貴殿転生 元の知識で本気出す 作:肉と米と愛
「パウロ……で合ってるよな?俺はヘルス・ノトス・グレイラット。ルーデウスの親友だ」
「ああ?ノトスだと?」
パウロはノトスという単語を聞いた瞬間、苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。
「お前、ノトスってことは……」
「ああ、俺の父は、ピレモン・ノトス・グレイラット。あんたの弟だ」
俺がそう言うと、少しの沈黙の時間が流れる
「……なるほどな。それで、お前は何しに来たんだ?哀れな兄の姿を見てこいっていう父からのおつかいか?」
「父はそんな事を言う人じゃあない。俺が今日ここに来たのは、ルーデウスをはじめ、フィットア領で居なくなった人々を探すのが目的だ」
パウロは睨みつけるように俺を見ているが、俺は話を続ける。
「ルーデウスは共に、ロアの町で修行をしていた仲だ。少ない時間だったが、俺にとっては大切な友達なんだ」
「……信用ならねぇな」
パウロが信じれない様子で首を傾げる。
「全て真実でございます。パウロ様」
その時、横にいたアルフォンスがフォローに入ってくれた。
「ルーデウス様とヘルス様は非常に仲がよろしかった故、この様な変わり果てた地に赴き、我々と共に捜索の協力をしてくれるのでしょう」
「………そう、なのか?」
俺は頷く。
「ああ、さっきも言ったが、俺はルーデウスの親友だ。だから今日ここに来た」
そう言うと、パウロの目からやっと疑いの眼差しが消えた。
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パウロは、とてつもないリーダーシップを持っていた。
俺以外にも、フィットア領で居なくなった人達の捜索に協力しようとしてる奴はいた。
同じ目的を持って集められた人々だが、当然探し方や行動には一人一人違う。
そんな一癖も二癖ある奴らをパウロは当たり前のようにまとめていた。 認めたくはないが、確かに父よりも領主の才能はありそうだ。
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「俺はとりあえず、ミリス神聖国に向かおうと思う」
薄暗いテントの中で、屈強そうな冒険者達に囲まれているパウロが言った。
フィットア領に戻ってきた数少ない人々から聞いた情報だが、どうやらあの青い柱のような光に包まれた人々は、突然どこか分からない場所に飛ばされてしまったらしい。
ある人はノトス家が統治しているミルボッツ領に、ある人は大陸の端にある海岸など、とにかく場所はランダムだ。
まだ帰ってきてる人が少ないだけで、もしかしたら他の大陸に飛ばされた人がいるかもしれない。
その事を踏まえれば、パウロの言う他大陸へ調査域を広げるというのは一理ある。
しかし……
「それはいいが、なぜミリスに?」
俺は純粋な疑問を投げかけた。
なぜミリス神聖国なんだ?
確かにミリス神聖国は、このアスラ王国に次ぐ力を持つ国だ。
そしてミリス神聖国には、ミリス教と言う、前世でいえばキリ○ト教に近い宗派に属する人が多数いる。
安全な大陸から徐々に攻略していこうと言う作戦なのだろうか?
「……俺の妻はラトレイア家の血筋だ。しかし今、妻は行方不明で、どこにいるか検討もつかない。だからミリス神聖国にある妻の実家を尋ねて、捜索の協力をしてもらうのさ」
「ラトレイア家だと……?」
ラトレイア家って、俺でも分かる家系の名前だ。
確かミリス神聖国の有名な貴族の一族。
ミリス神聖国のラトレイア家、そしてグレイラット家の血を受け継ぐ息子ルーデウス。
そう考えると、ルーデウスのあの化け物具合にも説明がつく。
「分かった。そう言う事ならお前はミリスに……ん?」
気がつけばパウロの横に、小さな女の子がいた。
その子はパウロの足を掴んで離れようとしない。
「誰だ?その女の子」
「あぁ、ノルン、すまんな。この子は俺の娘だ」
「ムスメ?」
娘って、つまりルーデウスの妹って事か?
ルーデウス、あいつ妹がいたのか……
ルーデウスが異常ってだけかもしれないが、この子もなんかすごい力を持ってたりするのだろうか?
挨拶をしようとしたが、俺と目が合うと、ノルンはパウロの後ろに隠れてしまった。
随分とシャイな女の子だな。
まあいい。
「じゃあ俺は、ここら辺の捜索をしよう。もうほとんど見つかっていると思うが、まだ行方不明がいるかもしれないしな」
「あぁ、助かる。じゃあ早速、俺はミリスへ行く為の準備をしてくる」
そうして、濃すぎる情報を手に入れて、会議は終了した。
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次の日にはパウロはもうミリスへ出発をしてしまっていた。
パウロ、あいつはまだ見極めが必要な男ではあったが、サウロスと同じ時の様に、噂に聞いていたほどの嫌悪感はなかった。
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アルフォンスによると、ここら一帯の捜索は他の冒険者に任しているらしい。
カンカンカン!
