知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
旅立ちの日が来た。家族には『しばらく海外で合宿がてら英語力を鍛えてきます』と言ってある。両親は俺を快く見送ってくれたのだが、遥輝が今にもぐずりそうになっていたのは見ていてつらかった。
でも、ぐずらなかったのはあの子の成長なんだって実感した。うれしかったけど悲しいよ、にぃには。昔みたいにもっとくっついてきていいのよ?
寿水さんにも『しばらく冥界に行きます』と連絡したからすれ違いとかの問題は大丈夫。黒歌も『指名手配関係で後から冥界に行くわ』とか言っていたので特に問題もないだろう。
恰好は制服。これが正装にもなるそう。便利やな。
そんなわけで俺らの合宿が始まる。まず俺達が出向いたのは最寄り駅だった。四条や兵藤と遠くに遊びに行く時に使う奴。四条と秋葉原のゲーセンで遊ぶ時に使う奴。何でここなんだろう?
俺が疑問に思っていると、早速リアスが行動を起こした。朱乃と一緒にエレベーターの方へと足を運んだ。確か、そのエレベーターってそんなに人数が乗れなかったタイプの奴だな。
「それじゃあ、まずイッセーとゼノヴィア、小猫が来て頂戴。先に降りるわ」
「お、降りる?」
兵藤が俺の疑問を言ってくれた。降りるって、何を馬鹿なことをおっしゃられているのだ、このお嬢さんは。このエレベーターはここからだと上りだけやぞ。
俺、とアーシアも頭上に『?』を浮かべていると、リアスに名を呼ばれた者達がエレベーターに入っていく。
「慣れている祐斗はあとからアザゼルと一緒に来て頂戴」
「はい、部長」
木場がそう返事をすると、エレベーターの扉が閉まる。ガラスの隙間から中の様子が見える。兵藤とゼノヴィアさんがちょっと動揺しているのが見える。
リアスの降りる発言がどう言うことなのか分からないままでいると、エレベーターが動き出した。
下に。
本当に降りた。下方向にエレベーターが動いた。
「……木場、あれ、どういうことだ?」
俺が木場にそう訊くと、笑顔で答えた。
「この駅の地下に秘密の階層があるんです。悪魔専用のルートで、そこで列車に乗って冥界に行くんですよ。普通の人間にはたどり着けないように工夫もされているんです」
「そんなことが……まさかとは思うが、他にもあるのか?こんな感じの場所が?」
「ええ、ありますよ。駒王町にはこう言った悪魔関係の場所が結構多いんです」
ふぁー!この世界ってほんとオカルト!何が『オカルト研究部』だ、『オカルトそのもの部』に改名しろ!
――『お前が一番のオカルト定期』
そもそも禁断ってオカルト判定なの、ドキンダム?
――『そりゃお前、オカルトだろうよ。あと、禁断っつーよりも、おめーの鈍感の方がオカルトって意味だ』
なるほどな、どういうことだろうな?
――『はい、他2名集合。こいつ〆ていいか?』
――『異議なし』
――『女神としては禁断王の意見に同意である』
いだだだだだだ!!!急に頭痛がしてきたぞ!!?
――『少しは反省しろ』
どういう事かさっぱりなのだが……!
