貴殿転生 元の知識で本気出す   作:肉と米と愛

6 / 85
今回は2倍くらいの内容になってしまった


6話 誕生日パーティー

 

 

 

 

 

 

 

 「今宵は我が娘アリエルの5歳の誕生日パーティーだ。皆の者、存分に楽しんでいくといい」

 

 アスラ王直々に言った言葉によって、会場は歓声と拍手に包まれた。

 パーティー会場は俺が想像していた所よりも2倍ぐらい広い。

 体育館二個分の大きさぐらいあるんじゃないか?

 

 「ヘルス、今日はかなり人が多い、怪しい動きをしている者がいたらそいつからアリエル様を遠ざけろ」

 

 俺の後ろでデリックが耳打ちした。

 

 「了解」

 

 「ヘルス、何をしていますの?早く行きましょう」

 

 「ああごめんごめん、じゃあ行こうか」

 

 デリックに背中を押されて、俺はアリエルと手を繋ぎパーティー会場の真ん中へと進んだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 パーティーが始まる数時間前、俺はデリックと作戦を立てていた。

 俺たちの今日の任務はいつもと変わらない、アリエルの護衛。

 

 だが今日はアリエルの誕生日パーティー。

 

 俺とデリックが常時アリエルの後ろにいれば、権力に飢えた貴族達は話しかけてくるだろうが、アリエルと同じくらいの子供は話しかけづらいだろう。

 

 それはアリエルにとって可哀想だ。

 しかし遠くから見てるだけなら、何が起きた時すぐ助ける事ができない。

 

 二人であれこれ考えてでた結論は、俺がアリエルと二人でパーティーを回る事だ。

 デリックは護衛感が出てしまうが、まだ9歳になったばかりの俺なら、ただアリエルのそばにいる少年に見えるだろう。

 

 そしてアリエルはパーティー会場の真ん中で踊る予定がある。

 踊るのは会場にいる同じ年代の子。

 スケジュール的にたぶん2、3人と踊れるかぐらいの時間だ。

 

 ダンスに関しては俺が一緒に練習した。

 

 アリエルは物覚えが早く、凄まじいスピードで踊り方を覚えていった。

 これなら俺と踊らなくても、大丈夫だろう。

 

 問題なのがアリエルの兄弟、他の王子王女達だ。

 

 デリック曰く、アリエルの命を狙うならこのパーティーが終わる前か、終わった後だろうという事らしい。

 

 王子達は、最近をさらに人気を集めてきたアリエルを鬱陶しく感じているらしく、密かに命を狙う機会を伺っているという。

 アリエル本人は王になる事に興味はないらしいが、そんな事彼等にはお構いなしだろう。

 

 それにしても、兄弟同士で殺し合うってのは怖いな……

 今のアスラ王もそうやって兄弟を蹴落としあってついた座と聞くが。

 

 

 

 

 

 ディエゴ ルークと共に命を奪い合う……

 想像であると分かっていても怖い。

 

 「ヘルス?何をしているのですか?[

 

 そうやって考えていると、部屋にアリエルが入ってきた。

 アリエルはいつにも増して豪華な衣装を着ているが、ダンスが控えている為か、いつもよりは動きやすそうだ。

 

 「さあ、お父様が既に待っているらしいので、会場へ行きましょう」

 

 「分かりました」

 

 「分かった」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 パーティー会場の真ん中についた俺とアリエル。

 案の定、大量の貴族が押し寄せてきた。

 

 「おめでとう御座いますアリエル様」

 

 「あの美声をもう一度」

 

 アリエルを賛美する声が次々と浴びせられる。

 

 「皆さん、ありがとうございます」

 

 そんな貴族をアリエルは営業スマイルで撃墜した。

 さすがはアスラ王国第二王女様、このアスラ王国の生き方をよく知っている。

 

 「アリエル様、おめでとうごさいます」

 

 その賛美の中に女の子の声が聞こえる。

 他とは違うその声に、俺とアリエルはその声の主の方をみた。

 

 そこには、アリエルと同い年ぐらいの小さな女の子が一人。

 

 「あなたは?」

 

 「私はトリス……トリスティーナ・パープルホースです」

 

 優しくアリエルが問いかけると、少女は顔を赤らめ恥ずかしいそうに答えた。

 

 パープルホース家……聞いたことない家系だな。

 

 「是非ともアリエル様とお近づきになりたくて」

 

 その言葉は弱々しく、既に諦めているような感じだった。

 この子は本当にアリエルと友達になりたいのだろう。

 

 しかしそれは絶対に叶わない。

 

 自分の身分とアリエルとの差を知っているからこそ、トリスティーナはこんな諦めたような声になっているんだろう。

 

 「もちろんですトリスティーナ!お友達になりましょう!」

 

 それをアリエルも察知したようだ。

 だからこそ、アリエルは彼女を救ってやりたいという気持ちが出てきたんだろう。

 

 トリスティーナは少し驚いた顔をして、しばらくの間アリエルと楽しそうに話しをしていた。

 

