貴殿転生 元の知識で本気出す 作:MENOUENOTANKOBU
話をするために、俺はある部屋でアリエルを待っていた。
そこは俺が初めてアリエルとデリックと会った部屋だ。懐かしいな
そんな風に考えていると、アリエルは現れた。フィッツとルークを連れて。
「珍しいですねヘルス、あなたが私を呼ぶなんて」
「あぁ、お前と話がしたくてな」
アリエルが俺の前にあるソファに座る。その横にフィッツとルークが並ぶ。
「アリエル、最近体調はどうだ?」
「なんですかいきなり?私は別に元気ですよ」
そう笑うアリエル。しかしその顔に本心で笑っている姿は見えない
「特に苦しいわけでもないのか?」
「苦しくもないですし、つらくもないですよ」
埒が開かないな、俺が多分どんな質問をしても、こいつは俺の安心することを言うだけだ。もう素直に言ってしまおう。
「アリエル、もう率直に言うぞ、お前、王位継承の戦いをやめろ」
その瞬間、笑っていたアリエルの顔が真顔になった。
「何故ですか?」
「これ以上お前が苦しまないためだ」
「私は別に苦しくなん……」
「アリエル、お前だってわかってるだろ、お前はどう頑張っても、もう王にはなれないんだ」
アリエルは黙ってしまう
「これ以上お前が戦おうとすればする程に、お前の命を狙う者は多くなる。そうなれば俺達はお前をもう守り切れないかもしれない。そうすればお前は、死ぬんだぞ?」
「それは、覚悟の上です」
「覚悟?それはデリックの願っていた事を叶える覚悟か?」
「はい、そうです。私はデリックが私の身代わりになる時、王になるよう託されたのです。私は、それに応えなければいけません」
やはりデリックの事を引きずっていたのか。
「ならもう十分だろ、お前はその願いを十分叶えようと努力した。でも無理だった。それで良いだろう。お前はデリックの事を考えすぎなんだ。あいつはもういない。デリックだってお前がそんな苦しむすが・・」
そこまで言うとアリエルが声を上げた
「何故そんな事を言うのですか!?デリックの死を無駄にしろと言うのですか?」
「なんで分からないんだ、お前は死ぬんだぞ、確実にな。王になる事も叶わず、惨めに死にたいのか?」
「だから、私はそれを覚悟の上で今この戦いをしています!デリックだけではありません!今まで私を王にするために何人もの犠牲がでました。もう後戻りなんてできないんです!」
なんでだよ、お前だけじゃない、みんなを巻き込むんだぞ?
「その犠牲者をもう出したくないだろ!これ以上続けて何になるんだ。ただの無駄死にだ。そしてお前も死ねば、お前の言っていた犠牲者達は意味のない死になるんだ」
そう言った……言ってしまったんだ。
「兄上!今の発言は許せません!今までの犠牲者の死が意味のない死などと……」
「ルーク!」
俺は立ち上がってルークの前に出た。ルークは怯えている。
「お前なら分かるだろ………もうこれ以上続けても、意味ないって事ぐらい、分かるだろ!」
「兄上……!」
ルークの胸ぐらを掴みそう叫ぶ。
「お前もそんなくだらない事で死にたいのか!?違うだろ!?だったら今すぐアリエルを………」
パン!
俺の頬に鋭い痛みが来たのを感じた。
フィッツを見る、何もしていない。
横を見る、涙目になっているアリエルが、そこにはいた。
「もうやめてください!なんなんですかヘルス!私達がここまで頑張ってきて、それをいきなり諦めろって!デリック達の死が無駄だったような言い方をして、何がしたいんですか!?」
アリエルは大粒の涙をポロポロと流しながら、泣き叫ぶ様に言った。
「私達の事が、そんなに嫌いなんですか!?」
「ちが……俺はただ、お前らの安全を……」
「今日を持って貴方を守護術師の任から解きます。これ以上私たちに口出しをする事は許しません!これ以上、私の仲間を傷つけるのは許しません!」
なんだよ。なんでそうなるんだ……
アリエルを見つめる。もうあの無邪気なアリエルはいなかった。
そこにいたのは、俺が今まで見てきた、気持ち悪い笑顔を浮かべる貴族に成り下がってしまった、アリエルだ。
あぁ
「そうなのかよ……」
「……なんですか?」
「お前も結局、同じなんだな……」
俺は情け無い捨てゼリフを吐くと、一度も振り返る事なく、部屋を後にした。
〜〜〜アリエル視点〜〜〜
朝目が覚めると、そこにはいつもの部屋があります。
体を起こし、窓をみると、美しい空が広がっています。
そんな光景を眺めていると、部屋から2人が入ってきました。
フィッツとルーク
ヘルスはもういません、あんな事を言っておいて、私の側に置く事もできませんしね。
私は彼を信用していました。だからこそ、あの時にあんな発言をされて、私も少し混乱していました。きっとヘルスもそうなのでしょう。
