貴殿転生 元の知識で本気出す   作:MENOUENOTANKOBU

16 / 71
曇らせとグロ注意です


16話 亀裂

俺は馬車に乗っている間、警戒を緩めなかった。

 

前回はここら辺で赤竜が来たのだ。もしまた来たら、なんて想像すると、俺のトラウマが一瞬で蘇る。今度は確実に死ぬ。ただでさえ腕は片方ないと言うのに。

 

しかしその厳重な警戒とは裏腹に、特に危険な事は起こらなかった。多少魔物は現れたりしたが、余裕を持って対処が可能だったし、盗賊が出る訳でもなかった。

 

王都に戻る道にある村に到着した時、ある話を耳にした。

 

サウロスが王都に戻っている。

 

その話を聞いた俺は思わず食いついた

 

「サウロス様が戻ってきているのか!?」

 

俺は話をしていた村人達の所に割って入った

 

「お、おう、そうだ。こんな田舎にまで噂来るって事は、結構時間が経っていると思うがな」

 

結構な時間が経っている、か、

 

どのくらいだろう、1週間、2週間?もしかすると1ヶ月くらいだろうか?

 

良かった、生きているのか。

 

しかしなぜ王都に行ったのか?フィットア領の事は知っているのだろうか?

 

まあ会えば全て分かるだろう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

王都に戻る途中は様々なハプニングがおきた。

 

魔物の群れが現れて、襲われている人達を助けたり。馬が途中で倒れ、しばらく立ち直らなかったりと、まるで誰かが仕組んでいる様な事が連発した。偶然だろうが、俺には少し疑問が残った。

 

結果的に王都に着く頃には、かなり時間が掛かってしまった。

 

王都に着くと、誰かがサウロスと口にしたのを聞いて、やはりここに来ているのだと確信した。やっと会える、、

 

馬車の運転をしていた人に金を渡し、自分の屋敷へと帰る。まだ昼間だが、俺はとても疲れていた。帰って久々のフカフカベットに倒れ込みたい気分だった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

貴族が住む地区に入ると、貴族の奴らが寄ってきて、俺の安否を確認してきた。

 

「これはヘルス様、ご無事でしたか?」

 

「私はあなたの身に何かあったらと思うと心配で」

 

「フィットア領での生活はさぞ苦しいものだったでしょう」

 

気持ち悪い。

 

そうやって微塵も思っていない心配を、平然と俺に投げつけてくる奴らが。フィットア領の人々の感謝を受けた後に、こいつらのその言葉を聞くと、余計に気持ち悪くなる。

 

屋敷に戻ると、父の姿はなかった。手紙は読んでくれたのだろうか?メイドに俺が戻った事を家族に報告して欲しいと伝え、俺は自分の部屋に入った。久々だな。

 

そうやってベットに倒れて横になる。

 

しばらくすると足音が聞こえてきた。

 

「ヘルス、戻ったのか?」

 

「兄上、久しぶりですね」

 

開けられた扉には、兄であるディエゴがいた。

 

「お前も大変だな、まさかフィットア領に行き、そこで人々を助けるなんて。ボレアスの連中に脅されでもしたか?」

 

「違いますよ。ただの私情です」

 

「そうか、それはジェイムズも喜んでいるだろうな」

 

ジェイムズ、ボレアス家の、フィリップの兄だ。

 

ボレアス、そうだ!

 

「そういえば兄上、今王都にサウロス様が来ているとの噂を聞いたのですが、本当ですか?」

 

「・・そうだ」

 

やはり、サウロスもこの王都に来ているのか!途端に眠気が覚めた。早速会いに行こう。

 

「本当ですか!?是非お会いしたいのですが、今何処に居られるかわかりますか?」

 

「サウロス様、サウロスは今、裁判にかけられている」

 

「え?」

 

「サウロスは、此度の魔力災害において、正当なる対処をせず、人々を混乱に巻き込んだ罪を処罰される、今はちょうどその裁判をしている所だが、サウロスは恐らく、処刑されるだろう」

