貴殿転生 元の知識で本気出す   作:MENOUENOTANKOBU

47 / 71
47話 ターニングポイント

戦場に戻ると、ヒュドラは最初と同じ様に眠っていた。

 

切られた首は既に再生している。

 

ヒュドラはこちらに気づくと、体を起こし、咆哮を上げた。

 

「よし、いくぞ!」

 

パウロの声と共に、俺達は散らばった。

 

パウロとエリナリーゼは正面から、俺とルーデウスは左側、タルハンドは右側へ、そしてサテラとロキシー、ギースは後ろの方で待機している。

 

ヒュドラはまずパウロに向かって攻撃を開始した。

2本の首がパウロに向かい突撃し、地面にぶつかる。

 

「はあ!」

 

しかしパウロはそれを軽く避けると、上から一刀両断、一本目の首を切る。

 

「ヘルス!ルーデウス!今だ!」

 

「はい!ヘルス、お願いしますよ」

 

「任せておけ」

 

俺は人獣型を解除し、獣人型になる。

馬の様になった下半身にルーデウスがまたがる。

 

「しっかり掴まっとけよ?」

 

そして俺はヒュドラに向かい一直線に走って行った。

 

パカラッパカラッ

 

走る音がヒュドラの注意を引く。

 

ヒュドラは咆哮を上げ、3本の首が俺達に向かってくる。

 

俺は空を飛び、ヒュドラの首を走りながら、切られた首の部分まで走る。

 

「ルーデウス!」

 

「いきます!」

 

ルーデウスの特大の火玉が切られた首にあたり、その衝撃で俺達は吹き飛ばされる。

 

俺は空中でブレーキをかけ、壁にぶつかるのは避けられた。

ルーデウスもエリナリーゼに受け止められ、無傷の様だ。

 

ヒュドラは咆哮とは違う、鳴き声の様なものを上げる。

 

切られた首は、再生していない!

 

「・・効いてる!この調子で行くぞ!」

 

パウロはそのままヒュドラに向かっていく。

 

ヒュドラは再生しない自分の首を眺め混乱している。その隙を逃さず、パウロはもう一本の首を切り後退する。パウロの後ろにいたルーデウスが火玉をぶつける。

 

しかしパウロの両サイドから3本の首が迫ってくる。

 

「パウロ!危ない!」

 

そこにエリナリーゼがカバーに入り、2本の首を受け流した。

 

だが一本、侵入に成功した首がエリナリーゼの腕に噛み付く。

 

「ッつ!」

 

「おらぁ!」

 

噛みついた首を瞬時に切り、エリナリーゼを抱えて後退するパウロ。

 

俺はそこに突進し、口を開ける。

 

「ボロブレス!」

 

ゼロ距離のボロブレス、もう一本の首も再生不可能にできた。

 

エリナリーゼにサテラが近づき、治癒魔術をかける。

 

ロキシーは柱の隅の方に移動し、ヒュドラに近づく隙を伺っている。

 

残りは6本・・・いける!

 

「ッは!離れろロキシー!」

 

ロキシーと走っていたタルハンドが、叫び声を上げた。

 

俺がタルハンドを見た時、タルハンドはヒュドラに体を噛まれ、宙にあげられていた。

 

まずい!地面に叩きつけられる!

 

「タルハンド!」

 

パウロが首を足場にしてタルハンドに噛み付いている首まで走り、首を切り落とす。

 

「助かった!」

 

タルハンドはそのまま地面に落ちたが、ロキシーの治癒魔術のおかげで致命傷にはなっていないようだ。

 

切られた部位にルーデウスがまた近づき、炎を浴びせる。

 

残り5本

 

「いける!押し込むぞ!ルディ!」

 

パウロがまた突進を始めるが、途中で止まった。

 

「な、なんだ!?」

 

ヒュドラは自分の切られ、炙られた首に噛みつき、ちぎった。

 

「まずい!あいつ、対策し始めたぞ!」

 

「ダメだ!再生させる隙を与えるな!」

 

