ポケットモンスター ブラック・ホワイト とあるトレーナーが綴る、イッシュ地方の旅路 原作ゲーム沿いノベライズ   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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ヒウンシティ:下水道に潜むプラズマ団(あるいは、都会の闇と鼻を突く悪臭)

 スカイアローブリッジを渡りきった僕らを迎えたのは、空を覆い尽くす摩天楼と、足早に行き交う無数の人々だった。

 

 ヒウンシティ。ここは、世界中の流行と欲望が凝縮されたイッシュの心臓部。……のはずなのだが、なぜか僕とチェレンが立っているのは、高級ブティックの立ち並ぶ通りではなく、湿り気を帯びた「下水道」の入り口だった。

 

「……なあ、チェレン。見てよ、この格差。さっきまでオシャレなカフェで『ヒウンアイス』を食べてる女子高生を見て癒やされてたのに、なんで今は泥水とコバルトブルーの毒気が混ざったような場所に片足突っ込んでるわけ!? ゲーフリさん、これ『都会の華やかさに浮かれるな』っていう、教育的な指導なの!?」

 

 僕は、鼻を突く下水の臭いに顔をしかめながら、ポカブの鼻を塞いで絶叫した。

 

「やれやれ。主人公、君は『社会の構造』というものを理解していないのかい?」

 

 チェレンが、下水道の湿気で眼鏡が曇るのを最小限の動作で拭きながら、冷徹に言い放つ。

 

「華やかな大通りの下には、必ずそれを受け止める闇がある。プラズマ団が潜むには、これ以上ない舞台装置だよ。……あ、僕は後でこの下水道の排水処理能力について、都市計画の観点から市長に提言書を送るつもりだ」

 

「提言書書く前に、目の前のヘドロをどうにかしろよ、チェレン!!」

 

「あわわわー!! 暗くて足元が見えないよー!! ……あ、待って、排水溝の蓋が開いてて、腰までスッポリ埋まっちゃった! ……冷たーい。でも大丈夫!」

 

 ベルだ。彼女のドジは、都会の地下インフラすらも物理的に破壊しにかかっていた。

 

「見て見て、主人公! 下水道の中なのに、なんかキラキラ光る石が落ちてるよ! これって、私を応援してくれるゲーフリさんからのプレゼントかなー!? ……あ、これただの飴の包み紙だったー!!」

 

「ベル、不衛生だから拾うな!! あと早くそこから脱出しなよ!!」

 

 そんな僕らのドタバタを嘲笑うかのように、暗闇の奥からあのリズミカルな足音が聞こえてきた。プラズマ団だ。

 

 彼らは、都会のネズミのように下水道を這い回りながら、「ポケモンの解放」という高尚な理想を、ドブネズミの鳴き声のように響かせていた。

 

「待てよ、プラズマ団!!」

 

 僕は、ポカブを繰り出しながら叫んだ。

 

「お前ら、こんな臭い場所にポケモンを連れ込んで、何が解放だよ!! むしろ虐待だろ!! 僕の限定スニーカーが、一ばん道路の泥に続いて今度は下水で再起不能になった恨み、たっぷりと味わわせてやる!!」

 

「……フッ。災い転じて福となす、だ」

 

 チェレンが、暗闇の中でボールを構える。

 

「悪臭の中でも、僕らの『強さの香り』は消せない。……さあ、いこうか、主人公。この都会の排泄物と一緒に、彼らの歪んだ思想を押し流してやろう」

 

「……もう、鼻がバカになりそうだよ! やってやる!!」

 

 僕は、下水でグチョグチョになったスニーカーで汚泥を蹴り上げた。

 

 ヒウンの地下で繰り広げられる、泥沼のバトルの行方は――!?

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