知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
イッセーside in
俺の右腕は、赤い籠手から白い籠手になった。
「ひっひっひっ……
我ながら邪悪な笑いが出てしまった。
改めて俺の右腕を見る。肘から先だけが真っ白で、随分違和感があると言うか不格好と言うか。
『や、やりやがった!あの馬鹿、やりやがった!』
アルビオンもひどく狼狽している。
「相反する力ぁ?だからなんだ。うちの『騎士』も聖魔剣が出来たんだ、俺にも出来るはずだろ?」
『だが、それは机上の空論だ!俺達ドラゴンの力となれば、死んでもおかしくない!いや、それが普通なんだぞ!?』
俺のやけっぱちに思える行動をいまだに信じたくない様子のアルビオン。悪いな、それを実行したのが俺なんだ。
「しぶとさだけは天才でな。いわゆる、往生際の悪さが売りなのが俺なんだよ」
俺の言葉に、ドライグが呆れた様子で言った。
『だが、確実に寿命を縮めることとなった。いくら悪魔が永遠に近い命とは言えだな……』
「あー、別にいいだろ。俺、万年も生きるつもりないし。千年くらいでいいかな?」
どうせなら派手に生きてサクッと死にたいって思う。
そんな中で拍手する音が。
「ブラボー、かな?まさか、
随分上から目線なことだ。まぁ、こいつが悪魔の王様の血統だからって言われたら、それ以上何も言えないんだけどさ!
俺は岸波先輩の方を見る。真っ黒のオーラを少しずつ消していき、さっきまで見ていた先輩の姿に戻っていく。
「先輩、あんたがヴァーリを殺すと面倒なことになります。だから、俺がこいつを死なない程度にぶん殴ります。そいつの相手、俺に譲ってください」
「兵藤……」
「俺のわがまま、聞いてください。頼みます」
俺は一歩一歩足を進め、ヴァーリに近付く。全身に程よい緊張を感じる。
それを確認した岸波先輩はヴァーリを一瞥して俺と入れ替わるように後方へと下がった。
相手のヴァーリは格上だ。勝つのは無茶に近い。ただ、一発入れて全てを終わらせるってならいけるかもしれない。だって、俺は『弱い』から。だからヴァーリは俺を舐めている。『油断』している。そこを突く。フェニックスの時のように。
今度は、ぜってーヘマはしない。
俺はヴァーリと一定距離の所で足を止めた。静寂が俺らを包む。遠くでは爆発音が鳴り響いている。魔術師たちと皆が戦闘しているんだろう。
深呼吸を一つ。
瞬間、俺とヴァーリは全身からドラゴンのオーラを放った。遠くからガラスの割れる音がした。学校を壊しちゃったよ。まぁ、そこはアザゼルとか部長に何とかしてもらおう。
「俺と戦いになるかな?」
「ぶっ潰す!」
俺とヴァーリは一気に空中に上がった。空にあった雲が真っ二つに割れて、満月が姿を現していた。悪いが、今は見惚れている暇はないんだ!
一定の高さまで飛ぶと、ヴァーリがこっちに突っ込んできた。何だか、遅く感じる。ハイって奴なのかな?きっとそれに俺はなっている。
弱い自分は嫌だ。自分の身さえ守れなくて、誰かを傷つけるくらいなら死んだ方がマシだ。でも、岸波先輩はそれを望んでない。だから、フェニックスの時も全部を擲ってくれた。
恥だ。恥以外何でもない。岸波先輩がどれだけ平穏を望んでいたのか、先輩のあんな悲惨で報われない過去を見せられたらいやでも分かる。それを知らなかったからと言って、先輩にまた戦わせて、依存するのは恥以外何でもない。誰よりも優しくてかっこいい男を、これ以上傷つけさせたくない。
だから、俺は戦う。戦って、生きて勝ってみせる。岸波先輩や零みたいに俺のせいで悲しむ誰かを生まないためにも!
