パーペトレイターズ・ギルト   作:【自爆】

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お誕生日おめでとう、アンアンちゃん(未登場)


類は友を

「ねえ、こんなのはどうかな?」

「…………凄く似合ってる」

 

 

値札が付いたアクセサリーを頭にかざして飾った()()()()()()に対して、どもりながらも正直な感想を伝えると、目の前の少女はやっぱりそうだよね、なんて嬉しそうに笑いながら次はどれにしようかと探す。

 

ボクは頭を抱えたくなりながら、見たことのある知らない少女の着飾りに付き合っていた。

彼女曰く、デートと。

 

 

「何でも似ちゃうんだよ、なのちゃんは。なのに最近はなんだか黒い格好ばっかりで……それに見てないところで、変な喋り方してるの」

「……まあ、そういう時期なんじゃないかな」

「言ってくれたら私も一緒にしてあげるのにな~」

「絶対やめた方がいいと思う」

 

 

一緒にしてほしくないから隠れてるんじゃないかな。

……かっこいいと思っていることを恥ずかしいことだと思ってるのも、なかなか変な話だけど。

 

 

「でも、よかった」

「……何が?」

「エマちゃんがいてくれて。なのちゃんのことをよく知ってるのは私だけど、それでも他の人の意見って大事だから」

「ボクはなのちゃんを知らないよ」

「今目の前にいるでしょ?」

 

 

確かに。

ボクは乾いた笑いが一瞬だけ零れ出た。

呆れか、恐怖か、定かじゃないけど、間違いなく面白いという感情じゃないのは確かだった。

 

アクセサリーショップにある品を、楽しそうに見つめる目の前の少女は、見覚えがあり、知らない子だった。

 

女は化粧で変わる……なんて言うけど、それは顔だけの話。

1㎝だろうと肉体を、髪の毛を変えるのはそう簡単ではなくて。

その髪を染めるのでさえ、数分で終わることではなくて。

 

もしそんなことが出来るのなら、魔法しかありえない。

 

化粧室から出てきたリボンの少女に、そう考えることしかできなかった。

まだ悩んでいる彼女に、質問を考え、聞いてみる。

 

 

「なのちゃんのために、プレゼントを?」

「うん、まだまだ早いけど、クリスマスプレゼントを考えておきたくて。近場だとバレちゃうから、そこそこ遠出して来たの」

「そうなんだ。……大好きなんだね」

「うん。正直、少しも離れたくないくらい」

「じゃあ、どうして?サプライズ好きだから?」

 

 

そう言うと、少女は確かめる手が止まり、寂しそうに笑った。

 

 

「結局、人は一人だから。……守ってあげるって約束しても、守れなかったから」

「……」

「だから今度は、私の命に代えても守ってあげたい」

「だから先に、形見を渡そうとしてるの?」

「……やっぱり賢いね、エマちゃんは。女々しいかな?」

「女の子だから、正しいんじゃないかな」

 

 

慰めにもならない、適当に適当を重ねたような言葉。

だけど、それで彼女は満足げに頷いた。

 

 

「うん、これに決めた」

 

 

 

 

 

元の姿に戻った少女と共に、ボクはヒロちゃんのところへと歩いていた。

 

 

「もう、一緒に来てる人がいるなら言ってくれてよかったのに」

「つい忘れてた。文句は……大人しく受けることにするから、大丈夫」

 

 

通知まみれのスマホをポケットにしまいながら答える。

ホントに?と苦笑する少女の手には、ブレスレットが入っている包みが大切そうに置かれていた。

ブレスレットには、絆や魔除けという意味があるらしい。

彼女がそれを知っているかは知らないけど、そこには必ず、愛があったんだと思う。

 

ボクは、それを無駄にして、コケにして、馬鹿にして、殺した。

 

 

「ボクのこと、殺したい?」

「ううん、君が殺したわけじゃないもん」

「そっか。……でも、殺したのと同じ。君を殺したのは間違いなくボクだし」

「君の意志?」

「ボクの意志」

「そうは見えなかったけど」

「……どこまで覚えてるの?」

「もちろん、君に殺されるまで。思い出したのはさっきだけどね」

「にしては落ち着いてた。ボクは泣いて叫んだのに」

「このリボンのおかげかな。昔から、これがあるとどんなことがあっても落ち着けたから」

 