「分かってますわ!やぁぁぁ!」

 

噛みちぎった首にエリナリーゼが飛びかかり、剣を突き刺す。

 

「汝の求めるところに、大いなる氷の加護あらん。氷河の濁流を受けろ!アイススマッシュ!」

 

エリナリーゼが長い詠唱を終えると、氷の塊が切られた首にぶつかり、はじける。

 

「ロキシー!」

 

エリナリーゼの声に、いつ間にかヒュドラのそばにいたロキシーが詠唱を始める。

 

 

「フレイムフラワー!」

 

放射器のような炎を攻撃が氷を溶かし、再びヒュドラの首を炙る。

 

よし!

 

しかしロキシーに向かい一本の首が迫る。

 

「ッひ!」

 

「ロキシー!」 

 

パカラッパカラッ

 

間一髪、俺はロキシーを抱えて、ヒュドラの首の届かない所まで逃げる。

 

「ありがとうございます、麒麟」

 

「礼は後でいい!無茶すんなよ?」

 

「ええ!」

 

「二人とも!俺の後ろに!ブレスが来ます!」

 

気がつけばヒュドラは口から炎の様なものが出てきている。

 

まずい!絶対に間に合わない!

 

「ルーデウス!ロキシーは俺が守る!」

 

「・・ッ分かりました!頼みましたよ!」

 

ルーデウスが振り返らずに俺に託した。

 

獣族の時の決闘とは違い、今度は俺が絶対に大丈夫だと確信してくている。

 

期待に応えなければ!

 

ヒュドラの見ている方向からして、俺の方に来るのは2本。

 

「ロキシー!絶対離れんなよ!」

 

「分かりました!」

 

俺の口からも炎が溢れ出る。

 

ヒュドラから熱線が出てくる。

 

俺もその瞬間に合わせて炎を吐く

 

「ボロブレス!!」

 

俺の最大火力!

 

ヒュドラの熱線と俺のボロブレスは、互いにぶつかり合った。

 

・・・耐えれるか!?もう魔力は3分の1程度しか残っていない。

 

いや耐える!耐えて見せるんだ!ルーデウスの期待に応える為、ロキシーを守るためにも!

 

永遠の様に感じられた熱線は、とうとう消えた。

 

俺が魔力を使い切るのと、ほぼ同時だった。

 

「ッはあ!はあ!」

 

「大丈夫!?ヘルス!ロキシー!」

 

膝をつく俺に駆け寄るサテラ。

 

「俺は・・いい!・・お前らは・・ヒュドラを・・」

 

ッゲホ

 

口から血が出てくる。当たり前だ、あんなにボロブレスを打ったんだ。喉が焼けているんだろう。

 

「ヘルス!」

 

サテラが俺を担ぎ、治癒魔術をかけてくれた。

 

「ありがとうサテラ、喉がだいぶよくなった」

 

「・・・無茶しないでよ」

 

「ああ、もう大丈夫だ、行ってくる」

 

「私も行く!」

 

サテラが俺の手を掴む。

 

「・・・死ぬかも知れないぞ?」

 

「そんなこと、覚悟してるわ!」

 

サテラは俺をまっすぐに見ながら言う。その瞳に偽りはない。

 

「・・・分かった、絶対に離れんなよ!」

 

「うん!」

 

ルーデウスは俺を信用してくれた。次は俺が誰かを信用する番だ。

 

「私はタルハンドさんの援護を、二人はルディ達の援護をお願いします!」

 

「ああ!」

 

「ええ!」

 

俺とサテラは戦いに戻って行った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「今だ!ルディ!」

 

「はい!」

 

親子二人のコンビネーションは抜群だ。

 

既にもう2本の首を切り、焼いていた。

 

残るは3本!

 

「サテラ!お前は俺の後ろで攻撃の隙を伺え!俺がなんとか首を切る!」

 

「分かったわ!」

 

俺の魔力はもうほぼ残っていない、ここから肉弾戦だ。

 

俺は持ってきた剣を持ち、武装色をつけた。

 

持っていた剣が黒く光る。

 

俺は地面を蹴り空を跳んだ。

 

「どりゃあ!」

 

ガキィィィン!

