知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
イッセーside in
俺の心に一つ、引っかかっている言葉がある。それはヴァーリの言った言葉だ。
「『弱者』……」
俺は思わずつぶやいてしまった。
分かってる。コカビエルの一件の時点で俺らが岸波先輩の足を引っ張っているのは事実だし、何ならフェニックス家とのことだって先輩がいなかったらどうにもならなかった。先輩に頼ってばかりなのは分かっていたんだ。
だけど、こうして現実を直視させられると、来るもんがあるな……
「ほう、兵藤一誠君は自覚しているってことか」
アザゼルがそう言う。その言い方にちょっとイラっとしてしまった。
「実際、お前らは岸波の傍にいていいような存在じゃない」
そう言うアザゼルから自虐じみたような感覚を感じた。でも、同時にその言葉は堕天使総督だからこその重みがあった。
「俺こと堕天使総督や現四大魔王、天使長と肩を並べるどころかその上にいるのが岸波だ。グレモリーの娘?今代の赤龍帝?歴代最強の白龍皇?その価値が俺らよりあるんだったら、あいつに並べるかもな」
その皮肉に、俺や部長は黙ってしまう。
「リアス・グレモリー。お前が岸波大地に惚れるのは自由だ。だがよ、お前があいつに惚れられるだけの価値があると思うなら、それこそお前の兄の顔に泥を塗ることになる。お前程度が並べる程、あいつはお前に近い存在じゃない。ガブリエルやセラフォルーくらい……それこそ片腕のなくなった俺くらい偉くなってからにすることだ」
「そ、それは……」
部長が岸波先輩に惚れているのは周知の事実だ。それを応援するのも、俺達の仕事だと木場達と考えていた。だからこそ、アザゼルが言ったことに結構ショックを受けた。
「フェニックス家との一件、聞いたぜ?思わず笑いが出たよ。あいつが俺達グリゴリとの約束を放棄してでも守ろうとしたのが、お前らなのかってな。こんなにも弱っちぃのが俺達よりもずっといいものだったのかって。だが、それがあいつの守りたかったもんなら仕方ねぇと納得も出来た。それだけあいつはいい奴だ。そしてそれに付け込んだ『悪魔』がお前らだ」
次々と刺される言葉の槍。もう何も言い返せない。まさしく『弱さは罪』を地で行っていた事実に、泣きたくなってくる。俺は、結局岸波先輩に何も出来ない所か奪ってばかりだったんだって、悲しくなってくる。
それと同時に、俺に渦巻いていた感情が一つのものになっていく。
その感情が、段々と澄み切ったものになっていく。次第に、視界も思考もクリーンになっていった。
『相棒?』
「なぁ、ドライグ。俺は弱いよな?」
『何を言ってんだ?』
「答えてくれ」
俺がそう言うと、少し間を開けてドライグは言った。
『ああ、弱い。歴代最弱だ。マジで取り柄が俺との適合率の高さくらいだな。戦いにおける強さに直結するものが、全部欠けている』
「……だよなぁ」
随分ぼろくそに言ってくれるな。でも、今の俺にはちょうどいい。目が覚めそうだ。
「俺は弱いさ。この神器に目覚める前からずっと先輩に世話になってて、何も返せてなくて、なのにまだ先輩から奪おうとしていて。嫌になるね」
俺の中にあった感情が一つになる。
「ああ、だから先輩は『生きて抗え』って言ったのか。なるほどな……納得だ!」
その感情の名は、『怒り』。
弱い俺自身への怒り。岸波先輩から全てを奪おうとしたヴァーリへの怒り。色んな怒りが渦巻き、捩じって交わって一つになった。
すると、俺の体を光が包む。気が付くと、
「今代の赤龍帝は変に才能があるな」
アザゼルがヒューと口笛を吹いてそう言う。
『相棒、お前……』
「悪いな、ドライグ。俺、こう言う馬鹿なんだ」
『……お前みたいな馬鹿には呆れるよ』
馬鹿言うな。事実陳列罪だぞ。
『それに、このままでは白いのが死ぬ。正直言って、非常に嫌だがあの状態のブラックゾーンを止めねば、また白いの探しをせねばならなくなるからな。折角俺達の悲願にたどり着けそうなのに、そんな面倒はごめんだ』
「悲願?」
