貴殿転生 元の知識で本気出す 作:MENOUENOTANKOBU
42話 ベガリット大陸へ
とりあえず俺はベガリット大陸へ行く事をアリエル達に伝えておく事にした。一応護衛を任されているんだ。挨拶は必要だ。
「そう、ですか、ベガリット大陸・・」
アリエルは少し悲しそうな表情をしている。
「ああ、いつ帰るかは分からないが、最低でも二年はかかる予定だ。だが安心しろ、頼れる後輩にお前の護衛を任せておいた。一応俺が信用する男だから危険はない筈だ」
「そこまでしなくても良いが、お前、分かってるのか?ベガリット大陸は過酷な土地なんだぞ?」
「もちろん分かってる、だけど俺たちも元S級冒険者だ。簡単には死なねぇよ」
「ベガリット大陸に最低二年、ですか、、分かりました・・・」
アリエルは思いのほか早く承諾してくれたようだ。そっちの方が気楽で助かる。
「じゃあ俺はそろそろ・・・!?」
アリエルは席を立つと、俺にゆっくりと近づき、、抱きついてきた。
「アリエル様!?」
ルークはアリエルの突然の行動に驚いている。
当然だ、俺もびっくりしている。
「アリエル?どうしたんだ?」
アリエルはその問いに答えない。
しばらく俺に抱きついた後、アリエルはゆっくりと手を離し、俺の前に立った。
「すいません突然、ただちょっと、やってみたくて、、」
アリエルは顔を赤らめている。
「麒麟、あなたに二つお願いがあります」
「・・・聞こう」
「では一つ目、ベガリット大陸で、ヘルスの情報収集をお願いします。ベガリット大陸は過酷な土地ゆえ、あまり調査が進んでいませんので、」
「分かった、町にヘルスの情報を流しておこう」
「ありがとうございます、そして二つ目、これが一番重要なのですが、どうか、生きて帰ってきてください」
「・・・?、当たり前だろ、第一俺はそこまでする程強くはない」
「ならいいんです、ですが、約束ですよ?」
アリエルは俺に微笑みかける。
「ああ、分かった」
俺は胸の痛みを新たに手に入れて、部屋を後にした。
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ジーナスに休学する旨を伝え、話し合いの場に戻ると、ルーデウスから朗報が来た。
ナナホシが、転移魔法で協力をしてくれるとの事だ。
正確には、遺跡にある転移魔法陣の場所を教えてもらったらしいが、これにより大幅な時間の削減ができる事になった。
「この場所から転移をして、北へ一ヶ月ちょっと向かえば、ラパンに行けるらしいです」
『一ヶ月!?』
ルーデウス以外の全員が声を上げる。
一ヶ月だと?それならラパンでルーデウスの母親を救出する事を想定したとしても、だいたい半年で帰って来れる
時間が削減できると言われたが、ここまでだったとは。
「ナナホシがあまり情報を言いふらさないよう警告していたので、皆さん、あまり口外はしないようにお願いします」
「分かったわ」
「ええ、もちろんですわ」
ナナホシにはこの件が終わった後、感謝しねぇとな。
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朝、日がちょうどのぼり始める頃、俺達はルーデウス邸の玄関で、馬に荷物を乗せている。
朝が弱い俺も、今日、ていうか最近は早起きなのでみんなが驚いている。
「正直、あなたは起きないと思ってましたわ」
「ええ、私も驚いてるわ。私が麒麟を叩き起こしに行こうと思ったら、もう既に荷造りしてるんだから」
「お前ら、俺だってやる時はやるんだぞ?」
悪夢がこんな形で役に立つとは、、全く嬉しくはないが。
「それよりルーデウス、準備できたか?」
「ええ、問題ありません」
「ルーデウス」
クリフがルーデウスに話しかけてきた。
持っているのは、エリナリーゼの呪いを軽減する魔道具か、クリフは本当器用なやつだな。
「まだ未完成だが、なんとかここまで小型化できた。正常に動作する筈だ」
そういってクリフは魔道具を袋にしまい、ルーデウスに手渡した。
「リーゼを頼む」
「もちろんです」
「クリフ・・・」
