貴殿転生 元の知識で本気出す   作:MENOUENOTANKOBU

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41話 虫の知らせ

ゼニス救出困難 救援を求む

 

ルーデウスが持って来た手紙にはそう書かれていた。

 

「こ、これは、」

 

「麒麟、俺、どうするべきなんですかね?」

 

シルフィの妊娠を祝って一週間、タイミングが悪すぎるな。

 

ルーデウスの母親がベガリット大陸にいる事は、以前から知っていた。

しかしそれに関しては、パウロがどうにかするとエリナリーゼから言われていた。だから俺たちは、今日この時まで、この学校で楽しく過ごしていたんだ。

 

そこにいきなりの救援要請、もちろん行って助けてやりたい。しかし俺達にもやるべき問題が沢山ある。

 

まず俺はシルフィの代わりにアリエルの護衛をしている。それに生徒会もやっているんだ。別に護衛って言っても大した事はしてないので、そこはまあ問題ではないだろう。

 

サテラとエリナリーゼもそうだ。

 

一番の問題はルーデウスだ。

 

シルフィの妊娠、夫としてそれは責任をもって介護しなければならない事だ。しかし、母親の窮地を救いたい気持ちもあるんだろう。

 

ルーデウスはかなり悩んでいる。

 

「ルーデウス、あなたはシルフィを守りなさい」

 

サテラがキッパリと言った。

 

「ええ、それがいいですわね」

 

エリナリーゼもそれに賛同する。

 

「で、ですが」

 

「安心して、ベガリット大陸には、私達が行くわ。麒麟もそれで良いわよね?」

 

サテラとエリナリーゼは救援に向かう予定だ。当たり前だが俺も。

 

ベガリット大陸の迷宮都市ラパンまで、往復で十六ヶ月はかかる。

それに道中、何が起こるなんて分からない。もしかしたら、二年以上かかる可能性だってある。そんな長い旅路にルーデウスを連れて行ったら、シルフィは不安で仕方がないだろう。ルーデウス自身も不安でいっぱいになるはずだ。

 

そんなリスクを背負ってまで、ルーデウスを連れて行く必要はない。

 

だが俺は、ルーデウスの意思も尊重してやりたい。

 

「俺はルーデウスの決断に任せる」

 

「はあ?あなた分かってるの?ルーデウスがもし行く事になったら、シルフィが一人になってしまうのよ?」

 

「一人って訳じゃないだろ?アイシャちゃんや、一応ノルンちゃんだっているんだ。それに何かあれば、ザノバやクリフ達も助けてくれるはずだ」

 

「そうですけれど、それではシルフィが可哀想ではなくて?せっかく結婚したのに、また置いて行かれるなんて・・」

 

「だからルーデウスの決断に任せるんだよ、シルフィともゆっくり話し合ってもらって、そっから決めれば良いだろ」

 

ルーデウスはしばらく考え、

 

「そうですね、麒麟の言う通り、もう一度話し合ってみる事にします。今度はノルンも呼んで」

 

「ああ、そうした方がいい」

 

そうして俺たちの話し合いは一時中断となった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

夢の中、しかし、いつも見る悪夢ではない。

 

真っ白な空間

 

「やあ!久しぶりだね」

 

俺の目の前にあの気味が悪い笑みを浮かべる真っ白な男がいる。

 

・・・ほんと、久しぶりだな

 

「おやぁ?いつもみたいに悪態をつくと思ったんだけど、なんか元気なさそうだね?」

 

・・・悪夢の見過ぎで、ここが安心するなんて言ったら、こいつは絶対いじってくるはずだ。絶対に言わないでおこう。

 

お前だって分かるだろ?ベガリット大陸の件だよ。

 

「ああ!君もその事で悩んでたのか!」

 

君もって事は、お前もその事を考えてたのか?

 

「いやぁ?悩んでいたのはルーデウスだよ」

 

ルーデウス?ああ、そうか、お前、ルーデウスにも俺と同じような事してるんだっけか?お前、一体何を考えてるんだ?

 

「別にぃ?僕はただ、君達の行動が面白いから、それを見ているだけさ」

 

胡散臭いな、まあいい、それで?また助言なんだろ?

 

「そうだけどね、今回は少しお願いに近い感じかなぁ」

 

お願い?

 

「そう、君に頼みたい事があって、君を呼んだんだよ」

 

・・・嫌だ

 

「な〜ん〜で〜だ〜よ〜、今まで沢山助けてあげたじゃないか」

 

助けてもらった覚えなんてない。俺はただ、お前の助言と行動が被ってたからやっていただけだ。

 

「そんな悲しい事言わないでくれよぉ、君を呼ぶのに、すっごい苦労したのにさ〜」

 

苦労?

 

「そうだよ、君の中?かな、すっごい黒い塊みたいなのがあってさ、君を夢から呼ぼうとすると、跳ね返されちゃうのさ、だから大変だったんだよ?」

 

それは俺にもよく分からねぇな。最近見る悪夢も、それが原因なのだろうか?

 

ふと、俺は自分の手を見てみる。

 

そこに、前世の手ではない、今世の手が映る。

 

ヘルスの手だ。

 

おい、ヒトガミ、なんで俺の体、この体になってんだ?

 

「ん?さあ?僕にもよく分からないよけど、君がこの世界に完全に適応したからじゃないかな?」

 

完全に適応?ていうかお前、俺が別の世界から来たの、知ってるのか?

