貴殿転生 元の知識で本気出す 作:MENOUENOTANKOBU
「初めまして、パウロ?で合ってるよな?俺はヘルス・ノトス・グレイラット。ルーデウスの親友だ」
パウロはノトスの単語を聞いた瞬間顔をしかめた
「お前、ノトスってことは、」
「ああ、俺の父はピレモン・ノトス・グレイラット。あんたの弟だ」
そして沈黙の時間が流れる
「なるほどな、それでお前は何しに来たんだ?哀れな兄の姿を見てこいっていう父からの命令か?」
「父はそんな事を言う人ではない。俺が今日ここに来たのはルーデウス、フィットア領で居なくなった人々を探すのが目的だ」
パウロは睨みつけるように俺を見ているが、俺は話を続ける。
「ルーデウスは共にロアの町で修行をしていた仲で、少ない時間だったが、俺にとっては大切な友達だ」
「本当なのか?」
パウロが信じれない様子で首を傾げている
「全て真実でございます。パウロ様」
横にいたアルフォンスがフォローに入ってくれた。
「ルーデウス様とヘルス様は非常に仲がよろしかった故、この様な変わり果てた地に赴き、捜索の協力をしてくれるのでしょう」
「そうなのか?」
「さっきも言ったが、俺はルーデウスの親友だ。だから今日ここに来た」
パウロからはやっと疑いの目が晴れた。
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パウロはとてつもないリーダーシップを持っている。
俺以外にも、フィットア領で居なくなった人達を探したい人がいた。
そんな人達を集め、手分けして探していく。そのまとめ役を務めていたのが、パウロだ。
認めたくはないが、確かに父よりも領主の才能はありそうだ。
「俺はとりあえず、ミリス神聖国に向かおうと思う。そこでラトレイア家からの協力を得て、捜索隊を大規模なものにする予定だ」
パウロがそうみんなに言った
「それはいいが、なんでミリス神聖国でそんな協力が受けられると?いくら慈悲深いミリス教徒でも、見ず知らずの土地の捜索の事は助けてくれないんじゃないか?」
俺は純粋な疑問を投げかけた。なぜミリス神聖国?まだノトスの方が繋がりはあるから可能性は高いだろう。
「俺の妻はラトレイア家の血筋だ。自分の娘が行方不明になったって聞いたら、絶対協力してくれるだろうよ」
ラトレイア家って、俺でも分かる家系の名前だ。
そうなると納得できるな。
ミリス神聖国のラトレイア家、そしてグレイラット家の血を受け継ぐ息子ルーデウス、そう考えると、あの化け物具合の説明がつく。
そして、気がつけばパウロの横に、小さな女の子がいた。その子はパウロの足を掴んでいる。
「誰だ?その女の子」
「あぁ、ノルン、すまんな。この子は俺の娘だ」
ルーデウス、あいつ妹がいたのか?
ルーデウスが異常ってだけかもしれないが、この子もなんかすごい力を持ってたりするのだろうか?
挨拶をしようとしたが、俺と目が合うとパウロの後ろに隠れてしまった。
シャイな女の子だな
「じゃあ俺はここら辺の捜索をしよう。もうほとんど見つかっていると思うが、まだ行方不明がいるかもしれないしな」
「あぁ、助かる。じゃあ早速俺はミリスへ行く為の準備をしてくる」
パウロは次の日にはもうミリスへ出発をしていた
パウロはまだ見極めが必要な男ではあったが、サウロスと同じ時の様に、不思議と嫌悪感はなかった。
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アルフォンスによると、ここら一帯の捜索は他の冒険者に任しているらしく、俺は荒れ果てた地に炊き出し係に任命された。炊き出し係といっても俺は作られた料理を配るだけで、別に作るわけではない。
ここは物資が少なすぎる。一応全員に食料は渡っているが、それでも人々は常に空腹だった。
そこで俺は皆んなに夢で出した食べ物を与える事にした。前世のものを出すには一個一個イメージしなければならず、とても手間が掛かる。だから俺は貴族として食べていた食べ物を出した。これなら最近食べていたし、イメージもしやすいので、一気に出す事が可能だ。
俺の能力は想像以上に好評だった。俺は事前にこれは腹が満たされるだけで栄養になる訳ではないと忠告しておいたが、人々は涙を流しながらそれを食べていた。やっぱり沢山食べれるってのは幸せだ。みんなに涙ながらに感謝をされて少し困ったが、とりあえずはこれで良いだろう。
そんなこんなで忙しい毎日を過ごしていると、アルフォンスからは休めと言われた。別に疲れている訳ではないが、魔力も毎日結構な量を消費していて、なくなってきているので、俺は少しの休暇をもらいこの周りを散歩する事にした。
歩いていると俺は掲示板を見つけた。そこには色々なものが書かれていたが、俺の目は一つの紙に集中していた。
死亡者リスト
俺の体全体に緊張が走る。そのリストに載っている名前を恐る恐る確認する。
ルーデウス、エリス、ギレーヌ、どちらも載っていない、良かった。まずは安心できた。
続けて下を見てみる。
ロールズ………これは。
彼の名はフィッツ……シルフィエットから聞いていた名前と一致する。彼女の父だ。多分、横に書いてある名前は母親か?
フィッツの家族は死んだ、それは今この場で決定してしまった。
どうする?家族は生きていると嘘を付くべきか?