ドキンダムに苦しめられていると、エレベーターが戻って来たので、残りの皆と一緒にエレベーターに乗り込み、下へと降りた。
そこに広がる空間。いかにも人工物って感じだ。先に行った5人も待っている。
「全員揃ったわね。それじゃあ、三番ホームまで歩くわよ」
うちの部長様に先導されて俺達は歩いた。
しかし、何と言うか……広いな。ここまで広いと、田舎から上京してきた感覚に襲われるな。足音も綺麗に響く。
「音がよく響くな、ここは」
「でしたら、ここで告白でもしてみますか?」
ふと呟くと、気が付いたら隣にいた朱乃がそう言う。ここ最近俺をからかってないのからか、からかい不足かな?残念だが、それで動揺するほど、俺は弱くないはずだ。
「俺、そう言うのはムードとか大切にしたいからな。それに、こんな大勢の前で告白なんてしてみろ。相手に拒否と言う退路を断って迫っている最低男になっちまう」
「あら、それは残念ですわね」
何が残念なのだろうか。あれか、俺が童貞むき出しムーブをするかと思っていたのか。それこそ残念だな。俺は童貞だが、鍛えられた童貞なんだ。
「見ろ、イッセー。あれがお前の目指す場所だ」
「はい、アザゼル先生……!」
リアスに先導され、通路を歩いていると開けた所に出た。そこには列車が止まっていた。どうやら、ここが三番ホームって奴らしい。
列車の側面には模様が描かれている。何だろう、どこかで見たことがあるような……。
「ぶ、部長、これって……」
兵藤がそう言うと、笑顔でリアスは言う。
「グレモリー家所有の列車よ」
ああ、そうか。確かこれがグレモリー家の家紋でこっちがサーゼクスさんの紋様だったな。リアスから教わったな。
……待て、今家が所有しているって言った?マ?君、列車を持ってるの?そんな貴族みたいなことを……そういや貴族だったわ、リアス。
俺と兵藤がスケールの違いに圧倒されていると、自動ドアが開く。おお、乗れってことか。それじゃあ、お邪魔します。
○○○
ってなわけで、乗車完了。今は電車に揺られながらPC作業をしている。隣にはアーシアが座っており、俺にべったりとくっついている。
「えへへ、今だけはダイチさんを一人占めです……!」
何やら幸せそうだ。君がハッピーなら俺は結構だけど、タイピング音がうるさくないかなぁ、なんて心配になる。
列車に乗った我々だが、等級的なもんがあり、客人である俺とアーシアは最後尾の車両に乗ることとなった。リアスは当然ながら先頭車両だ。
先ほど車掌さんのレイナルドさんと言う方も来て、本人確認をしていた。まぁ、俺ら人間だしな。言ってしまえば『何するか分からん連中』だし。ラヴィニアの時のグリゴリ訪問とは話が違う。
その上、この列車にはVIPがいるんだ、厳重な検査はするさ。とは言うが、何かの機械でサクッと終わったし、その辺の技術力には驚かされる。
あと、レイナルドさんにサインをねだられた。俺なんかでいいのならとは思ったが、本当に俺なんかでいいのだろうか。確かに、俺はブラックゾーンで有名人だが……うーん……。
今後も課題になるであろうブラックゾーンとの付き合い方を考えていると、アナウンスが入った。
『まもなく次元の壁を突破します。まもなく次元の壁を突破します』
レイナルドさんの声だ。
俺は窓越しに外を見る。先ほどまで黒一色だったので、余り気にしていなかった外の光景が変わった。
紫色の空に山。山はともかくとして、空の色に目を奪われる。何と言うか、すごいファンタジー世界。
「すごい……!すごいです!」
隣のアーシアも興奮している。確かにすごい。ここまで壮大な景色は中々お目にかかれることはない。かく言う俺も人前でなければ、あたおかテンションではしゃいでいただろう。思わず作業の手を止めてしまうくらいには目を奪われる。
そういや、前にリアスが言っていたが、グレモリー領ってのは日本の本州くらいの大きさらしい。ただ、そんだけ広いと手付かずの場所も広く、殆どが森林や山だとか。
冥界には海がない故に、土地の規模も人間界とは比じゃない。ほんと、俺のスケールが違いすぎて泣けてくる。スケールが違いすぎてディルガベジーダになるわね。
それから作業を再び開始する……気にもならなかったので、アーシアと楽しくお話をし、十数分揺られていると、またアナウンスが入る。
『まもなく、グレモリー本邸前。まもなく、グレモリー本邸前。皆様、ご乗車ありがとうございました』
おお、どうやら目的地に到着のようだ。しかし、冥界か。ちょっと心が躍っている。一体どんな感じなのか楽しみだぜ。
所で、前方にいる兵士たちやメイドさん達はまさかグレモリー家おかかえの方々っすかね?だとしたらすげー規模だな。つくづくリアスがお嬢様だって実感させられる。俺なんかじゃ釣り合わねーよ。
俺はPCを片付ける。
「さて、アーシア。前に行こうか」
「はい!」
俺達は荷物をまとめる。リアスが言っていたが、あとで係の人が持ってきてくれるそうだ。
前方車両へと足を運ぶとそこでは、皆荷物をまとめていた。
「あれ、アザゼル先生は?」
兵藤が座ったままのアザゼル先生にそう言う。何やってんだろう、あの人。降りないのか?または手ぶらか。
「俺はこのまま魔王領まで行く。サーゼクスさんとのお仕事があるんでな。終わったらグレモリーの本邸に向かうから、先に行って挨拶してこい」
あら、そうなのね。そういや、サーゼクスさんと会談があるとか何とか言っていたな。それなら仕方ない。がんばって下さい、アザゼル先生。
「じゃあ、また後で。先生」
「お兄様によろしくね、アザゼル」
兵藤とリアスがそう言うと、アザゼル先生は手を振って応えた。
アザゼル先生を除いた他の皆が駅のホームへと降りていく。そういや、今日が四条たちも冥界入りしているんだっけ?今頃ディハウザーさんにお世話になっているだろうな。お土産でも持って行くか。
『リアスお嬢様、おかえりなさいませっ!』
うぉ!?外から怒号みたいな声が!?びっくりしたな!
