貴殿転生 元の知識で本気出す   作:MENOUENOTANKOBU

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55話 不穏の予兆

王座に座るのは圧倒的な存在感を放つ男。

 

龍神オルステッドを思わせる様な輝かしい銀髪、金色の瞳。

 

あいつが王だ。そう実感した。

 

あいつが『甲龍王』ペルギウスなのだ。

 

「お進みください」

 

シルヴァリルの言葉で、ナナホシが先頭に立ち、歩み始めた。それに合わせる様にアリエル、ルーデウスと前へ進んでいく。

 

それにしても広い、ヒュドラ戦の遺跡程ではないにしろ、十分すぎる広さだ。ここまで来るともはや不便じゃないか?

 

赤いビロードの絨毯の両脇には、仮面を被った11人の男女が並んでいる。

一目見れば分かる。全員が強者だ。

 

「そこでお止まり下さい」

 

「………」

 

ペルギウスとの距離は、十メートルくらいか?

 

ペルギウスは玉座に座り、何も言わずにこちらを見下ろしている。正確には俺を見ている気がする。俺が魔族だからか?本当は人間なんだが、もしかして気づいてたり?

 

シルヴァリルとアルマンフィがそれぞれペルギウスの両脇に立つと、ゆっくりとペルギウスが口を開いた。

 

「我が『甲龍王』ペルギウス・ドーラである」

 

「お久しぶりです、ペルギウス様。約束通り、戻って参りました」

 

ナナホシが珍しく敬語を使っている。まあ当たり前か、転移魔術の師匠なんだもんな。

 

ナナホシが頭を下げると、皆次々に礼をしたり、膝をついたりしている。

 

「ナナホシか」

 

しかしペルギウスはそんなことお構いなしに話を続けていく。

 

「貴様がここに戻ってきたという事は、異世界からの召喚について、何か掴めたという事だな?」

 

「はい。ペルギウス様が求める程の成果ではないかもしれませんが」

 

「成果など……知識の探究が我ら龍族の宿命だ」

 

ナナホシは緊張するみんなとは違い、普通に会話をしている。ペルギウスの方もナナホシを鬱陶しく思ってる様な雰囲気でもない。

 

意外とフレンドリーなんだな。もっとこう、頑固オヤジみたいな感じだと思っていたんだが。身内にだけ優しいとか、そんな感じなのか?どっかの旅団みたいな奴だな。

 

「ところでナナホシ、随分と人が多いな、貴様の仲間か?」

 

「はい。彼らは私の研究を手伝ってくれました。その報酬として、ペルギウス様に謁見したいと」

 

「……そこの魔族も、貴様の研究に貢献したのか?」

 

ペルギウスは俺の方を指差す。

 

「はい。彼の名前は麒麟と言って、特に研究に積極的に貢献してくれました」

 

「お初にお目にかかります。ペルギウス様」

 

俺は丁寧にお辞儀をする。

 

「なるほど、貴様が麒麟か……」

 

俺は顔をあげ、ペルギウスの方をみた。

 

しかしペルギウスは俺ではなく、俺の奥の方を見て、何か目配せをしている。

 

何をしているんだ?

 

俺が後ろを振り返ると、ペルギウスの配下の一人が、俺に手を向けていた。その手からは光の様なものが集まっている。

 

「は?」

 

ドチュン!

 

その瞬間、集まった光が一つの点となり、俺に向かって高速で放たれた。

 

「何を……」

 

同時に首から凄まじい痛みが走る。

 

ビチャ

 

そう嫌な音を立てながら、俺の首が地面に落ちた。

 

〜〜〜ルーデウス視点〜〜〜

 

『麒麟!!』

 

そう叫びながら、俺達はヘルスの方へ駆け寄った。

 

 

ヘルスは何もしていない筈だ。なんでこんな事に。

 

いや、そんな事より今は治療だ!まだ間に合うかもしれない。

 

「クリフ先輩!」

 

「分かっている!」

 

「僕も手伝うよ!」

 

クリフとシルフィが治癒魔術の詠唱を始め、必死にヘルスの首と胴体をくっつけようとしている。

 

俺とザノバ、そしてエリナリーゼは戦闘体制に入り、周りを囲んでいるペルギウスの配下を牽制する。

 

「ペルギウス様!一体何を……」

 

「ナナホシ、貴様はとんでもない者を連れてきたな」

 

横で怯えるナナホシを無視して、ペルギウスはゆっくりと王座から立ち上がり、俺達の方へ歩き始めた。

 

「……一年半前、ベガリット大陸のラパンで、不気味な召喚魔法が発生した。我が配下に命じて調査をさせた所、原因はそこの男、麒麟であると判明した」

 

一年半前?ゼニスを助けに行った時か?