エリナリーゼはそんなクリフを寂しい目で見つめている。
クリフはエリナリーゼに近づき、彼女を抱きしめた。
「リーゼ、帰ってきたら式を挙げよう。呪いはまだ解けてないけど、二人で家を買って一緒に住もう。今までそうしなかったから、不安にさせてしまったんだろう?口だけじゃないかって」
「ああクリフ、、わたくしは黙って行こうとした、ひどい女ですのよ?」
「結婚式はミリス式になるけどいいか?リーゼはミリス教徒じゃないけど」
その言葉にエリナリーゼは撃沈させられたようだ。
「ああクリフ!愛していますわ!この世で誰よりも」
おいおい、ここで歳の差カップルのイチャイチャシーンは見たくねぇんだが。
ルーデウスもシルフィ達との挨拶を終えたようだ。
「兄さん、何も心配しないでください。頑張りますから」
「お兄ちゃんもご武運を!」
「フッ、ルーデウス、お前は家族に愛されてるな」
「はい、俺は家族に恵まれてます」
ルーデウスは照れながら言った。
「よかった、まだ出発していなかったのですね」
その時、ルーデウス邸の外から声がした。
俺が後ろを振り向くと、アリエルとルークがいた。
「麒麟、本当に行くのですね」
「ああ、だが前にも言ったが、時間が早まる事になりそうだ」
「そうですか、それはよかった」
そう言ってまたアリエルは、俺に抱きついてきた。
今度はあまり驚かない。
「約束だけは、忘れないでくださいね」
「・・・ああ」
そして、エリナリーゼとルーデウスが大きい馬に乗り、俺とサテラはそれよりも小さい馬に乗り、馬の貸し出しをしてくれた人を連れて、ゆっくりと歩き始めた。
シルフィやアリエル達が見えなくなると、馬のスピードを上げた。
「麒麟?」
サテラが後ろから声をかけてきた。
「なんだ」
「ケホッ、アリエルさんと、仲直りしたの?」
「まだしてないぞ」
「そう、でももうその必要もなさそうな程、仲は良いわね」
サテラは珍しくニヤニヤしている。
ダメだ、サテラの手中にハマってしまう。
「・・・無駄話は止めるぞ。スピードを上げるから、落ちるなよ」
「はいはい」
そんな会話を終えて、俺達は馬をひたすらに走らせ続けた。
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目的地の森に辿り着き、俺達は馬を返し、森の中へ入って行った。
森からは謎の鳥の鳴き声が聞こえ続けている。
「こうやって歩いていると、冒険者をやってた時を思い出すな」
「そうですね、懐かしい。あの時の俺はどうかしてました」
「ふふ、そうね、あの時のあなたの顔を今の顔と比べると、、」
そういって笑うサテラ
「サテラ、人の過去は笑うもんじゃねぇぞ」
「はいはい、ごめんなさいねルーデウス」
「いえいえ、当時は二人に大変迷惑を掛けましたからね、仕方ないです」
そんなくだらない会話をしながら森を歩く。
「見つけましたわルーデウス、この石碑ですわね?」
エリナリーゼが見つけた石碑、その石碑には龍に似たものが彫られていた。
「ナナホシの情報と一致します。間違いないでしょう」
そう言ってルーデウスは詠唱を始めた。
「・・・聖龍帝シラードの名を借り、その結界を今、打ち破らん」
詠唱を終えた瞬間、石碑が光り、前の景色が雨に打たれる湖のようになり、目の前には遺跡が現れた。
「こ、これが、転移魔法陣のある、遺跡なのか?」
「恐らく、中に入ってみましょう」
そういって今にも崩落しそうな遺跡の中に、俺達は足を踏み入れた。
遺跡をゆっくりと警戒しながら進んでいると、地下への階段を見つけた。
「怪しいですわね」
「行きましょう」
「ああ」
階段を降りていくと、一つの青く輝いている魔法陣がある部屋に辿り着いた。
「これが転移魔法陣ですの?」
「恐らくそうでしょう」
「随分と小さいな」
俺の初めてみた感想はそれだった。
俺の知るアビスの魔法陣は、もう少し大きくて、丸い筈だ。
だが俺達の前にある魔法陣は丸いには丸いが、左右非対称で、不思議な形をしている。
「まあとりあえず、確認してみましょうよ」
サテラがそう言って魔法陣を踏もうとする。
こいつ、恐怖心とかないんか?
