貴殿転生 元の知識で本気出す   作:MENOUENOTANKOBU

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そろそろ曇らせてぇな


51話 ロキシー・グレイラット

俺達の声によって出てきた魔物達を倒し、再び焚き火の周りに座る。

 

「ちょっと、うるさいですわよ。もしルーデウスかロキシーが起きたらどうするんですの?」

 

「お前がとんでもない事言うからだろ?」

 

ロキシーの妊娠、あの一夜で?

 

まさか、ありえない。しかし絶対にないとも言い切れないのがこの世界。

 

この世界に避妊具はない、そういう行為をすれば必然的にその可能性は出てくるのだ。サテラだってもしかしたら出来ているのかもしれない。

 

「ちょっと前、ロキシーがお酒に酔った勢いで言ってましたわ。最近、"来てない"とね」

 

俺達はそれ以上言葉が出てこなかった。

 

そうか、妊娠の可能性か。

 

もしロキシーが妊娠しており、それで尚ルーデウスがロキシーを捨てれば、それはただのクズになる。娶ったとしてもクズに変わりはないが……

 

俺はそれでも問題はない。

 

「サテラはどう思う?」

 

「え?私?」

 

突然の問いに戸惑うサテラ。

 

「私は……」

 

どうやら本当に悩んでいる様だ。

 

以前の彼女なら、そんな事はありえないとキッパリ否定していた。

 

だけど彼女も成長したのだ。今は真剣に考えた上で決断しようとしてくれている。

 

「……私も、ロキシーを娶るのに…賛成……かな」

 

「本当か!?」

 

パウロが目を大きく見開く。きっと反対されると思っていたんだろう。

俺も少し驚いてる。

 

「ちょっと」

 

「あぁ、すまん」

 

エリナリーゼの睨みに縮まるパウロ。

 

「でも、サテラがそう言うなんて珍しいですわね、理由を聞いても?」

 

「……別にルーデウスとシルフィはミリス教徒じゃないし。それに、ロキシーがもし本当に妊娠していたら、ルーデウスも責任を取るべきだと思ったから」

 

「サテラ…!ありがとう……ッ!?」

 

サテラが横から俺を抱きしめてきた。

 

良い匂いがする。

 

……ちょっとオッサンみたいになってるな。

 

「サテラ、そういうのは皆んながいない時に……」

 

「今がいい」

 

どうやら、しばらく離す気はないようだ。

 

 

 

「サテラ、あなた本当に変わりましたわね」

 

エリナリーゼが俺達の方を微笑みながら見ている。

 

「全くだぜ、最初に会った時は死んだ様な顔してたのにな」

 

「ケホッ、本当の私はこうなの、今までのが変だったんだわ」

 

「そう言う事でしたの……フフ……確かに今のあなたの顔、本当に幸せそうですわ」

 

「これからはもっと幸せにしてやるよ」

 

その言葉で頬を赤らめるサテラ。

 

「……なあお前ら、話が逸れてるんだが」

 

パウロが退屈そうな顔をしてこちらを見ている。

 

「ああすまん、ルーデウスの話に戻そうか。とりあえず、ロキシーが妊娠した可能性は、ルーデウスにも報告すべきなんじゃないのか?」

 

「ええ、それが良いですわね。わたくしの方から伝えておきますわ」

 

「エリナリーゼ、助かる」

 

「フ、エリナリーゼは息子に甘いな」

 

「……ん?迷宮の時もエリナリーゼが似たような事言ってたよな?そりゃ一体どう言う意味なんだ?」

 

「別に大した理由じゃありませんわよ。ただ、ルーデウスの結婚相手が、わたくしの孫ってだけの事ですから」

 

「おおそうか、つまりシルフィの祖母はお前って事か、なるほどな………………は?」

 

 

 

こうしてパウロが知らぬ間にエリナリーゼと親戚なっていた事を知り、夜の作戦会議は終了した。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「スゥゥゥゥゥゥ」

 

やはり空気が美味しい。

 

