ポケットモンスター ブラック・ホワイト とあるトレーナーが綴る、イッシュ地方の旅路 原作ゲーム沿いノベライズ   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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リゾートデザート:古代の城とダークトリニティ(あるいは、砂嵐の中でHPが削れる無慈悲なコスト計算)

 伝説のポケモンをNに分捕られ、龍螺旋の塔から叩き出された僕らを待っていたのは、イッシュ地方の「環境汚染」の象徴――リゾートデザートの猛烈な砂嵐だった。

 

「……痛い! 痛すぎるだろ!! ゲーフリさん、この砂嵐のダメージ判定、一歩進むごとに僕の精神的HPを物理的に削りにきてるんだけど!!」

 

 一歩ごとに「砂が舞い落ちる」という演出のせいで、移動速度が極端に低下する。廃人にとって、環境ダメージとは演出ではなく「スプレーの持続歩数」と「手持ちの耐久」を天秤にかける、最も不毛なコスト計算の対象でしかない。

 

「見てよ、チェレン。この砂に埋もれた『古代の城』。ここには、伝説を呼び戻すための『ライト(ダーク)ストーン』があるらしいけど……それより先に、僕のスニーカーの隙間に砂が入って、ジャリジャリいう不快感の方が伝説級だよ!!」

 

「やれやれ。主人公、君は世界を救う鍵を前にして、まだ靴の中の衛生状態を気にしているのかい?」

 

 チェレンが、ゴーグルを完璧に装着し、砂嵐の中でも視界を1.0に保ちながら冷徹に言う。

 

「古代の城は、プラズマ団が占拠している。アデクさんも先に向かった。……ほら、行くよ。砂に足を取られて『素早さ(S)』を落としている暇はないんだ」

 

「おっはよー!! ……あ、待って、口の中に砂が入って『ホガッ……ペッ!』」

 

 そこへ、砂丘の頂上から勢いよく転がり落ちてきたベルが、全身をきな粉餅のように砂まみれにして滑り込んできた。

 

「……ぷはっ! 大丈夫だよ! 見て見て、砂漠のダルマッカ、すっごく熱いよ! 私、抱っこしようとしたら、リュックのチャックが熱で溶けちゃった! ゲーフリさん、この子の体温設定、火傷じゃ済まないレベルだよぉー!!」

 

「ベル!! だから膝の血と、今度はその焦げたリュックをどうにかしなよ!! 誰がその砂だらけの着替えを洗濯すると思ってるんだよ!!」

 

 そんな僕らの騒ぎを、不気味な「無音」が切り裂いた。

 どこからともなく現れたのは、影のように実体のない三人組――ダークトリニティ。

 

「(……出たよ。公式が用意した、中二病の究極進化系みたいな忍者集団!!)」

 

 彼らは一切の感情を排した声で、僕らに告げた。

 

「……無駄だ。ライトストーンはここにはない。……我らが王、Nは既に先を見据えている。……君たちの足掻きは、砂漠に消える一粒の砂に等しい」

 

「……はぁ!? ここにはない!? だったら、なんで僕はわざわざ砂嵐の中でスプレーを三本も消費して、この迷路みたいな地下施設に潜ったんだよ!! ゲーフリさん、この『無駄足イベント』という名のプロット、僕の労働時間を何だと思ってるんだよ!!」

 

 ダークトリニティは、僕の怒号をBGMにして、煙のように消え去った。

 

「……フッ。災い転じて福となす、だ」

 

 チェレンが、砂まみれの僕の肩を叩いて不敵に笑う。

 

「ストーンがないのなら、いっそこの砂漠で『シンボラー』を乱獲して特攻(C)の努力値を稼げばいい。それが、この理不尽なイベントを攻略するための、廃人の正しい『仕返し』だよ。……さあ、いこうか、ソリュウシティへ」

 

「もうヤケクソだよ! やってやるよ!!」

 

 僕は、砂で目詰まりしたモンスターボールを無理やり投げつけた。

 

「行け、チャオブー! ライトストーンがないなら、代わりにその辺の野生ポケモンを全部なぎ倒して、僕のイライラを数値化して世界に叩きつけてやるんだ!! 掃除は全部ベルに……って、ベルは自分のリュックの火消しで手一杯かよ!!」

 

 空に舞う砂塵と、僕の執着。

 物語は、存在しないストーンを追いかけるという「公式の徒労」を抱えながら、歴史の重い街・ソリュウへと流れていく。

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