貴殿転生 元の知識で本気出す   作:MENOUENOTANKOBU

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ちょいエロスです。苦手な方は注意です。


50話 長い夜

「サテラ、なんでここに?」

 

自分の声がひどく震えているのが分かる。

 

「なんでって、ここは私の部屋でもあるでしょ」

 

「それは分かってるんだが、ゼニスはどうしたんだ?」

 

「リーリャさんとエリナリーゼが後は任せろって言ってくれて……それで暇だったから部屋に……」

 

「そうか……ならいいんだが…」

 

サテラは部屋に入り、鍵を閉め、俺の横に座ってくる。

 

そこから、お互い何も言わずに時間だけが過ぎていく。

 

「……ごめんなさい」

 

俺が話そうとした時、サテラが先に口を開いた。

 

「私、あなたの気持ちを無駄にして……迷惑もかけちゃって…それであなたはあんな風に……」 

 

「やめてくれ、あれはお前のせいじゃない、お前に本当の事を言えなかった…俺の責任だ…」

 

「………」

 

サテラの顔を見ようとしたが、恐怖で、横を見ることすら出来ない。

 

「本当にすまなかった。信じるって約束したのに、俺はそんなことすらしてやる事が出来なかった」

 

サテラは今まで、ずっと頑張っていた。

 

小言を言う事はあるが、俺の我儘にもいつも最後まで付き合ってくれたし、俺が朝寝ている間にも、食料の買い出しや依頼の確認など、俺が困らない様に色々動いてくれていた。

 

全部俺の為に。

 

それなのに俺は、何も返す事ができない。

 

俺は、彼女の横に居ていい存在じゃなかったんだ。

 

下を向き、俺は顔を歪めて拳を強く握る。

 

情けねぇなぁ……

 

我慢するはずだったのに、涙が……

 

 

「もういいの……」

 

俺の手に、そっとサテラの手が添えられた。俺よりも一回り小さく、傷一つない華奢な手だ。

 

「もういいって……どういう……」

 

「私の事、心配してくれてたのよね」

 

俺は勇気を出して、サテラの顔を見る。

 

サテラは泣いていた。しかしそれは悲しみの涙ではない。その表情はどこか安堵した顔をして微笑んでいた。

 

「あなたが私の事を大切にしてくれているのが分かったの、もうそれで、私は満足よ」

 

「でも俺はまだ……本当の事を話せてない」

 

「誰にだって、話せない事の一つや二つあるわよ。それを無理に話させようとした私にも非があるわ」

 

「………」

 

そんな事はない、と言えるほど、俺は強くない。

 

「ずっと私、頑張ってたのよ。あなたに認めてもらえる為に」

 

「……ああ、知ってるよ」

 

「あなたが寝てる時に、買い出しに行ったり、依頼の確認をしたりしたわ」

 

「……知ってる」

 

「らしくない話し方で、あなたに心配されないよう、強がってた」

 

「……そうなのか?」

 

「うん、ほんとは凄い怖かった。冒険者の人達も、魔物も、逃げ出したいくらい怖かった…」

 

サテラは顔を赤くして、俺の腕を強く抱きしめる。

 

「……本当に、今まで、よく頑張ったな」

 

「うん、だからね、あなたにお願いがあるの」

 

「…なんだ」

 

「私を、あなたの妻にしてください」

 

サテラは俺をベットに押し倒した。

 

サテラが俺の上に乗り、顔を近づける。

 

今度は拒絶しない。

 

「なあ、サテラ」

 

「……なに?」

 

「本当に、俺で良いのか?」

 

 

 

サテラが俺の唇を奪う。

 

それは数秒、一瞬の時間だったが、ずっとしていた様な感じがした。

 

名残惜しそうに唇が離れる。

 

「あなた"が"いいんです」

 

「でも、俺はそんな経験ないし、きっと下手だぞ」

 

「大丈夫、好きな人と繋がれるだけで、私は幸せです」

 

俺の耳に、サテラが囁く。

 

「後、これはエリスから教えてもらったんだけど」

 

 

 

「私、ヘルスの子猫が欲しいニャン」

 

 

 

 

「……フフ、なんだよそれ…」

 

「あれ?これで男は一発って言ってたんだけど…」

 

俺はサテラの髪を撫でる。いつ撫でてもサラサラだな、でも今日は一段と滑らかな気がする。

 

「そんな事しなくても、俺はもうサテラに堕ちてるさ」

 

サテラは顔を真っ赤にして、俺の胸に顔をうずめた。

 

夜はまだまだ長い。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

朝、外の騒音で目が覚める。

 

横を見ると、同じベットの上にサテラ、いや、妻の寝顔があった。

 

久々に寝顔を見たな、可愛い顔だ。

 

サテラを起こさない様、ゆっくりと起き上がる。全身が痛い、筋肉痛か?

