知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
「ここは魔王領の都市ルシファード。かつて旧魔王ルシファー様がおられたと言われている冥界の旧都市なんだよ」
木場が兵藤にそう説明しているこの場所はその名の通りルシファードと言う場所。アーシアを除いたグレモリー眷属の皆と俺でグレモリー家の列車に乗ってやって来た。
何でここにいるかって?俺にも分からん。何か俺も若手悪魔の顔見せに参加しないといけないらしく、朝から兵藤と一緒にマナーについて勉強していたら呼ばれて、連れられてきた。
所で何だが……俺いる?
――『いや、全然わからん』
ドキンダムもそう言っているなら、もう分からんのよなぁ。
その後地下鉄に乗り変えることとなった。木場曰く『表に出ると騒ぎになる』とのこと。ほな、俺はいいかと呟いたらリアスが呆れながら『あなたが一番問題になるわよ』と言われた。悲しいな。
途中人に見つかってちょっとした歓声を飛ばされたが、すぐに逃げおおせたので特に問題にはならなかった。しかしながら、その歓声が向けられたのはリアスだったし、彼女の人気ぶりには驚かされる。何で俺が彼女と暮らしているんだろう。
しょうもない余談だが、『ブラックゾーン様』と言う声が聞こえ、振り向くと女性がいたので笑顔で軽く手を振っておいたらリアスに怒られた。『混乱を招くな』だって。すいませんでした。
その後、専用列車とか言う貴族の極みなものに乗った。地下鉄に乗り換え、その地下鉄から更に乗り換えてたどり着いたのは都市で一番でっかいって言う建物の地下にあるホーム。
そこにあるエレベーターに乗り込み、その中で俺らはリアスから注意を受けた。
「皆、もう一度確認するわよ。何が起こっても平常心でいること。何を言われても手を出さないこと。上にいるのは、将来の私達のライバルよ。無様な姿は見せられない。特にダイチね」
「え、俺?」
何か名指しで注意を受けた。どういう事?
「あなたがいくら英雄だからと言って、ここで大事を起こせば敵を増やすことになるわ。気を付けて」
「なるほどな。相手次第としか言えんが、気を付ける」
こっちの夢とか希望を馬鹿にするようなことが無ければの話だけどね。
その後エレベーターが目的の階に着き、扉が開く。そこには使用人と思しきお方がいた。
「ようこそ、グレモリーさま、ブラックゾーン様。こちらへどうぞ」
使用人さんに会釈し、着いて行く。通路に進むとそこに人影の一団が。
「サイラオーグ!」
うちのお嬢様の知り合いらしい。あちらさんもこちらを知った顔だと認識したら近づいてきた。
男性。大体俺と同い年……と言えない。俺じゃなくて兵藤と同い年と言った方がいいか。俺、おっさんだし。
黒髪でワイルドなイケメン。ただ、嫌味がない。それに、筋肉質。無駄を削ぎ落したその身に、俺は鬼を感じる。こいつ、『出来る』な……。
「久しぶりだな、リアス」
リアスとにこやかに握手を交わす男性。おや、この人も若手の会合に召集されたってことか。リアスとここまで近いとなると、この人も相当な貴族ってことだな。現に後ろには人がいる。多分眷属だろう。
「ええ、懐かしいわ。変わりないようで何より。初めての顔の者もいるわね。彼はサイラオーグ。私の母方の従兄弟でもあるの。それと、若手ナンバー1の実力者とも言われているわね」
母方の従兄弟なのね。そう言われると何だか彼の顔がサーゼクスさんに似ているような気がしてきた。
「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」
次期当主。マジで偉い子じゃねぇか。俺なんかがここにいていいわけがない。今すぐ消えたいのだ。
てか、バアルか。よく聞く名前だな。
――『アグニカの魂だ!』
――『カエルは苦手なんだよ』
ドキンダム、お前のはバエルだ。アポロヌス、お前のは確かダゴンじゃなかったっけ?
「それでサイラオーグ、こんな通路の隅っこで何をしていたの?」
「ああ、くだらんから出て来ただけだ」
「あなたにそう言わせるって一体何があったの?と言うよりも他のメンバーも来ているの?」
「アガレスもアスタロトも来ている。あげく、ゼファードルだ。着いた早々にゼファードルとアガレスが、な」
リアスとそう会話するバアルさん。まるで蛇蝎の如く嫌う顔をしている。一体何があったんだ。
俺が疑問に思っていると爆音が一つ。とんでもない音だ。まさか、敵襲か!?
