貴殿転生 元の知識で本気出す 作:MENOUENOTANKOBU
窓から夕日の光が差し込んでいる。
前に映るのは、かつて俺が過ごしていた世界の教室と数人の男達。机は全て後ろに下げられている。
数人の男のうち、立っている男が、教室の真ん中で正座している男の方へ行き、顔を覗き込んでいる。
「ぷっは!こいつ、まじで食いやがったぞ!」
「まじでおもしれぇなこいつ、次はこれ、いってみっか?」
「それはえぐいぞお前、あははは」
他にも立っている男達が、次々と正座している男の周りに集まっている。
「おい、○○○、お前はなんか面白いもん持ってねぇか?こいつ、まじなんでも食うぞ」
男の一人がそういうと、座っている男以外の奴らが、俺を向く。
「お、俺か?」
俺があたふたしていると、男達は煙の様にその場から消えた。
残っているのは俺と、正座している男だけ、
その男がゆっくりとこちらへ顔を向ける。
見覚えのある顔
「ねぇ、なんで、どうして、助けてくれなかったんだよ」
その顔は、左半分が消えた、見るに耐えない顔をしていた。
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「はあ!!」
俺はやっと悪夢から目が覚めた。
額には汗が大量に流れている。
人獣型も解除されていて、人型に戻ってしまっている。
俺は呼吸を整えて、ゆっくりとベットから立ち上がる。
ベットを見ると、やはり汗でべっしょりと濡れていた。
・・・また乾かさなきゃいけないな、
最近、こんな朝を俺は繰り返している。
悪夢を見て、汗びっしょりで起床、はっきり言ってとても気分が悪い。
だがその代わりに、朝は早く起きれる様になった。
まったくメリットとデメリットが釣り合っていないが。
ダメだダメだ、ネガティブ思考は健康に悪い。
そうだ、朝早く起きれる様になったんだから、外をまた走ろう。
そうすればきっと、ストレス解消にもなるしな
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しかし俺はその後、外にも行かず、ただ薄暗い町に朝日が昇るのをボーっと眺めていた。
そのまま俺は人獣型に戻り、制服に着替え、教室へと向かった。
教室へ向かうと、ルーデウスが一人机に伏せていた。他には誰もいない。
珍しいな、いつもなら笑顔で挨拶をしてくるはずだが、悩み事でもあるのか?
「ルーデウス、おはよう」
「あ、ああ麒麟、おはようございます」
「どうした?悩み事か?」
「ええ、実は、相談に乗ってもらっても良いですか?」
「もちろん、話してみろよ」
ルーデウスの悩み、それは最近この学校に入学してきた妹、ノルン・グレイラットに関する事だった。
ノルンが学校で一人でいる事に関して悩んでいるらしい。
こいつはいつも他人ばっか気にしてるよな、本当いい奴だ。
ノルンは兄を嫌っている、それは以前聞いた事がある。
しかしノルンはルーデウスが何故嫌いなんだろうか?普通、ルーデウスの事を嫌う奴はそういない、恐れてる奴は大量にいるが。
おそらくノルンも嫌っているのではなく、恐れているのではないか?
