ポケットモンスター ブラック・ホワイト とあるトレーナーが綴る、イッシュ地方の旅路 原作ゲーム沿いノベライズ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
ソウリュウジムでアイリスの天真爛漫な「りゅうのまい」による全抜き(未遂)を根性で耐えきり、ついに8つ目のレジェンドバッジを手に入れた僕。
だが、ジムを出て10番道路に一歩足を踏み入れた瞬間、僕は立ち止まった。
「……重い。BGMが、これまでの『冒険だぜ! ヒャッハー!』っていう軽薄なノリを完全にかなぐり捨てて、物理的な質量を持って僕の鼓膜にのしかかってくるんだけど!!」
10番道路のBGM。それは、イッシュ地方の物語が終焉に向かっていることを告げる、あまりにも切なく、そして決意に満ちた旋律だ。
「ゲーフリさん、演出の緩急がエグすぎない!? さっきまで『龍の首が動くー! あわわー!』って騒いでたベルの笑い声すら、このメロディに飲み込まれて『過去のアーカイブ』みたいに聞こえちゃうじゃないか!!」
僕は、震える手でゴールドスプレーを噴射した。だが、霧の中に現れたのは野生ポケモンではなく、二人の親友だった。
「……主人公。ここで君と戦うのが、僕の『真実』だ」
チェレンが、眼鏡の奥の瞳にこれまでにない熱を宿して、モンスターボールを握りしめている。
「強さとは何か。アデクさんに問いかけられたあの日の答えを、僕は数値や理屈ではなく、君とのバトルで証明したいんだ。……いくよ。僕の、最高のパーティで!」
「チェレン……。お前、いつになく格好いいじゃないか。でも、そのシリアスな雰囲気のせいで、僕が今朝から履き替えてきた『替えの靴下(二足目)』がまた伝線しそうな予感がするよ!!」
一方で、ベルは少し離れたところで、僕らを見守っていた。
「……えへへ。私は、二人のバトル、見てるだけで胸がいっぱいになっちゃう。……私は研究者への道を選んだから。二人の『強さ』を、ちゃんと図鑑に記録(メモ)しておくね。……あ、でも、主人公、そんなに泣きそうな顔しないで? 私のミジュマルが、またスニーカーを洗ってあげるから!」
「ベル!! それは洗浄じゃなくて『水没(デバフ)』だって何度言えばわかるんだよ!! 応援の仕方が物理的に破壊的なんだよ!!」
シリアスなBGMをBGMに(ややこしい)、僕とチェレンの、旅の総決算とも言えるバトルが始まった。
「(……ああ、わかってるよチェレン。お前が努力値を振る時間を削ってまで悩み抜いた『答え』、僕のポカブ……いや、エンブオーの熱い拳で受け止めてやるよ!!)」
僕は絶叫した。
「行け、エンブオー! 相手はチェレンのジャローダだ!! 相性は最高、僕らの執着は最強!! この10番道路を、僕らの青春という名の『乱数消費』で真っ赤に染め上げてやれ!!」
バトルの火花が、夕暮れの10番道路に散る。
災い転じて福となす……?
そんな言葉じゃ足りない。この泥だらけのスニーカーで歩んできた一歩一歩が、今、チャンピオンロードへの扉を開く鍵になるんだ!