貴殿転生 元の知識で本気出す   作:MENOUENOTANKOBU

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46話 作戦会議

目を開けると、先程の神殿の様な場所よりも、更に綺麗な場所に転移していた。

 

宮殿の中みたいだな。

 

横幅はとてつもなく広く、部屋の隅には何本も太い柱が立っている。

 

「お、おい、あれは」

 

俺が周りを見渡していると、ギースの震えた声が聞こえた。

 

ギースの視線の先、そこいたのは、

 

赤竜の2倍程の大きさを持ち、エメラルドグリーンの美しい鱗に、ずんぐりとした胴体から何本もの首が生えている。

 

「ヒュドラかよ・・初めて見たぜ」

 

ヒュドラ!

 

前世のにも同じ様な怪物がいた気がする。

神話上の生き物だったが、そいつが今、目の前に生きた状態でいるんだ。

 

「ハッ・・・っつ!」

 

パウロも絶句している。

 

しかしそれは、ヒュドラに対してではない。

 

ヒュドラの更に奥にある結晶の中、そこに眠っているのは、間違いない、ゼニスだ。ルーデウスの母親だ!

 

遠目で見ても、ルーデウスの母だと分かる顔だ。

 

「ゼニス!」

 

「馬鹿野郎!早まるな!」

 

ギースの叫び声を無視し、ヒュドラに向かい突撃するパウロ。

 

それに続き歩き始めたエリナリーゼとタルハンド。

 

「まじかよ、、ルーデウス!ロキシー!俺達もやるぞ!」

 

『はい!』

 

俺の合図で、一斉に攻撃を始めた。

 

「静かなる氷人の拳、アイシクルブレイク!」

 

「ストーンキャノン!」

 

「ボロブレス!」

 

俺達がそれぞれ放った攻撃はパウロを追い越しヒュドラに向かっていく。

 

まずはどれ程の硬度か確かめる!

 

攻撃が当たる瞬間、ヒュドラから甲高い反響音がした。

 

そしてそれと同時に、俺達の攻撃は全て当たる直前にその場から消える。

 

俺達が困惑をしていると、パウロがヒュドラに攻撃を仕掛け、瞬く間に首を一つ切り落とした。しかし首はまだ8本残っている。

 

だがパウロの攻撃は当たっている!

 

次は少し奥にいるタルハンドが詠唱を唱え、ヒュドラの頭上に岩を落とす。しかし岩はまたヒュドラから甲高い反響音が聞こえると同時に消える。

 

これで確定したな。

 

原理は分からないが、つまり、あいつは魔術だけを無効化する力を持っていると言う事だ。

 

であれば、ルーデウスとロキシー、サテラは戦力としての期待はできない。

 

どうする?今はパウロが善戦しているが、状況はいつ変わってもおかしくない。

 

「麒麟!俺がヒュドラの視界を遮る!お前はパウロを連れて魔法陣に向かってくれ!」

 

ギースが俺を後ろから追い越しながら叫ぶ。

 

「分かった、任せろ!」

 

ギースの考えは恐らく撤退、俺もそれに賛成だ。魔術が無効化されるのは分かったが、今はまだ情報が少なすぎる。

 

ギースは持っていた煙玉をヒュドラに投げつけた。煙玉は衝突する前に爆散し、周囲には煙が舞う。ヒュドラは予想通り混乱しているようだ。

 

煙で視界を覆われて尚攻撃を続けようとするパウロを、後ろから掴んで後退する。

 

「ッつ!麒麟!何すんだ!」

 

「一旦撤退だ!今ここで戦うのは危険すぎる!」

 

俺はパウロを引きずりながら走るが、パウロは立ち止まろうと抵抗してくる。

 

なんて力だ、動きが止まってしまった。

 

「パウロ!まだ分からねぇのか!?死ぬかもしれないんだぞ!」

 

「んなこたぁ分かってる!だがあそこにいるのはゼニスだ!間違いねぇ、助けねぇと!」

 

「当たり前だ!助けるに決まってるだろ!だからそのために作戦を練り直すんだ!」

 

「そんなの俺には必要ねぇ!お前達がやらねぇなら俺一人でも・・・」

 

「パウロ!」

 

駆けつけたエリナリーゼがパウロの頬を思いっきり叩く。

 

「ゼニスを助けたいのはみんな同じですわ!しかし今は作戦を考え直さなければ、助けるものも助けれませんわ!」

 

エリナリーゼの言葉に、パウロは唇を噛む。

 

納得できていないらしいが、抵抗する力は抜けた。俺はそのままパウロを引きずりながら、転移魔法陣に着いた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

