貴殿転生 元の知識で本気出す 作:肉と米と愛
「ふう……」
深呼吸をする。
自身の身だしなみを再度確認してみた。
いつも着ている服よりも、さらにオシャレだ。
その分、着心地は最悪なんだが……まあいい。
俺は今第二王女、アリエルに会うため、後宮のある部屋に向かっている。
横にはいつもとは違う政治家モードに入っている父。
「着いたぞ……」
「……ん」
思わず固唾を飲んでしまう。
まだ幼い少女とはいえ、一国の王となりうる存在なのだ。
生意気な口聞いたら一発アウト、処刑されるかもしれない。
父は部屋の前へ行き、ノックをする。
「ピレモンです」
「おお!どうぞお入りください」
緊張する俺とは裏腹に、中から男の優しい声が聞こえてきた。
『失礼します』
部屋に入ると、そこには二人の人物がいた。
一人は見るからに小さく、可愛らしい女の子が椅子にちょこんと座っていた。
しかしその服装は豪華で、一目見ただけでこの少女が上級貴族、王族だという事がわかる。
この子がアスラ王国第二王女、アリエル・アネモイ・アスラか……
そしてその横に立っているもう一人の男。
目が悪いのだろうか?
丸メガネをつけていて、その姿は真面目で優しそうな印象だ。
歳はディエゴと同じくらいか、少し上だろうか?
見た目からして恐らく、彼が上級魔術師でありアリエルの守護術師、俺の先輩に当たる
デリック・レッドバットだろう
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挨拶が終わり、俺が守護術師として仕えさせると父が言った時。
デリックは何は言いたいそうだったが、それはアリエルの発言によって止められた。
「ヘルス……様でよろしいんですよね?」
「そうですよ」
「あなたのお話は聞いています。なんでも不思議な生き物に変身する魔法を使うのですよね?」
「ええ、よくご存知で」
「はい!私は、あなたに乗るのが夢だったんです!」
「そうですか、では今日から僕が……ん?」
え?
今この子、なんて言った?
「ヘルスさん!その不思議な生き物に変身して、私をのせてください!」
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なんでこんな事に……
「あぁなんという……」
「………」
今俺は、獣型に変身をし、庭でアリエルを背中に乗せて歩いている。
アリエルは上機嫌で俺の背中の上で足をバタバタとさせている
正直、落としてしまいそうで気が気でない。
それはその姿を見ている父とデリックも同じ気持ちらしく、父は青ざめ、デリックは落としても魔術で受け止めれるように準備している。
「きゃは!すごいです!」
後ろの方で聞こえる喜びの声がいつ悲鳴に変わるか、そんな地獄の様な時間を耐えていると、アリエルは俺の背中ですやすやと眠ってしまった。
「寝た……のですか?」
「凄まじい体幹ですね……」
「デリックさんか父上、感心してないで早く王女様をおろしてあげて下さい……そろそろ限界です」
「そうだった!すまないヘルス」
父がアリエルを丁寧におろし、デリックがそれをお姫様抱っこで持つと同時に俺は変身を解除し、膝から崩れ落ちた。
足は鍛えていて自信があったが、何時間も同じ場所を歩いて、しかも背中に人を乗せていたからか、俺の足はすでに限界だった。
これは……明日は筋肉痛だな。
そんな事を考えているとデリックが
「アリエル様をお部屋に運びましょう」
そうして父がデリックにアリエルを渡し、俺は手の空いた父におんぶしてもらう形で、デリックについていった
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アリエルを運び終えると、俺とピレモンはデリックに促され椅子に座った。
「どうだヘルス、これを6年、続けれそうか?」
「アリエル様は想像よりも活発ですね、、正直静かな方だと思っていました、でも僕は諦めませんよ」
「そうか、ならよかった」
父は安心した様子だ。
俺がやめるとか言い出すと思ったのかな?
「アリエル様はヘルス君の言う通り活発で行動力ある子です。そして尚且つ人を惹きつける魅力がある。この方ならきっと今のアスラ王国を変える事ができます」
遊び疲れて寝ているアリエルを見ながら、デリックは話を続ける。
「どうか、アリエル様をこの国の王にする手助けをして下さいませんか」
デリックは俺達に深々と頭を下げた。
「やめてくださいデリックさん。元々そのつもりで今日俺たちはここに来たんですよ。そうですよね、父上?」
俺はアリエルを王にする事に興味はない。
彼女が王になろうがならなかろうが、
だけど今は、話を合わすべきだろう。
「あぁそうだとも、私はアリエル・アネモイ・アスラ様を王女にするために今日ここに来たんだ」
ピレモンの意図はよく分からんが、王になる手助けをしてやると言っているんだ。
デリックも快く受け入れてくれるだろう。
「そんな、あぁ……何と感謝をすればいいのか。本当にありがとうございます」
デリックは既に半泣きになっている顔を上げた。
そんなに苦しかったのか?
