、何か分かったか視線だけで訊ねる。だが、首を横に振ったので、木場も分からないようだ。
「えー、約7日。ずっとこの態勢でした。こいつはこういう奴なんです」
えぇ……(困惑) 先輩何やってんすか……
「それで、飛ばして何があるってんだ?」
アザゼルがドキンダムに訊くとドキンダムがフッと笑って、あごを使って映像を指す。
映像に変化があった。何やら一つ、星に飛来するものがあった。これじゃあさっきと変わらな……
『あれは……まさか!?』
突如先輩が立ちあがると、勢いをつけてその飛来するものへと猛スピードで飛んでいった。
先輩が高速で飛ぶそれの近くにたどり着いた。その飛翔体の正体が写される。それは……何かエイリアンっぽい何かだった。俺にとってそれがどういう意味なのかはよく分からなかった。だが、それを見た映像の先輩の様子が変わった。機械の瞳でも分かる程に、動揺している。
『ブラックオーバー!データ上でしか存在しないこいつが何故ここに!?』
「ドキンダム、ブラックオーバーと言うのは?」
サーゼクス様がそう訊くと、ドキンダムがため息を少し吐いて答えた。
「こいつには因縁の相手であるキング・ロマノフと言うのがいる。そいつがまだ死に損なっていたらしくてな、奴が禁断の兵士である存在を鹵獲して、改造を施したものだ。ドルマゲドンXにとってはその改造すら計算の内だった故に、ブラックアウト時代にブラックオーバーを知ったのだが……まさか本当に存在したとは思わなかったよ」
「……君達の世界の技術力はとてつもないな」
「だろ?だから、お前らがこいつをどうこう出来ると思うなよ?」
ドキンダムがサーゼクス様にそう言うと、映像では先輩とブラックオーバーが戦闘に入った。
大気圏内で激突する両者。熱で真っ赤になっていくが、それを物ともせずに先輩は戦う。ただ、俺には違和感を感じる。何て言うか……
「妙に岸波殿の動きが苦しそうでは?」
ミカエルさんがそう言う。そうそう、先輩の動きが鈍いって言うか、本調子っぽく感じない。だからと言って、手加減しているような様子でもない。どうしたんだろ?
「こいつ、異世界転生の際にちょっと力を欠けちまったらしくてな、いわゆる『パイロット』ってのが二人も必要になっちまっているんだよ。なのに、こいつは惑星エンペギエルを守る為に戦っている。まぁ、このままだとこいつはブラックオーバーに負けて死ぬだろうな」
あっけらかんとした態度でとんでもないことを言うドキンダム。それに対して、アポロヌスって人が言葉を続けた。
「その言い方では、先の展開が読めてしまう。つまらぬぞ、ドキンダム」
「かーっ!ったく、どうせこの後すぐに分かるんだからいいだろ」
映像では先輩とブラックオーバーと呼ばれたエイリアンが取っ組み合いをし、そして地面に激突した。土煙の中から飛び出したのは、ブラックオーバーの方だった。先輩はと言うと、ボロボロの体になって、地面に仰向けになって倒れている。
そんな先輩を一瞥し、ブラックオーバーは落ちて来た町を破壊し出した。抵抗する者達がいたが、圧倒言う間に倒していってしまう。まるで怪獣映画を見ているような気分になる。でも、ここから誰かヒーローが出てくるなんてことはない。そのヒーローが倒れてしまったんだから。
『ちょっと!起きてる?!』
『おい馬鹿!逃げるぞ!』
映像のことなのに心が折れかけていると、そこに声が響く。それは先輩のものではなかった。
死に体にも似た先輩が顔を横に向ける。そこにいたのは二人の人間。その人間達の片方に、俺達はとても見覚えがあった。知っていなきゃ不味いレベルで見覚えがある。
「え、俺?」
そう、そこにいた二人の内、男の方が俺とそっくりなのだ。瓜二つなんてもんじゃねぇってくらいにそっくりだった。
皆俺の方を見る。そんな期待みたいなものを込められても困るんだけど!?
