貴殿転生 元の知識で本気出す   作:MENOUENOTANKOBU

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53話 平穏な一年

「へへ!ルディ、麒麟!まだまだ速度が足りねぇぞ……と!」

 

「ッ!?父さん、ちょっとは手加減を!」

 

「……なんで当たらねぇんだよ」

 

とある日の早朝、俺はルーデウス邸の庭で剣術の練習をしていた。

 

以前、迷宮に潜った時にパウロに稽古をつけてもらう約束をしたのを思い出し、先月から練習を始めている。途中でルーデウスと、見学でノルンも参加した。

 

そしてパウロは俺の予想通り、天才だった。

 

最初、稽古を始めた頃は、俺とパウロの実力はほぼ同じだった。長年本気で戦っていなかったからと言うのもあるが、最初のパウロの実力はそこまで驚くものではなかったんだ。

 

しかし奴の恐ろしさは、その成長スピード。一度喰らった攻撃は二度と喰らわないし、俺の行動パターンを即座に理解して、最適解の攻撃を繰り出してくる。

 

逆に俺は北神流 剣神流 水神流

 

ほぼ全てを聖級と同じくらいに扱えるパウロの攻撃を読む事はできない。そして数日後には、一方的に木刀を打たれ続ける惨めな俺の誕生だ。

 

最近はルーデウスと2体1でパウロに挑むが、届くどころか逆に奴の成長を加速させてる気がする。

 

「やっぱりルディは剣術はからっきしだな」

 

「父さん!兄さんは義手があるとは言え、まだ片目なんですよ!手加減ぐらいしてあげてください」

 

「あ、そうだった。すまんなルディ、ちょっとやりすぎたか?」

 

「いえいえ、俺は全然気にしてませんよ」

 

ルーデウスは左手の義手をグーパーしながら動作を確認している。

 

ルーデウスの義手、それはザノバから貰ったものだ。なんでも土魔術を応用したものらしいが、原理はよく分からない。

 

しかしその義手により、ルーデウスは生活がかなり快適になったと喜んでいた。

 

目の方は……クリフにも治すことはできないらしいから、今は眼帯をつけて過ごしている。ルーデウスの右目は魔眼らしく、1秒先の未来が見えるらしい。そのせいで視界がぼやけ、危険な事もあったと言う。

 

目に関しては、俺の責任だ。俺がなんとかしなければ……

 

「戦闘中にボーっとしてんじゃねぇ」

 

「ぐへぇ」

 

俺は横から迫るパウロの木刀に気が付かなかった。

 

バキボキ

 

鈍い音、これは折れたな…

 

俺はそのまま吹き飛び、フェンスに衝突する。

 

「父さん!いくらなんでもやり過ぎです!」

 

「ゲホッ、いいんだルーデウス、気を抜いていた俺が悪い。それに大した怪我じゃないしな」

 

パキパキパキ

 

折れた骨が再生するのを感じる。表現できない高揚感を同時に感じながら。

 

そして数秒後には完全に痛みが消え、元通りの体になる。

 

「ヘルス、ずっと気になってたんだが…お前、治癒魔術を使える様になったのか?」

 

「いや……分からないが、少なくとも練習した覚えはない」

 

嘘はついていない、本当に分からないのだ。

 

もう一人の俺を受け入れた事が原因なのかは知らないが、俺は再生能力を手に入れた。

 

この再生能力に今のところ限界はない。ちょっと前に勇気を出して右手の指を切り落としてみたが、すぐに再生した。

 

けど再生をするだけで痛覚が消えた訳じゃない。痛いのは痛いし、何より再生する時に感じる高揚感が怖い。

 

俺が俺じゃなくなる様な、不気味な感じがする。

 

俺の体、一体どうなっちまったんだ?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

あっという間に一年が過ぎた。

 

俺とルーデウスは四年生になり、エリナリーゼは留年してしまった。

 

半年間ベガリット大陸に行って学校を休学したのが効いたのだろう。俺達は特別生だからさほど問題ではなかったが、一般生のエリナリーゼには、少々厳しかったらしい。

 

進級をする生徒がいるという事は、同時にこの学校を卒業する者もいる訳だ。

 

俺は生徒会に入っている為、そういう行事には参加しなければならない。普通なら顔も知らない奴らを送り出すなんて面倒な事したくないが、今年の卒業生には俺の知る奴らがいる。

 

リニアとプルセナだ。

 

こいつらとは別にいい思い出がある訳ではないが、それでも共に特別生として過ごして来たんだ。最後ぐらい立ち会ってやらねば、

 

そんな気持ちで望んだ卒業式だったが、特になんのハプニングもなく、卒業式は終了した。

 

問題が起きたのは卒業式後、リニアとプルセナの決闘だ。

 

