ポケットモンスター ブラック・ホワイト とあるトレーナーが綴る、イッシュ地方の旅路 原作ゲーム沿いノベライズ   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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Nの城:七賢人の包囲とジムリーダー集結(あるいは、大人たちがいいところを全部持っていく瞬間)

 アデクさんの敗北という「現実」を叩きつけられ、ポケモンリーグが物理的にNの城に乗っ取られた絶望的な状況。僕は震える膝を叩き、泥だらけのスニーカーで、天高くそびえ立つ城の入り口へと踏み込んだ。そこを待ち構えていたのは、プラズマ団の思想の根幹を支える「七賢人」という名の、あまりにもキャラの濃すぎる老人たちの集団だった。

 

「……は? なあ、チェレン。見てよ。あそこに横一列に並んで、時代錯誤なローブを翻しながら説法を始めてるおじいちゃんたち、誰だよ。七賢人っていうか、完全に『早朝の公園で太極拳をしていたはずが、急に世界征服の野望に目覚めてしまったご近所の連合会』にしか見えないんだけど。ゲーフリさん、最終決戦の門番にこの渋すぎるビジュアルを配置するなんて、若年層のプレイヤーを置き去りにしてない!?」

 

 七賢人の一人、ヴィオが冷徹に、そして説教じみた声で僕たちの退路を断つように告げた。彼はその杖を地面に突き立て、数式と理想を信じない僕たち「無垢なトレーナー」を、思想の暴力で押し潰そうとしてきた。

 

「……愚かな。数式を解けぬ子供よ。王の理想の前に、君たちの絆という名の『不確定要素』は、もはや塵に等しい。……ここで朽ち果て、新しい世界の礎となるがいい。……トモダチ(ポケモン)たちを解放し、君たちのその汚れたラグの記憶ごと、物理的に消去してあげよう」

 

「ラグの記憶を消すのはいいけど、その『トモダチ解放』っていう名の強制的な財産没収はやめてよ!! ヴィオさん、賢人ならもっとこう……『知略の限りを尽くして包囲する!』みたいな盤石の陣形を見せてよ!! なんでこの最終局面で、老人七人で通せんぼっていう、最高に物理的(フィジカル)な嫌がらせを仕掛けてくるんだよ!! 介護の現場かと思ったら、まさかのデモ活動の最前線じゃないか!!」

 

 七賢人が一斉にモンスターボールを構え、絶体絶命の包囲網が完成する。

 

「(……ッ!? 出たよ、圧倒的な数攻め!! ゲーフリさん、一人の主人公に対して七人の大人がかりでくるなんて、これまでの『正々堂々とジム戦』っていうルールはどこに捨ててきたんだよ!! 僕のエンブオーがいくら高火力でも、七対一なんていう不条理な計算式、僕の脳内メモリじゃ処理しきれないよ!! まさに十五年間の思い出を人質に取った、数の暴力だよ!!)」

 

 僕は絶叫した。この瞬間のために、僕はどれだけの泥水を啜ってきたか。だが、その時! 背後から轟音と共に、イッシュ地方を支える「大人たち」の叫びが響き渡った。

 

「待たせたな、少年! ここの掃除は、我々ジムリーダーが引き受けよう!」

 

 現れたのは、ヤーコンさんやカミツレさん、さらには大砲のフキヨセジムのフウロさんまで、イッシュ各地のジムリーダーたちが総出で駆けつけてきた。彼らは一斉にポケモンを繰り出し、七賢人の包囲網を物理的に蹴散らしていく。

 

「やれやれ。主人公、君は相変わらず主役の座を奪われるのが早いね」

 

 チェレンが眼鏡を拭きながら、ジムリーダーたちの豪華な競演に冷静な突っ込みを入れる。

 

「これがゲーフリの『粋な演出』だよ。君をラスボスの元へ行かせるために、かつての強敵たちが味方になる……。王道(プロット)の美しさを、君の執着で汚さないようにしてほしいものだね。……ちなみに、ベルはさっきからカミツレさんの衣装に感動して、『わあー! モデルさんだー! サインくださいー!』って言いながら、戦場のど真ん中で図鑑を差し出そうとしてるよ。踏み潰されるから止めてあげて」

 

「ベル!! それはサイン会じゃなくて『決戦の狼煙』だから!! 逃げろよ!! 自分のミジュマルが僕のスニーカーを『洗浄(完全破壊)』した時の、あの収拾がつかなくなる混乱を思い出して、一秒でも早くカミツレさんの影に隠れてよ!!」

 

「あわわわー! 主人公くーん、フウロさんが大砲で私を飛ばそうとしてるよー! 『城の上までショートカットしちゃう!?』って、笑顔が眩しすぎて断れないよー!! 大丈夫、この激アツな共闘、しっかり図鑑に全方位録画(連打)しとくから! ……あ、ヤーコンさんの帽子、近くで見るとすっごく年季が入ってるねー!!」

 

「帽子の鑑定をしてる場合かぁぁ!!」

 

 ジムリーダーたちが道を切り開き、大人たちの「あとは任せろ」という頼もしすぎる(メタ的には美味しいところを持っていかれる)背中に見送られながら、僕はNが待つ城の最上階へと、泥だらけのスニーカーで全力疾走を開始した。

 

「(……待ってろよN。大人たちが舞台を整えてくれたんだ。君のその『冷徹な数式』を、僕の『ラグを水没させられた恨み』という名の、解けない変数で物理的にぶっ壊してやるからな!!)」

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