「ちょっと待ってくださいサテラ!まずはこれが本物かどうか確認します」
ルーデウスの引き止めにより、ギリギリで進行を止めるサテラ。
「何よルーデウス、ナナホシが紹介したんでしょ?なら大丈夫じゃない」
「もしかしたら別の魔法陣の可能性もあります。とりあえずまずは調べないと」
「そうだぞサテラ、俺達はここを初めて使うんだ。慎重に行かなくては」
「はあ、分かったわよ」
サテラは部屋の隅にもたれかかって、不機嫌そうに杖を抱きしめている。
この光景も懐かしいな。
しばらく本を読んでいたルーデウスがこれが本物の転移魔法陣だと確認すると、とうとう移動する事になった。
ついに、転移魔法陣を体験できるのか、、ワクワクが止まらないな。
これでもしかしたら、俺も転移魔法陣の仕組みが少し理解できるかもしれない。
そう考えながら、俺達は転移魔法陣の上に乗った。
その瞬間、俺の視界はぼやけ始め、真っ白になった。
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気がつくと、そこには何も景色が変わっていない遺跡の部屋があった。
失敗したのか?しかし、先程にはない砂がある。気温も少し高い感じがする。転移には成功したのだろう。
え?これだけ?なんの手応えもなかったが、
「飛びましたわね」
「そのようですね」
ルーデウス達も気づいたようだ。少し歩き、転移魔法陣から足を離すと、再び魔法陣に光がついた。
「念の為、もう一度確認しますか?」
「そうだな、では俺が行こう」
「麒麟?いいのですか?」
「ああ、少し確認したいことがあってな」
先程は初めてだったから、感覚がよくわからなかっただけな筈だ。もう一度、いや戻る必要があるから、二回も体験できるんだ。きっと何か見つかる筈だ。
俺は再度光る転移魔法陣に足を踏み込んだ。
結局俺は二回体験して、得られたのは仲間からの非難だけだった。
俺が帰ってくると、そこに座っていたのはエリナリーゼだけだった。
「随分と遅かったですわね」
「そうか?すぐ入って戻ってきたんだけどな、、二人は?」
「あまりに遅いすぎるから、少し中を探索してくるって言ってましたわ。特にサテラはキレかけてましたわよ」
「まじかよ、、悪い事なんてしてないんだけどな」
「まあわたくしからも説明しますけど、納得するかは分かりませんわ」
案の定、ルーデウスは許してくれたが、サテラからは説教を喰らってしまった。
何もしてないのにな、、
俺達は外に出た。そして外に出た瞬間、俺が一番驚いたのは、外が先の見えない砂漠だった事だ。
「これは、すごいな・・」
今世でも前世でも初めて見る砂漠、、興奮が冷めない。
もちろん今にでも出発したいが、既に夕日が沈みかけている。
「どうやら、ちゃんとベガリット大陸に着いたようですね」
「ですが既に日は暮れかけてますわね、、少し早いけど、今日はこの遺跡で休んでおきましょう」
エリナリーゼの提案により、俺達は遺跡で一夜を過ごす事になった。
明日から、また冒険が始まる。
もちろん楽しむ目的できた訳ではないんだが、少しワクワクしている自分がいる。
そんな不思議な気分のまま、俺は眠り落ちた。
手遅れかもしれないんですけど一応
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戦闘描写たくさん
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話し合い、イチャイチャたくさん