ポケットモンスター ブラック・ホワイト とあるトレーナーが綴る、イッシュ地方の旅路 原作ゲーム沿いノベライズ   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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PWT(後):歴代ジムリーダーたちとの夢の対決(あるいは、新主人公がレジェンドたちの精神論を物理的な確率密度関数で上書きし始める瞬間)

PWT決勝戦。アリーナを包む歓声はもはや物理的な障壁となって、僕の思考を阻害しようと試みてくる。対峙するのは、他地方から招かれた「伝説」のジムリーダー。彼らがボールを握る指先からは、数えきれないほどの勝利と敗北を物理的に圧縮したような、濃厚な「オーラ」が放たれていた。……けれど、僕は思うんだ。……「絆」や「気合」といった非科学的な概念で、ポケモンの技の命中率が物理的に変動するなんて、あまりにも数学的な公平性を欠いているのではないか、と。

 

「……は? なあ、ヒュウ。見てよこれ。向こうのジムリーダー、僕の弱点をつく技を放つ直前に『魂の叫びを聞け!』とか言ってるんだ。……ゲーフリさん、この61話というクライマックスで、精神論が物理的なダメージ計算式に干渉してくるような演出を導入するなんて、バトルのゲームバランスを物理的に破壊してないかい?」

 

 ヒュウは隣のブロックで対戦を終えたばかりで、己の拳を物理的に震わせながら、トーナメントの影で暗躍するプラズマ団の機微に全神経を研ぎ澄ませていた。

 

「……ッ! 俺はレジェンドのサインを貰いに来たんじゃねえ!! この華やかな大会の裏で、妹のチョロネコを物理的に弄んでいる奴らがいるなら、俺は全地方のジムリーダーごと物理的にぶっ飛ばして道を切り開くだけだ!! 確率だの平衡だの言ってねえで、お前もその冷たいツタージャと一緒に、伝説の壁を物理的に粉砕しやがれ!!」

 

「ヒュウ、粉砕しても相手の『とくせい』が発動してこちらの攻撃が半減されるだけだよ。……効率的にいこう。……タケシさんのイワークの岩肌の硬度と、カスミさんのスターミーが放つハイドロポンプの流体運動。……これらを統合すれば、相手が『友情』という名のノイズで技の出力を120%に引き上げてくるタイミングは、既に統計学的に予測済みだ。……魂に身を任せるのは、戦術の最適解を導き出せない者の現実逃避だよ。……それは僕の構築する『PWT・レジェンド解体新書』において、最も排除すべき変数値なんだ」

 

 対戦相手が、かつての英雄(前作主人公)の面影を僕に重ねたのか、一瞬だけ瞳に懐かしさと期待を物理的に混在させた。だが、僕が放つ指示は、温かな思い出を凍らせるほどに冷徹で、正確だった。

 

「(……ッ!? 出たよ、世代交代の重圧!! ゲーフリさん、このタイミングで『過去作のBGM』をリマスター版で物理的に脳内に直接流し込んでくるなんて、最高にオールドファンの情緒を物理的に揺さぶりに来るだろ!! 僕のツタージャも、伝説のトレーナーの威圧感に、自分の『すばやさ』が物理的に0.8倍まで減速する未来を予見して、蔓のしなりを最高周波数迎撃モードに設定し直しているじゃないか!! 十五年間の思い出を人質に取った、歴史の破壊と再生だよ!!)」

 

 僕は静かに、相手の放つ「思い出」という名の補正を数式で無力化する。

 

「……無駄ですよ、レジェンドの皆さん。……君たちの積み上げてきた『経験』が、単なるパターン化された行動の蓄積に過ぎないなら、僕はそれを物理的な論理破綻として処理するだけだ。……聖域の光は僕の視界を眩ませるかもしれないが、僕の脳内にあるダメージ計算機は一ミリの誤差も許さない。……さあ、英雄という名の非論理を、僕の完全無欠の『新時代の独裁』の中に沈めてもらおうか」

 

 一方で、ベルさんは観客席のパニックをよそに、歴代ジムリーダーたちの美しいフォームをスケッチしながら、僕たちの「理論と魂の激突」を最新のセンサーで測定しようとしていた。

 

「やれやれ。カントーの皆さん、君たちの技はイッシュの大気組成を物理的に書き換えそうな熱量だけど、主人公くんのその『伝説の戦術をエラーコードとしてデバッグするような戦い方』は、ある意味でアクロマさんの改造よりも徹底してるね。……世界はよりシビアになった。誇りを盾にする者と、それを数値として解体する者。……ちなみに、ベルさんはさっきからアリーナの音響スピーカーに興味を持って、『わあー! この大出力振動板、すっごく震えてて、私の研究用サンプルの遠心分離機にするのにピッタリだねー!』って言いながら、戦場のど真ん中(放送席)でサンプル管を物理的にテープで貼り付けようとしてるよ。アリーナ全体の音響が物理的に不協和音になって、観客全員が『こんらん』状態になるから止めてあげて」

 

「ベルさん!! それは遠心分離機じゃなくて『一億人の期待を背負ったスピーカー(夢)』ですから!! 貼り付けないでください!! 二年前、誰かのスニーカーを『洗浄(水没)』させた時の、あの足元から聴覚が崩壊していくような絶望感を、世界大会のグランドフィナーレで再現しないでください!!」

 

「あわわわー! 主人公くーん、そんなに数学的な厳しさでレジェンドを圧倒すると、四天王のみんなが君を『感情を数値化した人工知能』として物理的にマークし始めちゃうよー! でも大丈夫、この『夢の対決の中で行われる精密な解剖手術』、しっかり図鑑のハイスピード記録モードで一秒間に一万回連打しとくから! ……あ、タケシさんのシャツのシワ、二年前よりもすっごく幾何学的なラインを描いてて、物理的に大地との調和を感じさせて綺麗だねー!!」

 

「繊維の摩擦係数を分析してる場合ですか!! ……でも……この頂点に立つ感覚。……悪くないね」

 

 拍手が鳴り止み、僕の手元には「最強」という名の物理的なトロフィーと、対戦相手との間に芽生えた(と、周囲が勝手に解釈している)絆という名の不可視のデータが残った。伝説と新星。二年前、誰かがこの地で終わらせたはずの夢は、今、さらに巨大な「真理」への階段となって僕の前に提示された。僕は一瞬だけ熱を帯びた(物理的なオーバーヒートだと否定した)掌を見つめ、論理性という名の出力をさらに加速させながら、次なる目的地、冷たい鋼の要塞・プラズマフリゲートへの最適解を導き出した。

 

「(……見ていてください、前作主人公さん。あなたの背中を追った英雄たちは、今や僕にとって『踏み越えるべきデータ』になりました。……僕はそれを、僕のやり方で物理的に論理制圧し、真実の向こう側にある完全なる世代交代を証明してみせますから!!)」

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