中立魔術師は黄昏を纏う   作:zeroが個人的に好き

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第十五話 魔女の終幕

夜。

柳洞寺は、完全に沈黙していた。

 

風が止んでいる。

虫の声もない。

 

「……罠だな」

モードレッドが笑う。

 

「当然だ」

 

俺は石段を踏みしめる。

「終わらせに来たんだ。歓迎されるさ」

 

背後。

セイバー、凛、アーチャー。

全員、覚悟が固まっている。

 

士郎もいる。

 

「今回は下がってろ」

俺は言う。

 

「でも」

 

「守る側でいたいなら、生きろ」

短く。

 

士郎は唇を噛み、頷く。

 

     ◆

 

本堂。

扉は開いていた。

 

中央。

魔法陣。

 

その上に、キャスター。

 

「来ると思っていたわ」

 

穏やかな声。

だが背後の魔力は桁違いだ。

 

「準備は万端よ」

 

天井に浮かぶ巨大な術式。

吸い上げられた魔力が渦を巻く。

 

「この寺ごと都市を呑み込む結界」

 

凛が舌打ちする。

「本気ね……!」

 

「あなたを壊すために、街一つ賭ける価値はある」

 

俺を見る。

「観測者改め、参加者さん」

 

微笑む。

「壊れる覚悟は?」

 

「壊れない覚悟ならある」

即答。

 

魔力回路を開く。

 

「行くぞ!」

 

     ◆

 

セイバーが突撃。

黄金の剣が閃く。

 

キャスターは空間を捻じ曲げ回避。

 

「遅い!」

 

上空からアーチャーの矢。

だが多重障壁が防ぐ。

 

「数で押すつもり?」

 

紫電が走る。

対軍級魔術。

 

「凛!」

 

「分かってる!」

 

宝石が砕け、衝撃を相殺。

だが押し負ける。

 

「健!」

 

「任せろ!」

 

踏み込む。

投影。

 

今度は一振りではない。

脳裏に浮かぶのは、無数の剣。

 

「――投影、連結」

 

痛みが増す。

だが止めない。

 

地面に剣を突き立てる。

魔法陣へ干渉。

 

「馬鹿な」

キャスターが目を見開く。

 

「構造を、読んでいる?」

 

「観測は終わった」

 

押し込む。

 

「今は壊す」

 

陣が軋む。

 

だが。

 

「甘い!」

キャスターが叫ぶ。

 

魔力爆発。

吹き飛ばされる。

肺から空気が抜ける。

 

「健!」

士郎の声。

 

立て。

消えるな。

ここで倒れたら、また同じだ。

 

夕焼けを思い出せ。

終わりの色じゃない。

 

始まりの色だ。

 

「……モードレッド」

 

「待ってたぜ」

 

赤雷が爆ぜる。

全魔力解放。

 

「一発で決める!」

 

「合わせろ!」

 

俺は最後の投影を行う。

 

脳が焼ける。

だがイメージは鮮明。

 

破壊する剣。

干渉する刃。

 

「セイバー!」

 

「承知!」

 

黄金の光が収束。

三方向同時。

キャスターを囲む。

 

「愚かな!」

 

防御陣、最大展開。

だが。

 

「足りない」

俺は踏み込む。

 

剣を突き立てる。

陣の“核”へ。

 

「これで終わりだ」

 

モードレッドの雷。

セイバーの一閃。

アーチャーの矢。

 

同時。

閃光。

 

     ◆

 

静寂。

 

崩れ落ちる魔法陣。

天井の術式が砕け散る。

 

中央。

膝をつくキャスター。

 

「……まさか」

血を吐く。

 

「観測者が、ここまで」

 

「違う」

 

俺は近づく。

「参加者だ」

 

キャスターが笑う。

弱々しく。

「面白いわ」

 

視線が士郎へ。

「あなたたちの理想……最後まで持つかしら」

 

「持たせる」

即答。

 

「壊れない」

 

キャスターは目を閉じる。

「なら、見届けたかった」

 

身体が光に包まれる。

 

霧散。

消滅。

 

     ◆

 

夜風が吹く。

柳洞寺の結界は消えた。

街の魔力流動が正常に戻る。

 

「……終わったか」

 

凛が座り込む。

「ええ」

 

セイバーが頷く。

 

士郎が俺を見る。

「健」

 

「ああ」

息を吐く。

 

重い。

だが。

 

「一つ、越えた」

 

観測者では辿り着けなかった場所。

自分の手で壊した。

 

そして。

残った。

 

空を見る。

夜は深い。

 

だが遠くに、薄く光がある気がした。

 

キャスターは退場。

策は潰えた。

 

だが。

黒幕はまだ動いている。

 

愉悦の司祭。

赤い英霊の迷い。

そして聖杯。

 

最終章が、静かに口を開ける。

 

次回「境界の色」

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