貴殿転生 元の知識で本気出す   作:MENOUENOTANKOBU

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全話とはいきませんが、最初の方をもっと分かりやすく書き直そうと思っています。もちろんそれによって内容が変わる事はないのでそこは大丈夫だと思います。


59話 暴露 前半

アスラ王国のミルボッツ領

 

そこはノトス家の領地であり、酒の名産地として有名な地域である。

 

「門を守れ!一匹たりとも中に入れるな!」

 

ミルボッツ領の中でも最も大きな都市に、その声は響いた。

 

都市の城壁を囲むのは、大量の魔物達。E級程の魔物から、B級にすらなるかもしれない魔物、とにかく種類は様々。

 

「ここはアスラ王国だよな?何故こんなに大量の魔物が?」

 

「知るかよ!おい、聖級の魔術師はいないのか!?」

 

兵士達は城壁の上で混乱に陥っていた。城壁を囲んでもなお余るほどの魔物の軍勢、それを見た瞬間から、兵士達の戦意は既に消えてしまっていた。

 

「……ダメだ、こんなの……無理だ……」

 

一人の兵士が後ずさると、他の兵士にもその感情は伝播されていく。

 

『ガァァァァ!!』

 

魔物達が一斉に声を上げると、都市に向かい全力で走り始める。

 

「ッく、弓兵!撃て………」

 

 

ゴロゴロ……

 

 

その瞬間、雲一つなかった筈のミルボッツ領は、突如として真っ黒な雷雲に覆われた。

 

突然の天候の変化に、その場にいる全員が空を見上げる。

 

「な、なんだ……あれは」

 

「見ろ!あそこ!竜巻が……」

 

一人の兵士が指を差す。その方向には、巨大な竜巻が渦巻いていた。

 

 

 

ドォォォォン!!

 

凄まじい衝撃音と共に、巨大な竜巻が一瞬にして消える。

 

それと同時に、馬のいななきの様な鳴き声が、都市全体に響く。

 

兵士達は困惑の表情を浮かべながら、周囲を確認しだす。

 

魔物の数は減っていない。もしかしたら少しは竜巻に巻き込まれ、少なくなっているのかもしれないが、それでも危機的状況を打破するほどの数にはなっていない。

 

パカラッパカラ

 

「おい!あれ……」

 

「馬……いや……人か……?」

 

「どちらにしても、大きすぎる……20mはあるぞ……」

 

竜巻が発生した方向から都市に何かが突進してくる。

 

下半身は馬、上半身は貴族の服を着た、茶髪の……男。

 

男は、魔物の群れの中に入ると、姿を消した。

 

その近くにいた魔物は全員凍りついている。

 

パカラッパカラ

 

そこから、まるで弧を描く様に、次々と魔物達が凍らされていく。魔物達は悲鳴の様な鳴き声を上げながら、迫り来る恐怖から逃れようとするが、それは無駄な抵抗だった。

 

 

数分後には、都市を囲んでいた魔物達は、全て氷の人形の様になっていた。

 

「助かった……のか?」

 

「あれは一体なんだった……ッヒィ!」

 

いつの間にか、男は城壁の目の前にいた。それも宙に浮きながら。

 

「魔物は……これだけか?」

 

男は、腰を抜かす兵士達を無視し、全員に問いかける様に話す。その背筋が凍る様な低い声は、怯える兵士達の不安を更に掻き立てる。

 

「は……はい!これで……終わりです!本当に、ありがとうございました!」

 

兵士長らしき人物が、怯える兵士達を掻き分け、男の前に出る。

 

「………」

 

男は兵士長の返答には答えず、後ろを向く。

 

後ろを向いた瞬間、男の上半身が真っ黒な液体になる。

 

ドロドロとした塊が、再び上半身を形作っていく。

 

しかし今度は人間の上半身ではない。2本の角が生えていて、まるで龍の様な姿になっていた。

 

謎の生物がいななきを上げると、その場から消え、奥の方の森へ走り去ってしまった。

 

 

腰を抜かした兵士達が、仲間達にゆっくりと担がれ始める。

 

「兵長、あれは一体……」

 

「ああ?お前ら、あの方を知らないのか?」

 

兵士長の戸惑いの声に、兵士達は互いに顔を見合わせる。

 

「はぁ、お前らよく聞けよ!あの方は、ノトス家の新たなる当主であり、アスラ王国第一王子、グラーヴェル様の守護術師」

 

 

「『氷王』ヘルス・ノトス・グレイラット様だ!」

 

 

〜〜〜ルーデウス視点〜〜〜

 

ヘルスが王都へ行ってから二週間程が経っただろうか?