 

「うん、君が別の世界から来た存在なのは元々知ってたよ。そうだね、君の前の体は、16歳ぐらいだっただろ?今君は何歳だい?」

 

今の俺?23歳だ

 

「そうだ。君はもう前の世界よりも七年、この世界で長く生きたんだ。それで君の体は既に適応してしまったんだよ。まあ、フィットア領の時からもう既に君の体はそうなっていたけどね」

 

おい!なんだって?フィットア領で既にこの体になっていただと?じゃあなぜその時言わなかったんだ?

 

「言うタイミングがなかったんだよ。君、すぐ会話終わらせようとしてたし」

 

ぐ、そうだった。

 

「まあもう変わってしまったものは仕方ないじゃないか。それよりも、今は先を見るべきじゃないのかな?」

 

・・・はあ、内容を言ってみろ。

 

「ふふ、ルーデウスは今、ベガリット大陸に行こうか悩んでいるだろう?」

 

そうだ、今の感じだと、行かなそうだけどな。

 

「いや行くさ、ルーデウスはしばらくすると、ベガリット大陸へ行く決断を下す筈さ」

 

そうなのか?俺はそれでも構わないが、どうしろと?

 

「彼がベガリット大陸に行くのを、止めてほしいんだ」

 

・・・は?

 

「だからぁ、彼がベガリット大陸に行く・・・」

 

それは分かってる、だが、それはお前にだって出来るだろう?

しかもお前はルーデウスに信用されてるんだ。俺に頼まなくたって、それくらいは出来るだろ。

 

「そうだよ、彼にはもう言ったんだけどね、それでもちょっと心配でね、

君からも言ってやって欲しいんだ」

 

ハッ、随分と必死なようだが、そんなにルーデウスがベガリット大陸に行くを阻止したいのか?

 

「面白がっているようだけど、彼がベガリット大陸に行く事は、君とっても悪い事なんだよ?」

 

何?

 

「ベガリット大陸に行くと後悔する。これは僕がルーデウスにした助言さ、僕の助言の的中率は、君でも分かるだろ?」

 

・・・

 

「それでも君は、親友が後悔する道を歩もうとするのを、黙って見てるだけかな?」

 

・・・

俺としても、ルーデウスが後悔をするなら、ベガリット大陸へ行く事を止めてやりたい。

 

しかし、行くか行かないか、それはルーデウスが決めることでもある。

 

俺が無理矢理に止めたとして、あいつはそれで本当に幸せなのだろうか?

 

「さあ、どうするんだい?」

 

・・・一応それに近い言葉は言っておく、しかし行くか行かないか決めるのはルーデウス自身だ。後は自分でなんとかしろ。

 

「投げやりだなぁ、まあいいや、もうそろそろかな、じゃあまたね!」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべるヒトガミの姿が歪んで消えて行った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 

 

「ルーデウス、やっぱり、行かない方がいいんじゃないか?」

 

俺は再開された話し合いの場で、伝えてみた。

 

「あら麒麟、前はルーデウスに任せるなんて言ってませんでした?」

 

「そうよ、一体どうしたの?」

 

「いや、別に大した理由じゃねぇんだが、やっぱりシルフィが心配になってな、それと、手紙の差出人がこのギースって男なのも謎だ。本当に救援が必要なら、パウロが直接出す筈だ」

 

俺は思いた疑問を投げてみた。

 

「ギースはパウロの元パーティーメンバーですわ。性格はあれですけど、一応信頼における人物、パウロが手紙を出さないのも、ルーデウスを心配させたくないと言うのであれば、納得ですわね」

 

その疑問はエリナリーゼに全て解決されてしまった。

 

「そう、なのか?」

 

「シルフィに関しても、ザノバやクリフ先輩が、面倒を見てくれるようです。アイシャとノルンも手伝ってくれるので、大丈夫でしょう」

 

「つまり、ルーデウス、お前もベガリット大陸に行くってことか?」

 

「・・ええ、ノルンに先日、お願いされましてね。俺も、父が助けを求めているなら、それに応えたいんです」

 

ルーデウスは俺達に頭を下げた。

 

「お願いします。俺もベガリット大陸への旅に、参加させてください。父を、母を助けたいんです」

 

「・・まったく、仕方ありませんわね」

 

「まあ、シルフィが大丈夫なら、私も文句は無いわ」

 

サテラとエリナリーゼはそれを承諾したようだ。

 

俺はどうしよう、

ここで止めるべきか?後悔をさせないべきか?

 

「麒麟、いいですか?」

 

ルーデウスは俺を真剣な表情で見つめている。

 

「後悔、してもか?」

 

俺は口に出してしまった。

 

ルーデウスはその言葉に、微笑んだ。

 

「後悔はしたくないですよ。でも、ここで行かなかったら、もっと後悔しそうなんです」

 

・・そうだな、ここに残って、もしゼニスが死んでしまったら、それこそルーデウスは一生後悔する事になるだろう。

 

ルーデウスがベガリット大陸に行けば後悔するって?

そんなの、俺たちが阻止すればいい。

だって俺たちは、ルーデウスの仲間だから

 

「分かったルーデウス、一緒にお前の母親を救いに行こう」

 

「ありがとうございます」

 

ルーデウスはもう一度深く頭を下げた。

 

「じゃあ、それぞれ旅に向けての準備を始めるか」

 

「そうですわね、クリフとも話し合わなければいけませんし」

 

「じゃあ、また午後にここに集合という事で」

 

俺たちは各自、旅に向けての準備を始める事にした。

 

 

 

手遅れかもしれないんですけど一応

  • 戦闘描写たくさん
  • 話し合い、イチャイチャたくさん
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