貴殿転生 元の知識で本気出す   作:MENOUENOTANKOBU

43 / 71
43話 最悪の旅

目を開けると、俺は椅子に座っていた。

 

横には、前世の母、妹と弟がいる。どちらも黒服、準喪服を着ている。

 

俺も自分の服を見る、弟と同じ服だ。

 

また夢か・・・

 

しかし今回の夢はいつもの夢とは違う。

 

教室ではない、、ここは、、葬儀場か?

 

俺の家族が出てくるのも初めてだ。

いつもは高校生、たまに先生らしき人物が来るだけだが、

 

考えていると、色々な所から、啜り泣くような声が聞こえる。

 

「まだ若いのにねぇ、」

 

「学校でいじめがあったらしいわ」

 

「本当、最後まで可哀想な子よね」

 

目を閉じて、さらに耳を澄ますと、お経も聞こえてき始めた。

 

そしていきなり、お経が止まった。

 

目を開けると、既に俺は立っており、椅子は片付けられていた。

 

俺の前には、女がいた。40代ぐらいだろうか?

 

女もまた泣いていた。

 

「○○君、ありがとね、あの子の最後に、来てくれて、、」

 

女は泣きながら俺に話しかけてきた。

 

「あの子、あなたぐらいしか、友達、、いなかったから、きっと嬉しかったと思うよ、、あぁぁぁぁ」

 

俺はよく分からずに、膝から崩れ落ちた女の肩に手を乗せる。

 

「・・・グス、○○君、最後に、あの子の顔、もう一度見てくれるかい?

酷い状態だと、思うけど、、」

 

「ええ、分かりました」

 

反射的にそう返し、俺はゆっくりと、棺桶に向かって歩き始めた。

 

一歩ずつ歩いて行くごとに、体が重くなっていった。

 

それでも俺は前に進む。

 

棺桶に辿り着いた時、俺の体はもう動かない程重くなっていた。

 

顔があるであろう場所に、小さな窓のようなものがある。

 

その窓は俺が開けずとも、ゆっくりと開いた。

 

そこには、あの顔の左側がない、男の姿があった。

 

男は目を閉じて、まるで寝ているかのように、死んでいる。

 

「○○、、」

 

俺は不思議と、男の名前を呼んだ。

 

反応がないと分かりきっているはずなのに。

 

しかし、その瞬間、男の目が開いた。

 

男は俺の方を向いた。ガタガタと震えながら。

 

「・・・なんで?なんであそこで、止めてくれなかったの?」

 

男は泣きそうな顔で俺に問いかけてきた。

 

「僕達、親友じゃなかったの?」

 

やめてくれ・・・俺は・・・あの時・・・

 

「助けるって約束したじゃん!嘘つき!!」

 

気づけば俺は、首を強く絞められていた。

 

男は動いていない。後ろから出てきた黒い手に絞められているのか?

 

夢のはずなのに、苦しい、

 

抵抗しようとするが、力が入らない。

抑えられているというより、俺がわざと力を入れていない感じだ。

 

「お前が!お前が死ねば!!良かった!!」

 

男の顔は、激しい怒りへと変わっていた。

 

苦しい、誰か、助けてくれ。

 

その時、男が煙のように消えた。

絞めていた手も消えて、真っ暗な空間だけがあった。

 

俺は尻込みをつき、息を整えている。

 

そして、真っ黒な空から白い手が出てきた。

 

俺は無意識に、その手を掴んだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「・・りん!、麒麟!!」

 

「はあ!!」

 

目が覚めると、俺はサテラに膝枕をされていた。

 

「はあ、はあ、はあ、」

 

息が整わない。

 

「麒麟!!目が覚めた!?大丈夫!?」

 

起き上がった俺の肩を触ろうとするサテラ、

 

 

バチン

乾いた音が響く。

 

俺はその手を反射的に払いのけてしまった。

 

「痛ッ!」

 

サテラのその声に、俺はやっと気がついた。

 

「あ!すまんサテラ!大丈夫か?」

 

