ポケットモンスター ブラック・ホワイト とあるトレーナーが綴る、イッシュ地方の旅路 原作ゲーム沿いノベライズ   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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ソウリュウジム:アイリスとのドラゴン対決(あるいは、ドラゴンタイプという名の種族値の暴力)

 ソウリュウジムの重厚な扉を開けた瞬間、僕は自分の目が「ドット抜け」を起こしたのかと思った。

 

「……は? なあ、チェレン。ジムの内部に巨大な龍の首が二つ生えてるんだけど。これ、生き物? それとも、市長(シャガ)の趣味が暴走した巨大な盆栽なの!? ゲーフリさん、最終ジムだからって物理演算を完全に放棄してない!?」

 

 龍の首をガッコンガッコンと動かし、上下左右に振り回されながらようやく辿り着いた最上階。

 そこにいたのは、威厳たっぷりな市長……ではなく、野生児のオーラを全身から放つ少女、アイリスだった。

 

「……えへへ、待ってたよ! 竜の心、君にも聞こえるかな?」

 

「聞こえないよ!! こっちは龍の首に振り回されて、三半規管が『りゅうのいかり』状態でボロボロなんだよ!! アイリス、君がジムリーダーなのはいいけど、その髪型でどうやってこの狭いギミックを移動してるんだよ!! 髪のボリュームだけで当たり判定が二倍くらいあるだろ!!」

 

 アイリスは僕のメタなツッコミを、竜巻のような笑顔で吹き飛ばした。

 

「いくよ! 私の自慢のパートナー、オノノクス!! 激しく、熱く、パパパパーンって暴れちゃって!!」

 

「パパパパーンって何だよ!! 擬音がIQ3くらいしかないのに、出てきたオノノクスの攻撃力(A)はIQ200レベルで高いじゃないか!! 汚い、汚すぎるぞドラゴンタイプ!!」

 

 アイリスが放ったオノノクスの「りゅうのまい」。

 攻撃と素早さが、僕のエンブオーの将来性と共に一段階上昇する。

 

「(……ッ!? 出たよ、積み技!! ゲーフリさん、最終ジムで『りゅうのまい』からの全抜きを狙ってくるなんて、初心者お断りにも程があるだろ!! 僕は今、かつてガブリアスにパーティを壊滅させられたあの日のトラウマを、物理的に再生させられてるんだよ!!)」

 

 僕は絶叫した。

 

「ふざけるな!! こっちはタワーオブヘブンで望まぬ特攻(C)を稼ぎ、砂漠で砂を噛み、ソウリュウの地名表記ミスで精神的ダメージを受けた、どん底の廃人なんだぞ!! アイリス!! その天真爛漫な笑顔で、僕の緻密なダメージ計算を物理的に破壊しにこないでよ!!」

 

 オノノクスの「げきりん」が、エンブオーを襲う。

 だが、耐えた。HP1。

 ……そう、一話でラグを汚され、二話でベルに靴を濡らされ、これまで散々理不尽な目に遭ってきた僕の怨念が、エンブオーに「こらえ」状態並みの執念を与えたのだ!

 

「いけ!! エンブオー!! 相手がドラゴンなら、こっちは『数値への執着』だ!! その脂ぎった鼻から『もろはのずつき』を捻り出せ!! 反動ダメージで相打ちになっても、僕の執念でバッジだけは get してやるからな!!」

 

 大爆発。

 最後は、物理法則を殴り倒す力技でレジェンドバッジをもぎ取った。

 

「……フッ。災い転じて福となす、だ」

 

 チェレンが、いつの間にか横で自分のバッジを磨きながら不敵に笑う。

 

「バッジが8つ揃ったのなら、もはや僕らを止める仕様(コード)は存在しない。……さあ、いこうか、10番道路。チャンピオンロードのその先へ」

 

「もうヤケクソだよ! やってやるよ!!」

 

 僕は、震える手で最後のバッジをケースに叩き込み、雪の予報が出始めた10番道路へと駆け出した。

 

「掃除は全部ベルに……って、彼女、龍の首が動くたびに『あわわわー!』って叫んで逆方向に運ばれていったけど、大丈夫なのかな!?」

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