ポケットモンスター ブラック・ホワイト とあるトレーナーが綴る、イッシュ地方の旅路 原作ゲーム沿いノベライズ   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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ドラゴン同士の激突:真実vs理想の答え(あるいは、伝説の技の演出が長すぎて、自分のターンが待ち遠しくなる瞬間)

Nの背後に控える漆黒の理想、ゼクロム。そして僕が従える純白の真実、レシラム。二匹の巨神が王の間の天井を物理的に突き破り、イッシュの空を二分するような咆哮を上げた。ついに始まった、世界のあり方を決める最終決戦。だが、その神々しい光景を前にしても、僕の脳内では「ある一つの懸念」が渦を巻いていた。

 

「……は? なあ、チェレン。見てよこれ。レシラムが『クロスフレイム』を溜めて、ゼクロムが『クロスサンダー』で応戦しようとしてるけど、そのエフェクトの豪華さのせいで、画面がガクガクになってない!? ゲーフリさん、これ演出の気合の入れ方が過剰すぎて、僕のDSのバッテリー残量が物理的に目減りしていくのが見えるんだけど。一話のラグ水没と同じくらい、僕の資産(ハードウェア)を危機に晒してない!?」

 

 Nは空中に浮かび上がる瓦礫の上に立ち、狂信的な光を宿した瞳で僕を見下ろした。彼はもはや人間ではなく、理想という名の数式を体現するプログラムの一部になったかのようだった。

 

「……フフ。真実を知る者よ。……伝説の龍が放つその光は、既存の概念を焼き払い、新しい秩序(コード)を導き出すための『答え』だ。……君がどれほど泥だらけのスニーカーで大地を歩もうとも、この理想の電撃の前に、その足跡は一瞬で消え去るだろう。……トモダチたちの自由を、この一撃で確定させるんだ」

 

「答えを出す前に、この『長すぎる技の演出時間』を短縮してよ!! Nさん、王様ならもっとこう……『電光石火のスピード決着!』みたいなテンポの良さを見せてよ!! なんで一回攻撃するたびに、空が割れて、大地が裂けて、宇宙の始まりみたいな映像を十秒も見せられなきゃいけないんだよ!! 演出は最高だけど、その間に僕のエンブオーが『待ちくたびれて欠伸(あくび)』をしてるじゃないか!! まさに一話から続く、僕の時間を人質に取った精神的ブラッドメールだよ!!」

 

 白と黒のエネルギーが激突し、王の間の空気がプラズマ化して僕の髪の毛を逆立たせる。

 

「(……ッ!? 出たよ、伝説専用の相乗効果!! クロスフレイムにクロスサンダーを被せると威力が倍増するなんて、そんなの初見殺しにもほどがあるだろ!! ゲーフリさん、この最終決戦で『物理法則を超えたコンボ』を強制的に見せつけるなんて、最高にSっ気が強すぎるよ!! 僕のエンブオーの『かえんほうしゃ』が、この伝説の輝きの中ではライターの火種くらいにしか見えないじゃないか!! 十五年間の思い出を人質に取った、視覚的テロリズムだよ!!)」

 

 僕は絶叫した。この神話の真っ只中にいても、僕の心を支えているのは、一話でラグを汚された瞬間に芽生えた「理不尽への反逆心」だった。

 

「ふざけるな!! 理想がどれだけ光り輝いていても、こっちは『ラグを買い換える資金さえ失った困窮の現実』という名の闇を、レシラムの翼に乗せて叩きつけてやるよ!! いけ、レシラム!! Nの掲げる『トモダチの解放』なんていう独りよがりな理想を、その『あおいほのお』で物理的に焼き尽くしてやれ!! 伝説のドラゴンだろうが神様だろうが、僕の二千回の孵化作業で鍛え上げた『Aボタンを連打する指の硬度』を突破できると思うなよ!!」

 

 一方で、チェレンは崩壊する床の上で眼鏡をクイと押し上げ、龍たちのエネルギー分布を冷静にデジタルカメラで記録していた。

 

「やれやれ。主人公、君の叫びは相変わらず情緒不安定だが、その『執念の質』だけは伝説の龍たちに認められたようだね。……この戦いは、単なる火力の競い合いじゃない。イッシュの神々が、君の『泥臭い人生』を世界の変数として組み込むための、壮大なデバッグ作業なんだ。……ちなみに、ベルはさっきからゼクロムの放電に合わせて、『わあー! 静電気で髪の毛が綿菓子みたいに広がっちゃったー!』って言いながら、戦場のど真ん中で手鏡を取り出そうとしてるよ。感電死するから止めてあげて」

 

「ベル!! それは静電気じゃなくて『神罰の雷』だから!! 離れろよ!! 自分のミジュマルが僕のスニーカーを『洗浄(蒸発)』した時の、あの救いようのない絶望感を思い出して、一秒でも早くその鏡を仕舞ってよ!!」

 

「あわわわー! 主人公くーん、レシラムさんの炎で私の帽子がポップコーンの匂いになってきたよー! でも大丈夫、この歴史的な大爆発、しっかり図鑑にマルチアングル録画(連打)しとくから! ……あ、Nさんの顔、伝説の技の演出の光に照らされて、ちょっとだけ『寂しそうな数式』に見えるねー!!」

 

「表情の分析をしてる場合かぁぁ!!」

 

 真実と理想、その境界線で爆発する純粋なエネルギー。レシラムが放った最後の一撃がゼクロムの電撃を物理的に押し返し、Nの理想を真っ向から貫いた。眩い光が収まった時、そこには片膝をついたNと、静かに翼を畳む二匹の龍の姿があった。物語は今、決着という名の「空白」を迎えようとしていた。

 

「(……見たかN。君の数式に『僕の汚れたスニーカーの質量』を加えた結果だ。理想だけじゃ、この泥だらけの地面を一歩も進むことはできないんだよ!!)」

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