中立魔術師は黄昏を纏う   作:zeroが個人的に好き

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第二十五話 叛逆の騎士

泥の核が脈打つ。

黒い心臓。

街を呑み込む鼓動。

 

俺は立っている。

膝は震え、視界は揺れる。

 

だが倒れない。

 

「健!」

士郎の声。

 

「行け!」

 

凛の結界が泥を押し返す。

セイバーが道を切り開く。

屋根の上から矢が降る。

 

アーチャー。

 

「10秒だ!」

 

モードレッドの雷が炸裂する。

赤い鎧が泥を裂き、隣に立つ。

 

モードレッド。

 

「遅ぇぞ、境界野郎」

 

「うるさい」

 

息を吐く。

「準備はいいか」

 

「叛逆の騎士を誰だと思ってやがる」

 

雷が弾ける。

泥が焼ける。

 

「核はあそこよ!」

凛が叫ぶ。

黒い塊が、さらに鼓動を速める。

 

まるで拒絶するように。

 

     ◆

 

「来るぞ!」

セイバーの警告。

 

泥が壁のように立ち上がる。

触れれば焼ける。

 

「任せろ!」

 

モードレッドが踏み込む。

赤雷が迸る。

泥を吹き飛ばす。

 

「今だ!」

 

走る。

足が悲鳴を上げる。

胸が焼ける。

 

だが止まらない。

 

核が目前に迫る。

 

「健!」

士郎の声。

 

振り向かない。

これは俺の間合いだ。

 

     ◆

 

泥が腕を掴む。

骨が軋む。

引き剥がす。

 

色が暴れる。

 

群青。

白銀。

朱。

薄金。

 

「使え!」

モードレッドの叫び。

 

「限界だろうが関係ねぇ!」

 

笑っている。

 

「死ぬ叛逆は三流だ!」

 

思い出す。

前夜の言葉。

 

「生き残って抱えろ!」

 

核が脈打つ。

鼓動が重なる。

俺の心臓と。

 

「黄昏」

 

橙と紫が重なる。

世界が染まる。

 

――1秒。

泥を断つ。

 

――2秒。

朱の夕が背に現れる。

大剣の重み。

 

――3秒。

薄金の朝日が腰に灯る。

刃が震える。

 

相性の良い二本。

夕と朝日。

終わりと始まり。

 

「いい色だ」

モードレッドが笑う。

 

「やれ!」

 

――4秒。

夕で核を斬る。

弾かれる。

 

――5秒。

朝日で穿つ。

亀裂。

 

――6秒。

泥が爆発する。

身体が焼ける。

 

――7秒。

血が喉を上る。

視界が揺れる。

 

――8秒。

モードレッドが前に出る。

雷を纏い、泥を押し返す。

 

「越えんなよ!」

叫ぶ。

 

「生き残れ!」

 

――9秒。

全ての色が腕に集まる。

夕と朝日が共鳴する。

橙と紫が濃くなる。

 

――10秒。

叩き込む。

終焉の一撃。

始まりの刃。

 

核が割れる。

 

     ◆

 

時間が戻る。

衝撃が一気に来る。

 

吐血。

膝が折れる。

視界が暗い。

 

だが。

核は砕けている。

 

黒い心臓が崩壊する。

泥が逆流する。

空の孔が閉じ始める。

 

「やった……!」

凛の声。

 

セイバーが剣を下ろす。

アーチャーが静かに頷く。

モードレッドが肩を掴む。

 

「立て」

乱暴だが支える。

 

「終わってねぇぞ」

 

泥が最後の抵抗を見せる。

だが勢いは弱い。

 

「残ったな」

モードレッドが笑う。

 

「ああ」

息を吐く。

 

「越えてない」

 

10秒。

また越えていない。

吐血はある。

全身は砕けそうだ。

 

だが。

意識はある。

立っている。

 

「上出来だ」

 

雷が最後に弾ける。

泥が消える。

空が静かになる。

孔が閉じる。

 

夜が戻る。

 

     ◆

 

瓦礫の中。

聖杯は消えた。

願いの器は砕けた。

 

叛逆は成功した。

王にではない。

 

運命に。

自分に。

 

モードレッドが空を見上げる。

「王様に言っとけ」

 

ニヤリと笑う。

「俺は最後まで暴れたってな」

 

光が彼女を包む。

 

「ありがとな、境界」

 

消える。

静寂。

 

俺は空を見る。

 

夜が明けかけている。

 

橙と紫が混ざる。

黄昏の色。

まだ、纏っている。

 

だが。

終わりじゃない。

 

次回

「結末を知る少年」

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