 

昨日、俺は初めて大人の階段を登った。

 

23歳、前世の分も足すと30歳は軽く超える。

 

俺はそんな歳でやっと大人への階段を一歩進んだ。ちょっと遅すぎる。いや前世だったらこの歳ぐらいが普通ぐらいか?

 

ルーデウスにやっと追いついた感じがする。

 

全身の痛みとは裏腹に、俺の濁った心は晴れていた。

 

全てはサテラのおかげだ。本当、感謝してもしきれねぇ。

 

「んん、ヘルス?」

 

サテラが目を擦りながら起き上がる。

 

「おはよう、サテラ」

 

「うん、おはよ……ッは!?」

 

サテラは自分の来ていたワンピースがない事に気づき、真っ赤になりながら布団で体を隠す。本当に可愛い奴だ。

 

「昨日の事があったのに、これは恥ずかしいのか?」

 

「……それは、そうだけど」

 

「俺の妻は恥ずかしがり屋さんだな」

 

その言葉でサテラはムスッとした表情をして、布団にくるまってしまった。

 

しばらくの間、そんな感じでイチャイチャした後、俺達は着替えを終え、扉を開ける。

 

『あ』

 

部屋を出た瞬間、ルーデウスとロキシーが二人で部屋から出てきた。

 

ルーデウスとロキシーは別室だった筈だ。そんなロキシーの髪は少々乱れており、服は薄い物を一枚。

 

なるほど、ルーデウスも同じか…

 

「ルーデウス、おはよう」

 

「ヘルスにサテラ、おはようございます」

 

「ルーデウス、あなた……」

 

サテラは少し困惑している。当然だろう、妻子持ちの男が、女と共に部屋から出てきたんだ。

 

「ルディ、申し訳ありませんが、私はエリナリーゼさんと話があるので、リーリャさんの所には一人で行ってくれますか?」

 

「分かりました」

 

サテラが困惑している間に、ロキシーはエリナリーゼの部屋に行ってしまった。

 

そんなサテラの肩に手を乗せる。

 

「サテラ、この事については、俺が後で説明する。だから今は、ルーデウスには何も言うな…」

 

「……はい」

 

予定が狂ったが、これは俺とパウロが望んでいた事だ。ロキシーと一夜を過ごしたと言う事は、ルーデウスもその気があるのだろう。なら後はそれを俺達が後押しするだけだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

その後、俺達もゼニスとリーリャがいる部屋に向かった。

 

部屋に入ると、ボーと外を見つめるゼニスと、それをただ静かに見ているパウロとリーリャの姿。

 

二人とも元気がなさそうだ。

 

「父さんとリーリャさん、それに…母さん」

 

「おぉ、ルディ、それにサテラと……ヘルスか…」

 

パウロは俺を不安な顔で見てくる。

 

「パウロ…その……あの時は、すまなかった。俺のせいで、みんなに迷惑を……」

 

「別にお前のせいだなんて思ってねぇよ、大体、お前がいなけりゃあヒュドラを倒す事も、ゼニスを助ける事すら出来なかったんだ。むしろ感謝してるぜ。みんなもそう思ってる筈だ」

 

「どうだろうな……」

 

「皆さん、ヘルス様の元気がないと心配しておりましたよ」 

 

パウロな横にいるリーリャが薄く笑いながら言った。

 

「ああ、お前が死んだような顔してたからな、みんな気が気じゃなかったぜ。でもお前の今な顔を見ると、解決できたようだな」

 

そう言ってパウロはサテラの方を見る。

 

どうやら、パウロには全てお見通しらしい。流石下半身と剣術に全振りした男、よく分かってらっしゃる

 

でもそのおかげで、俺の心は更に軽くなった気がする。

 

そうか、みんな俺に見放した訳じゃないのか……良かった。

 

 

 

 

そしてその後、俺達はゼニスの状態について詳しく聞かされた。

 

ゼニスは生きてはいるが、魔力結晶に閉じ込められた事で、廃人の様になってしまったらしい。

 

完全な廃人ではなく、赤ちゃんの様な言葉は発せれるし、動けもする。

 