 

確かにあの時、ヘルスとは一悶着あった。しかし……

 

「だとしても、それが殺していい理由には……」

 

「問題はそれではない。あれを見てみろ」

 

ペルギウスが麒麟のいる方向を指差す。

 

パキパキ

 

「うわぁぁぁ!」

 

クリフの叫び声に釣られ、後ろを振り向くと、いつの間にか首のない麒麟の胴体が立ち上がっていた。

 

嘘だろ?まさかあの状態からでも……

 

麒麟の転がっていた頭が消え、胴体からは新たな頭が出てきている。

 

パキパキパキ

 

数秒後には、いつも通りの麒麟の姿に戻っていた。

 

気絶をしているのか、ヘルスは完全に再生しても目覚めない。

 

バタン

 

立ち上がっていた体が地面に倒れる

 

「こ、これは……」

 

「魔王に劣らぬ程の再生能力、これを見てもまだ、こいつが安全であると断言できるのか?」

 

「………」

 

「言えます」

 

押し黙る俺に代わって答えたのは、アリエルだった。

 

「貴様は?」

 

「私は、アスラ王国第二王女アリエル・アネモイ・アスラと申します」

 

アリエルはペルギウスの圧に臆する事なく、俺達の前に出る。

 

「アリエル・アネモイ・アスラか」

 

「以後、お見知り置きを」

 

「知っておるとも。アスラ王国の薄汚い王権争いに負けたにも関わらず、周囲を巻き込んで泥沼の争いを勃発させようとしている。馬鹿な王女だ」

 

「な、何を…」

 

「ルーク」

 

動こうするルークを、アリエルは見つめる。

 

動くな、と言う事だろう。 

 

「……ック」

 

「ふむ、己の身の程をわきまえておる様だな、よかろう。では聞くが、何故こいつが安全だと言い切れる?」

 

その言葉にアリエルは、穏やかな笑みを浮かべる。

 

「理由などありません。私は彼を信じている、それだけの事ですよ」

 

「……つまり、それはただ、貴様の勘であると?」

 

「ええ、そう言う事です」

 

ペルギウスは不愉快そうにアリエルを見ている。

 

「話にならんな、アルマンフィ!」

 

「は!」

 

ペルギウスの合図で、アルマンフィがアリエルの前に立つ。

 

「女、どけ。今そこの麒麟と言う男を差し出すならば、貴様らの処罰は見送る」

 

「もし麒麟を差し出すとして、彼をどうするおつもりですか?」

 

「決まっておるだろう。再生出来ないよう四肢を切断し、地下深くに封印するのだ」

 

淡々と語るアルマンフィ、仮面で隠れているが、当たり前の様な顔で言ってるんだろう。

 

「……であれば、麒麟を差し出す事はできませんね。そうですよね、ルーデウス様」

 

いきなり俺にふられたな。しかし返答は決まっている。

 

「はい。ペルギウス様とは是非お話しをしたかったのですが、親友を傷つけるのならば、手加減はしません」

 

正直逃げ出したい程怖い。だけどここで逃げ出して、みんなに失望されるのはもっと怖い。 

 

それにここで戦わなきゃ……ヘルスが…

 

警戒すべきはアルマンフィだけではない、ペルギウスに加え、周りにいる11人の配下。しかしこちらの人数は8人、アリエルと麒麟は今戦力にならないから、実質6人だけか、厳しい……

 

「ペルギウス様!落ち着いてください!」

 

ナナホシがペルギウスの前に駆け寄る。

 

「ナナホシ、貴様も麒麟を庇うのか?」

 

ナナホシはペルギウスの睨みにガタガタと体を震わせ始めた。まずいぞ、まずはナナホシをあそこから救出しなければ。

 

「わ、私は…………ゲホッ」

 

 

 

 

バタン

 

突然、ナナホシがペルギウスにもたれかかる様に倒れた。

 

「ゴホッ…ペルギウス様……ゴホッ…お願いです……」

 

「急にどうしたのだ、ナナホシ?」

 

「ゴホッ…麒麟を…ゲホッ…傷つけ……ゲホッ!」

 

ビチャリ

 

嫌な音共に、ナナホシが床に倒れる。 

 

ペルギウスの鎧には、大量の血が付いていた。

 

〜〜〜ヘルス視点〜〜〜

 

ナナホシが倒れてから三日目、俺は医務室に訪れた。

 

「ナナホシの容態はどうなってる?」

 

「芳しくありません。ユルズが今もこうやって治療を施していますが、それもいつまで持つかどうか……」

 

