知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
自分より若い奴にぶちぎれる。情けないね。実に情けない。でも、家族をコケにしやがったんだから、当然のことだ。
ヴァーリをおもちゃにして心をボッキボキに折ろうとした俺だったが、兵藤の奴が俺にストップをかけた。後でアザゼルさんに聞いたが、ヴァーリの野郎が死ぬと俺が悪魔に戦争を仕掛けられるかもしれないらしい。
うーん、それは嫌だ。事情はよく知らんが、流石に悪魔と全面戦争するつもりはない。いくら何でもそれはサーゼクスさんとセラフォルーさんに迷惑がかかるからな。
俺は冷静になり、兵藤とヴァーリの戦いを見届けた。あいつ、短時間とは言えども最強を越えていた。神器は意思で加減が変わるらしいから、あいつの熱血に応えた結果なんだろうな。とてもいいものを見せてもらったよ。
ただ、ヴァーリには逃げられたけどな!野郎、次はぶっ殺してやる。
そんなわけで、皆と合流するために校庭まで足を運んだ。そこではセラフォルーさんやミカエルさん達が指示を飛ばしていた。
俺らが校庭に足を踏み入れると、こちらに気付いたサーゼクスさん。
「皆無事だったか……アザゼル、その腕は?」
片腕になったアザゼルさんを見て眉間にしわを寄せるサーゼクスさん。それを見て飄々としながらアザゼルさんは言う。
「何、ヴァーリと空中でボカンボカンしてたらこのザマだ」
なくなった腕を振るアザゼルさん。サーゼクスさんは近くにいたアーシアに視線を向けると、彼女は頷いてアザゼルさんの腕を治し始めた。
彼女の神器はすごい性能なのは確かだ。だが、欠損した腕まで元通りには出来ないのか、止血だけに収まっていた。
「そうか。……此度の騒ぎ、悪魔側に非があった。その腕に関してもだ。それについては……」
真面目なサーゼクスさん、何かしらの償いをしようとするが、そんなことは知らぬ態度のアザゼルさん。
「別にいいさ。こっちもこっちでヴァーリの馬鹿がやらかした。……あいつは行ったよ」
「そうか……白龍皇でルシファーの血族が裏切ったか……」
「元より力にしか興味のないような奴だった。結果だけなら『仕方ないね』の寛容さえ可能だ。……だが、それを知っていながら未然に防ぐことが出来なかったのは俺の失態だ」
その瞳にあるのは、怒りと言うよりは寂しさに思えた。
そんな暗い雰囲気のトップ二人の間に入るのはミカエルさん。
「さて、私は一度天界に戻りましょう。和平の件と
「ミカエル、申し訳ない。今回このようなことになったこと、会談をセッティングした我々として不甲斐なく思う」
「いいのですよ。これで無益な争いが減り、平和への道を歩めると言うのであれば。そう責任を感じることもないですよ?」
「ま、納得できん連中も出るだろうがな」
ミカエルさんとサーゼクスさんの言葉に、そう皮肉を言うアザゼルさん。
「それは仕方ありません。どれだけの間、我々が憎み合ってきたのかと言う話になりますので。しかし、これから変わっていきます。少しずつでも。問題は、それを良しとしない『禍の団』ですが」
「それについては連携を取って話し合おう」
いがみ合う者達が手を取り、未来へ進もうと過去の因縁から立ち上がろうとする。強いな、この光景。輝いて見える。
「『未来は、変えることができる』」
俺がそう呟くと、トップの皆さんがこちらを向いた。
「『良いようにも、悪いようにも。それを成すのは、君達だ』」
「岸波君……」
「今の人間界では、専ら特撮ヒーローの名言なのですが……それでも、あの時の言葉がここにあるようで、うれしく思えたんです」
そう言うと、嬉しそうにクスクスと笑うトップたち。そんな中で、足音が一つ。
そちらの方に向くと、バルガさんと寿水さんがいた。
「懐かしい言葉だ。我々もその言葉に救われたから、よく覚えているよ」