転移魔法陣を使い、俺達は無事に中央大陸に帰還する事ができた。

 

蒸し暑い砂漠とは違い、ここは丁度いい気温で居心地がいい。

 

 

 

「ヘルス、本当にその姿に変えてしまうんですか?」

 

「アリエルさんには、まだ隠しておくの?」

 

「ああ、しばらくの間はな、これからはまた麒麟って呼べよ?」

 

俺は中央大陸に入ると同時に、人獣型に戻った。もう姿を偽る必要なんてないが、元の姿にする必要もない、そっちの方が色々と問題が起きそうだしな。

 

パウロ達にも一応俺が変身する理由を教えておいたので、バレる心配は恐らくないだろう。

 

「ところでよぉヘル…麒麟、お前のその羽衣みたいなの、最初より色がおかしくねぇか?なんか顔も前より怖くなったていうか……不気味だぜ?」

 

「そうじゃの…どこか威圧感があるのぉ」

 

「……むぅ」

 

ギースとタルハンドの言う通り、俺の人獣型はかなり変わってしまった。

 

真っ白な羽衣は黒紫に変わり、少々怒っている様な顔つきになっている。不気味と言われても仕方ないだろう。これももう一人の俺を受け入れた影響なのだろうか?

 

あいつの事についても謎だ。一つを代償にとか言ってたが、今のところ悪夢を見なくなった他に変化はない。

 

代償は悪夢を見なくなる事なのか?それはないだろう。

 

あいつは記憶を見せてやったとか言っていた。恐らくそれが悪夢の原因になる。つまり代償は他にある。それは一体……

 

……ダメだ、ここで仮説を立て続けても、埒が明かない。

 

とりあえずは生き残れたんだ、今はその喜びを堪能しよう。

 

「別に変じゃないよ、私はその姿も好き」

 

こんな事を言ってくれる妻もいるんだ。前向きに考えなきゃ損だ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

旅の道中、エリナリーゼとパウロの説得により、ルーデウスはロキシーに愛の告白をし、一応二人は結ばれてた。

 

「愛しています」

 

ルーデウスのその言葉に目を輝かせるロキシーの姿は、実にロマンチックなドラマのワンシーンだった。

 

しかしロキシーはまだ妻になった訳ではない。家に帰り、シルフィやノルン達に認められるまでは、

 

パウロと俺がフォローするとはいえ、修羅場になる事は間違いない。

 

シルフィとアイシャはともかく、ノルンが厄介だな、あいつは結構熱心なミリス信者だから、一筋縄ではいかないだろう。

 

 

 

案の定、ルーデウス邸では大騒ぎになった。

 

まずは俺達全員が無事だった事を、三人は喜んでくれた。

 

特にノルンは、久々の父との再会に涙を流すほどだ。

 

そしてギースやタルハンドなどが帰り、残ったのはロキシー、俺とサテラ、後はグレイラット家のメンバーだ。

 

俺達は応接室の様な場所に案内され、事情を既に知っているリーリャとゼニスは部屋を後にした。

 

俺とサテラ、そしてパウロは、ルーデウスの座る椅子の後ろの壁に立ち、ロキシーはルーデウスの横に立っている。

 

……始まるのか

 

ルーデウスがロキシーを娶りたいと言った瞬間、ノルンの表情は一気に固まった。

 

「……兄さん、本気で言ってるんですか?」

 

「ああ、俺は彼女を二人目の妻として迎え入れたいと思ってる」

 

ルーデウスは席を立ち、シルフィに土下座をする。

 

「ごめんシルフィ、操を立てるって言ったのに、約束を守れなかった」

 

シルフィは何も言わず、ただ土下座をするルーデウスを見ている。

 

その表情は、軽蔑をする様な目ではないが、納得している感じでもない。

 

どういう感情なんだ?