しかし、治療法はない。

 

恐らくは一生、ゼニスはこの状態だと言う。

 

その話が終わると、パウロの強く握る拳からは血が垂れていた。相当ショックなのだろう。

 

俺はゼニスと面識などなかったが、一生をこの状態と聞くと、何か胸にくるものがある。

 

ルーデウスの母親、俺も一度話してみたかったな。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

しばらくして、俺達はベガリット大陸を去る事を決めた。

 

去るにしてはかなり早いが、シャリーアには出産を控えたシルフィがいる。これくらいスピーディーにいかなくては間に合わないかもしれない。

 

しかし今回は行きとは違い、少々遠回りになる。ゼニスとリーリャの為だ。こんな砂漠にも盗賊がいると言うのだから恐ろしい。

 

途中、転移魔法陣を使う事になるので、ルーデウスが念入りに他言しない様口止めをしていた。ギースあたりが心配だが、まあなんとかなるだろう。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

迂回ルートを使ったからか、俺達の旅はスムーズに進んだ。

 

ギースが購入したアルマジロみたいな魔物が相当優秀で助かった。魔物との戦闘に関しても、全く危険はなかった。

 

元S級パーティーメンバーと、現S級パーティーメンバーが揃ってるんだ。当然っちゃ当然か。

 

一番の問題はルーデウスだ。

 

今回、一番傷を負ったのはルーデウスだ。左腕を失い、更に俺のせいで左目も失った。ルーデウスは気にするなと言ってくれたが、そんな言葉で俺の罪悪感は消えない。

 

ルーデウスが体制を崩して倒れるたび、俺の心が痛む。

 

サテラが支えてくれなければとっくに俺は崩壊していただろう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

砂漠の旅も終わりに近づいていた日の夜。

 

俺はサテラとパウロ、エリナリーゼの四人で焚き火の周りで座っていた。

 

見張りの為でもあるが、この四人で話したい事があったのだ。

 

「さて、今日俺達四人が見張りになったのは、お前達に話したい事があるからなんだ」

 

パウロが話を始めた。

 

「話って、ルーデウスの事でしょう?」

 

サテラが少し怪訝そうにパウロを見る。

 

「ああそうだ、みんな知ってると思うが、ルディはラパンでロキシーと一夜を共に過ごした」

 

「その事に関しては、わたくしもロキシーから聞きましたわ。自分は酷い事をしたと後悔していましたわよ」

 

パウロはゆっくりと頷く。

 

「ロキシーはルディが好きだ、それは間違いねぇ。だけどロキシーはルディに妻がいる事を知り、身を引こうとしてる」

 

「一夜を過ごしたのにか?」

 

「ああ、あの夜の事も、ルディを癒す為の行為に過ぎないんだろう」

 

「……なるほど」

 

「俺としては、家族の為にずっと頑張ってくれたロキシーに、幸せになって欲しいと思ってる。それが例え大切な人を傷つけるかもしれなくてもな」

 

「つまり、ロキシーをルーデウスの妻に迎え入れたいって事?」

 

「そうだ、俺はロキシーをルーデウスの嫁として迎え入れたいと思ってる」

 

即答するパウロに、サテラは下を向き、難しいそうな顔をしている。

 

「そこでだ、ルディを支えてきてくれたお前達に聞きたい。本当にそれで、ルディ達は幸せになれると思うか?」

 

パウロの問いかけに、俺達三人は黙ってしまう。

 

各々がそれぞれ考えを見つけている。

 

「わたくしは、それでも良いと思いますわ」

 

エリナリーゼが口を開く。

 

「いえ、絶対にそっちの方がいいですわ」

 

「なんでだ?」

 

俺が聞くと、エリナリーゼはロキシーのいるテントに目を向ける。

 

「彼女、本当はもっとルーデウスに甘えたい筈ですわ、それを必死に抑えて身を引こうとしてるんです。そんな姿、友達としては見るに耐えませんわ」

 

確かに、それもそうだ。ロキシーを初めてみた時、彼女の視線はルーデウスしか見えていなかったはずだ。それぐらい本気でルーデウスが好きなのだ。

 

ずっと好きだった人がすでに既婚者で、儚く散る恋。

 

可哀想ではある。

 

「それに、恐らくですが……」

 

エリナリーゼが話を続ける。

 

「彼女、妊娠していますわ…」

 

その言葉に、全員の動きが止まる。

 

『はあ!?』

 

真夜中の砂漠に、三人の大声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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