「い、いや、俺知りませんよ!?」
「だろうよ、何せ、別世界の別人のことだからな」
ドキンダムがそう一蹴する。
『ねぇ、ちょっと!起きなさい!あんたがあの黒い奴と戦っていたのは知ってるの!』
『お、おい!こいつだって敵かもしれないんだぞ!』
そう言い合う暫定俺と茶髪の女の子。それを見て、先輩は二人に話しかける。
『何だ……お前ら……』
『私はユヅキ!最近この星に来たの!こっちはダイチ!』
『すぅー……ダメだこりゃ』
女の子の名前がユヅキで、暫定俺がダイチか。なるほどな……待て、ダイチ?
「ダイチって……」
「おお、ご明察だ堕天使総督殿。そう、こいつの名前の元だ」
な、なんだってー?!俺のそっくりさんの名前が、先輩の名前の由来だったの?!嘘でしょ!?
「ネタバレだが、こいつらとはそこそこの付き合いになる。その中で、こいつが心から尊敬した男になったのがダイチだ。今の親に名乗る時、あいつにあやかったんだよ」
『そうか、ダイチとユヅキか……』
『そう!ねぇ、あなた戦えるんでしょ?だったら戦って!このままだと、皆悲しい目に遭うの!』
『だから、こいつは……ああ!もう!おい、ロボット!お前、名前は?』
ダイチさんがユヅキさんを守るように前に出て、そう訊く。先輩は枯れた声で答えた。
『俺は……レッドゾーン』
「岸波君の名前はアポロヌス・ドラゲリオンだったはずでは?」
「こいつは、もうアポロヌスであることを捨てたんだよ、サーゼクス。誰も守れなかった自分への戒めとして、もう過去に戻れないと現実を直視して、な。そして罪を忘れない為に、レッドゾーンと名乗った」
「それでも、我にその名を付けるくらいには愛着があったようだがな」
ドキンダムとアポロヌスがそう言う。映像では先輩は立ち上がろうと、体を起こそうとする光景が流れている。だが、もう限界なのか満足に立ち上がることすらままならなかった。
『レッドゾーンだな。おい、レッドゾーン。お前、どうすれば戦えるようになる?どうすれば、あいつに勝てる?教えろ』
ダイチさんはしっかりとした瞳で先輩を見つめる。その姿を見て、先輩は少しほほ笑んで答えた。
『お前ら、俺のパイロットになれ』
『パイロット?』
『お前達で、俺に欠けた部分を補うんだ。そうすれば、勝てる……!』
『分かった!だけど、どうすればいい?!』
ダイチさんがそう言うと、間髪入れない勢いでユヅキさんが先輩の体を上っていった。そして、先輩の胸のXの部分に立った。
『多分ここね』
『何やってんだか!』
ダイチさんもユヅキさんに続いて上る。すると、二人が光に包まれて消えていく。
映像が変わった。何か、アニメのロボットのコクピットみたいだ。
『おい、ここ、どこだ?』
『俺ん中だ』
『うわっ!?どこから喋りやがった?!』
『そんな気持ち悪がるなよ……いいか、お前ら。今から俺の体はお前らの自由だ。ある程度サポートしてやるが、残りは気合で何とかしろ』
『はぁ!?そんな大雑把な……』
『上等じゃない!ハッピーエンドにしてあげるわ!』
『おぉん……』
二人が操縦桿を握って動かす。すると、先輩の体が起き上がった。しかも光の粒子に包まれ、ボロボロだったボディが治っていく。
そこから始まったのは、先輩たちによる逆襲劇。さっきまで苦戦していたのが嘘みたいにブラックオーバーを圧倒し、そして倒した。
何つーか、心躍った。俺の顔でやられているのはちょっとアレだけど、すげー王道なロボットアニメを見ている気分でさ。
「まぁ、こんな感じでダイチとユヅキと出会った。それからと言うものの、こいつらの生活に付き合うようになってな。何て言うか、こいつにとっていいもんだったよ」
そう言って映像を流す。
途中でウユニ塩湖みたいな場所に立つドキンダムとレッドゾーンの姿の先輩、ダイチさんとユヅキさんが映っていた。
言葉は聞こえなかった。だけど、ダイチさんとユヅキさんがドキンダムと先輩の手を繋いだその姿から、無性に強さを感じた。
「懐かしいな。これで、俺達は互いを憎むことをやめて、力を合わせることをしたんだっけ?」