 

殺伐とした会話ながらも、ボク達は穏やかに話していた。

初対面なのに、昔からの旧友のように。

一時間程度なのに、長い時を共にしたように。

殺し殺された仲なのに、慰め合う仲間のように。

 

それは、ボクの心に巣食った闇を消し去って、空いた部分が救われたような気がして。

 

 

「……そんなこと、正しくない」

 

 

ボクはそう呟いて、心の闇を呼び戻した。

救われるなんて、おこがましい。

 

 

「そのプレゼント、形見じゃなくてちゃんとあげてほしい」

「え?」

「ボクが何とかするから。幸せな思い出にしてあげて」

 

 

彼女が救われないのも、おかしいから。

リボンの少女は出会った時のように目を丸くして、そして微笑んだ。

 

 

「……優しいんだね」

「そんなことないよ、ボクは……」

 

 

ボクは、最期の時までは、正しくありたいだけなんだ。

そんなことは言わず、尻すぼみした言葉は虚空へと消えていった。

少女も追いかけるようなことはせず、そっかと零す。

 

 

「あ」

「どうしたの?」

「そういえば、名前、私だけ知ってるな~って」

「一応看守とは名乗ってたよ。何故か()()()()()()けど」

「リボンのおかげかな?……そうそう、名前名前。私はね――」

 

「お姉ちゃん?」

 

 

ボク達の目線は、目の前から飛んできた聞き覚えのある声へと飛んだ。

そこには、二人の黒髪の少女が並んでボク達を見ていた。

ふと思った。

 

姉妹は、驚いた顔も似ているんだね。

あとやっぱり……怒られるのは好きじゃないな。

 

 

 

 

 

ボク達は近くにあった休憩スペースで座っていたり、飲み物を買っていたりしていた。

 

 

「君は怒られるのが好きなんだな」

「こう見えて結構堪えてるんだけど」

「なら今度からは、勝手にどこかに行くのはやめるんだ。子供じゃないんだからな」

「子供だけど……」

 

 

何度も似たような会話をしていると、お互い雑になってくる。

慣れた漫才みたいになってきているけど、ヒロちゃんとしては本気で直してほしいみたいだ。

 

それを見ている二人のうち、一人は楽しそうに微笑みながら、自販機で飲み物を買っていて。

一人は……

 

 

「ところで……」

 

 

ヒロちゃんが小声でボクに話しかけてくる。

目線は少し離れた、妹の方に。

 

 

「君は黒部……ナノカに何かしたのか?」

「……一応、さっき初めて会ったばかりなんだけどね」

「一応……?だとして、あの憎々しげな目はなんだ?この世で一番嫌いなものを見る目だぞ」

「そっちは久しぶりに会ったよ」

「エマ、君が?……好まれることはあっても憎まれないだろう」

「……そうかな」

 

 

直球にそう褒められるのは、なんだか不思議な感覚。

最も、今のボクには受け付けてはいけないものだけど。

 

 

「まぁいいと思うよ。それより、どうして一緒にいたの?」

 

 

聞けば、ヒロちゃんは何とも言えない顔で私も睨まれそうだ……なんて呟いてから話し始めた。

 

 

「君を探していた時のことだ。入れ違いにならないように、できるだけあの店の近くをうろうろしていたんだが……」

「それで?」

「……少し、泣いて、困っているの子が、居たんだ」

「……」

「……」

「二人とも、お茶にしたんだけど……よかった?」

 

 

ありがとうと受け取れば、視線が更に痛くなる。

ボク達は顔を見合わせて、苦笑した。

 

 

「あまり睨まれても、怖くないな」

「絶対直接言わないでね」

「聞こえてるわ」

 

 

喉を潤わせても、すでに出ていった言葉は取り消せなかった。

腕を組んでボクとヒロちゃんを強く見つめてくるのは、黒部ナノカちゃん。

 

