もしも地質ガチな俺が地学部に入ったら【恋する小惑星if】   作:Takuma218

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《第11話》キラキラと会報作り

空は快晴。太陽が眩しい。そんな夏の気配が近づく校庭の片隅で、俺たちは……天体観測に来ていた。

 

昼間の天体観測というのも妙に思えるかもしれないが、これも立派な観測――太陽の黒点観測(こくてんかんそく)である。黒点というのは太陽の表面に現れる黒いしみのようなもので、見た目は地味だが太陽活動の変化を知る手がかりになる。

そんなわけで、これは天文班にとって数少ない昼間の活動の一つであり、合併前の天文部の頃から続いている観測でもあった。

 

「じゃあ、望遠鏡のセットお願いね」

「OKです!! 任せてください!!」

 

モンロー先輩の声に、みらが元気よく返事をした。

みらとあおの二人で手際よく望遠鏡を組み立て、接眼部に投影板(とうえいばん)をセットする。

河原ではあんなに苦労していたのに、今ではすっかり手慣れたものだ。

ちなみにすずちゃんは家のパン屋の仕事があるそうで、今日は来ていない。

 

太陽の観測は、投影板に太陽を映して観測する。もちろん、直接のぞくような真似はしない。

投影された太陽像に専用の用紙を重ね、黒点の位置を鉛筆で写し取る作業だ。

練習も兼ねて、天文班の面々が順番に写し取っていく。俺も何度かやらせてもらったが、埃の影を黒点と間違えて写してしまったりして、これがなかなか難しい。

須賀も最初こそ文句を言っていたが、今では真面目に活動している。

作業が一段落したころで、須賀がふと空を見上げながら言った。

 

「なあ、ケンジ。これって結局、何の役に立つんだ?」

 

一瞬、周りの手が止まった。

俺も止まった。

 

「…おまえ、今まで何も考えずにやってたのか」

「そういうわけじゃないんだけど、太陽の活動に関係するってのはわかったんだが、それがどう俺たちに繋がるのかが、どうもぼんやりしててな。この記録がどういう役に立つのかってな~」

 

言い方は悪いが、聞きたいことはわかる。

須賀なりに、ちゃんと考えてはいるらしい。

悪気がないのはわかっているが、それでもこの場で言うか、という気持ちは拭えない。

天文班の面々を横目で見ると、モンロー先輩は苦笑い、みらは「あちゃー」という顔をしていた。あおだけが、静かに須賀を見ていた。

 

「……それ、私が答えてもいいかしら?」

 

モンロー先輩が口を開いた。いつものおっとりした調子だが、どこか楽しげだ。

 

「あ、すんません。変なこと聞いちゃって」

 

須賀が頭を掻く。

 

「いいのよ。ちゃんと説明していなかった私たちにも悪いところがあるもの。それに、目に見えないものを信じるのって、難しいわよね」

 

そう言うと、モンロー先輩は少し考えて口を開いた。

 

「でもスガくん。もし太陽が本気を出したら、君のスマホ、ただの板になっちゃうかもしれないわよ?」

「……はい?」

「黒点が多い時期は、太陽がすごく活発になるの。そういう時に起きる大爆発を『太陽フレア』っていうんだけど、ものすごいエネルギーの粒子が地球に向かって飛んでくるわ。それが地球の磁場を乱して、通信衛星を壊したり、大規模な停電を引き起こしたりすることもあるの」

「…マジっすか。」

「そう。だから私たちはこうして毎日、あの『シミ』を数えて、太陽のご機嫌を伺っているってわけ」

 

聞いていた須賀は、モンロー先輩につられて投影板に映る太陽の像を見つめた後、空の太陽を仰ぎ見た。

 

「太陽って意外と怖いんスね」

「そうね。太陽って、あんなに遠くてきれいに見えても、案外こわいものなのよ。

でも、そういう自然の顔を少しずつ知っていくのも、地学の面白さなんだと思うわ」

 

須賀はしばらく太陽を見た後、感心したように望遠鏡を見つめた。

 

そしてモンロー先輩が二つ手を叩く。

 

「さて、それじゃあ今日の観測も終えたところで、部室に戻りましょう」

 

望遠鏡を片付けた俺たちは、連れ立って部室へ向かった。

 

部室への帰り道。記録用紙や道具を抱えた女子たちに続き、俺は三脚を、須賀は望遠鏡を担いで歩いていた。なんだかんだでこういう力仕事は、男子の役目だ。

 