いやだめだ。それだと後で知った時、さらに深い悲しみを与える事になる。真実を話すべきだ。彼女がそれを納得しなかったとしても、俺にはそれを伝える義務がある。
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しばらくして、俺はテントに戻り、ベットの上で今後の行動を考えていた。
これからどうするか?
戻るか、残るか。
戻ってフィッツの事や今のフィットア領の事を話し、助けを求める。
残ってフィットア領に戻ってきた人々の手助けをする。
戻った方が後の方は楽だろうが、さっき俺が悩んでいると、みんなからは残ってほしいとお願いされてしまった。まあ確かに俺の能力はこういう時に便利だしな。
そんな事を考えていると、俺はいつの間にか寝てしまっていた。
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「やあ、久しぶりだね」
……あぁ、誰だっけ?
「酷いじゃないか、僕の事忘れるなんて」
ああ、思い出した。そのムカつく声、ヒトガミだったか?
「そうそう、思い出してくれて良かったよ」
確かお前と会ったのが、俺が9歳くらいの頃だよな。今更何の用だよ。
「よく覚えてるじゃないか。あの時の僕の助言、役に立ったろ?」
助言?ロアの町に行くってやつか?あれは元々行く予定だったんだ。別に言われなくたって行ってたさ。
「そうなのかい?じゃあ今度も君に助言をあげよう」
なんでそうなるんだよ
「君、今悩んでるんだろ?王都に戻るか、ここに残るか。悩んでいる君を助けてあげようと思ってさ」
別に助けなんていらねぇよ、助けてくれるならルーデウスとかエリスの居場所を教えろよ、あとギレーヌとかフィリップ、ボレアス家の皆んなの居場所とか。
「お願いが多いなぁ、僕は神様だよ。もっと大切に扱ってくれよ」
そういうふざけた所が信じれねぇんだよ
「ごめんごめん、でも僕の助言は聞いておいた方がいいよ。そうすれば君は無駄な事をしなくて済むしね」
はあ、これ以上話していても埒があかないな。もう分かった。助言を言うだけ言ってみろよ。内容によっては考えてやる。
「ふふ、そうかい?では助言を授けましょう」
「ヘルスよ、あなたはある人物に再会するまでフィットア領で活動を続けなさい。そうすればいずれあなたは自身が望んでいた人物と再会する事ができるでしょう」
エコーを残して、ヒトガミは消えていった。
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そして俺はこの半年、フィットア領の活動を続ける事に決めた。
ヒトガミの言う通りに動くのは癪にさわるが、ある人物と再会できるというのには興味がある。しかしそれは嘘の可能性もある。あいつが嘘をつく理由も分からないが、とりあえず半年はここで活動する事に決めた。
しかしフィッツに家族が死んでいた事、ルーデウスは生きている事は伝えておきたかったので、手紙を出しておいた。後、父にできればフィットア領の復興の助けをして欲しいという事も。
俺はある人物が来るまでの間、建築の手伝いや炊き出し、子供達に勉強などを教えていた。
おかげで随分とここの人々に認められてきた。
子供達は俺を先生と呼び、慕ってくれている。大人達は俺を頼れる男だと感謝してくる。
これだ……
こういうのが俺の求める幸せだ。彼らのその感謝は純粋なんだ。貴族の媚を売る為にする感謝とは訳が違うのだ。
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ここでの生活も慣れてきた時、その人物は現れた。
「ギレーヌ!」
「ヘルス、!ヘルスなのか!?」
ギレーヌだ!
ギレーヌは変わらずな姿で現れたが、その目はどこか曇っていた
「ギレーヌ! 良かった、無事だったのか!」
「ああ、なんとかな。まだ誰もここに戻ってきていないのか?」
「アルフォンスさんがいる、連れてくるか?」
「いや私を連れていってくれ、あいつも何かしているのだろう?」
「分かった、じゃあついてきてくれ」
アルフォンスと再会したギレーヌは、自分に起きた出来事を話した。
気づけば森にいて、紛争に巻き込まれた事、それでも生き延びていた事。
そして、フィリップとヒルダが死亡した事。
どうやらフィリップ達も紛争地帯にいたらしく、過酷な拷問を受け、死んだという。
「………ック!」
そう語るギレーヌの握りしめた拳からは、血が流れ出ていた。
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俺はまだ、しばらくここに滞在しようと思っていたが。
「もう私たちは十分です。あなた様は一度王都に戻り、体をお安めになってください」
そうアルフォンスに言われてしまった。
ギレーヌもそれには賛成の様だった。
「お前は私が戻るまでの間、ここを助けてくれていたのだろう?今度は私がここを守る。お前にも守るべきものがあるはずだ。後は私に任せろ」
ギレーヌにまで言われると、もう俺に選択肢はない。
「分かったよ、じゃあもしルーデウスとエリスにあったら。俺に絶対報告してくれよ」
「当たり前だ」
そうして、帰る事になった俺は帰りの支度を始めた。
今度は誰も俺を引き留める事はしなかった。
しかし帰る前に沢山の人々から感謝をされた。
「先生!算術教えてくれてありがとう!」
「ヘルス!あの時は本当、助かった!ありがとう」
「次は俺たちが助けてやるよ!」
そんな気持ちのいい感謝をされながら、俺はフィットア領を後にした。
彼らなら、もう俺がいなくても、自分達で復興をする事が出来るだろう。