ポケットモンスター ブラック・ホワイト とあるトレーナーが綴る、イッシュ地方の旅路 原作ゲーム沿いノベライズ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
三つ子からバッジを(実質)カツアゲした僕らは、マコモという名の「寝不足気味な科学者」に頼まれ、街の東にある『夢の跡地』へと足を踏み入れた。
かつては研究施設だったというそこは、今や崩れかけた壁と雑草が支配する、廃墟マニア垂涎のスポット。……だが、そこで僕らの前に現れたのは、廃墟よりもずっと「現実離れした光景」だった。
「……なあ、チェレン。見てよ、あの浮いてるピンクのバク。あれが今回のターゲット、ムンナだよね? なんであんなに幸せそうに浮いてられるの? 僕なんて、ラグを汚されたストレスで昨夜は一睡もできなかったっていうのに!!」
僕は、クマの浮き出た目でポカブを抱えながら、宙に浮くピンクの物体にツッコんだ。
「やれやれ。主人公、君の睡眠不足は自業自得だよ」
チェレンが、廃墟の壁に刻まれた古い落書きを分析しながら眼鏡をクイッと上げる。
「マコモ博士の依頼は、あのムンナが出す『ゆめのけむり』の回収だ。これを手に入れれば、DSをネットに繋いで世界中のトレーナーの夢を覗き見……いや、共有できるらしい。ゲーフリが仕掛けた、グローバルなプライバシー侵害……じゃなくて、コミュニケーションの革命だよ」
「言い方考えろよ、チェレン!!」
「おっはよー!! 待ったー!? ……あ、待って、廃墟の階段が一段抜けてて、股関節が『こんにちは』しちゃった! ……イテテ。でも大丈夫!」
ベルだ。相変わらず、彼女の体は物理法則と関節の可動域を無視して動く。
「見て見て、ムンナ! かわいいー!! 私、この子の煙を吸って、パパに怒られない夢を見たいなー!! ゲーフリさん、そういう『現実逃避』の機能も付けてくれるのかなー!?」
「ベル、それは闇が深すぎるよ!!」
その時! 壁の影から、例の中世コスプレ集団――プラズマ団のしたっぱたちが、やけにリズミカルな動きで飛び出してきた。
「やめろぉ! そのムンナをこっちに渡せ!!」
したっぱの一人が、ムンナを囲んで蹴り飛ばす(フリをする)という、CERO:Aの限界に挑むような悪行を働き始めた。
「……ちょっと待てよ!!」
僕は、ポカブを地面に叩きつけるように繰り出した。
「お前ら、ポケモンの解放を謳ってるくせに、やってることは単なる『野生動物への嫌がらせ』じゃないか!! ゲーチスの高尚な演説はどこへ行ったんだよ!! 思想のブレが早すぎるだろ!! ゲーフリさん、これ台本ミスじゃないの!?」
「……フッ。災い転じて福となす、だ」
チェレンが、冷ややかにモンスターボールを構える。
「論理の破綻した相手には、理屈ではなく『威力』で分からせる。それがバトルの真理だよ。……さあ、いこうか。ムンナの夢を守り、僕らの『こだわり』を証明するために」
「もうヤケクソだよ! やってやるよ!!」
僕は絶叫しながら、ポカブに指示を飛ばした。
「行け、ポカブ! プラズマ団のガタガタな組織論を、その鼻息で吹き飛ばせ!! ムンナ! お前も煙ばっか吐いてないで、少しは僕らに良い夢見させてくれよ!! 掃除のいらない世界とかさ!!」
廃墟に響くポカブの咆哮と、プラズマ団の逃げ足の音。
僕らはこうして、マコモ博士の「C・G・I」への野望を叶えるための煙を手に入れたが……それは同時に、より深く、より混沌とした「イッシュの闇」へと引きずり込まれる合図でもあった。