ポケットモンスター ブラック・ホワイト とあるトレーナーが綴る、イッシュ地方の旅路 原作ゲーム沿いノベライズ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
Nの不気味なほど無垢な子供部屋を抜け、僕はついに城の最上階、王の間へと辿り着いた。そこには、背後に漆黒の翼を広げた伝説の巨神・ゼクロムを従え、理想の体現者として君臨するNが待っていた。その圧倒的なプレッシャーは、四天王戦でボロボロになった僕の精神を、物理的に押し潰そうとしてくる。
「……来たね、執着のトレーナー。……僕の傍らには、理想を分かち合う漆黒の英雄がいる。君の持っているその石……石ころのまま終わらせるか、それとも僕と対等の『真実』へと昇華させるか。選ぶのは君の心、そしてトモダチを信じる力だ」
「選ぶも何も、こっちは一話からずっとこの『石(リュウラセンの塔の遺物)』を大事に持ち歩いて、スニーカーの泥と一緒に磨き続けてきたんだよ!! Nさん、伝説を呼び出すならもっとこう……『いにしえの儀式で厳かに!』みたいな神秘性を見せてよ!! なんで僕が近づいた瞬間に、カバンの中の石が電子レンジのポップコーンみたいに激しく振動して、爆発寸前のエネルギーを放出し始めるんだよ!! ゲーフリさん、この光の演出、僕のニンテンドーDSの液晶の寿命を物理的に削りにきてない!?」
その時、僕の手にあった「ふしぎな石」が、白熱する光の渦へと姿を変えた。咆哮と共に現れたのは、真実を司る白き龍・レシラム。その巨大な翼がはためくたび、Nの城の豪華な壁紙が焦げ付き、僕の眉毛が熱風でチリチリになる。
「(……ッ!? 出たよ、パッケージを飾る伝説の二体同時降臨!! ゲーフリさん、この狭い城の最上階に、身長数メートルの怪獣を二匹も詰め込むなんて、物理的な衝突判定がバグを起こして画面がフリーズしそうだよ!! 僕のエンブオーなんて、この二匹の足元に転がってる『火のついた小石』くらいにしか見えないじゃないか!! まさに十五年間の思い出を人質に取った、最大級の視覚的暴力だよ!!)」
僕は絶叫した。この神々しい光景を前にしても、僕の脳裏に浮かぶのは、一話でラグを水没させたミジュマルの、あの無慈悲な放水の記憶だった。
「ふざけるな!! 伝説が目覚めたなら、こっちは『ラグを失い、スニーカーを泥に染めた苦節の旅』という名の真実を、その白い龍に乗せてぶつけてやるよ!! いけ、レシラム!! Nの掲げる『理想』なんていうキラキラした言葉を、その『クロスフレイム』という名の、物理的な熱量の暴力で焼き尽くしてやれ!! 伝説のドラゴンに跨がったからって、僕との『卵二千回の孵化作業の差』が埋まると思うなよ!!」
一方で、チェレンは崩壊する王の間の柱に掴まりながら、伝説の二匹のエネルギー干渉を冷静に記録していた。
「やれやれ。主人公、君は伝説のポケモンを『巨大なバーナー』か何かと勘違いしていないかい? だが、この二匹の激突……これは単なるバトルじゃない。イッシュの神話が、君の『執着』という不純物を取り込んで、新しい答えを導き出そうとしているんだ。……ちなみに、ベルはさっきからレシラムのふかふかの体毛に感動して、『わあー! この子、最高級の綿あめみたいだよー!』って言いながら、伝説のブレスが飛び交う中をダイブしようとしてるよ。炭になるから止めてあげて」
「ベル!! それは綿あめじゃなくて『神の業火』だから!! 離れろよ!! 自分のミジュマルが僕のスニーカーを『洗浄(消滅)』した時の、あの取り返しのつかない温度差を思い出して、一秒でも早くその毛から手を離してよ!!」
「あわわわー! 主人公くーん、ゼクロムさんの尻尾が発電機みたいに回って、私の図鑑がフル充電を超えてショートしそうだよー! でも大丈夫、この伝説のガチンコ対決、しっかり図鑑にスローモーション録画(連打)しとくから! ……あ、レシラムさんの鳴き声、『モエルーワ!』って聞こえるね! すっごく情熱的だよー!!」
「鳴き声の空耳を報告してる場合かぁぁ!!」
白と黒、真実と理想。二匹の伝説のドラゴンが空中で激突し、その衝撃波でNの城が物理的に悲鳴を上げる。僕はレシラムの背中の熱を感じながら、Nを見据えた。物語は今、全百話の折り返し地点を前に、イッシュ地方のすべてを焼き尽くし、再構築するほどの巨大な爆発(クライマックス)へと突入しようとしていた。
「(……見てろよN。君の理想の黒い龍がどれだけ強くても、僕のこの『スニーカーに染み込んだ泥の記憶』という名の真実が、最後には勝利という名の、重すぎる一撃を物理的に叩き込んでやるからな!!)」