パーペトレイターズ・ギルト   作:【自爆】

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お誕生日おめでとう、ハンナちゃん(激遅)


慣れてきた三人と、慣れてきた出来事を

とあるカフェの一角に、休憩しているボク達がいた。

 

 

「正しくないな……」

 

 

ユキちゃんが混じった人助けにも慣れてきたボク達。

ヒロちゃんからヒロちゃんらしい言葉が出てきても、ボクとユキちゃんは気にしなかった。

 

 

「この人助け、終わりが見えてこないんですが」

「悩みや苦しみなんて無限に出てくるんだよ」

「正しくない……」

「……力を持たない少女三人で、全て解決できると?」

「できるわけないよ。でも、減らすことはできるかもしれない。それに、するしかない」

「だがこれは……うーん……」

「というか、この問答何回目?飽きないの?」

「あなたがいつ嘘をつくか待ってるんです」

「いや、これは正しくない」

「勝率は?」

「喜ばしいことにゼロです」

「間違いなく正しくない!」

 

 

ボクとユキちゃんは気にし始めた。

逆にヒロちゃんらしくない、正しい正しくないの連呼。

ヒロちゃんを曲解してる人の物真似みたいになっている。

 

こんなにもめんどくさそうなヒロちゃんは初めてだった。

ボクは流石に、隣に座っているヒロちゃんの様子を伺う。

スマホとにらめっこしているようで、横からのぞき込んでみると。

 

 

「バルーン……」

「ああ、最近流行りのストリートアーティストらしい」

「私にも見せてください。……これは」

「正直綺麗だ。だが、ストリートアートというのは基本落書きだ」

「許可されていない行為は好ましくない、そう思わないか……ってこと?」

「そうだ」

 

 

一つの小さな画面を覗きながら、きっと三人は別々の考えが浮かんでいた。

 

一人は、誰かも知らずの存在に憤り。

一人は、間違いなく感じる魔法の存在を。

一人は、知っていながら、最も知らない少女のことを。

 

まあ、二つは完全にボクの妄想だけど。

そこまで考えて、ボクは一つ気になった。

 

 

「それに怒るのは分かるんだけど、そこまで怒ってるのはなんで?」

「いつもこんな感じでうるさいのでは?」

「もう少し静かだよ」

「……君達は私のことをやかましく思ってたのか?」

「いや?」

「全く」

「ホントか……?」

「そんなことより、どうして?」

「そんなことよりでは……まあ、いいか」

 

 

ヒロちゃんはスマホの画面を動かして、またボク達に見せた。

画面には、見覚えのある建物と見覚えのない絵が写っていた。

それを見て、納得する。

 

 

「そういうことか」

「手に届く範囲の悪事だからですか」

「どうせ暇だろう?探しに行こう」

「まあ暇だけど……らしくないよ、ヒロちゃん」

「……そ、そうか?」

「特に最近のヒロちゃんらしくない。答えてくれないなら行かない」

 

 

困ったように苦笑いを浮かべるヒロちゃん。

それを黙ったまま見つめていると、観念したように答えてくれる。

 

 

「君のせいのように聞こえるから言いたくなかった」

「すればいい。権利がある」

「君の自己犠牲的な精神は悪くはないが、関係のないものまで背負う必要はない」

「出るんでしょう?ここで愛し合っていても進みませんよ」

「愛し合うって……いや、進まないのはそうだな。再確認しておきたかったんだ」

「再確認?」

「自分の正しさが分からなくとも、正しくないことは区別しないとだろう?」

 

 

だから常識だけは再認識していた、ということらしい。

本人は迷っているようだけど、ヒロちゃんが思っているよりヒロちゃんは間違ってないと思う。

……だけど。

 

 

「正しい連呼はうるさいかな」

「普通に視線が集まってたのでやめてください」

「……正しくないらしいな、私は」

 

 

 

 

 

カフェを出たボク達は、絵があるらしい場所までやってきた。

そこには画像で見た時以上の、見事としか言えない、羽ばたく紅い蝶の絵が描かれていた。

両隣は素直に感嘆の息を零しているけど、ボクは嫌な記憶を思い出す。

 

 

「流石に目の当たりにすると、圧倒されるな……」

「……ふむ、これは……」

 

 

特に封じられてもない絵を間近で見る二人を見つつ、周りを見渡す。

当たり前のように、誰もいない。

そのことに違和感を覚えたボクは、ユキちゃんに小声で質問する。

 

 

「ユキちゃん、何かした?」

「少し人払いをした程度です」

「ああ、なるほど。優しいね」

「私が人間と会いたくないだけです」

 

 

通りで、有名なバルーンの絵があるのに誰もいないと思った。

調査するにはちょうどいいと思いつつも、こう自由に魔法を使われてもいいのかな。

そう思っても、誰かを害したわけじゃないからと気にしないことにする。

 

 

「君達は私に隠し事が多いな……ともかく、何か手掛かりがあるかもしれない。探そう」

「こういうのは描き切った後、すぐ撤退するものじゃないんですか?」

「かといって他に何かあるかと言われてもね」

「正直、私のアイデンティティの再確認のようなものだからな。軽く調べたらいつもどおりにしよう」

「正直ですね」

「そう言っただろう」

 

 

そういうことで、三人で周りを探し始めた。

探すとして、手掛かりらしい手掛かりは壁の絵以外には無く。

真面目に探す気もなかったから、長い時間も使わない。

 