俺の問いにシルヴァリルは少し悲しげな声で報告をする。

 

「シルフィ、辛かったら……代わるぞ?」

 

「いいんだよ。麒麟の方こそ、あんな事があったんだ。もうちょっと休んでなよ」

 

「……すまん」

 

あの後、俺が目覚めると、ナナホシがペルギウスの前に倒れていた。ペルギウスがナナホシを殺した。そう解釈した俺はペルギウスと危うく殺し合い寸前までしそうになったが、ルーデウス達の説得により、なんとか誤解が解けた。

 

そしてあの日からこの三日間。ナナホシは一度も目を覚ましていない。ペルギウスが言うには、未知の病気らしいが、何百年も生きたあいつでさえ、正確な事は分からないらしい。

 

だから今はこうして、ペルギウスの配下の一人である『贖罪のユルズ』の能力、他者の体力を、健康を、別の者へと差し替える力を使い。ナナホシの健康を保っている。そしてその別の者とは、シルフィの事だ。

 

ルーデウスにはシャリーアに帰ってもらっている。ナナホシがこんな状態なので、俺達はしばらく帰れそうにない事を、学校やみんなに伝える為だ。

 

 

 

 

ナナホシは目を覚さないが、辛そうな顔でベットで横になっている。

 

「貴様も来ていたのか」

 

俺がナナホシの横に座っていると、ペルギウスと、『時間のスケアコート』が医務室に入って来た。

 

ペルギウスはやや機嫌が悪そうだ。俺がいるからか?

 

「何しに来たんだよ?」

 

「ナナホシの病気が判明した」

 

「本当か!?」

 

俺は椅子を蹴る勢いで立ち上がる。

 

「麒麟様、お静かにお願いしますよ」

 

「ああ、すまんな。それで、病気は?」

 

「……ナナホシの患っている病は『ドライン病』だ」

 

「ドライン病?」

 

聞いた事もない病名だ。大丈夫なのか?

 

「うむ、太古の昔、魔力を持たぬ人の子が例外掛かっていた病だ。この病気に掛かった子は、10歳になる前に命を落とす。そんな病気だ」

 

理不尽すぎる病気じゃねぇかよ。

 

『私の魔力はゼロ』

 

ナナホシは以前、そう言っていたな。ペルギウスは子供と言っていたが、魔力を持たない者なら誰でもなるんだろう。ナナホシがこの世界に来て8年。まだ10年以内だ。となると、ペルギウスの話は真実として捉えていいだろう。問題は……

 

「治らねぇのか?」

 

治療できるかの有無だ。

 

「分からぬ。この病気は人が魔力に対し強くなる事で克服したのだ。それを治すなど……」

 

「なるほどな……」

 

治療法は確立していない…か

 

となると弱ったな、ナナホシの命は明日持つかどうかすら怪しい。そんな中、治療法を探す時間なんてない。

 

「しかし問題はない、時間のスケアコートの力で、ナナホシの時を止める」

 

「そんな事できるのか?」

 

「その代わり、スケアコート自身も時間が止まるがな」

 

なんだよそのご都合的な最強能力。だが好都合だ。これで治療法を探す時間が見つかった。まず治療法があるかどうかは分からんが。

 

「失礼します。ペルギウス様。ルーデウスが遺跡に戻って来ました」

 

一瞬視界が眩しくなったかと思うと、いきなりアルマンフィが現れた。

 

「分かった。では招く準備をしろ」

 

「はい。しかしルーデウスの他に数名いますが、そちらの方はどうしますか」

 

 

「魔族でないのなら構わん、連れてこい」

 

「御意」

 

また消えた。去る時も一瞬だよなあいつ。

 

しかしルーデウス、一体誰を連れて来たんだ?無難に行けば、パウロだろうか?少なくともルーデウスの事だ。必要だから連れて来たのだろう。

 

そしてペルギウスもルーデウスを呼ぶために医務室を後にした。

 

 

 

 

ペルギウスがいなくなって数十分が経った頃だろうか?

 

医務室に向かって走ってくる音が聞こえて来た。

 

「麒麟!麒麟!」

 

蹴飛ばす様な勢いで出て来たのは、パウロだった。

 

「おお!パウロ、来てくれた…‥」

 

パウロを見た瞬間、俺の頭は真っ白になった。

 

正確にはパウロではない。パウロが抱えている人物だ。

 

パウロの腕に抱えられて、苦しそうにしている人物。

 

「ゲホッ……ゲホッ…麒麟……なの?」

 

「サテラ!!」

 

俺は医務室の入り口に向かって走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手遅れかもしれないんですけど一応

  • 戦闘描写たくさん
  • 話し合い、イチャイチャたくさん
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