 俺は少し離れた場所で、それを微笑ましくみていた。

 うん、やっぱり友達はいい。

 

 「ありがとうございました。アリエル様」

 

 「こちらこそありがとうトリスティーナ、またお話しましょう」

 

 「ぜひ!」

 

 トリスティーナが離れてしばらくは、アリエルと同じ年代の子達が集まりアリエルに話しかけている。

 

 アリエルはそれを営業スマイルではない、いつも俺やデリックに見せている笑顔で話をしている。

 

 随分と、楽しそうだ。

 そうして一通り話を終えると、アスラ王が上から話し始めた。

 

 「では、これよりこのパーティーのメインイベント。我が娘アリエルのダンス披露の時間だ」

 

 『おお!』

 

 アスラ王の話が終わると、皆が拍手をする。

 

 こうしてダンス披露が始まった。

 まずはアリエルと同い年の男の子だ。

 

 ダンスは順調に進み、2人目の男の子もなんなくクリア

 

 俺は最後のダンス相手に選ばれようと我先にとアリエルの前にでる男達を眺めていた。

 

 「アリエル王女、是非わたくしと最高のダンスを……」 

 

 「いや、この僕と!」

 

 「私と!」

 

 

 

 

 

 

 アリエルはモテモテだな。

 ふと、アリエルと目が合った。

 

 アリエルは顔を少し赤くしながら、こちらへと向かってくる。

 

 「一緒に踊ってくださいませんか?」 

 

 そして満面の笑みで手を差し伸べてきた。

 

 おいおい、逆ナンかよ。

 第二王女直々のお誘い、護衛の俺が断れるはずもないだろう。

 だけど、アリエルが俺を選んでくれたのは素直に嬉しいし、期待されたなら、それに応えてあげたい。

 

 「喜んで」

 

 俺も満面の笑みで差し出された手を取った。

 

 「いくぞ?」

 

 「……はい」

 

 始まったダンスだが、アリエルとのダンスは息ピッタリなものだった。

 まあ当然だ。

 俺はアリエルとこの日のためにほぼ毎日やっていたのだから。

 

 でもそれは、他の貴族や子供達が知っているはずもない。

 ダンスが終わった時は、すごい拍手と歓声があって恥ずかしかった。

 

 アリエルの方も顔を赤くして恥ずかしがっている。

 

 予想外な事が起きたが、アリエルの誕生日パーティーは無事に成功した。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 夜、パーティーが終わり、俺とデリックはアリエルの部屋にいた。

 

 「アリエル、誕生日おめでとう」

 

 「アリエル様、誕生日おめでとう御座います」

 

 プレゼントを渡す前に、まずは改めてお祝いの言葉を送る。

 

 「ありがとうヘルス、デリック」

 

 アリエルの顔は今までに見た事がないくらい柔らかい笑顔になっていた。

 

 「実は、我々からアリエル様にプレゼントがあるのです」

 

 「え?プレゼント……ですか?」

 

 「ああ、俺たち頑張ったんだぜ」

 

 まずはデリックからプレゼントを渡した。

 デリックが用意したものは短剣。

 

 「アリエル様はいずれ王になるお方、この短剣は....」

 

 そこからデリックによるアリエルへの王の指導が始まったがそこは割愛させてもらおう。

 そして30分程度の指導が終わり

 

 「改めましてアリエル様、誕生日おめでとう御座います」

 

 「ありがとうデリック」

 

 アリエルはこんな長い指導を食らってもなお、笑顔を絶やさずに幸せそうな笑みをしていた。

 

 「最後は俺だな、最後に相応しいかわからないけど、はい、これだ」

 

 俺はアリエルに指輪を手渡す。

 

 「すごい……綺麗ですね」

 

 アリエルは指輪を上に持ち上げて眺めながら目をキラキラとさせている。

 やっぱりな、これくらいの年頃の女の子には、宝石が一番嬉しいんだよ。

 

 「それと、この指輪には機能があってだな。アリエル、これに魔力を少し込めてみろ」

 

 アリエルが力を入れると指輪の色が赤色に変わった。

 

 「すごい」

 

 「だろ?しかもこの指輪の色は俺の付けてる指輪と連動してるから、危険を知らせるのにも使えるんだぜ」

 

 「え?つまりヘルスも同じのを付けてるってことですか?」

 

 「え?そうだけだど、まずかったか?」

 

 「いえ、そうではないんですが」

 

 まあ、確かによく考えたら好きでもないやつと一緒の指輪つけても嫌だよな。

 変な噂でもたったらアリエルが可哀想だ。

 

 また今度、改良したやつを渡すか。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 深夜だろうか、俺は魔力が左手に集まるのを感じて目を覚ました。

 

 「……まさか」

 

 左手を見てみる。

 寝る前にはめた指輪が薬指にある。

 しかし、それは赤黒く染まっていた。

 

 自身の部屋を飛び出し、一直線にアリエルの部屋へ向かう。アリエルの部屋はすぐ隣。

 

 ドン!!