俺とルーデウスはナナホシの実験を手伝っていたのだが、急に二人が現れ、半ば強制的に広場に連れて行かれた。

 

勝った方が故郷に戻り、族長となる。負けた方は旅に出て、好きな様に生きる。

 

そんな勝っても負けても美味しい内容で戦い始めた二人。それはもう激戦だった。

 

殴る引っ掻く噛みつく、なんでもありだ。戦いが終わる頃には二人ともボロボロになっていた。

 

勝者はプルセナ、意外な結末だった。凶暴なリニアが勝つかと思っていたんだがな。

 

決闘に負けたリニアは商人として生きていくらしい、俺が何度想像しても、リニアが商人として成功する未来は見えないが、本人が本気なら止めはしない。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「はぁぁ疲れたぜぇ」

 

「ゲホッ…お帰りなさい」

 

卒業式を終えて家に帰り、そのまま俺はソファに倒れ込む。

 

特に何かした訳ではないが、こういう特別なイベントが終わった後は、すごい疲れるのだ。

 

しかしここでダラダラしてはいけない、俺はもう一家の大黒柱なのだ。

 

「ふぅ、よし!今から飯作るからな」

 

「え?疲れてるんでしょ?まだゆっくりしてていいよ」

 

「大丈夫だ、俺も腹減ってるしな」

 

サテラはしばらく学校を休んでいる。

 

理由は体調不良、特に咳が酷い。

 

体調不良といっても、体がだるそうな訳でもなさそうだし、運動もできるそうだが、一応念には念を入れてだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

卒業式から数日後、ナナホシがスイカを召喚する事に成功した。

 

その後に開かれた宴会でスイカを割ると、種がない事が確認された事から、前世の世界の物だと考えていいだろう。

 

ナナホシは珍しく大はしゃぎだった。当然っちゃ当然か、

 

元の世界から有機物を召喚出来た事で、元の世界に戻れる可能性が大幅に上がったんだ。嬉しくて仕方ないのだろう。

 

 

 

「コホッ…コホッ、二人、今日は本当にありがとね」

 

そんな賑やかな宴会も終わりに近づいた頃、ナナホシが俺とルーデウスにお礼を言いに来た。

 

「気にすんなよ」

 

「ええ、友達として当たり前の事ですよ」

 

「でも…あなた達に私、まだなんのお礼もできてないじゃない?」

 

「まあそうだな」

 

「それでね、そのお礼として、ある人を紹介するってのはどうかしら?」

 

「紹介……ですか?」

 

ルーデウスが不思議そうな顔をする。

 

「そう、ある人ってのは私に召喚魔術を教えてくれた人よ」

 

「おお!本当か!?」

 

俺は思わずナナホシに詰め寄ってしまう。

 

「え、ええ、その人なら多分私よりも知識も多いし、何より、ルーデウスのお母さんの記憶喪失も、なんとかなるかもしれないわ」

 

「なに……」

 

その言葉にルーデウスも身を乗り出す。

 

「兄さん!麒麟さん!ナナホシさんが怖がってるでしょう?」

 

「あ、ああすまん、つい」

 

いかん、ノルンに怒られてしまった。

 

「それで、そのある人の名前はなんなんだよ」

 

「あんまりこれも広めないで欲しいんだけどね、いい?」

 

『ああ』

 

ナナホシは一言前置きをする。

 

いつの間にか全員がナナホシの近くに寄っていた。

 

「甲龍王ペルギウスよ」

 

全員がその言葉に目を見開いた。

 

甲龍王ペルギウス、名前だけは聞いた事がある。

 

ラプラス戦役で活躍した≪魔神殺しの三英雄≫の一人。極端に言えば、クソすげぇオッサン。

 

そんな奴に会わせてくれるだと?

 

「それ、俺達が協力した事と、割に合うのか?」

 

「元々異世界召喚を調べろと言ったのはあの人だから、それに協力したあなた達は行っても良いと思うわ」

 

「そのペルギウスって人の所に行けば、母さんが治るかもしれないんですか?」

 

ルーデウスは母親のことでいっぱいの様子だ。

 

「分からない、けど行ってみる価値はあると思うわ」

 

「……そうですか」

 

ルーデウスはそれっきり何も言わなくなってしまった。

 

それにしても召喚魔術の権威が、あの甲龍王ペルギウス……か、俺としては是非会いに行きたい。

 

「是非会わせてください」

 

「俺も興味があるな」

 

「余も一度謁見してみたいですな」

 

ルーデウスがそう言うと、皆が次々に参加したいとナナホシに懇願し始めた。

 

ナナホシは渋々承諾したが、本当にこんな大人数で行っていいのだろうか?

 

そんな不安を抱えながら、楽しい宴会は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

手遅れかもしれないんですけど一応

  • 戦闘描写たくさん
  • 話し合い、イチャイチャたくさん
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