近道ということで、最近造成されたばかりの新しい駐車場を通る。まだ角の取れていない灰色の敷石をザクザクと踏みしめながら歩いていると、不意に足元で何かが光った気がした。

 

「ん?」

 

思わず足を止める。

「どうした?」という須賀の声を流し、俺は足元を凝視した。これも石オタクの性だろうか。昔から足元に何かがあると立ち止まらずにはいられないのだ。

 

「…?どうしたの?」

 

気がついたみらが振り返り、他の部員もどうしたのかとこちらを見る。

 

「いや今足元で、何かが光った気がして…」

 

「えっ、ウソ!?何があったの!?」

 

桜先輩が駆け寄ってきた。

 

振り返って辺りを見回すと、石の中に金色に光る粒があることに気がついた。

一旦三脚を地面に置き、石を拾うと灰黒色の堆積岩の中に黄金色の四角い粒が点在している。

 

「何これ!?まさか…、金!?」

 

みらだった。俺の手元の石を期待半分といった表情で覗き込んでいた。

気がつくと他のメンバーも興味津々に見ている。

 

「残念ながらこれは金じゃないな。黄鉄鉱(おうてっこう)…、パイライトとも言う鉱物だね。鉄と硫黄からできている結構ありふれた鉱物さ」

「なんだ~。折角大儲けかと思ったのに…」

 

そんなこと思っていたのか……。

「望遠鏡を買う夢が……」とかブツブツ呟きながらガックリと項垂れるみらにあきれた目を向けた。

そういえば、黄鉄鉱の別名って…。

 

「ちなみに黄鉄鉱は、よく金と間違えられたから『愚者(ぐしゃ)の金』とも呼ばれているわ」

 

人差し指を立てながら豆知識を披露する桜先輩に、みら達天文班は「へー」と関心の声を上げていた。

……その文脈からすると、みらが愚者(おろかもの)となるが、本人が気付いていないようだし黙っていよう。

 

更に探すとあちこちに見つかり、桜先輩達もいくつか拾ったようだ。

 

「あのー」

 

夢中で探していると、あおが片手を上げた。

 

「一旦部室に戻りませんか?」

 

気まずそうなあおの視線の先を辿ると、望遠鏡を持つ手をブルブルと震わせながら須賀が立っていた。

 

あ……、忘れてた。

 

「気にしなくていいっスよ!俺は空気が読める男っスから!!」

「いや、戻ろう。なんと言うか……、すまん」

 

空元気なのは見ればわかる。……悪いことをしたな。

 

俺たちは今度こそ部室に帰った。

 

ちなみにその後、改めて拾いに行ったが、探し物かと勘違いした教師に声を掛けられ逃げ帰るのだった。

 

部室に戻ると、さっきまでの騒がしさが、今度はいつもの地学部の空気に戻っていった。

 

部室の真ん中の机では、みらとあおを中心に天文班がさっきの黒点観測の記録を広げている。

投影した太陽像を写し取った用紙を並べ、時刻や天候を書き込み、黒点の位置を見比べているらしい。

望遠鏡のネジを緩めて片付けたり、接眼部の汚れを拭いたりしている須賀の姿も見えた。

派手ではないが、こういう地道な積み重ねが観測なのだろう。

 

その一方で、窓際では桜先輩とイノ先輩が、さっき拾ってきた石を並べていた。

水で泥を落とし、ルーペで表面を覗き込み、どこで拾った石なのかをメモに残す。

産地、日付、見つけた人間――そういう情報が揃って、ようやく「ただの石」は標本になる。

 

俺も三脚を片付けてからそちらに加わり、黄鉄鉱の入った石を改めて手に取って石についての意見を交わした。

 

同じ部室にいるはずなのに、見ているものは少し違う。

天文班は空を記録し、地質班は地面を記録する。

 

合併して地学部になったとはいえ、こういう時にはまだ、もとの二つの部活の名残がそのまま残っている気がした。

 

「……なんかさあ」

 

不意に、みらが記録用紙から顔を上げた。

 

「せっかく一緒の部活になったのに、やってることはまだ別々って感じだよね」

 

その言葉に、部室のあちこちで手が止まる。

 

「別に悪いことではないでしょう」

 

桜先輩が黄鉄鉱の粒を光に当てながら言う。

 

「天文と地質じゃ、扱うものが違うんだから」

「それはそうなんですけど……」

 

みらは椅子ごとこちらを向いた。

 