 

 「アリエル!!」

 

 蹴飛ばすような勢いでドアを開けると、と3人の男がアリエル周りを囲んでいた。

 

 アリエルは口を抑えられ組み伏せられている。

 そしてその1人はアリエルの服を剥ぎ取ろうとしている所だ。

 

 「おらぁ!」

 

 考えるより先に体が動いていた。

 

 俺は前へと飛びかかり、近くにいた男の顔面に一発お見舞いしてやる。

 

 「ボヘェ!!」

 

 男は壁に吹き飛ぶ。

 壁には亀裂が入り、男は気を失った。

 

 続けて俺はそのままベットに飛び込み、アリエルの服を剥ぎ取ろうとしているやつの腕を掴み、折った。

 

 「ッッッツ!?」

 

 声にならない叫び声をあげる男を踏みつけ、もう1人の男がいた横を見る。

 いない!?

 

 後ろを向けば、最後の男はアリエルを担ぎ、部屋の壁際に移動していた。

 まずいアリエルが人質にとられた!

 

 俺は男と距離をとりながら、人獣フォルムへと姿を変える。

 

 「お前、その子が誰だかわかってるか?」

 

 「あぁ、分かってるさ。アリエル様だろ」

 

 「なら尚更お前が凄いことをしてるって事がわかるだろ」

 

 男はその言葉を鼻で笑うと、俺の方を指差す。

 

 「噂どおり、気味の悪い姿に変われるんだな?こりゃ見せ物小屋に売りゃいい値になるぜ」

 

 男は一歩ずつ慎重に割れている大きな窓の方に移動を始めている。

 あそこから逃げるつもりか……

 

 

 「その子を離せ、今ならまだ間に合う」

 

 「そりゃ無理な相談だ。こっちは金ももらってんだ」

 

 「金……まさか他王子の差し金か?」

 

 「へへ、それは言えねぇな」

 

 絶対にそうだ。

 パーティー中にアリエルを殺す機会を失ったから、寝込みを襲うことにしたんだ。

 なんて狡猾な奴らだ。

 

 どうする?

 今は時間を稼いでいるが、このままいけばアリエルは殺されるかもしれない。

 デリックは多分まだ来ない、どうすれば。

 必死に思考を巡らし、この絶望的状況を抜け出す答えを探し出す。

 

 ……これならいけるか?

 

 でもやったことも無いし……いや今はそんなのどうだっていい。

 ここからアリエルを救い出すには、これしかない。

 

 俺は男に向かい、ゆっくりと頭を下げた

 

「ハハッなんだ?ここまできて頭を下げてお願いする気か?」

 

 男はそれを鼻で笑いながら見ていた。

 そう、完全に油断している。

 奴は気づいていない、俺がゆっくりと、ゆっくりと伸びているキリンの首を縮ませている事を。

 

 相手は俺の頭を正面で見ているから油断していなかっとしても見えないがな。

 縮ませる、さらに縮ませる。

 

 そして首はとうとう、人型と同じくらいの長さにまでなった。

 

 ……ここだ。

 

「おいおい、そんな角度で下げられてもまだ足りね...」

 

「麒麟マン槍櫓!!」

 

 俺は縮ませた首を、一気に射出した。

 

 伸びた頭は回転を繰り返しながら直進していく。

 

 「んなッ!?」

 

 俺の頭が男の顔面に直撃した。

 

 いてぇ!

 

 男はよろけながらそのまま後ろに吹っ飛び、窓を超え、暗闇の奈落へと落ちていった。

 

 俺は伸びきった頭を元の長さに戻し、人型の姿にもどる。

 

 「ヘルス!」

 

 「ハア……ハア……」

 

 やった、やったのだ。

 

 俺はアリエルを守り、そして、人を殺した。

 あの高さから生き残れる人間なんてそういないだろう。

 

 「うぐ……!」

 

 いいようのない気持ち悪さが全身に巡るのを抑え、俺はアリエルに近づこうと振り向いた。

 

 「アリエル、だいじ……」

 

 グサ……

 

 その瞬間

 

 背中が焼けるような痛みに襲われた。

 自分の腹を見てみる。

 

 背中から刺されたであろう剣が、腹を突き破っていた。

 

 なんで?

 

 後ろを向くと、そこには片腕が曲がり、膝をつきながら俺に剣を突き刺している男がいた。

 

 こいつ、さっき壁に吹き飛んで気絶してた奴……

 目が覚めたのか?

 

 「へへ……甘いな、坊主」

 

 男は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、剣を俺から抜いた。

 

 死ぬ。

 

 そう感じた俺は、人型のまま男の顔面を最大火力で殴った

 

 男はそのまま頭から再度壁に衝突し、頭が潰れた。

 

 「ヘルス!大丈夫ですか!?」

 

 アリエルが俺に近づいてくると、俺は膝を崩す。

 

 視界が……暗くなっていく。

 

 「ガフッ……アリエル……無事か?」

 

 「今は自分の心配を……ああ血が、すぐ助けを呼んできます!」

 

俺は意識を失った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。