そういや、こいつが目覚めた時にもそんなことを言っていたような……
『俺達二天龍の悲願。それは……ブラックゾーンを倒すことだ!』
「無理だろ。それこそ夢物語じゃねぇか」
『夢くらい見てもいいだろ!俺らだって最強になりたいの!』
呆れた……こいつの方が余程現実を見れていない馬鹿じゃねぇか。でも、その気持ちは何となく分かる。俺も、岸波先輩に依存するような『弱者』になりたくないしな。どうせ夢ならいい夢を見たい。例えば、おっぱいに囲まれる夢とか『これがいいんだよ』って言う食事を見つけることとか。そういや、先輩は後者のことを『人生のフルコース』とか言っていたな。
俺はアザゼルの方を見て言う。
「なぁ、アザゼル」
「なんだ?」
「ヴァーリって死んだら不味いよな?」
ヴァーリはさっき自分のことを『ルシファー』って言っていた。ルシファーなんて、俺でも知っている名前の悪魔だ。何ならサーゼクス様の名前でもある。知らないはずもない。
そんなヴァーリが死んだら不味いことくらい、新人悪魔の俺でも分かる。でもって、今そのヴァーリは岸波先輩によるじわじわとなぶり殺し√に入っている。これはいけないな。
そんな俺の考えをくみ取ってくれたのか、アザゼルは答えた。
「ああ、不味い。シンプルに俺の研究材料がまたどっかにいくのも迷惑だ。だが、あいつがルシファーである以上、死んだら悪魔側が政治面で面倒なことになるのは間違いない。岸波の奴がいちゃもんつけられて悪魔の敵にされる可能性だってあるかもな」
なるほどな、そう言う面もあるのか。政治って分からないな。公民の授業をもっとまじめに受けておくべきだった。
「じゃあ、ちょっとあの喧嘩止めてくるか」
そうは言うが、どうしたもんか。あの状態の岸波先輩は説得で何とかなるかもしれんが、ヴァーリの馬鹿は分からん。やっぱ殴り飛ばすか?そもそも事の発端はあいつだし。俺が先輩の代わりに殴るってのもありだな。
俺は弱い。正直、ヴァーリに敵うか分からん。だけど、ワンチャンくらいならあるだろう。それに賭ける。が、無策はまずいな。いっそ、真っすぐ行ってぶっ飛ばすか?
俺がどうしたものかと考えていると、空から玉が落ちて来た。見れば、ヴァーリが腕につけていたものにそっくりだ。ドライグ、これって……
『ああ、白いののだな』
一瞬の間を置いて俺の脳内に走る電流。
「なぁ、ドライグさんや。神器って所有者の想いに答えて自由自在に変化するんだよな?」
『自由自在って言うほどじゃないが、まぁ、ある程度なら変化するな。それがどうした?』
目の前にある宝玉はヴァーリの鎧にあったものだ。今、目の前で殴り合っているように見えているヴァーリの見た目は元通りだ。だから、この宝玉も勝手に塵になって消えるのは違いない。
けどよ、これも白龍皇の一部なら、その力を借りることだって出来るんじゃねぇのか?
「そっちにイメージを送るから、やってみてくれ」
強く、強くイメージをする。俺の思い描いたものをはっきりとさせるように。
『ッ!?お前、随分危険な橋を渡るな。こんなの今までになかったから、どうなるか分からんが……面白そうだ。一応聞いておく。死ぬ覚悟は出来ているな?』
「死ぬのはごめんだ。先輩に奢ってもらったエロ本、まだ読んでないし。でも、痛みくらいならなんてこたぁない!」
俺がそう言うと、高笑いするドライグ。普段の情けない姿とは打って変わった威厳ある様子で言う。
『久々にいい覚悟を見たぞ!いいだろう!ならば俺も覚悟を決めよう!とても正気の沙汰とはとても言えん!だが我は力の化身と呼ばれた龍の帝王!この程度何するものか!相棒、いや、兵藤一誠!ここを生きて超えるぞ!』
「応よっ!」
俺がそう言うと、ヴァーリと岸波先輩がこちらを向く。
「何をするつもりだ?」
「アァ?」
ヴァーリはともかくとして、今の状態の岸波先輩は怖いのでこっち見ないでほしいのが本音だが、聞いてくれないだろうな。じゃあ、俺は俺で勇気を振り絞ってやることやるか。
「
俺は右手の宝玉を叩き砕いて、そこにアルビオンの宝玉を入れた!