「でも、同じ地学部なんだし、何か一緒にできたら楽しそうじゃないですか。 星のことも石のことも、どっちも面白いってわかるようなやつ!」

「例えば、展示とかですか?」

 

イノ先輩が首を傾げる。

 

「でも文化祭なんてまだ先よ。今から準備するの?」

 

桜先輩がもっともらしい顔でそう返す。

 

「展示もいいんですけど、なんかもっとこう……みんなが気軽に見られるやつ!」

 

みらはそこで少し考え込み、ぱっと顔を上げた。

 

「ほら、今日の黒点のこととか、さっきのキラキラした石のこととか、そういうのをまとめてさ。読んだ人が『地学部ってこんなことしてるんだ!』ってわかるようなの!」

「新聞みたいなヤツってことか?」

 

須賀が望遠鏡ケースを壁際に立てかけながら言った。

 

「あ、いいねそれ!

部誌! 新聞! おたより! なんでもいいけど!」

「……会報、みたいなもの?」

 

静かに口を開いたのはあおだった。

控えめな声だったが、不思議とよく通る。

 

「会報……いいかもしれないわね」

 

モンロー先輩がその言葉をゆっくり繰り返す。

 

「活動記録にもなるし、文化祭や新入部員勧誘の時にも役立ちそうだわ」

「えっ、本当に!?」

 

みらの声が一段高くなる。

 

「ええ。本当よ」

 

モンロー先輩はふわりと笑った。

 

「天文班は観測記録や星の話が書けるし、地質班は標本や鉱物の話が書けるでしょう? せっかく同じ部になったんだもの。お互いの面白さを持ち寄るのは、悪くないと思うの」

 

「……書くのはいいけど」

 

そこで桜先輩が、机に頬杖をついたまま小さく口を挟んだ。

 

「そんなに意味あるのかしら。みんながみんな、地学に興味を持ってくれるとは限らないでしょ」

「でも……」

 

イノ先輩が何か言いかけるが、遮るように桜先輩は続けた。

 

「そもそも会報なんて誰が読むのよ。地質の記事なんて一般生徒は三行も読まないわ」

 

イノ先輩が、石を机に置いて顔を上げた。

 

「興味がないというより、何をやっているのか分からないから近づきにくいだけかもしれません。天文も地質も、知らない人から見ると難しそうですし」

「それは……そうかもしれないけど」

 

桜先輩の声が少しだけ弱まる。

 

「少なくとも、見てもらわないことには始まらないんじゃないですか?」

「……俺も、そう思います」

 

みんなの視線がこちらに向いた。

 

「正直、この学校に来るまでは、地質なんて興味のある人しか見ないものだと思っていました。でも河原に行ったら、みら達は石のことを面白がってくれたし、水晶を見た時もみんな夢中になっていた」

 

手の中の黄鉄鉱を指先で転がす。

 

「知らないから興味がないんじゃなくて、面白さを知る機会がないだけなんだと思います」

 

俺は黄鉄鉱を机に置いて、桜先輩を見た。

 

「だから、意味があるかどうかで言えば、……あると思います」

 

部室が少しだけ静かになる。

 

するとイノ先輩が気がついたように顔を上げた。

 

「会報で知名度が上がれば、文化祭でももっと多くの人に見て貰えるかもしれませんよ!」

「うっ……」

 

何かが刺さったように、短く呻き声を上げる桜先輩。

 

「そういえば、去年の文化祭ってなにやったんスか?」

 

須賀が思い出したように聞いた。

 

「去年の文化祭…、地質研究会は石の展示をやったわ。でも内容が余りにも地味だったのか……、」

「お客さん、ほとんど来なかったんですよね……」

 

苦い記憶を思い出したのか、桜先輩は俯いた。

イノ先輩が苦笑しながら言葉を継ぐ。

まあ確かに石の展示って、興味のない人から見れば地味に映るのかもしれないもんな。

 

「その点、天文部は大人気だったもんね! 何せモンロー先輩がバニ……」

「わ、わー!! それ以上言わなくていいわよ!!」

 

みらが何かを言いかけたのを、モンロー先輩が顔を真っ赤にして遮った。

この人がここまで慌てるのも珍しい。

その時、須賀がガタンと音を立てて椅子から立ち上がった。

 

