ポケットモンスター ブラック・ホワイト とあるトレーナーが綴る、イッシュ地方の旅路 原作ゲーム沿いノベライズ   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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ホドモエジム:地底に響くドリル(あるいは、積み技の期待値を粉砕するチャオブーの拳)

 昇降機が最下層に到達し、鉄の扉が重い音を立てて開く。

 

 暗がりの中から聞こえてきたのは、心臓を直接削るような、耳をつんざく超高速の回転音だった。

 

「……遅かったな。だが、待った甲斐はありそうだ」

 

 ヤーコンの背後で、巨大な鉄のドリルが土煙を上げている。

 

 彼が繰り出したのは、ホドモエの化身とも言えるポケモン――ドリュウズ。

 

 タイプは「地面・鋼」。高い攻撃力と、鋼タイプゆえの耐性、そして何よりその圧倒的な破壊力。

 

(……来るぞ。ドリュウズの十八番、『つるぎのまい』からの抜き性能。あれを一回許せば、こっちのパーティは文字通り粉砕される)

 

 僕はポカブ……今は進化したチャオブーを前に出した。

 

 炎・格闘。タイプ相性ではこちらが有利だ。だが、素早さ種族値ではドリュウズに軍配が上がる。一撃で落とせなければ、返しの「じしん」でこちらが沈む。

 

「……ドリュウズ、『じならし』だ!」

 

 ヤーコンの怒号。ドリュウズが地を叩き、衝撃波がチャオブーの足元を掬う。

 

 ダメージ以上に痛いのは、追加効果による「素早さランクダウン」だ。

 

「(……チッ、計算が狂った。素早さを下げられたら、次のターンの先手は取れない。確定で後攻になる)」

 

 これがヤーコンの戦い方だ。搦め手ではなく、真っ向から相手の機動力を削ぎ、確実に自慢のドリルを叩き込む。

 

 チャオブーのHPゲージが、目に見えて黄色へと変わっていく。

 

「どうした、ガキ! 理想を語る口が止まってるぜ!」

 

「……うるさい。計算はまだ終わってない!」

 

 

 僕は叫んだ。

 素早さを奪われた。攻撃力も向こうが上。なら、このターンで博打(運ゲー)に勝つしかないのか?

 

 いや、廃人の辞書に博打という言葉は、最終手段としてしか載っていない。

 

「チャオブー、『つっぱり』! ドリルを正面から止めろ!」

 

 チャオブーが踏ん張り、回転するドリュウズをその両腕で受け止める。

 

 火花が散り、肉が焦げる音が響く。だが、この「接触」こそが僕の狙いだった。

 

「(……いまだ。ポカブの頃から磨いてきた、この世界特有の『重み』を見せてやれ!)」

 

 相性有利の格闘技。多段ヒットの期待値。

 

 ドリュウズの鉄の身体に、チャオブーの重い拳がめり込む。一発、二発……そして四発。

 

 砂煙が晴れた時、膝をついていたのはドリュウズの方だった。

 

「……災い転じて福となす、か。……いや、これはただの『執念』の結果だ」

 

 ヤーコンは無言でドリュウズをボールに戻し、カウボーイハットを深く被り直した。

 

 地底に響いていたドリルの音が止まり、静寂が戻る。

 

「……いい拳だった。持っていけ、クエイクバッジだ。……お前の『真実』、少しは見せてもらったぜ」

 

 受け取ったバッジの重みは、これまでのどのバッジよりも、土の匂いと熱を帯びていた。

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