アリエルの護衛。
「それじゃあ僕は今日からアリエル様の守護術師です。共にアリエル様の手助けをしましょう」
「ええ、よろしくお願いします。ヘルス君」
「君なんて入りませんよ、ヘルスと呼んでください」
「……ああ、分かったよヘルス。よろしく頼む」
デリックから差し出さられた手を、俺は迷う事なく掴んだ。
よし、滑り出しはいい。
後は、アリエルの護衛として
俺のアリエルの護衛の日々が始まった。
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守護術師になって3ヶ月経った。
この子を一言で言うと、元気な子だ。
いつもどこか歩いているし、外に出ればあれは何?これは何?と質問を繰り返してくる。
色々と問題はあるが、今の所は順調な毎日を送っている。
新しい日課もできたしな。
まず日が昇る前に外に出て走り込みをする。
そしてデリックの土魔術で作ってもらった、岩よりもさらに硬い壁を軍艦バッグ代わりにし、日が登れば部屋に戻り、アリエルとデリックなどと朝飯を食べる。
昼間はずっとアリエルの護衛をし、空いた時間にデリックと魔術について話をする。
そうした日々が続いている。
アリエルとの関係はよくなっていると思う。
この子とっての俺は兄みたいな存在になっているらしく
「私のことを呼び捨てで呼んでもいいのですよ」
なんてことも言ってくれる。
俺も誰に対しても敬語を使うのは疲れるので、アリエルと話す時はタメ口になっている。
でもこれ、もしバレたら不敬罪とかで捕まらないよな?
一つ不満があるとすれば、たまにアリエルが俺に背中に乗せてとせがまれることだ。
あれは肉体も精神も本当に疲れる。
もう少し自分が大切な存在であると言う事を理解して欲しいものだ。
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そこからさらに6ヶ月
アスラ王国の貴族はみんな大忙しだ。
なんたってアスラ王の娘、アリエル王女の5歳の誕生日パーティーが迫ってきている。
この世界では毎年誕生日を祝う文化はないが、5歳 10歳 15歳に大きなパーティーを開くらしい。
量よりも質という訳だ。
しかし、俺はそう言うパーティーが大嫌いだ。
理由は一つ、確かに表向きはただの誕生日パーティー、だが実際はただ大人達が自分の権力をアピールし、さらに強い権力を持つものに媚を売る。
いわば政略の一つにすぎない。
ピレモンに連れ回されそんな光景を何回も見てきた俺は、そんなパーティーが大嫌いだ。
今回も、アリエルの誕生日パーティーだってのに、誰もあの子を主役として見はしないだろう。
可哀想に
「ヘルス、一体なにをしているの?」
「な、なにもしてないよ、アリエル」
後ろからアリエルがドタドタと音を立てて迫ってくる。
「嘘です!その背中に何か隠したのを見ましたよ」
「……見ない方がいいよアリエル。これを見たら最後、夢の中に永遠に閉じ込められちゃうんだぞ」
アリエルは顔を青くしてデリックのとこへと走っていった。
全くかわいい。
自分でもよくわからない嘘でも、アリエルはすぐ騙される。
そこが可愛い所でもあるし、怖い所でもあるのだが。
アリエルを怖がらせてまで俺が隠し通しているもの。
それは、アリエルの誕生日プレゼントだ。
プレゼントの中身は指輪。
もちろん変な意味じゃない、純粋に喜んで欲しいと考えた末に指輪に行き着いたのだ。
それにただの指輪じゃない、手作りだ。
デリックは買ったらしいが、俺は手作りにこだわった。
完成した指輪は、緑の鉱石が特徴的な逸品だ。
これは少し魔力を込めると色が変わる、特殊な鉱石を使っている。
魔力を込めれば色が変わる鉱石なんてどこにでもあるが、この鉱石の特徴はそれだけでは終わらない。
まず、この鉱石は小さな塊で見つかる。
その鉱石を割って二つにし、二つを別の場所に移動させ片方に魔力を込める。
そうするとあら不思議、もう片方の鉱石も緑から色が変わる。
簡単に言えば、この指輪は連絡装置、危険を知らせるものとして役立つのだ。
指輪は今あげてもいいが、できれば誕生日に渡したい。
そうして喜ぶアリエルの姿を想像すると少しパーティーが楽しみになってくる。