俺は金属の皿を二つ持ち、みんなに聞こえるように力強く鳴らした。
「あったかい飯だよ!美味しいよ!」
そう言うわけで、俺は荒れ果てた地で炊き出し係に任命された。
炊き出し係といっても、出来上がった料理をつぎ、配るだけで、作るわけではない。
料理には自信があるが、ここはプロフェッショナルのお母さん達に任せるとしよう。
それにしても……
「………もう空かよ」
食料が少な過ぎる。
舐め回すように容器を見るが、もう一人分の料理も残っちゃいない。
一応全員に食料は行き渡っているが、それでも人々は常に空腹だった。
空腹。
それは人々にとって最大の苦痛であり、不安でもある。
腹が満たされなければ、心も満たされないし、労働意欲も下がってしまう。
せめて空腹さえ紛らわす事ができれば………
「………あ」
その時、俺の脳に天命が舞い降りた。
そうだ、これなら………
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俺は皆んなに夢で出した食べ物を与える事にした。
これならば腹は満たされる事はないが、一時的に空腹を紛らわす事はできる。
食べ物は、そうだな。
俺がいつも食べていた料理にしよう。
俺の能力は、想像以上に好評だった。
事前に、これは腹が満たされるだけで栄養になる訳ではないと忠告しておいたが、人々は涙を流しながらそれを食べていた。
「美味しい……」
「温かい飯なんて、数ヶ月振りだ……」
うんうん。
やっぱり沢山食べれるってのは幸せだ。
夢のもん食い過ぎて、本物の飯を食わなくなった、とかにならなきゃいいが、とりあえずはこれで良いだろう。
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そんなこんなで、忙しい毎日を過ごしていると、アルフォンスからは休めと言われてしまった。
「復興に協力して頂けるのは非常にありがたいのですが、あなた様が体調を崩しては元も子もありません。この辺りで一度、お休みください」
「アルフォンスさん、お気持ちは嬉しいですが……」
そんな事しなくていいと伝えようと思ったのだが、魔力も毎日結構な量を消費していて、だいぶ無くなってきている感じもする。
ここらで少し、休むのも必要か……
無理をして体調を崩したら、アルフォンスの言う通り元も子もないからな。
そういう事で、俺はしばしの休暇をもらい、この周りを散歩する事にした。
周りにはテントや、ロアの町の残骸が点在しており、思った以上に復興が進んでいない事を感じさせられた。
「……あれ?」
そうしてしばらく歩いていると、町の残骸に貼り付けられた掲示板を見つけた。
掲示板をよく見ると、そこには色々なものが書かれていた。
「これは………」
俺の目は、一つの紙に集中していた。
死亡者リスト
体全体が雷に打たれたような緊張が走る。
リストに載っている名前を恐る恐る確認する。 ルーデウス、エリス、ギレーヌ。
どちらも載っていない、良かった。
三人とも、一応まだ死亡は確認されていない。
本当は死んでいて、遺体が見つかっていないだけってのは………
やめよう、そんな事考えても埒が明かない。
続けて下を見てみる。
ロールズ………
彼の名はフィッツ……シルフィエットから聞いていた名前と一致する。
彼女の父だ。
横に書いてある名前は、フィッツの母親か?
この紙に彼らの名前が書かれているって事は………
フィッツの家族は死んだ。
俺はそう結論づけた。
何度もフィッツに渡された家族の名前が書かれた紙と、死亡者リストに書かれた名前を照らし合わせるが、一文字も間違わず、完璧にあっている。
「んん………」
どうする?
フィッツには、家族は生きていると嘘を付くべきか?
いやだめだ。
それだと後で知った時、さらに深い悲しみを与える事になってしまう。
本人には辛いだろうが、やはり真実を話すべきだ。
彼女がそれを納得しなかったとしても、俺にはそれを伝える義務がある。
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しばらくして、俺はテントに戻り、ベットの上で今後の行動を考えていた。
これからどうする?
戻るか、残るか。
戻ってフィッツの事や、今のフィットア領の事を話し、助けを求める。 残ってフィットア領に戻ってきた人々の手助けをする。
戻った方が後の方は楽だろうが、さっき俺が悩んでいると、みんなからは残ってほしいとお願いされてしまった。
まあ確かに、俺の能力はこういう時に便利だからな。
「せめて、きっかけがあれば……」
そんな事を考えていると、段々と意識が彼方へと薄れていった。
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「やあ、久しぶりだね」
……あぁ、誰だっけ?
「もう、酷いじゃないか、僕の事忘れるなんて」
………ああ、思い出した。
そのムカつく声、ヒトガミ……だったか?
「そうそう、思い出してくれて良かったよ」
ヒトガミ……
確かお前と会ったのが、俺が九歳くらいの頃だよな。
何年も俺を放置しておいて、今更何の用だよ。
「よく覚えてるじゃないか。でもあの時の僕の助言、役に立ったろ?」
助言、ロアの町に行くってやつか?