驚く俺を余所に花火が上がり、空砲が響く。しかも音楽まで響いてきた。窓から外を見ると、空には何やら変な生物がとんでおり、それに兵士が跨って旗を振っている。お、おお……これが本物貴族って奴か……。
「だ、ダイチさん……」
余りに現実離れした光景だったせいか、不安になったらしいアーシア。うん、俺も今すぐ君に抱き着きたいほど怖いよ。
「大丈夫」
でも、俺男の子だし、意地張るしかないんだよな。とりあえず、アーシアの手を握っておこ。
『リアスお嬢様、おかえりなさいませ』
気が付いたら外に出ていたリアス。そんな彼女に頭を下げるのは執事さんやメイドさんたち。わぁ、すげぇ……。マジで、何で俺がここにいるんだよ。
電車の中に残っているのは俺とアーシア。それとアザゼル先生。先生は降りないので、俺らだけが取り残されたことになっている。
それじゃあ、気が乗らないし今も胃がキリキリしてしょうがないけど外に出よう。
俺は一歩外に踏み出す。さっきまで車内にいたからか、外の空気が妙に美味しく感じる。うーん、いい気分だ。それをマイナスにするほどに緊張とかがあるけど。
さて、その緊張の理由である皆様はと言うと……何かざわざわしている。俺、賭博しているわけじゃないんだけど。
「リアス?もしかして、俺って歓迎されてないパターン?」
俺がそう言うと、嘆息するリアス。
「違うわ。ちょっと緊張しているの。あなたは腐ってもお兄様の大恩人なのよ?そんな相手を無下にするほど落ちてはいないわよ」
そう言うと、リアスは手を叩いて皆の注目を集める。
「皆、英雄様が困っているわよ」
『申し訳ございません!』
一斉に頭を下げられる。そんな身分じゃないんですけどね……どうしたもんか。
俺が悩んでいると、一人の女性が前に出て来た。グレイフィアさんだ。
「おかえりなさいませ、お嬢様。お早いお着きでしたね。道中ご無事で何よりです。さぁ、眷属の皆様も客人であるお二方も馬車へお乗りください。本邸までこれで移動します」
グレイフィアさんに誘導されて行った場所には随分金のかかった馬車があった。それを引くであろう馬は随分デカい。サラブレッドとは違う品種だ。
列車の方を見ると、メイドさん達が俺らの荷物をまとめている。お仕事お疲れ様です。
「私は下僕と、ダイチ達と一緒に行くわ。イッセーとアーシアはこう言った場には慣れてないでしょうから、不安だと思うの」
「承知しました。何台かご用意しましたので、ご自由にお乗りください」
グレイフィアさんに案内されて、一番先頭の馬車に乗り込む。メンバーは俺とリアス、朱乃、アーシア、兵藤だ。
わぁ、俺馬車なんて初めてだよ。
俺達が乗り込んだのを確認したのか、馬車が動き出す。ちょっと緊張して吐きそうなので外の風景を見ることにする。
外には美しく剪定された木々。遠くにはお城が見える。
「ぶ、ぶぶぶ、部長、あのでっかいお城って……」
「私のお家の一つ。本邸よ」
兵藤とリアスがそう会話する。そっか、あれが今から行く本邸か。胃が痛くなってきた。外を見るのも許されないか。バナージ、悲しいね。
「ほら、イッセー。ダイチはあんなに落ち着いているのだから、あなたもしっかりしないとダメよ?」
「で、でもほら、先輩って元々王子様だったし……」
何だろう、突然ナイフで刺された気分だ。
Side out
早速ツケを突き付けていくスタイル。大地君にはいっぱい苦しんでもらわないとね......!