ドキンダムがそう言うと、先輩の姿が変わっていった。その姿は、俺達が良く知る先輩の姿、ブラックゾーンの姿だった。
そして映像は続いた。
零の具現化である零龍との戦いなんて意味分からない概念バトルだったし、バロムって言う悪魔の神に至ってはもう何が何だか。
でも、一つ言えることがある。それは、どれもこれも英雄譚として残してもいいくらいのものだったってこと。
「こうして、惑星エンペギエルにやってくる悪を何度も倒した俺達だが……最悪のラスボスが来た」
そう言って映像を変えたドキンダム。そこに映っていたのはボロボロのドルマゲドンX。対するは先輩たちと先輩が関わって来た人達。皆が協力し合って、戦っていた。
ブラックゾーンとは違う姿の先輩がドルマゲドンXの前に浮かび、剣を構える。天使のような翼と光輪を携えた先輩がそこに凛として立っていた。
「レッドギラゾーン・アポロヌス。零龍を吸収して得た、愛の形態。一人では至れなかった姿だな」
アポロヌスが懐かしむようにそう言う。
『俺達の運命、ここで終わりにしよう!』
『行くぞ、ブラックゾーン!ユヅキ!零龍!』
『うん!』
『分かった!』
ダイチさん達の声が響き、剣を天高く掲げる。すると、一本の光が天を貫いた。それはまるで、ドギラゴンがブラックアウトの先輩に向けたような剣の輝きだった。
『『はぁああああああ!!』』
光の柱が振り下ろされ、ドルマゲドンXを切り伏せた。奴は爆発四散し、戦いの終わりを喜ぶ声が響く。
『やった!やったぞ!』
『やっぱりハッピーエンドじゃないと!ね、零龍?』
『うん!』
先輩のコクピット内ではダイチさんとユヅキさん、小さな零龍が喜んでいる。だが、先輩は一言も発さない。まるで、全てが終わったことへの解放感を感じるように。
すると、先輩の体が光の粒子に包まれ出した。
『ダイチ、ユヅキ。よく聞け』
『な、何だよ……』
『俺は、ドルマゲドンXに呪いをかけられていた。お前達にその呪いがかからないように、全部俺が背負っていた』
『な、何を言ってるの?』
ユヅキさんがそう言う。俺もよく分からない。呪い?何を言って……
『ちょっと無理しすぎたみたいでな。俺はこのまま死ぬ』
『は?』
『この体はお前達に残す。好きなように使え。そして、大切な人達を守れ』
『何言ってんだよ!お前もいないと!』
『そうだよ!私達だけじゃ……!』
先輩の言葉に縋るように悲痛な叫びを上げる二人。だが、先輩は続けていく。
『悪いな。俺にハッピーエンドは無理らしい。お前らに任せるわ』
そう言って、先輩を包む光の粒子が強く光った。そして、粒子は止む。
『ありがとう。俺には勿体ないくらいの、いい奴だったよ』
その言葉を残して、先輩は消えた。実際にどうなったかは目では分からない。でも、止まった光の粒子が先輩の命だってのは、俺にも分かった。
ダイチさん達の叫びも聞こえず、先輩は消える。
映像が暗くなった。真っ暗な空間に一つの光の玉が浮かんでいた。
何やら人型の存在が光の玉に近付いてきた。
『禁断の使徒であるレッドゾーンでありながら、禁断の支配から脱する。興味深いですね。新しい物語として、興味深い二次創作として続きを見せてもらいましょう』
「アポロヌス、こいつの正体知ってっか?」
「知らぬ。もしかすれば、上位存在かもしれぬな」
二人が知らない存在がそこにいる。それが物語だの何だのと言うと、浮かんでいた光の玉は渦に吸い込まれた。すると、映像が変わり、ブラックゾーンの先輩が空から落ちている映像に変わった。あの光の玉は、先輩だったのか。
『……んあ?ここは?』
先輩が体を見渡し、下の方を見る。そこには赤色と白色のドラゴンの形をしたものが動いていた。
「ってわけだ。こいつの眼前にあるのが何なのか、お前らは良く知っているはずだぜ?」
ドキンダムはそう言って三勢力トップを見渡す。サーゼクス様達が関係していて赤と白のドラゴン……
『あの時か……』
ドライグがそう呟く。そうそう!木場とかから聞いた先輩の話だ!ブラックゾーンと二天龍の伝説って奴!