「バルガ」
「サーゼクス、我々はそろそろ帰ろう。私も暇と言う訳でもないからな。話せることは話した。あとは、お互いゆっくりやっていこう、サーゼクス。最上」
「それじゃあね、大地ちゃん!」
そう言うと、二人は魔方陣の光に包まれる。
「岸波大地君。近いうちに波乱も起きるだろう。その時、我々は必ず君の味方となる。覚えていてくれ」
バルガさんはそう言い残すと、光に包まれ、消えた。
味方か。寿水さんもいるし、これ以上にないくらいの味方だな。
「結局、あいつは何もしゃべらなかったな」
「彼はそんなものさ」
アザゼルさんとサーゼクスさんがそう言う。アザゼルさんはともかくとして、サーゼクスさんは妙にうれしそうな笑顔だ。
「さて、それでは私は一度天界に帰ります。すぐに戻りますので、その時に正式に和平協定を結びましょう」
そう言って飛び立とうとするミカエルさん。それを呼び止める声が一つ。
「す、すいません、ミカエルさん!」
その声の主は兵藤の奴だった。何か用があるのか?俺は良く知らんけど……。
「何ですか、赤龍帝の少年?」
「一つお願いがあります」
「そうですね……時間もありませんし、手短であれば」
ミカエルさんがそう言うと、兵藤は言った。
「ゼノヴィアが神への祈りでダメージを受けるのは『システム』が原因ですよね?」
そう兵藤が言うと、頷いたミカエルさん。
「そうですね。神の不在に関わらず『システム』に組み込まれたものです。それがどうしました?」
「ゼノヴィアが祈りを捧げる分だけでもダメージを無しに出来ませんか?それと、アーシアも祈っても特に問題がないようにしてもらうとかもできますかね?」
ああ、なるほど。そういや、ゼノヴィアさんが祈っては悶絶していたのを俺らは見ていたわけだが、それを可哀そうに思ったのか。
アーシアもアーシアで異端扱いされているわけだから、何かしらの飛び火が来るかもしれないしな。
そんな兵藤の願いを聞いて驚くミカエルさん。ゼノヴィアさんとアーシアも驚いている。
そんな二人を見て、ミカエルさんは微笑んだ。
「そうですね。二人分くらいならどうにかなるかもしれません。ゼノヴィアは悪魔でアーシアは異端。ですが、どちらも教会本部に近付くことはないでしょう。一応、二人に問います。神は不在です。この事実は覆ることはないです。それでも、あなた達は祈りを捧げますか?」
ミカエルさんが二人にそう訊くと、二人は頷いた。
「はい、主がいなくとも祈りを捧げたいです」
「同じく。主への感謝を、ミカエル様達天使様方に捧げる為に」
二人の答えに嬉しそうにするミカエルさん。
「分かりました。本部に帰ったら、早速そうしましょう。それにしても、祈りを捧げてもダメージを受けない悪魔に、誰よりも信心深い異端者ですか……面白いですね。これも和平の一つの形ですか」
そう言うと、喜び合う3人。アーシアとて特に問題はなかったはずだが、それでもどこか心残りがあったんだろうな。
ありがとうな、兵藤。
その後、木場が何やらミカエルさんと聖魔剣で約束をしていた。あいつの過去についてのこともあったので、そこまで詮索はしないが、それでもあいつもあいつで前に進めそうで何よりだ。
「ミカエル、ヴァルハラの連中にはお前がちゃんと説明しておけよ。下手にオーディンに動かれても迷惑だしな。あつ、須弥山にも言っておかないと面倒になるのは違いない」
「ええ、堕天使総督と魔王が報告をしても説得力がないでしょうから、私がやっておきます。これでも神への報告は慣れていますので」
アザゼルさんとミカエルさんがそう言い合っていると、ガブリエルさんがこちらに近付いてきた。
「ガブリエルさん?」
「大地さん……」
何やら妙に熱っぽさを感じる視線を受けていると、突然ガブリエルさんに抱きしめられた。
おっぱい!
