もしも地質ガチな俺が地学部に入ったら【恋する小惑星if】 作:Takuma218
本日は晴天なり。風もなく、気温もほどほどに暖かい。
そんな絶好の行楽日和の今日、俺たち地学部は近所の河川敷へ、バーベキューパーティーに来ていた。
事の発端は遠藤先生の提案…。
…………………………
「近くの河原でバーベキューをやろう。
皆で楽しめば、須賀と鈴矢も仲直りしやすいだろうし、ついでに河原の石の観察や、夜に星の観測をすれば部の親睦にもなる」
「でもそんな余裕あるんですか?
今後の巡検も考えると、そこまで予算にも余裕は無いと思いますけど」
桜先輩が聞くと先生はクックックッと笑い、
「その辺はどうにかしよう。最悪私のポケットマネーから出ーす!!」
その言葉に部員は「おー!」と感心の拍手をするが、要はこの人がバーベキューしたいだけだろ。
そんなこんなで今日この日、地学部親睦バーベキューパーティー兼『すずちゃん&スガくん仲直り大作戦!!(みら命名)』を開催することとなった。
…………………………
「男子は荷物運びと火起こし、女子は食材の調理だ!!」
やたら張り切っている遠藤先生の指示のもと、桜先輩とモンロー先輩、イノ先輩で食材準備、俺と須賀で火起こしだ。
ちなみに、みらとあおはすずちゃんを呼びに行っている。来てくれれば良いのだが…。
バチバチと赤熱する炭を見ていると、横の須賀がなにやらしゃべり始めた。
「モンロー先輩の手料理が食べられるなんて夢みたいだぜ~」
「ただ切るだけだけどな」
「でも調理してくれてるじゃね~か」
「ただ切って焼くだけだけどな」
……コイツは相変わらずだ。
そうしていると、上の方から聞き覚えのある元気な声が響いた。
「すずちゃん連れてきたよ~!!」
みらが堤防の上から笑顔で手を振っている。
その隣には笑みを浮かべるあおと、少し緊張した面持ちのすずちゃんが立っていた。
…良く見るとあおは大きなカゴを持っている。
「それじゃあ、ちゃちゃっと謝っちゃおうか!ケンジくんはスガくんをお願いね」
みらとあおが嫌がるすずちゃんの背中を押してやってきた。
「何でわたしがコイツに謝らなきゃいけないのよ!」
俺は「任された」とだけ返して、須賀の腕を掴んで引っ張り出す。こちらも少し抵抗を感じた。
「アイツと仲良くなんて絶対無理だって!」
そして二人を向かい合わせに立たせる。
静かな空気に部員は固唾を飲んで見守った。
そんな中で須賀は気まずそうに、すずちゃんは睨み付けるようにお互いを見ていた。
「何見てるのよ」
「だってしゃあねえだろ。謝れって言うんだから」
「はっ!!大体あんたが「すずちゃんストーップ!!」
一触即発というところでみらの声が響き、思わずすずちゃんは振り返った。
「言ったでしょ!!今日は喧嘩は無し。この前の事も謝ってって」
「でも、みら…」
「すぐに仲良くしてなんて言わない。それでも、いつまでもこんなのは嫌なの。私は地学部も、…すずちゃんの事も大好きだから」
「みら…」
みらの必死の訴えにすずは眉を下げ、ひとつため息を吐いた。
「わかったわ。今日はみらの言う通り、喧嘩はしないし、謝ってあげる。
本当にごめんね…、みら」
すずは微笑みながら一度みらを抱き締めると、改めて顔を引き締めて須賀と向き合った。
「みらに免じて謝ってあげるわ。
この前はいきなり怒鳴ってごめんなさい」
すずちゃんが頭を下げる。
まさかの事に戸惑う須賀。少し焦ったようにあたふたとして、慌てて言葉を紡いだ。
「俺だって言い過ぎたし…、みらに酷いことを言ったのだって少しは「少しは?」……目一杯反省しております。本当に済みませんでした!」
須賀も頭を下げた。…あおに睨まれながらだが。
二人の間に気まずい空気が流れたが、そこにダメ押しとばかりにモンロー先輩がすずちゃんに声をかけた。
「ちなみにみらちゃんの件に関しては、この通り十分に反省させましたので…」
モンロー先輩がスマホの画面を見せると、そこには須賀がみらに土下座をする場面や、あおや会長にお説教される様子など、この前の須賀への制裁の様子が写されていた。
極めつけは…、
『スミマセンデシタ!!』
動画まである。
一体いつの間に撮ったんだ…?