転移魔法陣を踏み、なんとか俺達は元の場所に戻ってこれた。

 

「ふう、ありがとなエリナリーゼ」

 

「礼には及びませんわ、悪いのはパウロですし」

 

「・・・すまん」

 

ルーデウス達はすでに魔法陣の周りに座っている。

 

「良かった、戻ってこれたんですね」

 

「エリナリーゼ・・あなた怪我してるじゃない」

 

「ええ、ヒュドラに攻撃した時に、まあこれくらいなら、痛くも痒くもありませんわよ」

 

エリナリーゼの肩からは血が流れ出ている。

 

恐らくパウロを助ける為前に出た時、ヒュドラの攻撃を防ごうとして出来たものだろう。

 

エリナリーゼ肩をサテラが治癒魔術で治しながら、俺達は作戦会議を始めた。

 

「まずあのヒュドラは、パウロ達も見た事ねぇんだな?」

 

「ああ、俺達も冒険者時代、何回か迷宮に潜ったりもしたが、あんな化け物は初めてだ」

 

ギースが話をパウロの代わりに答える。

 

「そんな得体の知れない怪物に、ゼニスは囚われていると・・」

 

「母さんは、あれで生きているんでしょうか?」

 

ルーデウスがぽつりと呟いた。

 

「分からん、しか・・・」

 

「ああ!?生きてるか生きてないかなんて、今は関係ないだろ!」

 

ルーデウスの質問に、パウロがキレ気味に答える。

 

「やめろ!ここで喧嘩は!」

 

「いえ、俺が悪いんですタルハンドさん。すいません父さん、、そうですよね、そんなの関係ないですよね」

 

「ルディ、あそこにゼニスがいたんだぞ!?お前の母さんが!なんでそんなに冷静でいられるんだ!」

 

「・・・取り乱して、何か解決するんですか?」

 

「そうは言ってねぇ!」

 

パウロの怒りに、ルーデウスは冷静に対処している。

 

パウロの言い分にも少し理解できる。

 

ルーデウスも、もう少し取り乱してもおかしくないはずだ。確かにここで喧嘩をしてもなんの解決にもならない。

 

ルーデウスが言っている事は正しいし、それが今の最善の行動だ。

 

でもなんか、違う気がする。

 

「・・とりあえず、状況を整理しましょう」

 

複雑な感情を整理しようとする俺の横で、ルーデウスが淡々とヒュドラの特徴についてまとめて行った。

 

驚異的な再生能力、それぞれが意思を持つ九つの首、触れただけでエリナリーゼの防御を突破できる程の攻撃能力

 

「そして、原理は分からんが、魔術を無効化できる能力・・か」

 

「ええ、そして、石の中に閉じ込められている母さんは、生きてるかどうかも分からない」

 

「んなぁこたぁ俺だって分かってる!母親を見つけた時の態度がソレかって聞いてんだ!」

 

パウロがルーデウスの胸ぐらを掴み、壁に押し当てる。

 

「やめろ、ルーデウスだってほんとは不安で仕方ないはずだ。それを必死に抑えて、今は最善の行動を考えてるんだ」

 

俺は胸ぐらを掴んでいるパウロの手を取り、諭す様に伝えた。

 

「・・ックソ!ふざけやがって!」

 

パウロは悪態をつきながら離れ、部屋の中央付近で座った。

 

俺達はその周りに座り、再び作戦会議に戻る。

 

「・・・恐らくですが、あの怪物は、マナタイトヒュドラと呼ばれる生き物です」

 

ロキシーが静かに言った。

 

「何?ロキシーはあいつを知ってるのか?」

 

「はい、本で読んだことがあります。全身が魔力を吸収する鱗で覆われた悪魔の竜、おとぎ話かと思っていましたが、まさか本当に実在するとは・・」

 

「魔力を吸収、やはり俺達では奴に攻撃をする事はできないのか?」

 

「本に書いてあることが事実ならば、ゼロ距離で撃ち込めば通用するはずです。それに、ゼニスさんの事ですが、なんとかできると思います」

 

「本当か!?」

 

その言葉にパウロが食いついた。

 

「わたくしも、今のゼニスと同じ様な事になった人物を知っていますけど、ちゃんと今も生きていますわ」

 

「そうか、、良かった」

 

その言葉に更に安堵するパウロ、

 

「しかし問題は、どうやってあの再生するヒュドラにダメージを与えるかじゃな」

 

「ああ、ゼロ距離なら魔術でダメージが通るとはいえ、再生するんじゃ意味がねぇな」

 

ギースが難しい顔をしながら言った。

 

「・・・ヒュドラの首は、火で炙れば再生しないと聞いた事があります」

 

