もしも地質ガチな俺が地学部に入ったら【恋する小惑星if】   作:Takuma218

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《第7話》仲直りとパンの香り

本日は晴天なり。風もなく、気温もほどほどに暖かい。

 

そんな絶好の行楽日和の今日、俺たち地学部は近所の河川敷へ、バーベキューパーティーに来ていた。

事の発端は遠藤先生の提案…。

 

…………………………

 

「近くの河原でバーベキューをやろう。

皆で楽しめば、須賀と鈴矢も仲直りしやすいだろうし、ついでに河原の石の観察や、夜に星の観測をすれば部の親睦にもなる」

「でもそんな余裕あるんですか?

今後の巡検も考えると、そこまで予算にも余裕は無いと思いますけど」

 

桜先輩が聞くと先生はクックックッと笑い、

 

「その辺はどうにかしよう。最悪私のポケットマネーから出ーす!!」

 

その言葉に部員は「おー!」と感心の拍手をするが、要はこの人がバーベキューしたいだけだろ。

 

そんなこんなで今日この日、地学部親睦バーベキューパーティー兼『すずちゃん&スガくん仲直り大作戦!!(みら命名)』を開催することとなった。

 

…………………………

 

「男子は荷物運びと火起こし、女子は食材の調理だ!!」

 

やたら張り切っている遠藤先生の指示のもと、桜先輩とモンロー先輩、イノ先輩で食材準備、俺と須賀で火起こしだ。

ちなみに、みらとあおはすずちゃんを呼びに行っている。来てくれれば良いのだが…。

 

バチバチと赤熱する炭を見ていると、横の須賀がなにやらしゃべり始めた。

 

「モンロー先輩の手料理が食べられるなんて夢みたいだぜ~」

「ただ切るだけだけどな」

「でも調理してくれてるじゃね~か」

「ただ切って焼くだけだけどな」

 

……コイツは相変わらずだ。

 

 

そうしていると、上の方から聞き覚えのある元気な声が響いた。

 

「すずちゃん連れてきたよ~!!」

 

みらが堤防の上から笑顔で手を振っている。

その隣には笑みを浮かべるあおと、少し緊張した面持ちのすずちゃんが立っていた。

…良く見るとあおは大きなカゴを持っている。

 

「それじゃあ、ちゃちゃっと謝っちゃおうか!ケンジくんはスガくんをお願いね」

 

みらとあおが嫌がるすずちゃんの背中を押してやってきた。

 

「何でわたしがコイツに謝らなきゃいけないのよ!」

 

俺は「任された」とだけ返して、須賀の腕を掴んで引っ張り出す。こちらも少し抵抗を感じた。

 

「アイツと仲良くなんて絶対無理だって!」

 

そして二人を向かい合わせに立たせる。

静かな空気に部員は固唾を飲んで見守った。

そんな中で須賀は気まずそうに、すずちゃんは睨み付けるようにお互いを見ていた。

 

「何見てるのよ」

「だってしゃあねえだろ。謝れって言うんだから」

「はっ!!大体あんたが「すずちゃんストーップ!!」

 

一触即発というところでみらの声が響き、思わずすずちゃんは振り返った。

 

「言ったでしょ!!今日は喧嘩は無し。この前の事も謝ってって」

「でも、みら…」

「すぐに仲良くしてなんて言わない。それでも、いつまでもこんなのは嫌なの。私は地学部も、…すずちゃんの事も大好きだから」

「みら…」

 

みらの必死の訴えにすずは眉を下げ、ひとつため息を吐いた。

 

「わかったわ。今日はみらの言う通り、喧嘩はしないし、謝ってあげる。

本当にごめんね…、みら」

 

すずは微笑みながら一度みらを抱き締めると、改めて顔を引き締めて須賀と向き合った。

 

「みらに免じて謝ってあげるわ。

この前はいきなり怒鳴ってごめんなさい」

 

すずちゃんが頭を下げる。

まさかの事に戸惑う須賀。少し焦ったようにあたふたとして、慌てて言葉を紡いだ。

 

「俺だって言い過ぎたし…、みらに酷いことを言ったのだって少しは「少しは?」……目一杯反省しております。本当に済みませんでした!」

 

須賀も頭を下げた。…あおに睨まれながらだが。

二人の間に気まずい空気が流れたが、そこにダメ押しとばかりにモンロー先輩がすずちゃんに声をかけた。

 

「ちなみにみらちゃんの件に関しては、この通り十分に反省させましたので…」

 

モンロー先輩がスマホの画面を見せると、そこには須賀がみらに土下座をする場面や、あおや会長にお説教される様子など、この前の須賀への制裁の様子が写されていた。

極めつけは…、

 

『スミマセンデシタ!!』

 

動画まである。

一体いつの間に撮ったんだ…?

