貴殿転生 元の知識で本気出す 作:MENOUENOTANKOBU
ゼニス救出困難 救援を求む
ルーデウスが持って来た手紙にはそう書かれていた。
「こ、これは、」
「麒麟、俺、どうするべきなんですかね?」
シルフィの妊娠を祝って一週間、タイミングが悪すぎるな。
ルーデウスの母親がベガリット大陸にいる事は、以前から知っていた。
しかしそれに関しては、パウロがどうにかするとエリナリーゼから言われていた。だから俺たちは、今日この時まで、この学校で楽しく過ごしていたんだ。
そこにいきなりの救援要請、もちろん行って助けてやりたい。しかし俺達にもやるべき問題が沢山ある。
まず俺はシルフィの代わりにアリエルの護衛をしている。それに生徒会もやっているんだ。別に護衛って言っても大した事はしてないので、そこはまあ問題ではないだろう。
サテラとエリナリーゼもそうだ。
一番の問題はルーデウスだ。
シルフィの妊娠、夫としてそれは責任をもって介護しなければならない事だ。しかし、母親の窮地を救いたい気持ちもあるんだろう。
ルーデウスはかなり悩んでいる。
「ルーデウス、あなたはシルフィを守りなさい」
サテラがキッパリと言った。
「ええ、それがいいですわね」
エリナリーゼもそれに賛同する。
「で、ですが」
「安心して、ベガリット大陸には、私達が行くわ。麒麟もそれで良いわよね?」
サテラとエリナリーゼは救援に向かう予定だ。当たり前だが俺も。
ベガリット大陸の迷宮都市ラパンまで、往復で十六ヶ月はかかる。
それに道中、何が起こるなんて分からない。もしかしたら、二年以上かかる可能性だってある。そんな長い旅路にルーデウスを連れて行ったら、シルフィは不安で仕方がないだろう。ルーデウス自身も不安でいっぱいになるはずだ。
そんなリスクを背負ってまで、ルーデウスを連れて行く必要はない。
だが俺は、ルーデウスの意思も尊重してやりたい。
「俺はルーデウスの決断に任せる」
「はあ?あなた分かってるの?ルーデウスがもし行く事になったら、シルフィが一人になってしまうのよ?」
「一人って訳じゃないだろ?アイシャちゃんや、一応ノルンちゃんだっているんだ。それに何かあれば、ザノバやクリフ達も助けてくれるはずだ」
「そうですけれど、それではシルフィが可哀想ではなくて?せっかく結婚したのに、また置いて行かれるなんて・・」
「だからルーデウスの決断に任せるんだよ、シルフィともゆっくり話し合ってもらって、そっから決めれば良いだろ」
ルーデウスはしばらく考え、
「そうですね、麒麟の言う通り、もう一度話し合ってみる事にします。今度はノルンも呼んで」
「ああ、そうした方がいい」
そうして俺たちの話し合いは一時中断となった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夢の中、しかし、いつも見る悪夢ではない。
真っ白な空間
「やあ!久しぶりだね」
俺の目の前にあの気味が悪い笑みを浮かべる真っ白な男がいる。
・・・ほんと、久しぶりだな
「おやぁ?いつもみたいに悪態をつくと思ったんだけど、なんか元気なさそうだね?」
・・・悪夢の見過ぎで、ここが安心するなんて言ったら、こいつは絶対いじってくるはずだ。絶対に言わないでおこう。
お前だって分かるだろ?ベガリット大陸の件だよ。
「ああ!君もその事で悩んでたのか!」
君もって事は、お前もその事を考えてたのか?
「いやぁ?悩んでいたのはルーデウスだよ」
ルーデウス?ああ、そうか、お前、ルーデウスにも俺と同じような事してるんだっけか?お前、一体何を考えてるんだ?
「別にぃ?僕はただ、君達の行動が面白いから、それを見ているだけさ」
胡散臭いな、まあいい、それで?また助言なんだろ?
「そうだけどね、今回は少しお願いに近い感じかなぁ」
お願い?
「そう、君に頼みたい事があって、君を呼んだんだよ」
・・・嫌だ
「な〜ん〜で〜だ〜よ〜、今まで沢山助けてあげたじゃないか」
助けてもらった覚えなんてない。俺はただ、お前の助言と行動が被ってたからやっていただけだ。
「そんな悲しい事言わないでくれよぉ、君を呼ぶのに、すっごい苦労したのにさ〜」
苦労?
「そうだよ、君の中?かな、すっごい黒い塊みたいなのがあってさ、君を夢から呼ぼうとすると、跳ね返されちゃうのさ、だから大変だったんだよ?」
それは俺にもよく分からねぇな。最近見る悪夢も、それが原因なのだろうか?
ふと、俺は自分の手を見てみる。
そこに、前世の手ではない、今世の手が映る。
ヘルスの手だ。
おい、ヒトガミ、なんで俺の体、この体になってんだ?
「ん?さあ?僕にもよく分からないよけど、君がこの世界に完全に適応したからじゃないかな?」
完全に適応?ていうかお前、俺が別の世界から来たの、知ってるのか?