「えっと……ガブリエルさん?」
俺が呆気に取られていると、ガブリエルさんは言う。
「私一人では、あなたの孤独は癒せないでしょう」
「何を言って……」
「それでも、私はあなたの味方であることは出来ます」
そう言うと、離れるガブリエルさん。その頬は、ちょっと赤く染まっている。
ハッキリ言うと、おっぱいが名残惜しい。
「ミカエル、行きましょう」
「何であなたはそれで『堕ちる』ことがないのか不思議です……」
そう言うと、飛び去っていくミカエルさんとガブリエルさん。それに続く天使の皆さん。何やらこちらに視線を感じるが、まぁこんな俺がガブリエルさんと近いのが気に入らんとかだろ。ごめん。
アザゼルさんもアザゼルさんで堕天使の軍勢を前に言い放った。
「俺は和平を選ぶ。それは堕天使が今後一切天使と悪魔とは争わないことを意味する。不服な奴は去っていい。だが、次に会うと時は遠慮なく殺す!それでもついてきたいと言う奴だけ、俺についてこい!」
『我らが命、滅びのその時までアザゼル総督の為にッッ!』
怒号となって放たれる堕天使の皆さんの忠義。こんな形で見ることになるなんてな。すげーな……
アザゼルさんもアザゼルさんでボソッと「ありがとよ」と言っている。この人、本当にこの和平を望んでいたんだなって思う。だから、こうして部下たちの忠義が見れたことがうれしかったんだろうな。
アザゼルさんは指示を出すと、堕天使は魔方陣を展開して帰っていく。あ、そうだ。帰る前に一つ言うことがあったんだ。
「朝倉さん!」
俺は朝倉さんに声をかける。俺の声を受けてこちらを向く朝倉さん。
「また今度暇な時でいいんで、一緒にコーヒーでも飲みましょう!」
そう言うと、彼女は驚いた様子を見せてから、笑顔でうなずいた。よし、約束を付けられた。前にも同じような約束をしたが、きっと忘れていただろうからな。俺だけ一人相撲するのも癪だし、彼女には俺と一緒にコーヒーを飲んでもらおう。
「岸波」
「何でしょう?」
「お前になら、和泉を任せられる」
「?」
アザゼルさんに何かよく分かんないことを言われる俺。任せる?なんのことやら。
堕天使と一緒に悪魔も魔方陣に包まれて移動していく。気が付いたら、残るのはグレモリー一派と魔王様方、アザゼルさんと俺らだけだ。
堕天使でただ一人残ったアザゼルさん。大きく息を吐いたと思うと、校門の方へと去っていく。
「疲れた。俺は帰るぞ。後片付けはサーゼクスに任せるわ」
手を振って帰ろうとするが、足を止めて『それと』と言って、こちらに振り向く。
「赤龍帝。俺は当分ここにいるつもりだ。そっちのリアス・グレモリーの『僧侶』込みで世話してやる。制御出来ていないレア神器なんてむかつくからな」
「え?」
アザゼルさんがそう言い残すと、口笛を吹きながら去っていった。
行ってしまった。この場に残される我々。さっきまでの騒がしい感じがなくなると、『本当に終わったんだな』って実感する。
「さて、我々も行こうか……と言いたいが」
サーゼクスさんが何やらまだ用事がある様子だ。さっきアザゼルさんに言われた後片付けか?
「グレイフィア」
「承知しました」
サーゼクスさんがグレイフィアさんに指示を飛ばす。すると、グレイフィアさんが箱を持ち出して、俺の前に立った。
「こちらをどうぞ」
「あぁ、はい」
俺はそのまま受け取ってしまった。え、何これ?
いそいそと下がるグレイフィアさん。俺が助けを求めるようにサーゼクスさんを見るが、ほほ笑んでいる。
「さぁ」
うーん、よく分からんが開けてみるか。
俺は箱をぱかっと開けた。その中にあったのはチェスの駒のセットだった。ただ、普通の駒じゃない。一人用のセットであり、これ一つで対戦できるようなものではない。駒の一つ一つが妙に意匠が凝っている。
それに、妙な気配も感じる。
――『これ、『悪魔の駒』ダムね』
何だって?
「これは『悪魔の駒』だよ」
サーゼクスさんがそう言う。それが確証となった。俺は今、転生道具を持っている。
何で、これを俺に?一体何の用でだ?
Side out
さぁ、出ました問題のグッズ。今後どうなっていくのか楽しみですね(他人事)