だけどボクはふと、思った。

 

 

「どうして、バルーンはここで絵を?」

「ネットで軽く調べてたが、神出鬼没でどこでも描くんだろう?たまたまじゃないか?」

 

 

そうヒロちゃんは言うけど、ボクは何か引っかかっていた。

バルーンは一周目でも有名で、住んでる場所に現れたなら騒ぎになっていたはず。

そんなこと、忘れることは無い。

 

バタフライエフェクト、という言葉を前に聞いたことがある。

鬱の時に、同じような思考をしたのを思い出す。

だけどボクが少し羽ばたき方を変えただけで、こうも変わるものなのかな。

 

ユキちゃんの方をふと見る。

彼女は、ボク達とは反対方向へと目を向けていた。

 

 

「ユキちゃん」

「……こっちです」

 

 

どうしたのと聞く前にユキちゃんは、早足でそのまま行ってしまった。

その背を見送るわけにもいかないので、ヒロちゃんに声をかけて追いかける。

ろくに説明もせずに、好き勝手動くなんて、と呟くとヒロちゃんから何とも言えない目を向けられた。

 

早歩きと言っても、歩幅はあまりボク達と変わらない。

ちょっと駆ければすぐに追いつく。

 

どこに向かっているのかは聞かなかった。

珍しく自分から動いたユキちゃんが、意外だったから。

目的地は絵から最も近い、ゴミ捨て場だった。

 

何が、と言う前にボク達はあるものが目に入った。

ゴミ回収の日はまだなのに、そこには一枚の紙が落ちていた。

 

最も近かったボクが拾い上げると、稚拙な絵が視界を埋める。

 

 

「これは……」

「目が肥えた後に見ると、なんとも」

 

 

二人がそう表現するように、それはまるで一桁の子供が描いたような絵だった。

でも。

 

 

「だが、こちらの方が好みだな」

「ええ、私もです」

「……二人とも、そういう心あったんだ」

「「喧嘩売ってるのか?(んですか?)」」

 

 

ボクもこれの方が好き、そう笑って答える。

そう言おうとした、その時だった。

 

 

「見ないで!!」

 

 

間違いなくボク達の方へと、飛んできた大声にボク達は顔を向ける。

するとそこには、ボク達より少し小さめな背の女の子が、必死の形相でボク達を見ていた。

そしてすぐに走り寄ってきて、ボクの持っていた絵に手を伸ばす。

 

 

「よっと」

「あっ!?」

「危ないっ、な」

 

 

ボクは絵を頭の上まで上げて取れないようにすると、女の子はこけそうになり、ヒロちゃんに受け止められた。

 

危ないな……と呟きながら三人を見ると、一人は頬を膨らませて、二人は呆れた目でボクを見返していた。

 

 

「君というやつは……」

「最低ですね」

「ヒロちゃんを信じてたんだよ」

「真実なんだろうが、それが逆に嫌だな」

「見ないで!返して!」

「それはともかく、この子は……」

 

 

ヒロちゃんに捕まったまま暴れるも、身体能力の差か何もできていない女の子。

とはいえ、このまま任せっぱなしにしていると流石のヒロちゃんも傷つきかねない。

ボクは女の子に近づいて、手に持っていた絵を手渡すように差し出した。

 

 

「ごめん、破かれそうになったからつい避けちゃった」

「うぅ……」

 

 

解放された女の子は勢いよく絵を掴み取り、後ろ手で隠す。

 

 

「うちの馬鹿が申し訳ないことをした」

「馬鹿を許してやってください」

「もしかして結構根に持ってる?」

「う、ううん……大丈夫だよ」

「その絵も、見て悪かった。大切なものだったんだな」

「え?」

「違うのか?てっきり、大事だから取られたくないのかと……」

「……違うよ。だって、失敗作だもん」

 

 

落ち込みながらそう言う姿は、同年代としても少し幼く見えた。

余り関われなかったけど、この子は幼児というか、年下に感じていたのを思い出した。

ちょっとわがままで、自分の欲求に素直で……失礼なことだけど、少し親近感を覚える。

魔法もおしゃれで、誰かを傷つけることは出来なそうなボクとは正反対の……

 

そういえば、この子の魔法は本人の意思で制御できなかった。

でも、さっきの絵は一切動かない、普通の絵だった。

ううん、バルーンの絵も動かなかった、ということは時間が経つと動かなくなる……?

 

 

「……ねえ、どうして失敗作なの?」

「だって、動かないんだもん」

「さっき君の絵を見たよ、壁に掛かれた方。そっちも動いてなかった」

「時間が経つと、止まっちゃうんだ。でも、それまではたくさん動いてくれるの」

「じゃあ、その絵は最初から?」

「……うん。みんな、あんな絵が大好きだから」

「ちょっと待ってくれ。私の記憶が正しければ、今日見た絵は二つしかないんだが……まさかか?」

「そのまさか、らしいですよ。良かったですね、目的のバルーンと出会えて」

 

 

ヒロちゃんは純粋に驚いた表情で、ユキちゃんは何を考えているか分からない表情で話題の子を眺める。

 

そしてボクはもはや慣れてしまったように、バルーン……城ケ崎ノアちゃんと顔を合わせていた。

見たい魔女候補は?(必ず出てくるとは限りません)

  • レイア
  • ノア
  • アリサ
  • シェリー
  • ハンナ
  • アンアン
  • マーゴ
  • ナノカ
  • ミリア
  • ココ
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