でも、俺達が止めても先輩はきっと戦うんだろうなぁ。それはもう仕方ないって割り切るしかないのかなぁ。いや、それは何か嫌だ。そこは俺達の実力で安心させて引っ込んでいてもらおう。出来る限り、近い未来で。
それよりも、今はこの怒りをあの
飛び出してきたヴァーリの横腹を俺は思いっきり蹴り飛ばす。
「こいつッ!?」
岸波先輩の過去を見ておいて、まだ奪おうとするこいつだけは許しておけねぇ。こんな情けない俺の為に色々してくれた先輩を悲しませようってなら、俺はこいつをぶん殴る!
脳裏に先輩との思い出がよぎる。
―「あ?お前、四条の知り合いか?」
中学の時の出会い。
『Divid!!』
ヴァーリの腹に右拳をぶち込む。奴に触れると同時に白龍皇の半減の力が発動する。
「ごはっ!」
ヴァーリはオーラを半減させて吐しゃ物をぶちまける。俺はそんなヴァーリを気にせず更に追い打ちをかける。
―「お前ら、どんだけ女に飢えているんだよ……」
エロ本で満たされていた俺と零を見て、呆れるようにしている岸波先輩。
「っしゃおらっ!!」
ヴァーリの顔面に一発入れる。兜が音を立てて砕け散った。いけ好かない顔が焦り混じりのものとなっているのが良く見える。
―「駒王に行きたいぃ?……ったく、しゃーねぇ。勉強くらい教えてやる」
俺と零がエロ目的だけじゃなくて、先輩の背を追って駒王学園への受験を決めた時に散々世話になった中3。
「いっぱぁあああつッ!!」
光の翼を出している噴出口をぶっ叩いて壊す。ヴァーリの焦りが本格的になっていくのが分かる。
―「入学おめでとう、馬鹿共が。また俺の後輩になるなんてな。……ラーメン食いに行くぞ。俺の奢りでいい。先輩らしいことさせろよ?」
俺と零が無事駒王学園に入学出来たことを喜んでくれ、祝ってくれたあの日。
全部大切な思い出だ。俺は、あの時の優しい先輩を失いたくない!失って、たまるかぁああああああ!!!
「これで最後じゃボケぇええええ!!」
俺は猛スピードで両足を揃えたキックを決める。
「ガッ!」
俺のキックを受けて吐血するヴァーリ。奴はそのまま地面に叩きつけられた。
俺はヴァーリに近付く。
「調子に乗んな!てめぇが歴代最強なら、歴代最弱にここまでやられた時点で嘘偽りの最強なんだよ、半分野郎!」
俺の知っている最強は、太陽だからな!お前みたいなLED電球とは訳が違うんだよ!
怒りが収まらない俺に対し、ヴァーリは嬉々とした様子で笑っている。き、気持ち悪い!怒りが冷めそうなくらい、不快感を感じる!
「面白い、面白いなぁ……」
『ヴァーリ、奴の
「なるほどな。なら、もう怖くない。このまま嘘偽りの最強であるのも癪だしな」
くっっっそ!これが天才って奴かよ!あんだけ痛い思いをしたってのに、こうも簡単に追い付くか!
「アルビオン、今の兵藤一誠になら
『やっ!やっ!!』
「……そうか」
アルビオンがまた小さくて可哀そうな奴になる。何やらジャガーマンだのなんだの言っているが知ったこっちゃない!こいつを気絶させて、サーゼクス様に突きだしてやる!その後、岸波先輩の前で土下座させてやる!