 

俺達はナナホシを救う為、魔大陸に向かった。

 

メンバーは俺、ザノバ、クリフ、エリナリーゼ、そしてパウロだ。

 

魔大陸に行ったのは、ドライン病を治す方法を知っていそうなキシリカを探す為だ。

 

幸いにもキシリカはすぐに見つかり、ドライン病を治すには、ソーカス草というものを見つけなければならないという事も分かった。

 

しかしそこでアトーフェという魔王に出会ってしまい、半ば強引に部下にされそうになってしまった。そのおかげでソーカス草は手に入れたが、俺達は死にかけ、後一歩で負けるという所で、ペルギウスの助太刀が入り、なんとかギリギリで生還する事ができた。

 

そして今は、ソーカス草を煎じたお茶を飲み、容態が良くなったナナホシと、部屋で話し合いをしている。

 

「……そう、麒麟は……王都に行っちゃったのね」

 

「そうだけど、随分と悲しそうだな」

 

ナナホシは悲しそうに下を向く。

 

「もしかしてナナホシ、お前……麒麟が好きなのか?」

 

「そんなんじゃないわよ……ただ、ちょっとね……」

 

まあ確かに、ナナホシは麒麟が恋愛的に好きそうな感じではない、ていうか、元の世界に戻りたい理由の一つに、恋人に会いたいってのがあるんだ。麒麟を好きになる事なんて多分ないだろう。

 

でも、なんかナナホシにとって、麒麟は特別な存在の様に感じる。

 

それは同じ異世界人である俺と、似た様な……いや、それよりももっと信頼している様な感じだ。

 

 

 

ここで問い詰める事も出来るが、彼女は病み上がり、いきなりそんな質問攻めされたら治るものも治らない。今は安静にさせるべきだろう。

 

「そうか、じゃあ俺はそろそろ行くよ。また何かあったら呼んでくれ」

 

「あ……ちょっと……いえ、なんでもないわ」

 

「……?分かった」

 

ナナホシが何かを言いかけたが、そのまま黙ってしまう。

 

こいつ、さっきから恩返しがしたいとか言ってたし、その事で何か言いたい事でもあったんだろうか?『私を3人目の嫁にして』とか言われたらどうしよう。俺は別に構わないが……シルフィ達が許してくれるかどうか……

 

そんな事を冗談混じりに考えながら、部屋のドアノブに触れようとした瞬間。

 

扉が勝手に開いた。

 

開いた扉の外から、一人の人物が入ってくる。

 

パウロだ。

 

「父さん?一体どうしたんですか?」

 

「ル……ルディ……」

 

パウロは気まずそうにしながら、ゆっくりと俺に頭を下げた。

 

「すまんルディ!俺……ゲロっちまった!」

 

「……はい?」

 

ゲロった?何を?俺は別にパウロに隠し事なんてした覚えはないんだが……

 

もしや、神の賜物(ロキシーのパンツ)か?あれがシルフィにバレたら、ちょっと気持ち悪がられるかもしれない。まあそんな事絶対ないとは思うんだが……

 

そんな事を考えていると、さらに二人の人物が部屋へ入ってくる。

 

 

 

「ア、アリエル様に、ルーク先輩……」

 

「ルーデウス様、体調の方に不調はありませんか?」

 

「え、ええ……おかげさまで」

 

アリエルはいつもの眩しい笑顔で話しかけてくるが、今日は何故かその笑顔の裏に、不満の様なものが隠れている気がする。

 

アリエルとルークが来たって事はつまり……パウロがゲロった内容は……

 

「でしたら、パウロ様とご一緒に庭園の方へ来ていただけませんか?ヘルス……麒麟の事について、話したい事があります」

 

あぁ……まじかよ……最悪だ……

 

 

〜〜〜アリエル視点〜〜〜

 

ペルギウス様の謁見から、どのくらいの時間が経ったのでしょうか。

 

ナナホシ様のドライン病についても、回復の傾向にあると聞き、一先ずは安心となりました。

 

残る問題は、サテラと麒麟。

 

しかし既に二人とも王都へ行ってしまい、こちらからは手出しができない状況です。

 

ですから今、私ができる最善の行動は、ペルギウス様に協力を仰ぎ、王位継承の戦いにいち早く戻る事。

 

