貴殿転生 元の知識で本気出す   作:MENOUENOTANKOBU

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57話 北神三剣士

 

 

まだ日が昇る前に目が覚めると、俺は早速王都へ向かう準備を始めた。

 

王都へ向かう決意をしたのは良いが、ルーデウス達に言えば、絶対に止められるだろう。だったら誰も起きていない今の内に、サテラを連れて行くべきだ。

 

ルーデウス達には悪いが、これが一番いいんだろう。でも流石に、何も言わずに出て行くのはまずい。万が一にでも王都に来られでましたら面倒な事になる。

 

だから置き手紙を書いておく。

 

『すまないが、やはり王都へ向かう事にした。絶対に戻ってくるから、ナナホシを頼む』

 

凄い簡潔になってしまったが、あんまり手紙に時間をかけると、間に合わない。

 

ルーデウスは置き手紙にトラウマがあるかもしれないが、これでも配慮した方だ。多分大丈夫だろう。シルフィとロキシーもいるしな。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

あらかた支度を整えると、俺は部屋を後にして、ペルギウスがいるであろう場所へ向かった。ペルギウスと謁見した所だ。

 

しかしそこにペルギウスはいなかった。

 

まあ当然だろう。今は夜中とも言える時間だ。こんな時間にペルギウスが王座で座ってたら逆に怖い。面倒くさいが、この広い空中要塞を探索するしかないか……

 

「こんな時間にここへ来るとは、何が目的だ?」

 

後ろを振り返ると、シルヴァリルとペルギウスがいた。

 

良かった、探索する必要が省けた。かなり警戒しているようだが。

 

「なんだ、起きてたんだな」

 

「得体の知れん魔族が我の棲家におるのだ。安心して寝れるはずなかろう」

 

「……それは失礼したな。それでペルギウス、急で申し訳ないんだか、今から転移魔法陣を使わせてくれないか?」

 

俺がそう言うと、ペルギウスは顎髭を触りながら不思議そうな顔をした。

 

「ほう、行くのか?仲間からかなり反対されていた様だが」

 

「ああ、あいつらには悪いが、ここで待ってても特に進展はなさそうなんでな」

 

「ヒトガミに唆されたのか?」

 

ペルギウスのその一言に、一瞬硬直してしまう。

 

ダメだ、ヒトガミに言われたから、なんて言ったらどうなるか分かったもんじゃねぇ。

 

「ヒトガミ?誰だそれ?これは自分で決めた事なんだよ」

 

「それは、偽りではなかろうな?」

 

なんだよ、そんな怖い目で睨むなよ。

 

「ああ、そうだ」

 

ペルギウスはしばらく俺を睨みつけてきたが、しばらくすると、大きなため息と共にそれをやめた。

 

「そうか、ならば良いだろう。転移魔法陣を使わせてやる」

 

「協力ありがとう、早速サテラを連れてくるよ」

 

よし、ペルギウスの説得には成功だ。

 

あとはサテラを連れてきて、王都へ向かうだけだ。

 

 

 

 

しかしここで問題発生だ。

 

俺はサテラが寝ている医務室へ向かった。医務室へ入ると、サテラとナナホシの間で座っている男が一人、パウロだ。

 

パウロはいびきをかきながら、上を向いて寝ている。

 

これはまずいな、ゆっくりと音を立てずにサテラを連れ行かなければならない。もしバレでもしたら……そこでゲームオーバーだ。

 

俺は一歩一歩慎重に、そして地面を踏む場所に気をつけてながらサテラの元へ向かう。

 

なんとかベットの前まで辿り着き、サテラを担ぎ上げ、去ろうと瞬間、パウロが苦しそうに唸った。

 

「うぅ……ゼニス……すまない」

 

パウロはそう言って、誰もいなくなったベットに倒れた。 

 

 

 

 

パウロ……お互い大変だな……

 

俺はパウロの頭の上にそっと手を乗せ、睡眠魔法をかけてやる。

 

ゼニスの病気が治り、今まで通り幸せに暮らせる、そんな夢を見せてやろう。

 

パウロはしばらくすると、苦しい顔から一変、幸せそうな顔になった。

 

夢の中でくらい、安心させてやろう。

 

幸せそうに眠るパウロを残し、俺は部屋から出ていった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ペルギウスから転移魔法陣を使わしてもらい、王都についた、筈だ。

 

転移した場所は、ベガリット大陸に行くために入った遺跡に似ていた。しかしあそことは違い、ここはあまり汚くない、定期的に掃除されているのだろうか?