まあ何にせよ、俺が直接聞けば早いだろう。
「分かった、俺がなんとかしてやろう」
「本当ですか?」
「ああ、こう見えても俺、後輩には好かれてるんだ」
「獣族限定、だけどね」
教室の入り口からサテラがそう言った。
サテラの言う通り、俺は獣族限定だが、後輩から絶大な人気を得ている。
理由は、バーディガーディを倒したと言う事らしいが、なぜルーデウスは人気にならないんだ?やはり俺が獣族と偽ったのが原因か、、
「そうだが、それが利点である事は変わりないだろ」
「ケホっ、ええ、そうね、でもノルンちゃんは難しいと思うわ」
「なんでだ?」
「私、彼女と一回話してみたんだけどね、彼女、すごい怖がってるっていうか」
なるほど、まあサテラは後輩から人気だからな、そういう経験は初めてなんだろう。
「まあそういうこともあるだろう、とりあえず、俺も会ってみるよ」
「ええ、でも無理矢理話させたりしちゃダメよ?」
「そんなことする訳無いだろ・・・」
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俺は昼に一年生がいるであろう廊下に行くと、早速ノルンを見つけた。
昔とそんなに顔が変わってねぇな。
彼女は一人で教科書を持ちながらキョロキョロしている。
「やあ、どうしたんだい?そんなに周りを見て」
ノルンは一瞬俺の声にビクッと震えた。
「ああごめん、俺は生徒会の麒麟だ。一年生の様子を見に来たんだけど、君が悩んでそうだったから声をかけたんだ。何かあれば、聞くよ?」
こういう子には優しめの言葉が丁度いいだろう。
「・・・あの、第三実習室が分からなくて」
ノルンは小さな声でそう言った。
「よし、じゃあ俺が案内しよう。ついて来てくれ」
「・・ありがとうございます」
よし、まずはノルンとの関わりを持つ事に成功したぞ。
こうして俺は今ノルンと歩いている。
「君の名前、確か、ノルン・グレイラット、だよね?」
「・・・何で私の名前、知ってるんですか?」
「ふふ、君のお兄さんからね、良く話を聞くよ」
「あの人が、、」
ノルンは下を向き、どこか苦しそうな顔をしている。
「君、お兄さんの事、随分と嫌っている様だね」
「そんなことは・・・」
「分かるよ、俺にも嫌いな人とかはいる。大丈夫だから、何で嫌いなのか話してみてくれないか?」
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俺とノルンは近くにあった庭のベンチで座った。
「・・・あの人と初めて会った時、あの人はお父さんを殴っていたんです。それまでずっと私を守ってくれていた、お父さんを」
いきなりルーデウスらしくない話が出て来たな、あんなに父にデレデレだったルーデウスが父を殴るなんて、喧嘩でもしたんだろうか?
ありえる、パウロ、あいつは結構喧嘩腰な話し方だからな、
「私は・・あんな人が私の家族だなんて、、認めれないんです」
「・・・そうか」
「でも、皆んな、あの人のこと褒めてばっかで、、私・・・」
なるほどな、自分の知るルーデウスと、みんなの知るルーデウスで、誤解があるってことだ。
「それで君は、本当にルーデウスの事が嫌いなのか?」
「え?」
「だから、君は本当に、心の底からルーデウスの事が嫌いなのか?」
「それは・・・」
言葉に詰まるノルン
「俺はルーデウスの事を、まだあまり良く理解していない。まだまだ知らない事だってあるはずだ。でも、俺はあいつが兄弟、家族を大事にしてるってのは、よく分かってる」
「家族・・?」
「ああ、君の事とか、君のお父さん、お母さんとかだな」
「そんな事ない、です。きっとあの人は私の事、絶対に邪魔な存在だと思ってます」
「ルーデウスは俺に相談して来たんだ。ノルンが心配だってな、だから俺は、こうやって君の様子を見に来たんだ」
やべ、目的を言ってしまった。まあいい、続けよう。
「私の心配?」
ノルンの目から少し、輝きがでてきた。
「そうだ、邪魔な存在だと思ってる奴に心配なんてしない。だからきっと、ルーデウスは君を大切に思ってるはずだ」
ノルンは、自分の手を力強く握りしめた。
「君はどうするんだい?君はそんな兄の事情を知っても尚、兄を嫌いと言えるのかい?」
「・・・私は、」
かつて俺にも妹がいた。しかし、仲は良いとは言えなかった。
俺が高校に入ると同時に、話す事は無くなり、溝の様なものが出来ていた。
俺はルーデウスとノルンが、そんな関係になってしまうのは嫌だ。
ノルンはきっと、ルーデウスが本当に嫌いでは無いはずだ。ただ接し方が分からないだけで、仲良くできるはずなんだ。
「私は、それでも、怖いんです。あんなに酷い態度をとってしまった私を、もう、見てくれないのかもしれないって思うと・・」
ノルンは泣いてしまった。
俺はノルンの肩を叩く。
「大丈夫だ、きっと君の兄は、受け止めてくれるはずだ。だから君も、今度はしっかりと話し合いなさい。今までの事や、これからの事」