「一体何をやったんスか!?」

「何でもないわ。……ただのプラネタリウムよ」

「ただのプラネタリウムでそんな風になりますか!?」

「そんなこといいじゃないの。さっ、話を進めましょ」

「今年の参考に聞かせてください!!」

「おい、そこまでにしとけ」

「スガくん、落ち着いて!」

「そうですよぅ、今は会報の話ですから!」

 

なおもモンロー先輩に食い下がる須賀を後ろから引っ張って止める。そこにみらとイノ先輩も加わってなだめ、ようやく大人しくなった。

 

「いつか聞かせてくださいよ!!」

 

そんな捨て台詞めいたことを叫びながらも、須賀はしぶしぶ席に戻った。

 

ほっと息をつくモンロー先輩に、桜先輩が身を寄せて何か囁いた。

 

(あんたにも一丁前に羞恥心があったのね……)

(あの時は割り切っていたけど、やっぱり男子がいると恥ずかしいわ)

 

桜先輩がこそこそと囁き、モンロー先輩が時折こちらをチラチラ見ながら小さく答えている。

 

何だろう。正直、めちゃくちゃ気になる。

だが結局その答えは明かされないまま、モンロー先輩は話を切り替えるように軽く咳払いをした。

 

「私たちのことはいいから、今は会報の話を進めましょ。

……それでどうするの? 桜ちゃん?」

「そうね……。わかったわ。知名度を上げなきゃいけないのも事実だし、やるだけやってみましょう」

「決まりですね!」

 

イノ先輩がぱっと顔を明るくした。

 

「た・だ・し!書くからには手は抜かないわよ!!」

 

桜先輩は気合いを入れるように拳を握りしめた。

 

「さて、やることも決まったことだし、作業が一段落したら話し合いをしましょうか」

 

モンロー先輩が手を合わせて微笑んだ。

 

残った作業を片付け、席について会報についての会議を始めた。

 

「さて、じゃあ早速……、誌名を決めましょうか」

 

モンロー先輩の一言に、俺たちはズルッと一斉にずっこけそうになる。

 

「……普通そこって内容から決めません?」

「あら、名前も大事よ」

 

この人も時々天然だよな。

 

気を取り直して、会議を再開する。

 

「はいっ!私、名前を考えました!!」

「はい、みらさん」

 

まずはみらが元気よく手を上げた。

 

「『週刊 小惑星を探せ』!!

毎号望遠鏡のパーツが付いてくる!」

 

どっかの月刊誌みたいだな。

 

「却下!天文班に片寄りすぎ」

「あと、週刊は無理ですね。付録も予算がありますし……」

 

桜先輩とイノ先輩がほぼ同時につっこんだ。

 

「じゃあ桜先輩はどんなのがいいんですか?」

「そうねー。

『マイカ • タイム 雲母(きらら)カラット 創刊ご…』」

「アウトー!!」

「いきなり何よ!?」

 

自分でもわからないが思わず叫んでしまった。

 

「なぜかわかりませんが、なんかダメな気がします!」

「何よそれ……」

 

「じゃあ…、『目指せ小惑星!!』」

 

みらがまた直球な案を出してきた。

今度はあおも「うんうん」と頷いてるし。

 

「あんたたち、良い度胸ね」

 

桜先輩が睨む。

 

ここは俺も乗るべきか。

 

「じゃあこんなのはどうでしょう?

『月刊 トレジャーストーン』!!石の紹介のほか、毎号地学部の採取した石が付いてくる!!」

「誰得だよ!!そんなの喜ぶの地学部以外、そうそういねーよ!」

「えー……。採ってきた石なら予算も掛からないと思ったんだけどなー…」

「それに今度は地質班に寄りすぎね~」

 

俺と須賀のやり取りにモンロー先輩が苦笑した。

 

「じゃあこれはどうかしら?

『月刊 今月の月』…」

「だから、今度は天文班!!いい加減にしなさい!」

 

モンロー先輩の案に桜先輩がすかさず切り返す。

 

「じゃあ俺は方向を変えて…

『モンロー先輩 グラビア写真集 30ページ』!!」

「…はい、次いくわよー」

「誰か突っ込めよ!!」

 

須賀はスルーされた。

 

「私は…、えっと、えっと……」

「イノ、大喜利じゃないんだから、無理に出さなくても良いわよ」

 

とまあ、そんな調子で話し合いは妙な方向へ転がっていき、名前はいつまで経っても決まらなかった。

空は薄暗くなっていき、星が瞬きだす。

 

「ヤバ……。もうこんな時間。あなたたちも早く帰りの準備しなさいよ」

 