 

「サテラ、大丈夫か?」

 

背中に乗せているサテラの反応はない。ただ苦しそうな呼吸音だけが、地下に響く。

 

「ちょっと下ろすぞ」

 

俺はサテラを床に寝かせて、上へ行く準備を始める。

 

まず人獣型を解除し、人型になった。そして持って来たバックの中から、ある物を取り出す。

 

サウロスの服だ。貴族に会いに行くんだ、冒険者用の服じゃだめだろう。それにいきなり冒険者の服装で王宮内に現れたら確実に怪しまれる。

 

しかしサウロスな服は、思った以上にブカブカだった。当然だろう。あの人の仕上がっていた筋肉に反して、人型の俺はガリガリだ。仕方ない。ここは麒麟の能力で服を出そう。

 

能力で出したミニサウロスの服を着たあと、次は出口を探し始める。

 

時間がかかると思ったが、案外出口に関してはすぐに見つかった。丁寧に階段が用意されていて、奥の扉を開けると、懐かしい王宮の廊下が見えた。

 

俺はサテラを背負い直して、ゆっくりと扉を開ける。

 

まだ薄暗い廊下は、まるで時が止まったかの様な静寂さだ。

 

俺が扉を閉めると、扉は元々無かったかの様に、消えていった。なるほど、バレない様に工夫されているのか。

 

なら俺がアリエルの護衛をしていても魔法陣に気づかなかったは、これが原因だろうな。

 

その時、静寂だった廊下から、足音が聞こえてきた。

 

「ナクル兄ちゃん。ここの廊下、やっぱり怖いよ……」

 

「ガド、そんなんでビビってたら、北王の名に傷がつくってんだ」

 

「お前ら、今はまだ夜中だ。あまり騒がしくするべきではないぞ」

 

俺は咄嗟に近くにあった柱に身を潜める。

 

北王だと?なんでそんな奴らが今ここに?

 

「そうだよ、まだ夜中だよ、それなのになんで呼び出されなきゃいけないんだ」

 

「仕方ないだろガド、ダリウス様の命令だ。依頼主の命令は絶対、だろ?」

 

「……だが確かに、こんな時間に呼び出されるとは、一体何事であろうな」

 

3人はそんな話をしながら俺達の方へ近づいてくる。

 

 

 

 

 

なるほどな、大体は予想がついた。

 

多分、ヒトガミの知り合いと言うのはダリウスの事だ。俺がここに現れる事を知っているのならば、この時間にダリウスがこいつらを呼び寄せた事にも納得ができる。

 

しかし、ダリウス、サウロスを処刑に追い込んだ男。そいつがサテラを救う鍵になるのか……

 

………クソ、だめだ。今はサテラを助けるんだ。その為なら、靴だって舐めるって決めた筈だろ。例えそれが、俺の父の仇だとしても。

 

俺がそう考えているうちに、いつの間にか3人の足音が聞こえなくなっていた。もう移動したのか?

 

しかし廊下の方を見ると3人の影がある。たが様子がおかしい、全員が立ち止まっている。

 

ガコン!

 

不気味に思い、俺が後ろへ後退しようとした瞬間、柱が横から真っ二つに切れた。

 

「ッぶねぇ!」

 

俺は後ろの方へ飛び、ギリギリで剣を躱す。

 

廊下の真ん中へ出ると、3人の姿が見えた。

 

「やっぱりいたな」

 

「そうだね、流石ナクル兄ちゃん!」

 

「二人とも静かにしろ」

 

3人とも男、その内2人はうさぎの様な耳がついている。恐らくミルデット族だろう。2人ともよく顔が似ている。双子なのだろうか?

 

そしてもう1人、他の2人に比べ、小柄な男。小人族か。

 

3人とも黒い鎧を着ている。硬そうだ。

 

「お前ら、いきなり斬りかかるとは失礼だな、まず先に名乗るのが剣士としてのマナーじゃねぇのか?」

 

「あ!そうだった。北神三剣士が一人、北王『双剣』のナックルガード」

 

本当に名乗りやがった。

 

「ちょっと兄ちゃん。こういう場合、名前言っちゃダメだと思うよ?」

 

「へへ、すまんな。でもまあここで殺しちゃうし。いいんじゃないか?」

 

「まあ確かにね。やっぱりナクル兄ちゃんは天才だ」

 

なんだよこいつら、めっちゃ軽いノリで俺殺そうとしてんじゃん。

 

「………」

 

小人族の男は何も言わずに、ただ盾と剣を構えている。

 

どうやら殺る気らしいな。

 

俺はサテラを廊下の隅に寝かせ、サウロスの服を脱ぎ捨て、白シャツになる。

 

戦う気なんてサラサラ無かったが、ここで逃げてもどうせ追いつかれるだろうし、何言っても聞く耳を持ってくれないだろう。ならもうやるしかねえ。

 

「よし、こい!」

 

 

 

俺がそう叫ぶと、最初に動いたのは二人のミルデット族だ。

 

二人は左右に別れ、互いに俺を中心に回り始める。

 

「やあ!」

 

二人の残像が俺を囲むと、ナクルが俺に向かって剣を突き刺そうとしてきた。

 

速い!