 

 

「許せる訳ないでしょ……」

 

長い沈黙を破ったのは、ノルンだ。

 

「シルフィ姉さんがどんな気持ちで兄さんを待ってたか、知ってて言ってるんですか?」

 

パウロが前に出た。

 

「その、ノルン、ルディがロキシーを娶ろうとしたのは、俺の責任でも……」

 

「父さんは黙っててください!!」

 

「あう……」

 

見事にパウロは撃沈され、再び部屋の隅に縮こまる。

 

こいつ、役に立たなすぎる。

 

ノルンがルーデウスの胸ぐらを掴み、説教を始める。

 

ロキシーはとても気まずそうにその光景を黙って見ている。

 

俺が助けなければ、

 

「ノルン、そこら辺でやめてくれ」

 

「麒麟さんもなんで兄さんを止めなかったんですか!?麒麟さんなら、こんな事になる前に止めれた筈です!」

 

「……それは無理だ」

 

「なんでですか!?」

 

「俺も、ルーデウスとロキシーには、結ばれて欲しいからだ」

 

「……ッ!?そんな、なんで……」

 

「ロキシーは今までルーデウスの家族を助ける為に、世界中を旅してくれていた。命の危険に晒される魔大陸にも、自分の仕事を放棄してでもだ。そんな頑張ってくれた奴に、全員見つかったからもう用なしってのは、あまりに可哀想すぎるだろ?」

 

「それは感謝してます!でも、それとこれでは話が……」

 

「確かにそうだ、だからって勝手に妻に迎え入れるのは違う。でも俺達にも決める権利はない、これはシルフィが決める事だ」

 

俺はシルフィの方を見る。

 

「シルフィ、お前はどう思ってるんだ?」

 

「………」

 

シルフィは表情を変えず、自分の膨らんだお腹をさすっている。

 

……シルフィがここでロキシーを拒絶すれば、それで終わりだ。これ以上の行為は無意味になる。 そう考えると、少々緊張する。

 

シルフィがゆっくりと立ち上がり、ロキシーの前に出た。

 

「えっと、ロキシーさんは、ルディの事、ルディの家族を助けてくれたんだよね」

 

「……ええ、結局一人も見つけ出す事はできませんでしたが」

 

「ううん、探そうとしただけでもすごいよ。僕はその時、ずっと王宮で呑気に暮らしてたのに」

 

「………」

 

「それにね、ロキシーさんの事は、ルディからいつも聞いてたんだよ。"俺の尊敬する魔術師は、あの人だけだ"って」

 

「そうなんですか?」

 

ロキシーは頬を赤くしている。

 

「うん、そんな凄い人と一緒に暮らせるなんて、僕としてはとても嬉しいよ」

 

シルフィが手を差し出した。

 

「ノルンちゃんはああ言ってたけど、僕は歓迎します。一緒に、ルディを支えていこう」

 

ロキシーは目に涙を浮かべながら、その手を掴む。

 

「……ありがとうございます」

 

どうやら、シルフィはロキシーを妻として迎え入れる事を受け入れた様だ。

 

「はあぁぁぁ、怖かった」

 

俺は膝から崩れ落ちた。かなり緊張していたので、安堵で力が抜けたのだろう。

 

「お疲れ様」

 

後ろにいたサテラが労いの言葉をくれた。

 

「ヘルス、すまんな、結局お前に任せっきりになっちまった」

 

横にいたパウロが申し訳なさそうにしている。

 

「別にいいさ、お前が家族の中で立場が低いのなんざ、最初から気づいてたしな」

 

「ぐ、そうだったのか」

 

「父さん、後で聞きたいことがあるので、そこで待っててください」

 

ノルンがゴミを見る様な目でパウロにそう言うと、部屋から出て行ってしまった。

 

「……ヘルス、これも手伝ってくれないか?」

 

「……それはお前がやれよ」

 

途中、ハプニングはあったが、とりあえずロキシーはグレイラット家になれたらしい。

 

よかったよかった。

手遅れかもしれないんですけど一応

  • 戦闘描写たくさん
  • 話し合い、イチャイチャたくさん
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