 

兄が言い終える前に、俺は部屋を飛び出していた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

城の中にある大きな空間の真ん中に、一人の男が座らされている。

 

その男の名前はサウロス・ボレアス・グレイラット。

 

横には二人の剣を持った男達。

 

そしてサウロスの前にいる3人の男達。

 

アスラ王国上級大臣 ダリウス・シルバ・ガニウス

 

第一王子 グラーヴェル・ザフィン・アスラ

 

そしてこの国の王であるアスラ国王

 

それを見下ろし観察している人々、その中には、アリエル、フィッツ、ルーク、そしてヘルスの父であるピレモンもいた。

 

「フィットア領領主、サウロス・ボレアス・グレイラット。貴様このたびの魔力災害において、正当なる対処をせず、人々を混乱に陥れた。よってその任を解き、即刻死刑に処す!」

 

そう言ったグラーヴェルの横で、ダリウスは顔をにやつかせながら言った。

 

「フィットア領のことは、このダリウスに任せたまえ」

 

サウロスはそれを睨みつけ、やがて目を閉じた。

 

"エリス、どうか生きていてくれ……"

 

横にいた男の一人が、ゆっくりと剣を上げ、振った。

 

その瞬間、扉の向こうから大きな声と足音が聞こえた。

 

「サウロス様!!サウロス様!!」

 

大きな扉を蹴破る様な勢いで出てきたのは、フィットア領に居たはずの男、ヘルスだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「お待ち下さいヘルス様!裁判はまだ続いています!ご覧になりたいのでしたら上から……」

 

「邪魔だ!」

 

そう言う護衛達を押し除け、俺は一直線、裁判が行われている場所へ走っている

 

間に合え!間に合え!

 

扉まであと少し、間に合う!

 

サウロスの名前を叫び、扉を蹴破る様に開ける。

 

ドン!!

 

 

 

 

目の前に広がっていたのは、俺を見下ろしている人々、その中にアリエル、フィッツ、ルーク、そして父がいる。

 

俺の前には6人の人物がいる、名前のわからない剣を持った男二人、そして上級大臣ダリウスと第一王子グラーヴェルと、アスラ国王。

 

そしてそこに座っているのはサウロスだ

 

しかし様子がおかしいな?

 

なんで剣に血がついているんだ?

 

何故サウロスから血が溢れているんだ?

 

理解できない。

 

なんで、サウロスの首と体が離れているんだ?

 

「ヘルス!何故ここに!?」

 

最初に口を開いたのは父ピレモン。彼は俺を見ながら何やら叫んでいる。

 

しかし俺には雑音にしか聞こえない。

 

「父上、少々黙ってもらってもよろしいですか?」

 

そう言うと、父は大人しくなった。

 

俺は一歩ずつ、サウロスに近づいていく。剣を持った男達は、横に広がり、壁あたりに移動した。

 

もう一度近くでサウロスを見る。

 

そこには、やはり首と体が別れているサウロスがいた。

 

俺はサウロスの首の前に行き、正座した。

 

首を片手で持ってみる、重たい、それを近づけて顔を見てみると、そこには眠った様な、しかしどこか悔しそうなサウロスの顔があった。

 

「あぁぁ、ああぁ!、ダメだ、ダメですサウロス様!あなたはまだ……まだやるべきことが!」

 

目の前が滲に、ぼやけていく。

 

「約束したじゃないですか……父上と話し合うって!俺を撫で回すって!言ったじゃないですか……」

 

そう問いかけるが、返事はない。

 

思い出されるのはフィットア領、ロアの町で過ごした日々。

 

最初は歓迎こそされなかったが、日を追うごとに仲を深め、父ともう一度話す事を約束してくれたあの日、俺は彼も父と認識したのだ

 

俺の服は徐々に赤く染まっていく。

 

「あぁぁぁ!!」

 

俺の心は決壊した

 

サウロスの首を抱きしめながら、前世でも今世でも出した事のない叫び声を上げた。

 