私が王都に戻り、力をつければ、アモール病の治療に協力できるかもしれない。

 

ですがペルギウス様は、あまり協力的ではありません。

 

毎日の様にお茶会と称して話し合いの場を設け、なんとかして協力をしてもらおうと、あれこれ言ってみましたが。どれもペルギウス様を満足させられるものではありませんでした。

 

しかし悪い事ばかりではありません。

 

ペルギウス様からは、真の王たる者はなんなのか、それを答える事ができれば、私に協力をしてやると。そう言ってくれたのです。

 

そして、ヘルスの事について、分かった事があるのです。

 

 

 

パウロは、ヘルスについて、何かを知っている。

 

しっかりとした根拠はありませんが、先日パウロにヘルスについて聞いてみた所、何も知らないと言い張っていましたが、明らかに動揺している様子でした。

 

パウロはヘルスに関する重要な事を隠している、そう確信しました。パウロが知っていると言う事は、ルーデウス様もきっと何か知っているのでしょう。

 

そして今日、私はその事を問い詰める為、ペルギウス様とのお茶会に、パウロを誘いました。

 

最初は渋っていたパウロでしたが、私がどうしてもと頭を下げ、なんとか来てもらう事に成功しました。

 

 

「遅れてすまないな、少し道に迷ったもんで……」

 

ペルギウス様とお話をしていると、パウロが来ました。

 

「私は別に構いませんよ。むしろ私の我儘に付き合ってもらい申し訳ございません」

 

「そうならいいんだが」

 

そう言いながら、ペルギウス様の横になんの躊躇いもなく座るパウロ様、彼の大胆さにはいつも驚かされます。

 

ペルギウス様も、少々驚いているご様子です。

 

「それで、俺を今日ここに呼んだ理由はなんなんだ?まさかペルギウス様から貰った問題を、一緒に解いてくれってか?」

 

「いえ、それは私が一人で探さなければならない事です。誰の手も借りるつもりはありません。私が今日あなた様を呼んだのは、ヘルスの事について聞く為です」

 

私がそう言うと、パウロは一瞬体を震わせました。やはり、彼はヘルスの何か知っている。それもかなり重要な事を。

 

「なんだよ、またそれか?前にも言ったが、俺は何も知らねぇぞ?」

 

そう言って先日と同じく、シラを切ろうとしてきますが、今日は絶対に逃しません。

 

「ええ、ですから今日は、私がパウロ様にお話したいと思ってるんですよ」

 

「どういう事だ?」

 

「私とルークが、何故そんなにヘルスを探そうとしているのか、気になりませんか?」

 

「……まあ、気になるには、気になるがよ……」

 

パウロは、そう言ってシルヴァリル様から渡された紅茶を飲み干しました。

 

「でもよ、それで俺がヘルスについて教える事にはならねぇぜ?」

 

「やはり、あなたはヘルスについて、何か知っているのですね」

 

「あ………」

 

ようやく口を滑らせましたね。やはり私達の推測は当たっていましたか。

 

パウロ様はしばらく上を向いた後、ため息と共に私の方を見る。

 

「……はあ、全く、王女様には叶わねぇなぁ」

 

「フフ、それ程でもありませんよ」

 

「そうか?けどよ、さっきも言ったが、俺はヘルスの事については話さねぇよ」

 

「まあ待ってください。まずは私の話を聞きませんか?ヘルスについて話すかどうかは、それを聞いた後に決めればいいではありませんか」

 

内心では、今すぐにでもパウロに問い詰めたいです。しかし、ここで焦っては、全てを台無しにしてまうかもしれません。

 

落ち着きなさい、アリエル・アネモイ・アスラ、もう少しです。

 

「……話す気はねぇが、まあいい、聞こうじゃねぇかよ。あんたらとヘルスの関係についてよ」

 

パウロが承諾してくれました。あと少しです。

 

 

「ご厚意に感謝します。ペルギウス様もご一緒によろしいのですか?」

 

ずっと静観していたペルギウス様は、静かに頷きました。

 

「うむ、我もそのヘルスとやらに興味が湧いた。貴様らがそこまで執着する程の存在にな」

 

「分かりました。ではまずは、ヘルスとの出会いから話しましょうか……」

 

私は、昂る感情を必死に抑え、ゆっくりと語り始めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前半後半に分けます。

手遅れかもしれないんですけど一応

  • 戦闘描写たくさん
  • 話し合い、イチャイチャたくさん
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