俺はヴァーリにとどめを刺そうと一撃分のパワーを溜める。
その時、夜空の方に気配を感じた。月をバックに俺達の所に降りてくる人影。すげー速さだ。でも、先輩と比べるまでもない速さ。あの人が規格外ってのはあるけど。
そいつはまるで三国志の武将が着こんでいるような中国風の鎧を見に纏っている男だった。
「そこまでにしておくべきって奴だぜぃ、ヴァーリ。迎えだぜぃ」
随分ヴァーリに気軽に話しかける男。ヴァーリは口元の血を拭って立ち上がる。
「美猴、何の用だ?これから面白くなりそうなんだが?」
「ひでぇ言いようだぜぃ。相方がピンチだって言うから、遠路はるばる駆けつけたってのによぉ?……他の連中が本部で騒いでいるぜぃ?北のアース神族とやり合うのに任務を失敗したなら、さっさと帰ってこいってよ?カテレアはミカエル、アザゼル、ルシファーの暗殺に失敗したんだろう?なら、監察役のお前のお仕事も終わりってこと。俺っちと一緒に帰るのが賢明って奴だぜぃ?」
「なるほど……もうそんな時間か」
何か突然現れて勝手に話を進めている。何だよ、お前ら。
「お前、誰?」
俺がそう訊くと、後ろから来ていたアザゼルが答えた。
「闘戦勝仏の末裔だ?」
「とーせんしょーふつ?」
俺が首をかしげていると、アザゼルが更に言う。
「無知なお前でも一発で分かる言い方をしてやる。……奴は孫悟空、西遊記のクソ猿の力を受け継いだ猿の妖怪だよ」
なるほどな、孫悟空。
「はぁあああ?!!」
思わず怒りが吹っ飛ぶ。え、そんなファンタジーのキャラクターの関係者がいるの?!いや、俺も悪魔だからファンタジーだし、何なら岸波先輩なんて大大大ファンタジーだけどさ!?
「しっかし、まさかお前まで
アザゼルの言葉に、孫悟空はこの状況を楽しむようにケタケタと笑う。
「俺っちは仏になった初代様とは違うんだぜぃ。自由気まま、風のように生きるのさ。俺っちは美猴。以後よろしくだぜぃ、赤龍帝」
敵同士だってのに、随分気軽に挨拶をしてくる孫悟空。俺、この世界がよく分かんないよ。
孫悟空……いや、美猴は棍を手元に出現させると、クルクルと器用に回して、地面に突き立てた。
その瞬間だった。地面に黒い闇が広がった。それは美猴とヴァーリを捉えると、その姿を飲み込んでいく。もしかして、逃げるつもりか?だとしたら、不味いんじゃね?
「まっ?!逃がすか!」
俺が奴らを追おうとすると、カッと全身が光り、神器が解除される。全身を覆っていた鎧はなくなり、手助けしてくれていたリングも砕け散った。
強すぎる疲労が俺を襲う。立つのもやっとな状態だ。拳も満足に握れねぇ……!
クソっ!ヴァーリをぶっ飛ばすって言った手前でこんなことになるなんて!ヴァーリの奴なんて、まだ鎧姿だってのに!
「あんだけの力を一気に解放したんだ。そりゃ、体力やら何やらも空っぽになるさ。今のお前じゃ、貯蔵にも限界がある。長時間の戦闘は無理だな」
アザゼルが非情な現実を突きつける。これが、才能かよ……!
いや、まだだ。俺はまだ禁手になれるようになったばかりだ。俺が頑張れば、ヴァーリの奴を越えられるのは分かった。あとは、長時間戦えるようになる。それが、俺の目標か。まだ伸びしろはある。俺はそう信じる!
「旧魔王ルシファーの血族ので白龍皇の俺は忙しいんでな。敵は天使、堕天使、悪魔だけじゃない。色々いる。いずれ、再び戦うことは確実だ。その時は、もっと全力で暴れよう。それまでに、お互いに強くな……」
何かを言いかけて、ヴァーリは美猴と共に闇へと消えていった。
戦いは、不完全燃焼ながら終わった。
イッセーside out
うちのイッセー君はちゃんとエロ野郎なんです!信じてください!