すずちゃんを見ると、ピクピクと肩が震えている。

そして……

 

「プッ…。フッ、アハハハハッ!」

 

すずちゃんの笑い声が響き渡った。

 

「あんたこんな…、なっさけない姿で謝ったの!?ホントオカシッ!」

 

すずちゃんは笑いが止まらないようで、腹を抱え涙まで出している。

笑い声を聞きながら須賀は顔を赤くしてそっぽを向き、他の部員もポカーンとすずを見ていた。

しばらくして落ち着いてきたのか、深呼吸を二つしてから須賀を見た。

 

「ハァー、ハァー。わかったわ。アンタを認めた訳じゃないけど、みらの側にいることは許してあげる。

でも絶対みらに手を出すんじゃないわよ!!」

「わかってるよ…。俺ももう、あんな怖い思いはごめんだし……」

 

指を指して言い放つすずちゃんに、須賀は気落ちしたように答えた。

みらとあおが笑顔でハイタッチをする。

周囲から安堵の息が漏れた。

雨降って地固まるというか、ひとまずは解決なのだろうか?

 

「ひとまずはどうにかなりましたかね」

 

俺がほっとして呟くと、

 

「一時はどうなることかと思いましたけど、仲直りできて良かったですぅー!」

「そうね。これで一件落着かしら」

 

イノ先輩と桜先輩も安堵したように笑った。

すずは改めて先輩達に向き直り、頭を下げる。

 

「先輩方も、この間はごめんなさい。部室で騒いでしまって。

今後は大人しくしますので、どうかまた、部室に入れて頂けないでしょうか」

「そんなに畏まらなくても良いわよ。みらちゃんのお友達なのだし、これからも仲良くしましょ」

「あなたが居ないと、部室が静かでしょうがないのよ。」

「私達はいつでも大歓迎ですよ~」

 

そんなすずちゃんに、先輩達も温かく迎え入れた。

 

「おーい!こっちは焼けたから、終わったならぼちぼち来いよ~!」

 

火の番をしていた遠藤先生の声に皆が一気に脱力した。まったく余韻もあったもんじゃない。

 

「じゃあ…、行きましょうか。お腹も空きましたし」

「賛成!!私もうお腹ペコペコ!!すずちゃんも行こう!」

「ちょっと待ってよ~」

 

イノ先輩の声にみらが反応し、その他のメンバーもグリルの方へ向かった。

俺も向かおうとすると、すずちゃんが思い出したように立ち止まってこちらを見た。

 

「アンタもだからね!みらとあおにはくれぐれも手を出さないように!!」

 

サイデスカ。

人差し指を立てて警告するすずちゃんに、俺はただ「わかったよ」とだけ返すのだった。

 

…………………………

 

「それでは地学部の新たな門出を祝して、カンパーイ!!」

「「「「カンパーイ!!」」」」

 

モンロー先輩の音頭に合わせて、皆で乾杯をする。

各々焼けた肉や野菜を皿にとるが、そこであおが手を上げた。手には例の大きなカゴがある。

 

「すずちゃんのお母さんから差し入れだそうです。みなさんどうぞ」

「お母さんったら…」

「すずちゃんが友達と仲直りできるように、だってさ。」

「友達じゃ無いんだけどな~」

 

すずちゃんが困ったように笑う。

あおが持っていたカゴの中を見ると、中には食べやすく切られたバゲットが入っていた。

 

「すずちゃんの家ってパン屋だったのか?」

「そうだよ!スズヤベーカリーっていうパン屋さんなんだ。

そしてその看板娘のモエモエこと、鈴矢萌ちゃんです!」

「ちょっと!!その呼び方はやめてよ~」

 

みらの紹介にすずちゃんが赤面した。

 

「スズヤベーカリーってあの人気のパン屋さんですよね?」

「そうそう。いつも午前中で売り切れちゃうんだ~」

「そんなに有名な店なのか。今度行ってみようかな」

 

そう言うと、すずちゃんはぱっと笑顔を向けてきた。

 

「まいどあり~!!」

 

……これは接客モードだろうな。

 

「それにしても、すずって名字だったのね」

「モエモエが嫌で、みらにつけて貰ったんです」

 

モンロー先輩にすずちゃんが笑って答えた。

俺は須賀から聞いていたが、確かに初見じゃ名前にしか見えないもんな。

 

「私たちのあだ名もみらちゃんにつけて貰ったんですよね!」

「親密になるためには、まずは名前からですから!」

「でも俺達は『スガ』と『ケンジ』で、そのままだけどな」

「アンタ達にみらのあだ名なんて、500年早いのよ」

 

須賀は「へいへい」とでも言いたげに肩をすくめる。 ……まあ、いつもの調子だ。

ちなみに地質学的に見れば、500年は決して長い期間ではない(というか一瞬)だが、それはここで話すネタではないだろう。

 

「このパン美味しいですね!」

 

パンを一口食べたイノ先輩が歓声を上げる。

 

「スズヤのパン、実際食べたの初めてだけど、こんなに美味しいなんて」

 

あおも感動している…。そんなに旨いのか。

須賀ですら、

 

「こんな旨いパン、初めて食ったぜ!!」

 

と大変ご満悦。

それを聞いた俺も早速パンを一つ取り、肉を挟んでかぶりつく。表面はパリッと、中はもっちり。小麦の香りがふわっと抜ける。

 

「本当にうまいな」

 

思わず呟いてしまった。

そんな中すずちゃんは少し頬を染め、嬉しそうに食べていた。




すずちゃんの問題が解決しました!
これで心置きなく書けるぞ!!
ということで、次回から学術ネタが多くなります。
尚今までより更新が遅れますこと、ご了承ください。
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