俺が聞いたことを思い出していると、一つ叫び声が響いた。
『生きることを諦めるなぁあああ!!!』
気高い思いが響くと同時に映像は消え、部屋が明るくなった。と言うよりは元に戻ったって言った方が正しいか。時計を見ると、1分も経っていない。時間の流れがさっきの空間と現実で違うのか。
「はい、そう言う訳でこいつの過去を急ぎ足で見せた。まだ色々あるが、長くなるんでな。またの機会にしてくれ」
そう言ってドキンダムは光を発するのをやめた先輩の頭を叩く。すると先輩は立ち上がり、人間の姿に戻った。
「はぁ……吐き気がする……」
「だろうな。おい、お前の中に戻るがいいか?」
「いいぞ、お前ら」
「んじゃ、帰るか。ああそうだ。お前ら、俺らのことは内密にな。喋ったら殺す」
ドキンダムがそう言うと、ドキンダムとアポロヌスが光となって先輩の中に入っていった。この場には、会談に最初からいたメンバーだけになった。
何て言うか、言葉が見当たらない。俺、馬鹿だから分かんないけどさ、先輩って本当はとんでもない過酷な運命を走って来たんじゃないかな。しかも、それに対する同情すらも蹴り飛ばすようにして。
「何つーか、興味本位で覗くもんじゃなかったな」
アザゼルがそう言うと、サーゼクス様とミカエルさんが瞑目する。アザゼルの言う通り、『気になったから』で掘り出すような記憶じゃなかったと思う。でも、先輩は『見せてもいい』と判断したから見せたんだろう。
俺から見れば、余りに辛い過去だった。たくさんの別れがあって、気が付いたらこの世界に落ちてきて、元居た世界に帰る方法すらも分からない。そんな状況にいるのが岸波先輩だ。帰りたい気持ちもあるだろうに。
俺達が暗くなっていると、それとは対照に明るく振舞う先輩がいる。
「そんな気にすることでもないですよ。何なら、本にしましょうか?こんな俺の与太話で稼げるのであれば、それでもいいですけど?」
ず、随分気楽に言うなぁ……。先輩、俺達の気持ちを考えてくれよ……って言いたいけど、あれも先輩の空元気なのかなぁ……?だとしたら、不安にも思うんだけど……
何か、俺の周りって抱え込む奴多いな……木場だってそうだけど、零もそうだし、先輩までなんて……
周囲について考えていると、あごに手を当てて思案し出すサーゼクス様。
「本、か……」
「サーゼクスさん?」
「確かにそれはいい話だ。岸波君の過去についてもまだ語られていない部分もあるだろうし、そこを知りたいと僕は思う。それに、君の過去を知りたい悪魔が君の復活以来増加している。書籍化と言う形でいいのなら、ぜひともその話を進めてみたい」
「その話、堕天使側も一枚かんでいいか?こっちもこっちでエンタメは欲しいんだ」
「天界もですね」
「そうだな、これも一つの和平の形と言うことで実現してみよう。いいかな、岸波君?」
「わ、和平って言葉を持ち出すのはズルいですね。私の陳腐な過去で良ければ……記憶が崩れ落ちないうちに、話を進めてください。忘れっぽい人間なので……」
サーゼクス様達による先輩の過去の書籍化話が進んで行く。お、おぉ……俺も知りたいことはいっぱいあるし、確かにそれはいいかもしれない。
所で、先輩は何で汗をかいてらっしゃるのでしょうか?いや、それはそうだ。だって、あんだけつらい過去を見せてくれたんだ。先輩だって苦しいに決まっている。
それにしても書籍化か。最近、本を読んでなかったし、もう一度ラノベでも読み直して体が長時間本を読めるように慣らしておくか。
いや、その前に零と腹を割って話し合わないといけないな。
俺がそんな風に未来のことを思案していると、全身に変な感覚が走る。これは……ギャスパー!
イッセーside out
ダイチについてですが大地君は「せや、一回異世界転生していることにしたろ!ついでにそこで大地の名前をもらったことにして......ついでに兵藤も引っ張ったる!」程度にしか考えてないです。狂ってるよね。