ルーデウスの案、それは前世で聞いた事のあるものだった。

 

確かヒュドラが出てくる神話の話では、同じ様に再生するヒュドラの首を火で炙ると、再生しなくなったと言うものだった気がする。

 

前世とこの世界は大きく違うとはいえ、他にいい案がない今、試す価値はある。

 

「・・・よし、それでいってみっか!パウロ、それでいいな?」

 

ギースもその案に納得したようだ。

 

「・・・あぁ」

 

パウロも渋々納得した様だ。

 

「気のねぇ返事だな、分かってんのか?あいつの首を切れんのは、お前しかいねぇんだぞ?」

 

パウロは不服そうにこちらを見ている。

 

この場でヒュドラの首を切れるのはパウロしかいない、つまり、パウロがもし判断を誤れば、俺達全滅ってオチもある。

 

そんなリスキーな事をしようとしているのに、こんな感じじゃあだめだ。

 

「・・・エリナリーゼ、タルハンド、ギース、それにロキシー。お前らには今まで世話をかけた。ホントに、考えられないくらい、すげぇ尽力をしてもらったと思ってる。けど、それもこれで終わりだ」

 

パウロがゆっくりと話し始めた。

 

「ゼニスを助けるか・・仮に助けられなくても、俺の家族は全員見つかった」

 

パウロが頭を下げる。

 

「これで最後なんだ、頼む、力を貸してくれ」

 

「・・かしこまるなんて、あなたらしくありませんわ」

 

「ここまで来て、力を貸さんアホウはおらんわい」

 

「パウロもすっかり丸くなっちまったな」

 

元黒狼のメンバーが承諾する。

 

やっぱり、どこまでいってもこいつらは、仲間なんだな。

 

エリナリーゼも最初はあんなに嫌がっていたのに、今では息子に世話を焼く母親の様だ。

 

「勝ちましょう!この戦いに勝てば、私たちの旅が報われるというものです」

 

ロキシーも承諾してくれたようだ。

 

パウロはしばらく下を向き、震えていた。

 

「・・・ふぅー、ルディ、お前はホントに頼りになる息子だ。俺はお前みたいに冷静にもなれねぇし、アイデアも出せねぇ、突っ込むことしか考えてなかった馬鹿だ。ダメな親父だ」

 

ルーデウスとパウロがお互いに見つめ合う。

 

「その上で言わせてもらう。ルディ、死んでも母さんを助けろ」

 

「はい!」

 

パウロの願いに、ルーデウスは元気よく答える。

 

どうやら、親子喧嘩は解決できた様だな。

 

「そして麒麟、サテラ、これまでルディのそばにいてくれてありがとう。お前らがいなけりゃあ、ルディは今日ここにいなかったかもしれない」

 

「・・感謝する事はないわ、私、ルーデウスの友達だから・・」

 

「そうだぜ、ルーデウスは俺達の、最高の親友だ。これまでも、これからもずっとな」

 

そう言って俺は人獣型を解除する。

 

「・・ッお前!?その姿は、」

 

「久しぶりだな、パウロ」

 

「ヘルス!なのか?」

 

パウロは口を開けっぱなしにして驚愕している。

 

「いいんですか?ヘルス?父さんにバラしちゃって」

 

「ああ、こいつなら、別に広めたりなんかしないだろ?それに、今から戦う時に、この姿は必須なんだよ」

 

「そうなんですか?」

 

「そうだ、お前らよく聞いてくれ、これから俺が考えた作戦を話すぞ」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「確かに、それなら安全ですわね」

 

「しかし、それでは私とサテラはどうすればいいのですか?」

 

「お前達は回復役を頼む。俺も完全に避けれるとは思えねぇからな」

 

「分かりました、任せてください」

 

「パウロ、お前真面目に聞いてるのか?」

 

「聞いてるに決まってんだろ、ただ、ちょっと頭が混乱しててな」

 

ギースの問いにパウロが答える。

 

「麒麟、いやヘルス、なのか?お前、なんでそんな姿に・・」

 

「詳しく事は、宿に戻ったらじっくり話そうぜ。今はゼニス救出、だろ?」

 

「・・・ッフ、そうだな!じゃあお前ら、いくぞ!」

 

『おう!』

 

俺達は再び、魔法陣の上にのる。

 

のる直前、横にいたサテラが俺の手を握りしめてきた。

 

「・・・帰ったら・・私とも話してね」

 

「・・・ああ、今度はしっかりとな」

 

俺もその手を強く握り返し、手を繋いだまま決戦の場へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手遅れかもしれないんですけど一応

  • 戦闘描写たくさん
  • 話し合い、イチャイチャたくさん
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