おれは急いで音のした方に走る。
「あ、待ってダイチ!」
「リアス、随分無鉄砲な彼は一体?新しい眷属か?」
「……軽くでいいのなら説明するわ」
大きな扉を開くとそこには破壊された大広間。装飾から家具まで色んなものが壊れている。
どうやら敵襲ではないが、中央には二つに分かれた陣営があった。片方は女性が率いていて、もう片方はチンピラ集団。さて、一旦は様子見だ。人は見た目で判断できるだろうけど、見た目だけで判断してしまって後悔はしたくないからな。
「ゼファードル、こんなところで戦いを始めても無駄ではなくて?死ぬ?死にたい?死にたいらしいの?殺しても上に咎められないかしら」
眼鏡の美人さんがそう毒を吐く。おお、強気。でもそんな姿勢が魅力的に思えるよ。
「ハッ、言ってやがれクソアマッ!俺が折角そっちの個室で一発ヤってやるって言ってんだよ!あーやだやだ!アガレスのお姉様は堅くていやだね!だから未だに男の一人も寄ってこないから処女やってんだろ?ったく、魔王眷属ってのはどいつも処女くさくていけねぇ!だからこそ、俺が開通式をやってやるって言ってんだ!」
チンピラ、チンピラだった。
――『どっちにつく?』
女ぁ!
――『だろうな』
ドキンダムとそうやり取りをすると、俺は走り、一瞬で眼鏡の女性の目の前に立つ。女性のその細く、白く、綺麗な手を握る。
「やぁ、美人のお姉さん。そんなに怒っていたら折角の綺麗なお顔が台無しだ」
「え、あ、え?」
「それに、俺には分かるよ。君の魂はとても綺麗だ。俺が見惚れてしまう程に、君は綺麗だよ」
ちょっとナンパ口調で緊張をほぐしてみる。虚を突かれたような様子だが、さっきまでのような殺意は収まっている。
「て、てめぇ、誰だ?!」
チンピラがなんか言っているので仕方なく女性の手を離して振り向く。うーん、クソチンピラ。この手の連中は中学の頃に散々潰してきた。そのせいで、駒王町に不良が寄り付かなくなったんだよな。
「やぁやあ塵芥諸君。悪いことは言わないからその薄汚い存在ごと消えてくれ。俺はこの後後ろの女性とお茶するんだ。君達がいるだけでお茶が不味くなる」
軽く挑発してみると瞬間湯沸かし器かと見間違うほどの速度で顔を真っ赤にするチンピラ。
「てめぇ、屑の分際で……!」
屑っておいおい、俺のことについては知らないのか?一応ここではそこそこ名の知れた者だと思っていたんだけどなぁ。現にこうしているのはその名を使うつもりだったからだし。
「俺を誰だと思ってやがる!俺はゼファードル・グラシャラボラスだぞ!」
そんなの知らん。俺はブラックゾーンに変身する。するとチンピラ、顔を急に真っ青にし出した。おや、どうやらこの姿は知っているようだな。
「『俺を誰だと思ってやがる』?じゃあ、こちらも……俺を誰だと思ってやがる!」
怒気だけいっちょ前にデカくして放ち、軽く手を払う感覚で裏拳をその顔面に叩き込んだ。チンピラ君はチリ紙でももう少し頑張るぞって言うくらい簡単に飛び、ついに壁に激突、めり込んだ。
俺の腕の構造上、裏拳をぶちこむと刃の部分が当たるんだけど、そこは禁断パワーでカバーしておいたので、あいつは死んでない……はず。
チンピラの後ろにいたチンピラ集団もその手の武器を地面に落とし、怯えて後ろに下がっていく。
「う、嘘……!」
後ろから驚嘆の声が聞こえた。おやおや、俺の人間の姿は余り認知されていないのか。何だか複雑な気分だ。
よし、やることは終わり。俺は女性の方へと振り返る。
「ちょっと手荒になったけどすまないね、お嬢さん。名前は?」
「し、シークヴァイラ・アガレス、です……!」
すごく顔を真っ赤にしながらそう答える女性。そうかシークヴァイラ・アガレスさんか、覚えておこう。
「アガレスさん、折角だしお茶でも……と言いたいけれど、これじゃあ無理だね」
俺は周りを見渡す。どこもかしこも壊れていてとてものんびり出来ない。
「運命のお方……」
アガレスさんが何やら言っているが聞こえなかった。何だろう、とは思うがやはり女性の秘密を探るのはよくないな。やめておこう。
「リアス、お前の言うことは本当だったんだな……!」
「はぁ……やっちゃったわね……」
バアルさんとリアスたちもこちらに追い付いてきた。
「あなた達、まずは主の介抱をしてあげなさい」
「お前は化粧直しでもしてこい。ああ、それとスタッフもついでに呼んで来い。このままだと茶も出来んとブラックゾーン殿もおっしゃっているしな」
二人がそう指示を飛ばす。かっこいいな、二人とも。俺もああなりたいよ。
「あ、兵藤じゃん……ってこれどうしたの?」
声のする方を向くと匙君がいる。ってことはシトリーさんも来たってことか。
「ああ、匙か。なーに、また先輩が女の子をナンパしていただけだよ」
「えー、またかよ」
お前ら、あとでぶっ飛ばすからな。それとシトリーさんと真羅さんは何故そう不満そうなんだ。
Side out
堕ちろ!堕ちたな(確信)