「おい、こいつを取り押さえろ!」

 

焦るダリウスが壁の近くに移動していた男達にそう命令した。

 

男達は慌てながらも俺を抑えようとした。

 

俺は無抵抗だったためか、簡単に拘束された。手からサウロスを取り上げられて、今は押さえつけられている。抵抗する気は起きない。

 

「ピレモン!これはどう言う事だ!何故貴殿の息子がここにきた!」

グラーヴェルが叫ぶ

 

「………」

 

父は何も言わない、言えないのだ。ここでどんな事を言おうと、彼の発言は捻じ曲げられ、彼らの都合のいい様に作り替えられるだろう

 

俺は、ただそこで、サウロスから流れる血を見続けていた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

俺は裁判中にいきなり乱入した事で処罰をされた。処罰と言っても俺は特に何も感じなかった。

 

そこから1週間ほど経っただろうか、俺は自室のベットで座っていた。決壊した心はまだ治っていないが、少し気持ちは整理された。

 

俺はジェイムズから譲り受けたサウロスの服を眺めていた。

 

なんであんたが死んだんだ……

 

俺はこれからどうするべきか、このままずっと部屋にいてもいいが、流石にそれはダメだ。体にも良くないし、俺にはアリエルの守護術師としての任務に戻らなくてはいけない。

 

そうだ、俺にはアリエルの守護術師としての仕事があったのだ。

 

行かなくては、アリエルに会わなくては。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

次の日から俺はアリエルの護衛に戻った。

 

俺はその前に父に裁判の時のことを謝った。

 

父は気にしていないと言ったが、あの後父が受けた罰はきっと屈辱的ものだっただろう。申し訳ない。

 

「ヘルス、もう大丈夫なの?」

 

「兄上、別にまだ来なくてもいいのですよ」

 

「ありがとう、でももう大丈夫だ」

 

ルークやフィッツから心配されたが、俺はもう大丈夫だ。多分、

 

朝、俺とフィッツとルークはアリエルの部屋に訪れた。そこには既に起きていたアリエルの姿があった。

 

「あらヘルス、おはようございます」

 

「おはようアリエル、早起きとは珍しいな」

 

「ここ最近はずっと早起きですよ」

 

「あのアリエルが?信じられないな」

 

そうやって談笑すると少し心が和らぐ

 

 

 

フィッツがアリエルの髪を整えている。

 

「ルーク、本日の予定はどうなっていますか?」

 

「朝食の後、午前中は大広間で懇談会、午後からはいつも通り、ピレモン卿との会合があります」

 

すごいスケジュールだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「皆様、ごきげんよう」

 

アリエルの言葉に貴族達がこちらを向く

 

「おお、アリエル様」

 

「今日もお美しい」

 

そうやってアリエルは貴族の輪に入っていく、嘘だろ。あの嘘で固まった奴らの所にアリエルは堂々と入っていった。

 

アリエル、俺がいない間に何があったんだ?

 

なんでそんな、気持ちの悪い笑顔をするんだ?

 

そしてルークもその輪に入った

 

なんなんだ、みんなどうしてしまったんだ?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

アリエルが暗殺者に狙われた、

 

俺とルークが部屋につくと、壁には大きな穴、そして倒れているフィッツとそれを抱きかかえるアリエル。

 

 

 

俺は気づいた、アリエルはまだデリックの言葉を引きずっているのだ。

 

俺がフィットア領にいた時も、ずっとそうだったんだろう。なんでだよ、なんでそこまで引きずるんだよ。もういいだろ、諦めろよ。アリエルは十分頑張った。もうそこまで無理しなくていい、もう、傷つかなくていいんだ。

 

なのにアリエルはやめない、

 

これは話し合わなければならない。彼女に諦めてもらうために

 

彼女の未来のために

 

 

 

手遅れかもしれないんですけど一応

  • 戦闘描写たくさん
  • 話し合い、イチャイチャたくさん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。