「うん、君が別の世界から来た存在なのは元々知ってたよ。そうだね、君の前の体は、16歳ぐらいだっただろ?今君は何歳だい?」
今の俺?23歳だ
「そうだ。君はもう前の世界よりも七年、この世界で長く生きたんだ。それで君の体は既に適応してしまったんだよ。まあ、フィットア領の時からもう既に君の体はそうなっていたけどね」
おい!なんだって?フィットア領で既にこの体になっていただと?じゃあなぜその時言わなかったんだ?
「言うタイミングがなかったんだよ。君、すぐ会話終わらせようとしてたし」
ぐ、そうだった。
「まあもう変わってしまったものは仕方ないじゃないか。それよりも、今は先を見るべきじゃないのかな?」
・・・はあ、内容を言ってみろ。
「ふふ、ルーデウスは今、ベガリット大陸に行こうか悩んでいるだろう?」
そうだ、今の感じだと、行かなそうだけどな。
「いや行くさ、ルーデウスはしばらくすると、ベガリット大陸へ行く決断を下す筈さ」
そうなのか?俺はそれでも構わないが、どうしろと?
「彼がベガリット大陸に行くのを、止めてほしいんだ」
・・・は?
「だからぁ、彼がベガリット大陸に行く・・・」
それは分かってる、だが、それはお前にだって出来るだろう?
しかもお前はルーデウスに信用されてるんだ。俺に頼まなくたって、それくらいは出来るだろ。
「そうだよ、彼にはもう言ったんだけどね、それでもちょっと心配でね、
君からも言ってやって欲しいんだ」
ハッ、随分と必死なようだが、そんなにルーデウスがベガリット大陸に行くを阻止したいのか?
「面白がっているようだけど、彼がベガリット大陸に行く事は、君とっても悪い事なんだよ?」
何?
「ベガリット大陸に行くと後悔する。これは僕がルーデウスにした助言さ、僕の助言の的中率は、君でも分かるだろ?」
・・・
「それでも君は、親友が後悔する道を歩もうとするのを、黙って見てるだけかな?」
・・・
俺としても、ルーデウスが後悔をするなら、ベガリット大陸へ行く事を止めてやりたい。
しかし、行くか行かないか、それはルーデウスが決めることでもある。
俺が無理矢理に止めたとして、あいつはそれで本当に幸せなのだろうか?
「さあ、どうするんだい?」
・・・一応それに近い言葉は言っておく、しかし行くか行かないか決めるのはルーデウス自身だ。後は自分でなんとかしろ。
「投げやりだなぁ、まあいいや、もうそろそろかな、じゃあまたね!」
ニヤニヤと笑みを浮かべるヒトガミの姿が歪んで消えて行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ルーデウス、やっぱり、行かない方がいいんじゃないか?」
俺は再開された話し合いの場で、伝えてみた。
「あら麒麟、前はルーデウスに任せるなんて言ってませんでした?」
「そうよ、一体どうしたの?」
「いや、別に大した理由じゃねぇんだが、やっぱりシルフィが心配になってな、それと、手紙の差出人がこのギースって男なのも謎だ。本当に救援が必要なら、パウロが直接出す筈だ」
俺は思いた疑問を投げてみた。
「ギースはパウロの元パーティーメンバーですわ。性格はあれですけど、一応信頼における人物、パウロが手紙を出さないのも、ルーデウスを心配させたくないと言うのであれば、納得ですわね」
その疑問はエリナリーゼに全て解決されてしまった。
「そう、なのか?」
「シルフィに関しても、ザノバやクリフ先輩が、面倒を見てくれるようです。アイシャとノルンも手伝ってくれるので、大丈夫でしょう」
「つまり、ルーデウス、お前もベガリット大陸に行くってことか?」
「・・ええ、ノルンに先日、お願いされましてね。俺も、父が助けを求めているなら、それに応えたいんです」
ルーデウスは俺達に頭を下げた。
「お願いします。俺もベガリット大陸への旅に、参加させてください。父を、母を助けたいんです」
「・・まったく、仕方ありませんわね」
「まあ、シルフィが大丈夫なら、私も文句は無いわ」
サテラとエリナリーゼはそれを承諾したようだ。
俺はどうしよう、
ここで止めるべきか?後悔をさせないべきか?
「麒麟、いいですか?」
ルーデウスは俺を真剣な表情で見つめている。
「後悔、してもか?」
俺は口に出してしまった。
ルーデウスはその言葉に、微笑んだ。
「後悔はしたくないですよ。でも、ここで行かなかったら、もっと後悔しそうなんです」
・・そうだな、ここに残って、もしゼニスが死んでしまったら、それこそルーデウスは一生後悔する事になるだろう。
ルーデウスがベガリット大陸に行けば後悔するって?
そんなの、俺たちが阻止すればいい。
だって俺たちは、ルーデウスの仲間だから
「分かったルーデウス、一緒にお前の母親を救いに行こう」
「ありがとうございます」
ルーデウスはもう一度深く頭を下げた。
「じゃあ、それぞれ旅に向けての準備を始めるか」
「そうですわね、クリフとも話し合わなければいけませんし」
「じゃあ、また午後にここに集合という事で」
俺たちは各自、旅に向けての準備を始める事にした。
手遅れかもしれないんですけど一応
-
戦闘描写たくさん
-
話し合い、イチャイチャたくさん