ポケットモンスター ブラック・ホワイト とあるトレーナーが綴る、イッシュ地方の旅路 原作ゲーム沿いノベライズ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
電気石の洞穴という名の「遅延工作ダンジョン」をようやく抜け、僕の眼前に広がったのは、滑走路が街を貫くという狂気の都市設計――フキヨセシティだった。
「……まぶしい。人工的な放電じゃなくて、本物の太陽光が眼鏡に反射して、僕の乏しい視力を奪いにきてるよ!!」
そこには、白衣を着たおじさんが、これ以上なく「イベントNPCです」という顔で突っ立っていた。アララギ博士の父、通称アララギパパだ。
「やあ、主人公くん! 旅はどうだい? 図鑑は順調かな?」
「パパさん! 順調なわけないでしょ!! 四九三匹を強制送還(リストラ)したゲーフリさんの野望のせいで、僕の図鑑はスカスカなんだよ!! 一五六匹の『新種ですけど何か?』って顔をした連中と、毎日泥沼の戦いを繰り広げてる僕の身にもなってよ!!」
そんな僕の叫びを、パパさんは「ハハハ、若者は元気だね」という、アニポケのモブ並みのスルー力で受け流した。
「ところで、この街のジムリーダー・フウロくんが、タワーオブヘブンへ向かったんだ。怪我をしたポケモンを助けに行ったらしい。君も行ってみるといい」
「怪我!? いや、それよりジムリーダーなら仕事(バトル)をしてよ!! バッジを寄越してよ!! なんでこの世界の公務員(ジムリーダー)は、どいつもこいつも職場放棄して私用で外出するんだよ!! 働き方改革の方向性が間違ってるだろ!!」
僕は絶叫しながら、タワーオブヘブンへ続く7番道路を見上げた。
この道路。この長い一本道。
廃人としての僕のセンサーが、嫌な予感を察知して激しくアラートを鳴らしている。
「(……出る。ここには、三段階進化の癖にレベル二十台で野生化している『ゼブライカ』や、やたらと攻撃力が高い『ハハコモリ』が、草むらから物理的に僕を殺しにくるんだ……!!)」
空を見上げれば、フウロの趣味だというプロペラ機が優雅に飛んでいる。
「重力からの解放!? 冗談じゃないよ!! こっちは地面に足をつけて、一歩ごとにエンカウントという名の『乱数ガチャ』を回してるんだ!! 掃除は全部ベルに……って、だから今ここにベルはいないって言ってるだろ!! 誰か僕のこのドロドロした精神を、フウロの飛行機で高度一万メートルから投棄してきてくれ!!」
僕は四本目のスプレーを空中に(意味もなく)噴射し、重い足取りでタワーオブヘブンへと向かった。
災い転じて福となす……?
んなわけあるか!! 待っているのは、ジムリーダーの「追っかけ」という名の不毛なパシリ業務だけだ!!