サテラの手は腫れている、かなり強い力で弾いてしまったようだ。

 

「ええ、大丈夫よこれくらい。それより、あなたは大丈夫なの?」

 

「俺は大丈夫だ!なんともない!それより手が・・・」

 

「そんな訳ないでしょ?教えて、」

 

「俺はいい、とりあえず今は手を・・」

 

「大丈夫な訳ないでしょ!」

 

サテラはもう一つの手で俺の頬を叩いた。

 

「あなた!ずっとうなされてたのよ!?途中で、急に苦しみ出して、、そして、助けてって、」

 

サテラは目に涙を浮かべながら叫んだ。

 

「サテラ・・・」

 

「何があったの?教えて!」

 

「それは・・言えない」

 

「どうして!?」

 

「お前を・・巻き込みたくない・・」

 

その言葉に、サテラは目を細めて、さらに大粒の涙を流した。

 

「ひどいわよ、、こんなに一緒にいるのに!こんなに強くなったのに!まだ私を信頼してくれないの?」

 

「違うんだ、俺は・・」

 

「ひどい・・・ひどいわよ」

 

サテラはそのまま部屋を出てしまった。

 

ルーデウス達は別の部屋にいるので、おそらくそこに行ったのだろう。

 

俺は一人、残されてしまった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

その後一睡もできずに朝を迎え、俺達は予定通り、旅を始めた。

 

昨日はあんなに興奮していたのに、今じゃあ、全く楽しくない。

 

サテラはあの後、一度も会話をしてくれなかった。

 

いや、話しかけた訳じゃない、俺が話しかけたら、もしかしたら返事をしてくれるかもしれない。

 

でも俺に、そんな勇気はない。

 

「それにしても、暑いですね、」

 

「そうですわね、この調子だと、昼の行動はかなり限られますわ」

 

そんな事を知らないルーデウスとエリナリーゼはいつも通りに会話をしている。

 

そうだな、これ以上心配はさせたくない。俺もいつも通り振る舞おう。

そうすればサテラももしかしたら、俺を許してくれるかもしれない。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

砂漠の旅は俺が思っていた以上に大変なものだった。

 

まず魔物の量が段違いだ。会う確率が高い。

しかも一体一体が強い。ターミネートボア程、とまでは言わないが、それに近い戦闘力を持った奴らがうじゃうじゃいる。

 

せめてもの救いは、悪夢を見なくなったことぐらいか。

 

そして一番頭を悩ませたのは、サキュバスの存在だ。

 

俺とルーデウスは夜、すごい甘い匂いがしたので、外に出た。

 

するとそこには、黒髪の大きいメロンをお持ちの美しい女性が、

 

俺とルーデウスは鼻息を荒くしながらその女に近づいた。

 

その瞬間、エリナリーゼの剣と、サテラの火玉がその女に向け放たれた。

 

「しっかりなさい二人とも!サキュバスですわ」

 

エリナリーゼのその言葉と共に、刺された女の姿が変化した。

 

けむくじゃらのイエティみたいな姿になった。

 

刺されたサキュバスはその場に倒れ、そのままサテラの火玉で焼き尽くされた。

 

サテラはそれを真顔で眺めている。

 

俺は正気に戻り、ルーデウスの方を見た。

 

ルーデウスはうずくまっている。

 

「ルーデウス、大丈夫ですの?」

 

エリナリーゼが聞くと、ルーデウスは顔を上げた。

 

「エリナリーゼさぁん、一回、一回でいいんですぅ、すけべしようやぁ」

 

ルーデウスはいやらしさ全開の笑みでエリナリーゼを見つめた。

 

俺はそれに吹き出して、笑ってしまった。

 

しかし、すぐそばにいたサテラに見つめられて、すぐに顔を戻した。

 

 

 

その後エリナリーゼはルーデウスの発言を再現して、俺がそれに吹き出しかけるという謎のコントが繰り返された。

 

サテラとは結局、一度も話をする事はなかった。

 

もちろん俺以外なので、エリナリーゼやルーデウスとはいつも通り話している。

 

この関係のまま、迷宮探索をしたくはないな。

 