「・・・グス、はい」
これなら大丈夫だろう、分かりあってくれる必要はない。ただ二人は、話し合うだけだ。それでだけで十分だろう。
しばらくノルンは俺の横で泣きじゃくっていた。
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「麒麟、本当にありがとうございました」
「いいんだよ、俺は話し合ってくれって言っただけさ。感謝するなら、ノルンにしてやるんだな」
あの後ノルンは寮ではなく、家に帰り、ルーデウスともう一度話し合ったそうだ。
和解できたかは分からなかったが、この様子を見ると、どうやら解決はしたようだ。
よかった。
「あなたにしてはすごい事できるのね、麒麟」
横で勉強をしていたサテラが言う。
「俺だって話を聞いて、アドバイスをする事ぐらいできる」
「へぇ、じゃあ私に治癒魔術の勉強を教えてよ。今行き詰まってる所なのよ」
「お前、俺が治癒魔術の初級すらできないの知ってるだろ?バカにしてるのか?」
「どうかしらね」
そういってニヤニヤするサテラに苛立つ。
だけどすぐに笑ってしまう。
ルーデウスの件を解決して、また平穏な日常が訪れた。昼飯の時騒いでいたバーディガーディが、何故か失踪してしまったが、あいつならまあ大丈夫だろ、不死身だし。
そして数週間が経ち、シルフィの妊娠が発覚した。
俺達はルーデウス邸を訪れた。シルフィのお腹はまだ膨らんでいなかったが、シルフィ自身は、かつての男フィッツではなく、普通の結婚したての女性の姿に成長していた。
「おめでとうシルフィ、ルーデウス」
「二人とも、おめでとう」
俺とサテラは大きな肉を記念に渡した。
「ありがとうサテラと麒麟、僕は今、とっても幸せだよ」
「こんなものまで、いいんですか?麒麟、サテラ」
「ああ、最近腕が鈍ってたからな、調子を直すために依頼を受けた時、ついでにとって来たんだよ」
「お兄ちゃんは色んな人から大切にされてるね!」
ルーデウスの横で、赤い髪の女の子が元気な声で言う。
この子がアイシャか、ノルンと違い、気が強そうな子だな。
「なんにせよ、シルフィ、お前はしばらく安静だな」
「うん、でも本当ありがとね、アリエル様の護衛を代わりにやってくれて」
俺は、アリエルの護衛につく事になった。護衛と言っても、ただ学校が終わるまでの間、アリエルの横にいるだけでいい、トラブルはまず少ないし、危険もない。そこまで苦にはならない。
しかし、またアリエルの護衛になったのか、不快感はもう全く無いが、次はなんか変な感じがする。
不思議だな
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「こんな平穏な日々がずっと続けばいいわね、」
帰り道、サテラが空を見上げて言った。
「そうだな、卒業までこんな日々が続けば、幸せだな」
俺はサテラの後ろを歩いている。
そう言えば、サテラとあの時、フィットア領でした約束、あれはどうなったのだろう。
サテラはあれ以来、俺にそんな雰囲気を出す事は無くなった。
約束を忘れてしまったのだろうか?
いや、それはないな、あいつは約束は忘れないタイプだ。
俺は別に、そういうのを求めている訳ではないが、少し気になってしまう。
もしかして、俺が言うのを待っているんじゃ無いか?
サテラは本当はしたくても、俺がそれを受け入れてくれるか分からなくて、悩んでいるんじゃ無いか?
そんな事は、、多分、無いはずだ。
きっとあれは、気の迷いだったんだ。
あの約束からもう4年だ。
4年も経てば、考えも変わるだろう。
サテラも、きっと他に良い感じの男を見つけたに違いない。
ならば俺は、それを応援するまでだ。
しかし、ちょっと胸が痛いな、、
イテ
「ちょっと、何ボーっとしてるのよ?」
気づけば俺は近くの木にぶつかっていた。
「すまんすまん、ちょっと考え事を」
「珍しいわね、、そうだ!最近友達から聞いたんだけど、近くに新しい魔道具屋が出来たらしいの!ちょっと寄っていきましょ!」
サテラは目を輝かせている。
「いや今日はもう、久々の依頼で疲れたんだよ、俺は早く帰って寝たいんだ」
「依頼をこなしてお金も手に入れたでしょ?丁度良いじゃない、行きましょうよ!」
そう言いながら俺の腕を掴んで歩いていくサテラ。
サテラは魔道具とかの事になると、見境がないんだよな、
俺はため息をついた。また連れ回されるのか、つらいなあ。
だけど心のどこかで、安心している俺がいた。
手遅れかもしれないんですけど一応
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戦闘描写たくさん
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話し合い、イチャイチャたくさん