しかしあれからしばらく時間が経ちました。
時間が経てば、お互い、いつも通りに戻れる筈です。まずはもう一度話し合いをしましょう。そしてお互いに謝って、仲直りするのです。きっと大丈夫です。
私はいつも通り朝食をとり、午前中は貴族の方々に挨拶をして、午後にピレモン卿に会いに行きました。
「ピレモン卿、今日もいい天気ですね」
「ええ、こういう日は気分がよろしいですな」
そう言う彼ですが、その顔はどこか悩みを抱えている顔です。
しかし私は気にしません。
「ピレモン、一つお尋ねしたいことがあるのですが、」
「はい、どうされましたかな?」
「実は私、少し前にヘルスと言い争いになってしまって、少々喧嘩をしてしまいました」
「なんと!?そうだったのですか!?」
ピレモンは何か理解したように言った
「も、申し訳ありません、アリエル様、ヘルスがその様な無礼を働いていたとは」
「ええ、しかし私もその時は混乱していて、私にも非がありました。もう一度話し合って、お互いに謝りたいのです。ヘルスを一度、呼んでいただけませんか?」
そういうとピレモンは悔しい顔をした。
「アリエル様、非常に申し訳にくいのですが」
「……ヘルスは先日、ノトスを出奔しました」
「え?」
その言葉を理解するのに、少々時間がかかりました。
〜〜〜ヘルス視点〜〜〜
ルーデウスを探しに行こう、
朝だがまだ薄暗い時、俺は今後の行動を決めた。それしかやる事がなかったと言うのもあるが、俺は元々冒険したかったし、ちょうどいい。
気長に旅をしながら、ルーデウス達をみつける。
俺はルーデウスが無事なのを指輪で確認しているし、大丈夫だろう。
ノトスという名を捨て、名前も家も捨て、新しく生まれ変わるのだ。
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荷物を整え、俺が稼いだり貰っていたお金を持ち、外に出ようとした時、兄がいた。バッタリ会ったと言うより、俺がここに来ると言う事を理解していたようだ。
「兄上……」
「ヘルス、こんな時間にどこへ行くのだ?」
できれば誰とも会わず行きたがったんだが。
「まさかヘルス、ここを出るつもりか?」
「……見逃してくれませんか?」
「何があったんだ、話してみろ」
そう言われて俺は俯く、話したくない。話したところで意味はないだろう。
「お前にとって、俺は頼りない兄かもしれない。だけど、お前の話を聞くことぐらいはできる。頼む、教えてくれないか?」
「兄上は頼りなくなんてありませんよ。むしろ俺が尊敬する、偉大な兄上ですよ。だからこそ、俺の事で悩んで欲しくはありません」
兄はしばらく俺を見つめて、ため息をついた。
「はあ……お前の家を出る覚悟は本気みたいだな。なら、せめて何をするかだけでも教えてくれないか?」
「俺はこれから、冒険者として活動しながら、フィットア領で消えた友達を探す予定です。もちろんノトスの名前は名乗りませんし、名前も変えて活動するので、迷惑は掛けません」
「俺は別にそんなことは構わない、ただ約束してくれないか?必ず帰ってくるとな」
兄にそう言われて、俺は嬉しかった。まだ兄は俺のことを大切に思ってくれている、それだけで満足だった。
「ええ、約束します。その時は俺の土産話を聞いてくださいね」
「楽しみにしてるぞ、ヘルス」
そう言ってお互いに握手を交わした後、俺は屋敷を出て、薄暗い町をゆっくりと歩いて行った。
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王都から出る頃には、すでに朝日が出ていた。俺はいつも通りの姿で門を潜り抜け、しばらく歩くと森の中で着替えた。
俺はこれから人獣型で活動することにした。人獣型になれば、なくなった筈の左腕がもどり、変装としても機能するからだ。
そして服も変えた。サウロスの服だ。これなら目立ってしまうが、エリスやルーデウスが俺を見つけやすくなるだろう。ただ俺がこの服を着たいってだけでもあるが。
これから俺は、とりあえずルーデウスの父パウロのいるミリス神聖国に向かう予定だ。そこで事情を話し、共にルーデウスを探す。我ながらいい考えだ。
まず目指すはウィルシル領、そこに向かう。
やっと夢が叶う、俺は今生まれたんだ。ここから俺が始まるんだ、
そう考えながら、俺は歩き始めた。
手遅れかもしれないんですけど一応
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戦闘描写たくさん
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話し合い、イチャイチャたくさん