チームワークに支障がでて、迷惑をかけるのだけは避けたい。

 

よし、また近いうちに話そう、そして謝ろう。

 

俺はそう決心して、一人ルーデウスが作った簡易テントの中で眠った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

俺達はついに、迷宮都市ラパンについた。

 

巨大な骨、何百、いや何千メートルもあるかもしれない高さの骨が屋根のようになっている。

 

「やっと着きましたね、ラパン」

 

「・・・そうね、長かったわ」

 

「十分早い方ですわよ、ルーデウスが山を乗り越えるなんて無茶をしたおかげでね」

 

「あの時は本当に死ぬかと思ったぞ」

 

多少のトラブルはあったが、無事ラパンに着いたことに安堵する。

 

とりあえず俺達はラパンの巨大な岩、ほぼ山みたいなものの中にある、冒険者ギルドに入った。

 

中には屈強な男達が大量にいた。

 

大体ギルドには、二、三人ぐらいは新人がいるはずなんだが、ここは魔大陸の次に過酷な時であるベガリット大陸、全員が歴戦を思わせる体格をしていて、顔や体に傷がついている者が多い。

 

「さて、とりあえずパウロかギースの事を聞いてみますわよ」

 

「ギース・・・?ああ!手紙の送り主か」

 

「こんな広い場所で本当に見つかるの?」

 

「ギースはこういう所に情報網をはっていますから、名前さえ言っておけば後は向こうで・・・っと、その必要もなさそうですわね」

 

エリナリーゼが遠くを見る。

俺がその視線を追うと、冒険者ギルドの隅の方でに猿顔の男がいた。体は細く、他の冒険者と比べると少し、いやだいぶ弱そうに見える。

 

「なあ頼むって」

 

猿顔の男は獣族の男に何か頼み事をしているようだ。

 

あ、男が首を横に振った。断られたな。

 

「おい、デカいのは図体だけかよ!」

 

あいつ、弱そうなのに良くあんな挑発できるな。

実は見た目よりも、めちゃくちゃ強いとかか?

 

「ギース!」

 

「ん?おお!エリナリーゼじゃねぇか!」

 

あいつがギースかよ!

 

ギースは手を振りながら俺たちに駆け寄ってきた。

 

「遅れましたわね」

 

「んなこたあねぇ、むしろ早すぎるぐれえだ。ていうか、手紙出したのは半年前だぜ?あ、もしかして手紙みてねぇのか?」

 

「その事は後で話しますわ、ゼニスの方はどうなっています?」

 

エリナリーゼのその言葉にギースは顔をしかめる

 

「芳しくねぇ、正直・・・な、まあこっちも詳しくは後で話そう」

 

「とりあえず、父さんのところに案内してください」

 

割り込んだルーデウスにギースは少し困惑していたが、すぐに思い出したかのような顔になった。

 

「お・・・おお!何だ、先輩だよな?随分デカくなったなあ」

 

ルーデウス、こんなところにも知り合いが、、まあ手紙をルーデウスに出した時点で少しそんな気はしてたが、、

 

「ギースさんはお変わりのないようで」

 

「ヘッやめろよこそばゆい、新入りでいいっての」

 

「随分と仲がいいんだな、ルーデウス」

 

「ええ、昔、一緒に牢屋に入ってた仲なのでね」

 

牢屋?ルーデウス、捕まったりしてたのか?

 

「それで、先輩、そちらの二人さんは誰なんだ?」

 

「ああすまん、俺は麒麟だ」

 

「・・・サテラよ」

 

「おお!お前らが、あのワンダーズの!?」

 

やめてくれ、黒歴史は掘り返されたくないんだ。

 

「そ、そんなことより、ギース、だったか?パウロがいるんだろ?案内してくれよ」

 

「ん?ああ!そうだな、じゃあ着いてこいよ、案内してやる」

 

そうして俺たちはギースに連れられて、パウロの場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手遅れかもしれないんですけど一応

  • 戦闘描写たくさん
  • 話し合い、イチャイチャたくさん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。