 

俺の振り下ろした剣は嫌な音を立てて切れた。

 

武装色をつけても、傷すらつけられねぇのか!?

 

しかしまずい!もう一本の首が俺に迫ってる!

 

食われる!

 

その瞬間、パウロが迫る首を切る!

 

「ヘルス!無事か!?」

 

「なんとか!ありがとう!」

 

切られた首に即座にサテラの火玉が撃たれた。

 

残り2本

 

「ガハァ!」

 

「ッは!ルディ!」

 

ルーデウスは切られた首に吹き飛ばされ、壁に激突した。

 

そして一本の首がルーデウスに噛みつこうとしている。

 

パウロがそこに行く、俺も向かわなければ!

 

サテラを呼ぼうと見る。サテラが足を震わせていた。

 

残されたもう一本の首が、サテラを睨んでいる。

 

「サテラ!!」

 

言葉より先に体が動いた。

 

ヒュドラの首が、サテラに突撃した。

 

〜〜〜ルーデウス視点〜〜〜

 

パウロがヘルスの援護に向かった。

 

残るは3本、しかし途中でパウロがヘルスを助け、2本になる。

 

いける!勝てる!

 

そう油断した、してしまったんだ。

 

俺は横から来る切られたはずの首に気づかなかった。

 

「ガハァ!」

 

「ッは!ルディ!」

 

自分の骨が折れる音を聞きながら、俺は壁に激突した。

 

くそ!体制を整えないと・・・

 

俺がなんとか立ち上がると、目の前から迫ってくる残りの一本。

 

ダメだ・・・これは・・避けれない。

 

俺に走馬灯の様なものが流れる。

 

俺に外の世界を教えてくれたロキシー

 

俺の初めての友達、何より俺の心を癒してくれたシルフィ

 

俺に呆れて出て行ったエリス

 

そして、いつも俺のそばに居てアドバイスをくれた、親友のヘルスとサテラ

 

・・・死にたくない!

 

「ルディィィィィ!」

 

俺が食われる直前、パウロが俺を抱えて壁に再度衝突する。

 

痛い!しかしまだ生きてる!

 

パウロは俺にもたれかかって気絶している。

 

目の前にはヒュドラの目玉。

 

「オラァァァァ!」

 

俺はその目玉に自分の手を突き刺し、火玉を出した。

 

首が爆散し、俺とパウロは吹き飛ばされる。

 

 

そのまま後ろに吹き飛び、魔法陣の場所まで来てしまった。

 

「ルーデウス!?大丈夫ですの!?」

 

「ルディ!その腕は!?」

 

ロキシーに言われて、俺は自分の左腕を見る。

 

ない。

 

自分の左の肩から先が、食われていたのだ。

 

「あぁぁぁ!」

 

理解すると同時に、体に激痛が走る。 

 

「ちょっと待っててください!」

 

ロキシーが治癒魔術をかけてくれたおかげで、痛みが消える。

 

「はあ、はあ、助かりました。ロキシー師匠」

 

「大丈夫です、それよりも、ヘルスとサテラがまだ・・・」

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

その瞬間、ヒュドラの方向から、泣き叫ぶ声が響いてきた。

 

全員、その方向にある光景に釘付けになる。

 

ヒュドラが・・・再生している。

 

炙られた首を食いちぎり、新たに再生した首と、また炙られた首を食いちぎる。

 

そんな風にして、ヒュドラは・・・もとの9本の姿に戻っていた。

 

また振り出しに戻ってしまったのだ。

 

そうやって再生をするヒュドラの下に、二人はいた。

 

泣き叫び続けていたのは、サテラ

 

そして、下半身が食いちぎられた・・ヘルスが。

 

「ヘルス!!」

 

エリナリーゼとタルハンドが、二人の方へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手遅れかもしれないんですけど一応

  • 戦闘描写たくさん
  • 話し合い、イチャイチャたくさん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。