時計を見た桜先輩が、慌てて鞄を取りに席を立った。

 

「結局何も決まらなかったね」

「途中から話が関係ない方向に飛んでたし……」

 

みらの言葉にあおが小さく苦笑する。

 

「続きはまた今度決めましょうね」

「ところであんたたち、書くことは決めてるの?」

 

桜先輩がみらとあおを見た。

 

「私は星の事を書こうと思ってます!」

「私は宇宙の事を」

 

「そういう桜先輩は何を書くんですか?」

 

みらの質問に桜先輩は「ふっふっふ」と笑って答えた。

 

「そんなの決まっているじゃない。私は鉱物のことを書くわ!」

「えっ、俺も鉱物の事を書こうと思っていたんですが」

「えっ、そうなの? ……困ったわね、内容が被るじゃない」

 

桜先輩が「ぐぬぬ」と眉間に皺を寄せて悩んだ。

 

「うふふ……、どこかで折り合いはつけないといけないわね」

 

「俺たちはいいとして、須賀は何を書くんだよ?」

「えっ、俺!?」

 

須賀は顎に手を当てて、少し考え込んだ。

 

「そうっスねー。どうしようか……」

「無理しなくても、私と一緒に部の活動記録でもいいわよ」

「先輩と一緒っていうのは魅力的ですけど、どうせなら自分の記事を持ちたいっスね」

 

須賀はモンロー先輩の申し出を、やんわりと断った。

こいつにも、そういうところはあるらしい。それから少し考えたあと、おもむろに顔を上げる。

 

 

「じゃあ……、料理とかどうっスか……?」

 

 

「「「「料理!?」」」」

 

皆一斉に須賀を見た。

 

「スガくん、料理できるの!?」

「ああ。料理っていうか、菓子だけどな」

 

須賀は昔を思い返すように、少しだけ視線を上に向けた。

 

「昔、モテたくて料理を練習したことがあったんだけど、気づいたら結構ハマっててな、お菓子とかも凝ったのを作るようになったんだ」

「全然知らなかった……」

 

みらが信じられないものを見るような目で須賀を見る。

 

「あはは……。調理実習のときは、周りのノリに合わせてたからな」

 

「料理っていうと……レシピでも載せるのか?」

「そうなるな。俺が地学モチーフの菓子を作って、そのレシピを載せようと思う」

「でも大丈夫なの? 地学モチーフって、結構難しいと思うけど」

「まあ、そこはノリでどうにかするっス」

 

ノリって……。

 

「まあ、そこまで信用できないなら、今度何か作ってくるんで、そのときに決めましょう!」

 

 

下校時刻も近づいてきたので、そこまでで帰ることになった。

 

外に出ると、紺色の空に星が瞬いていた。この前見たときは低かった夏の大三角も、高くまで上っている。これならアルビレオもさぞ綺麗に見えるだろう。

 

「わー!星きれー!!」

 

みらが空を見上げて、目を輝かせた。

他の面々も空を見上げる。

 

星空は今までも見上げる事があった。辛いときや嬉しいときも同じように照らす、星空は好きだった。

でも地学部で、このメンバーと出会ってから見る星空は、それまでに見た星よりも輝いて見えた。

 

「キラキラ……」

 

あおが空を見上げながらポツリと呟いた。

 

「えっ?」

 

みらが目を向けると、あおもゆっくりと見つめ返す。

 

「会報の名前、『キラキラ』はどうかな?

星も石もキラキラな物を探す私たちにはぴったりだと思って……。

だめっ、かな……?」

「うんうん。いいと思う。すっごく可愛い!」

「キラキラかー」

「いいわね」

「私たちらしいですね!」

 

他のメンバーにも好評だ。

 

確かに星も石もキラキラしている。

星を探す者、石を探す者、俺たちはみんな、それぞれのキラキラを追う仲間なのかもしれない。

そう考えると、なんだか少しだけ心が温かくなった気がした。

そういえばここは、昼間あの黄鉄鉱を見つけた駐車場だな。キラキラの石の上で、キラキラの星を見上げる、か……。なんだか少し可笑しいな。

クスッと笑うと、モンロー先輩が茶化すように横目を向けてきた。

 

「どうしたの?いきなり笑って」

「いや、いい名前だなって……」

「そうね。

それじゃあ、会報の名前は『キラキラ』でいいかしら?」

「「「「賛成~」」」」

 

こうして俺たち地学部の会報の名前は『キラキラ』になったのだった。

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