やっぱりあの時とは違って、幼く見える。

……何故か、もう少し幼くなっているようにも感じるけど。

そういえば、なんでボク達は一緒にいるんだろうね。

 

 

「ねえ」

 

 

そんなことを考えていると、ナノカちゃんは近くに寄ってきた。

 

 

「どうしたの……どうしたんですか?」

「別にため口でいいわ。私もため口だから」

「それなら。それで、どうしたの?」

「あなた、お姉ちゃんとなにしてたの?」

 

 

ボクはチラッとお姉ちゃんの方を見る。

ニコニコと笑いながらウインクしてきたから、まあ大丈夫かと答えることにした。

 

 

「デートしてた。誘われたから」

「は?」

 

 

ダメだったらしい。

可愛らしい顔がとんでもないことになってしまって、もう大変。

助けを求めてヒロちゃんを見ると、距離を離して顔を逸らしていた。

逸らすのはボクの専売特許なのに。

 

 

「冗談、冗談だよ。たまたま落とし物を拾って渡しただけ、それだけ」

「えっ!?デートじゃないの、エマちゃん……」

「ごめんちょっと黙って」

 

 

火に油、どころか酸素缶がぶん投げられてしまったくらいの勢いがナノカちゃんに宿る。

ナノカちゃんと言えば、感情を表に出さない、冷静沈着……うん、まあそんな子。

だけどこうやって、ぷんぷん怒った顔をしているのが本来のナノカちゃんなんだ。

 

何があったかは、予想がついた。

二人は、お互いに大切なんだ。

魔法が無ければ、ずっと一緒に、幸せだったのかな。

 

 

「本当に何もなかったよ。それに、ずっとナノカちゃんの話をしてたし」

 

 

そう伝えると、視線の圧はゼロじゃなくとも、マシにはなった。

そういえば二人に会うまで、ナノカもずっと姉のことを話していたよ、とはヒロちゃんの談。

 

 

「じゃあ、なんでお姉ちゃんは私を置いて行ったの?ずっと一緒って言ったじゃない」

「なに?てっきり二人で来てるのかと思ったんだが」

「……こっそりついていったんだろうね。隠れるのは得意……だったんじゃないかな」

 

 

ヒロちゃんが本当に?と言いたげな顔をするけど、証拠は反対にいる気まずそうなナノカちゃんが表してくれている。

お姉ちゃんはそんなナノカちゃんに近づいて、優しく抱きしめる。

 

お姉ちゃん、というよりはなんだか恋人の抱擁のようで。

言い換えると、インモラルな雰囲気だった。

 

 

「そっか、だから来てたんだ。ごめんね、なのちゃん」

「……うん」

「寂しくさせちゃったね。……なのちゃん、腕見てくれる?」

「?うん」

 

 

ナノカちゃんは大人しく見せると、お姉ちゃんが滑らかにその手首をオシャレに飾り付けた。

シンプルな、白黒のブレスレット。

 

 

「これって……」

「それとね」

 

 

今度は髪に付けられたリボンを、ナノカちゃんに移した。

 

 

「なのちゃんを守るための、お守り、その二」

「……お姉ちゃん」

 

 

ベンチに座っているナノカちゃんと、片膝をついて手を取っているお姉ちゃん。

それはまるで、一枚の絵画のよう。

そしてそれをボク達は、さりげなく距離を離して見ていた。

 

 

「ボク達はお邪魔だったみたいだね」

「なんというか……あれは大丈夫なのか?」

「正しくないって?」

「違う、いや違うわけでもないが……言葉にしづらいな」

「……でも、分かるよ。ボクも正しくないって思うよ」

「君が言うのか?」

 

 

ボクだから、言えること。

 

彼女は、死ぬ気だ。

 

ボクと同じ眼をしているから、分かる。

罪に耐えられない、だけど、自分のことは覚えていてほしい。

リボンはきっと、本当にお守りなんだろうけど。

 

あのブレスレットは、ナノカちゃんに絡みつく想いだと、ボクは知っていた。

 

 

「忘れないでね、ナノカちゃん」

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