 

俺はそれをギリギリ、というか脇腹が少し抉られたがなんとか避けて、その腕を掴んだ。

 

「なに!?」

 

「痛てぇじゃねぇか」

 

ナクルは俺から離れようとするが、腕を掴んでいる為、逃れる事はできない。

 

俺は腕に武装色を付け、ナクルの顔面に向かい拳を振ろうとした。

 

「でやぁぁ!」

 

しかしその瞬間、ガドがナクルを掴んでいる俺の腕に向かって剣を振り斬る。

 

バキン!

 

「なんだと!?」

 

だが、硬さは俺の方が上だ。剣は割れ、ガドは驚きの表情をしている。

 

もう片方の手でガドの首を掴むと、俺はガドを壁の方へ投げ飛ばした。

 

「ッガバァ!」

 

「ガド!!」

 

ガドは壁に直撃し、口から血を吐いている。次はナクルだ。 

 

その時、上の方から落下音が聞こえてきた。

 

「そりゃぁ!」

 

俺は咄嗟に片腕を上の方へ向けた。

 

グサ

 

剣が俺の腕を貫通する。

 

痛てぇ!

 

俺の腕を刺したのは……小人族の男か!全く気配を感じなかった。

 

「離せ!」

 

一瞬動揺して力を緩めてしまったせいか、ナクルは俺の抉られた脇腹を蹴り、俺は痛みでつい腕を離してしまう。

 

二人は飛び上がり、ガドの方へと下がった。

 

「ガド、大丈夫か!?」

 

「ナ、ナクル兄ちゃん、これくらい……ッう…平気だよ」

 

「ガド、お前は休んでいろ、どのみち剣のないお前にできる事はもうない」

 

「うう、ウィ・ターまで………分かったよ」

 

ガドは諦めたかの様に、肩の力を抜いた。

 

意外と仲間思いなんだな。しかし今なら話し合いが通じるかもしれない。

 

「なあ!もうやめにしないか?」

 

「なんだと?弟を傷つけておいて、今更やめれると思うなよ!」

 

「いや、先に攻撃したのはそっちの方だしな。それに俺が今日ここに来たのは、殺し合う為じゃねぇ」

 

「そ、そうなのか?」

 

ナクルが驚いた表情をしながら聞いてくる。

 

「ああ、俺はダリウスに会いに来たんだ。別に戦いたい訳じゃ……」

 

「信用ならんな……」

 

ウィ・ターが俺の話を遮る様に割り込んできた。

 

「こんな薄暗い時間に、こんな場所で隠れているなど、怪しいと思わない方が不思議だ」

 

『確かに!』

 

ぐぐ、ド正論をかまされてしまった。

 

確かに今の俺は不審者以外の何者でもない。そんな不審者が自分の依頼主と話をしたいとか言ってんだ。余計に怪しいだろう。

 

このまま話し合うのもいいが、今は時間がない。

 

残念だが、ここで3人とも倒してしまおう。殺しはしないが。

 

パキパキパキ

 

抉られた脇腹と腕が再生していくと同時に、表現し難い高揚感が俺を襲う。

 

「嘘だろ?」

 

「治癒魔術!?」

 

「……厄介だな」

 

再生が完了すると、俺は3人に向け口を開いた。

 

口の中から炎が溢れ出てくる。

 

「お前達!俺の後ろに隠れろ!」

 

ウィ・ターは持っていた盾を構え、防御の体制に入った。

 

しかし俺はボロブレスは、そんな盾を容易く貫通するだろう。

 

だが安心しろ3人とも、命まではとらねぇ、保証はしねぇが……

 

そして十分に溜まったボロブレスを放とうとした時、後ろからまた足音が聞こえてきた。

 

「おやおや、これまた随分と派手な戦いをされている様で」

 

聞き覚えのある声に、俺はためていた炎を消し、後ろを振り返る。

 

ぶくぶくと太った体、狸のような顔、忘れるはずも無い。

 

こいつは、ダリウスだ。

 

アスラ王国上級大臣。第一王子派筆頭貴族。ダリウス・シルバ・ガニウス。

 

「ご機嫌ようヘルス様、人神様からお話は伺っております」

 

やはり、こいつがヒトガミの仲間だったか……

 

「……なら話は早い、サテラを治してくれ」

 

「フフ、まあまあ落ち着いてください。まずはゆっくりと、紅茶でも飲みながら話し合いましょうぞ?」

 

ダリウスはそういうと、気持ち悪い笑みをニヤニヤと浮かべながら、サテラの方を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手遅れかもしれないんですけど一応

  • 戦闘描写たくさん
  • 話し合い、イチャイチャたくさん
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