すずちゃんを見ると、ピクピクと肩が震えている。
そして……
「プッ…。フッ、アハハハハッ!」
すずちゃんの笑い声が響き渡った。
「あんたこんな…、なっさけない姿で謝ったの!?ホントオカシッ!」
すずちゃんは笑いが止まらないようで、腹を抱え涙まで出している。
笑い声を聞きながら須賀は顔を赤くしてそっぽを向き、他の部員もポカーンとすずを見ていた。
しばらくして落ち着いてきたのか、深呼吸を二つしてから須賀を見た。
「ハァー、ハァー。わかったわ。アンタを認めた訳じゃないけど、みらの側にいることは許してあげる。
でも絶対みらに手を出すんじゃないわよ!!」
「わかってるよ…。俺ももう、あんな怖い思いはごめんだし……」
指を指して言い放つすずちゃんに、須賀は気落ちしたように答えた。
みらとあおが笑顔でハイタッチをする。
周囲から安堵の息が漏れた。
雨降って地固まるというか、ひとまずは解決なのだろうか?
「ひとまずはどうにかなりましたかね」
俺がほっとして呟くと、
「一時はどうなることかと思いましたけど、仲直りできて良かったですぅー!」
「そうね。これで一件落着かしら」
イノ先輩と桜先輩も安堵したように笑った。
すずは改めて先輩達に向き直り、頭を下げる。
「先輩方も、この間はごめんなさい。部室で騒いでしまって。
今後は大人しくしますので、どうかまた、部室に入れて頂けないでしょうか」
「そんなに畏まらなくても良いわよ。みらちゃんのお友達なのだし、これからも仲良くしましょ」
「あなたが居ないと、部室が静かでしょうがないのよ。」
「私達はいつでも大歓迎ですよ~」
そんなすずちゃんに、先輩達も温かく迎え入れた。
「おーい!こっちは焼けたから、終わったならぼちぼち来いよ~!」
火の番をしていた遠藤先生の声に皆が一気に脱力した。まったく余韻もあったもんじゃない。
「じゃあ…、行きましょうか。お腹も空きましたし」
「賛成!!私もうお腹ペコペコ!!すずちゃんも行こう!」
「ちょっと待ってよ~」
イノ先輩の声にみらが反応し、その他のメンバーもグリルの方へ向かった。
俺も向かおうとすると、すずちゃんが思い出したように立ち止まってこちらを見た。
「アンタもだからね!みらとあおにはくれぐれも手を出さないように!!」
サイデスカ。
人差し指を立てて警告するすずちゃんに、俺はただ「わかったよ」とだけ返すのだった。
…………………………
「それでは地学部の新たな門出を祝して、カンパーイ!!」
「「「「カンパーイ!!」」」」
モンロー先輩の音頭に合わせて、皆で乾杯をする。
各々焼けた肉や野菜を皿にとるが、そこであおが手を上げた。手には例の大きなカゴがある。
「すずちゃんのお母さんから差し入れだそうです。みなさんどうぞ」
「お母さんったら…」
「すずちゃんが友達と仲直りできるように、だってさ。」
「友達じゃ無いんだけどな~」
すずちゃんが困ったように笑う。
あおが持っていたカゴの中を見ると、中には食べやすく切られたバゲットが入っていた。
「すずちゃんの家ってパン屋だったのか?」
「そうだよ!スズヤベーカリーっていうパン屋さんなんだ。
そしてその看板娘のモエモエこと、鈴矢萌ちゃんです!」
「ちょっと!!その呼び方はやめてよ~」
みらの紹介にすずちゃんが赤面した。
「スズヤベーカリーってあの人気のパン屋さんですよね?」
「そうそう。いつも午前中で売り切れちゃうんだ~」
「そんなに有名な店なのか。今度行ってみようかな」
そう言うと、すずちゃんはぱっと笑顔を向けてきた。
「まいどあり~!!」
……これは接客モードだろうな。
「それにしても、すずって名字だったのね」
「モエモエが嫌で、みらにつけて貰ったんです」
モンロー先輩にすずちゃんが笑って答えた。
俺は須賀から聞いていたが、確かに初見じゃ名前にしか見えないもんな。
「私たちのあだ名もみらちゃんにつけて貰ったんですよね!」
「親密になるためには、まずは名前からですから!」
「でも俺達は『スガ』と『ケンジ』で、そのままだけどな」
「アンタ達にみらのあだ名なんて、500年早いのよ」
須賀は「へいへい」とでも言いたげに肩をすくめる。 ……まあ、いつもの調子だ。
ちなみに地質学的に見れば、500年は決して長い期間ではない(というか一瞬)だが、それはここで話すネタではないだろう。
「このパン美味しいですね!」
パンを一口食べたイノ先輩が歓声を上げる。
「スズヤのパン、実際食べたの初めてだけど、こんなに美味しいなんて」
あおも感動している…。そんなに旨いのか。
須賀ですら、
「こんな旨いパン、初めて食ったぜ!!」
と大変ご満悦。
それを聞いた俺も早速パンを一つ取り、肉を挟んでかぶりつく。表面はパリッと、中はもっちり。小麦の香りがふわっと抜ける。
「本当にうまいな」
思わず呟いてしまった。
そんな中すずちゃんは少し頬を染め、嬉しそうに食べていた。
すずちゃんの問題が解決しました!
これで心置きなく書けるぞ!!
ということで、次回から学術ネタが多くなります。
尚今までより更新が遅れますこと、ご了承ください。