ポケットモンスター ブラック・ホワイト とあるトレーナーが綴る、イッシュ地方の旅路 原作ゲーム沿いノベライズ   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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ゲーチスの介入:Nを『怪物』と呼び捨てる非情(あるいは、父親が一番空気を読めていない瞬間)

伝説の龍たちが奏でた神話の残響が、崩壊する王の間に重く沈殿していた。膝をつくNと、それを見つめる僕。そこには確かに、真実と理想が交わったはずの「絆」の萌芽があった。だが、その静寂を、カツン、カツンという、あまりにも場違いで不吉な足音が無残に踏みにじった。

 

「……は? なあ、チェレン。見てよこれ。あっちから、豪華すぎるローブを翻して、片目に変なスカウターみたいなの付けて歩いてくるおじさん、誰だよ。プラズマ団の支配者っていうか、完全に『親戚の集まりで、子供たちのゲーム機を勝手に取り上げて説教を始める、一番関わりたくないタイプの本家のおじさん』にしか見えないんだけど。ゲーフリさん、この感動のシーンのど真ん中に、こんな悪趣味なビジュアルの不法侵入者を許可したの!?」

 

 プラズマ団の真の黒幕、ゲーチス。彼は倒れたNを見下ろし、慈愛の欠片もない冷笑を浮かべながら、その喉から毒液のような言葉を吐き出した。

 

「……フフ。やはり『怪物』には、王の役目は荷が重すぎましたか。……Nよ、君はポケモンと心を通わせる能力を持つ、ただの欠陥品に過ぎない。……私の目的は、君を王に据えることではない。君を利用して伝説の龍を呼び出し、世界中のトレーナーからポケモンを奪い、私一人が絶対的な武力を保持する……。そのための、使い捨ての道具だったのですよ」

 

「道具って呼ぶ前に、その『親としての最低限の倫理観』をどこに捨ててきたのか説明してよ!! ゲーチスさん、黒幕ならもっとこう……『世界を救うために手を汚した!』みたいな歪んだ正義感を見せてよ!! なんで自分の息子同然に育てた相手を、数式の変数みたいに『ゴミ』扱いして平気な顔をしてるんだよ!! Nさんのあの純粋な理想を、お前のその卑劣な『虚飾』で汚すなんて、一話で僕のラグを水没させたミジュマルよりも性格が悪いだろ!! まさに十五年間の思い出を人質に取った、最悪の児童虐待だよ!!」

 

 ゲーチスの背後で、その邪悪な意志を形にしたかのような凶暴な影が蠢く。

 

「(……ッ!? 出たよ、真のラスボスのオーラ!! ゲーフリさん、Nとの決戦でヘトヘトになった僕の前に、こんな元気いっぱいで殺意満タンのボスを連れてくるなんて、最高に鬼畜な難易度設定だろ!! 僕のエンブオーの体力が赤ゲージなのに、休む暇も与えずに連戦(デスマーチ)に突入させるなんて、労働基準法に物理的に抵触してるじゃないか!! 十五年間の思い出を人質に取った、理不尽なパワーハラスメントだよ!!)」

 

 僕は絶叫した。この男の冷徹な言葉を聞いていると、一話でラグを汚され、ベルの無邪気な言葉に傷ついたあの日の僕の「小さな絶望」が、激しい「殺意」へと昇華されていく。

 

「ふざけるな!! Nさんを怪物と呼ぶなら、こっちは『ラグを買い換える夢を壊された廃人』という名の怪物を、お前のその歪んだ野望にぶつけてやるよ!! いけ、エンブオー!! ゲーチスの掲げる『ポケモン解放』なんていう薄っぺらい建前を、その『ニトロチャージ』という名の、物理的な加速と怒りの質量で粉砕してやれ!! 伝説の龍に拒絶されたお前に、僕の二千回の孵化作業で身についた『逆境を楽しむドMの魂』を突破できると思うなよ!!」

 

 一方で、チェレンは崩壊する王の間の入り口で、ゲーチスの発言内容をボイスレコーダーに記録しながら、冷酷な目で彼を射抜いていた。

 

「やれやれ。主人公、君の怒りは正論だが、この男はもはや言葉が通じる相手じゃない。……ゲーチス。君はポケモンを愛する心どころか、人間としての根幹すらも『支配欲』という名のバグで書き換えてしまったようだね。……君のような非合理的な悪を排除することこそが、僕の学んだ『強さ』の真の使い道だ。……ちなみに、ベルはさっきからゲーチスの巨大なローブを見て、『わあー! あのマント、広げたら公園のレジャーシートになっちゃいそうだよー!』って言いながら、戦場のど真ん中でピクニックの準備を始めようとしてるよ。踏み潰されるから止めてあげて」

 

「ベル!! それはレジャーシートじゃなくて『悪のカーテン』だから!! 近寄るな!! 自分のミジュマルが僕のスニーカーを『洗浄(抹殺)』した時の、あの救いようのない混沌を思い出して、一秒でも早くそのお弁当箱を仕舞ってよ!!」

 

「あわわわー! 主人公くーん、ゲーチスさんのスカウターから、すっごく不吉な警告音が聞こえてくるよー! 『私の野望の邪魔をする者は、分子レベルで分解します』って、目が笑ってないよー!! でも大丈夫、この親子の確執という名のドロ沼ドラマ、しっかり図鑑に高画質録画(連打)しとくから! ……あ、ゲーチスさんの髪型、近くで見るとすっごくトガってて、物理的に刺さりそうだねー!!」

 

「髪型の攻撃力(A)を分析してる場合かぁぁ!!」

 

 崩れゆくNの城。親に裏切られ、魂を砕かれたNを背負い、僕は最後の決戦へと向かう。ゲーチスの手がモンスターボールに伸びる。これから始まるのは、もはや神話ではない。一人の廃人と、一人の独裁者の、泥沼のような「現実(リアル)」の叩きつけ合いだ。

 

「(……見てろよゲーチス。お前がNの理想を笑うなら、僕は僕の『ラグを水没させた過去』を肯定するために、お前のその傲慢な数式を、物理的に叩き割ってやるからな!!)」

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