あれは元々行く予定だったんだ。
別に言われなくたって行ってたさ。
「じゃあ僕の力を証明する為に、今度も君に助言をあげよう」
……なんでそうなるんだよ
「君、今悩んでるんだろ?王都に戻るか、ここに残るか。悩んでいる君を助けてあげようと思ってさ」
別に助けなんていらねぇよ。
ていうか、なんだお前がそれを知ってんだよ。
「前に言ったろう?僕は神様なんだよ。君の行動とか会話は、全て僕に筒抜けなのさ」
うげぇ、気持ち悪りぃな。
だがよ、百歩譲ってお前が神だとするなら、ルーデウスとかエリスの居場所を教えろよ。
あとギレーヌとかフィリップ、ボレアス家の皆んなの居場所とか、誰だっていい、俺の知り合いの居場所を教えてくれ。
「要望が多いなぁ、僕は神様だよ。もっと丁重に扱ってくれよ」
そういうふざけた所が信じれねぇんだよ。
「あぁ、ごめんごめん。でも僕の助言は聞いておいた方がいいよ。そうすれば君は無駄な事をしなくて済むしね」
無駄な事って……
はあ、これ以上話していても埒があかない。
もう分かった。助言を言うだけ言ってみろよ。
内容によっては考えてやる。
「そうかい?では助言を授けましょう」
「ヘルスよ、あなたはある人物に再会するまでフィットア領で活動を続けなさい。さすればいずれあなたは、自身が望んでいた人物と再会する事ができるでしょう」
エコーを残して、ヒトガミは消えていった。
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この半年、フィットア領の活動を続ける事に決めた。
ヒトガミの言う通りに動くのは癪にさわるが、ある人物と再会できるというのには興味がある。
しかしそれは嘘の可能性もある。
あいつが嘘をつく理由も分からないが、とりあえず半年はここで活動する事に決めた。
しかしフィッツに家族が死んでいた事、ルーデウスは生きている事は伝えておきたかったので、手紙は出しておいた。
後、父にできればフィットア領の復興の助けをして欲しいという事も。
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俺はヒトガミの言うある人物が来るまでの間、建築の手伝いや炊き出し、子供達に勉強などを教えていた。
おかげで、随分とここの人々にも認められてきた。
子供達は俺を先生と呼び、慕ってくれている。
大人達は俺を頼れる男だと、感謝してくる。
これだ……
こういうのが、俺の求める幸せだ。
彼らのその感謝はどこまでも純粋なんだ。
貴族の媚を売る為にする感謝とは、訳が違うのだ。
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ここでの生活も慣れてきた時、その人物は現れた。
「ギレーヌ!」
「ヘルス………ヘルスなのか!?」
ギレーヌだ!
ギレーヌは変わらずな姿で突然現れたが、その瞳はどこか曇っていた。
「ギレーヌ! 良かった……無事だったのか!」
「ああ、なんとかな。お前以外には、誰もここに戻ってきていないのか?」
ギレーヌは辺りを荒れ果てたロアの町を見回す。
「アルフォンスさんがいる、連れてくるか?」
「いや私を連れていってくれ、あいつも何かしているのだろう?」
「……分かった。じゃあついてきてくれ」
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アルフォンスと再会したギレーヌは、自分に起きた出来事を話した。 自分は気づけば森にいて、紛争に巻き込まれた事、それでも生き延びていた事。
そして、フィリップとヒルダが死亡した事。
どうやらフィリップ達も紛争地帯にいたらしく、敵国のスパイとして容疑をかけられ、過酷な拷問を受けた後に死んだという。
「私が……もう少し早く到着していれば………!」
そう語るギレーヌの握りしめた拳からは、血が流れ出ていた。
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「もう私たちは十分です。あなた様は一度王都に戻り、体をお安めになってください」
そうアルフォンスに言われてしまった。
ギレーヌもそれには賛成の様だ。
「お前は私が戻るまでの間、ここを助けてくれていたのだろう?今度は私がここを守る」
「でも……」
「お前にも、守る者はいるのだろう?後は私に任して、お前も自分の使命を果たせ」
ギレーヌにまで言われると、もう俺に選択肢はない。
「………分かったよ。じゃあもし、ルーデウスとエリスにあったら、俺に絶対報告してくれよ?」
「当たり前だ」
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帰る事になった俺は、帰りの支度を始めた。
今度は誰も俺を引き留める事はしなかった。
しかし帰る前に沢山の人々から感謝をされた。
「先生!算術教えてくれてありがとう!」
「ヘルス!あの時は本当、助かった!ありがとう」
「次は俺たちが助けてやるよ!」
そんな気持ちのいい感謝をされながら、俺はフィットア領を後にした。
大丈夫。
彼らなら、もう俺がいなくても、自分達で復興をする事が出来るだろう。
だって彼らの目には、再び希望の灯火が浮かび上がっていたんだから。