俺が出来るのは倍加だけ。だけど、こいつを使えば半減だって使えるはずだ!
正直、最初は無理だろうと思いもした。でも、木場の聖魔剣のように『相反する力の融合』ってのが可能な今なら、俺にだって出来ない道理はない!
力が欲しい!もっと力が欲しい!俺は心からそう願った。
俺の右手を白銀のオーラが包む。これが、宝玉の現象か?
神経の反射のような速さ。そんな痛みが俺の全身を走った。
「あっ!あぁあああっ!!あああああああああああ!!」
い、痛ぇ!すげー痛い!前に喰らった光の槍なんかと比じゃないくらいの痛みだ!
余りの痛みに、俺の思考がぶっ飛びかける。視界がぼやけて来た。
「まさか、俺の力を取り込むつもりか!?」
ヴァーリがなんか言っているが知ったこっちゃない。
『おい、ドライグ!いくら何でもそれは馬鹿がすぎるぞ!俺達は相反する存在だ。それは自滅行為他ならない!いくらヴァーリがあれだからと言って、それにお前が消滅する危険を冒してまで……!!』
アルビオンも慌てている。
「……」
岸波先輩は静かに俺を見守ってくれている。前までは『何で見ているだけなんだよ!』って逆ギレしてただろうけど、今の俺は違う。あの人の傍観が、俺を強くしてくれているんだ。
『お前なら出来る』って信じてくれてるんだ!なら、応えないと男じゃねぇ!!
『ぬぉおおおおおおおおお!!』
ドライグも苦悶の声を上げる。こいつも俺と同じ痛みを味わっているってことか。何だか、『ざまぁねぇな』って感じ。ドライグのせいで俺は死んだんだし、こいつはこいつで俺のことを散々馬鹿にしてくれたし、いい気味だってなっている自分がいる。
でも、一生ものの相棒だ。悪いが、俺も地獄まで付き合うぜ。
悲鳴を上げるドライグ。だが、その中でアルビオンを笑うような様子を見せる。
『アルビオン!随分老いたな!その頭の固さ、今代の赤龍帝に負ける要因になろうな!俺達は長きに渡って人に宿り、争い、高め合った!全てはブラックゾーンを超えるため!毎回毎回同じことの繰り返しだった!』
『いや、そうだけど!確かに俺達の能力の関係で、倍加と半減を相殺し合って、あとは所有者の地力勝負だったけどさ!今それ言うか!?』
アルビオンがそう言うが、意にも介さずドライグは言う。
『あいにく、今代の赤龍帝は馬鹿で弱い!歴代最強のお前に勝てる見込みなどない!だがな!学ぶことは多い!この宿主、兵藤一誠といて俺は知った!学んだ!再認識した!エロだろうが、どっかの阿呆への憧れだろうが、強い思いこそ最高の武器になると!どんな無理も馬鹿を貫けば可能の道筋を掴めるとな!』
馬鹿で悪かったな!どうせ俺には才能なんてないからな!努力と無茶をするしかねぇんだよ!
「俺の想いに答えろやぁああああああッ!」
『Vanishing Dragon Power is taken!!』
俺の右手が光に包まれる。純粋で恐ろしさすら感じる真っ白なオーラが右腕を包んだ。
光が止むと、そこには赤から白へと色を変えた俺の腕があった。
イッセーside out
うーん、不味い。イッセー君がうすしお味になりすぎたような気がする。いや、確実になりすぎている。