貴殿転生 元の知識で本気出す   作:MENOUENOTANKOBU

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60話 暴露 後半

 

 

 

「……それが、私がヘルスに会いたい理由なのです」

 

私は20分程の語らいを終えました。

 

「なるほどな……」

 

パウロはどこか納得した様な顔で、なにやら考え込んでいます。ペルギウス様は、少し用事ができたからと、席を外してしまいました。

 

ここでパウロ様がはぐらかしてしまえば、きっともう、ヘルスには会えない。私は不思議とそう感じました。そう……ここが私にとっての分岐点なのです。なんとしても、聞き出さなくては……

 

私は椅子から立ち上がり、パウロに向かい頭を下げました。

 

「パウロ様、お願いします。どうかヘルスの情報を教えてはくれませんか?その為なら、私はあなたに体を捧げる覚悟もできています」

 

「いやいや!やめてくれよ!俺はそんな気ねぇからよ」

 

意外でした。パウロは……ノトス家は好色の方が多いです。最悪私は自分の体を捧げるつもりでいましたが……少々行き過ぎましたね。

 

「叔父上、俺からもお願いします」

 

そばにいたルークも、頭を下げました。

 

「俺も兄上にもう一度会って、話をしたいのです………あんな会話が最後だなんて、俺は嫌です」

 

「………」

 

あの日の会話を、今でも鮮明に思い出せます。

 

『お前も結局、同じなんだな……』

 

あの時の、ヘルスの失望した目を思い出しただけで、私はこの上ない恐怖を感じます。

 

あれが最後だなんて……絶対に嫌です。

 

「……いいのか?」

 

「……はい?」

 

黙っていたパウロが、ゆっくりと言いました。

 

「お前達がそれを知ったら、後悔するかもしれない……」

 

「はい、覚悟はできています」

 

私が即答すると、パウロはしばらく俯いた後、大きなため息を吐きました。

 

「分かったよ……たく……」

 

『本当ですか!?』

 

「ッうお!」

 

私とルークは思わずパウロの方に詰め寄ってしまい、そのせいでパウロは椅子ごと後ろに倒れてしまいました。

 

「あ、すいません!」

 

「別に構わねぇよ、そんな喜ぶ程、ヘルスの事、知りたかったんだろ……?」

 

パウロは頭をさすりながら再び椅子へと腰掛けました。私達も続いて正面の椅子に座ります。

 

「すまなかったな……今まで黙ってて、お前達がそんなにヘルスを大切にしてたなんて……正直思ってなかったんだよ……」

 

「いえ、むしろ今日話してくれることに、大変感謝しています」

 

「そうか……ならいいんだが……」

 

パウロは覚悟を決めた顔で、こちらを見ます。

 

「じゃあ……教えるぞ……」

 

私とルークも、パウロを真剣に見つめました。

 

ヘルス………彼は本当に生きているのでしょうか?

 

そう考えると、胸が不安でいっぱいになりますが、もう、後戻りは出来ません。

 

パウロはゆっくりと口を開きました。

 

「ヘルスは、ーーーー」

 

〜〜〜ルーデウス視点〜〜〜

 

 

 

 

「なるほど……そういう訳で、アリエル様に秘密をバラしてしまったと……」

 

「あぁ、本当に申し訳ねぇ……」

 

パウロは再び俺に向かい、頭を深々と下げた。

 

「それは俺じゃなくて、ヘルスにするべきだと思うんですが」

 

「それはそうだが……」

 

俺は今、アリエルに連れられ、庭園の真ん中でお茶会をしていた。

 

メンバーはアリエル、ルーク、パウロ、俺。

 

お茶会と言っても、それはほぼ尋問に近かった。

 

パウロが言った内容は、虚偽ではないのか、俺もヘルスの正体を知っていたのか……

 

用意されたお茶を飲む暇もなく、俺は質問攻めにあった。

 

そして全てを話し終えた時、アリエルは黙ったまま俯いてしまっていた。ルークも珍しく、いつもの笑顔ではなく、顔が少し歪んでいる。

 

 

 

怒っているのだろうか?

 

無理はない、ずっと探していた大切な人が、実は手の届く場所にいて、それを教えられずに過ごしていたんだ。俺だったら、一発ぐらいは殴ってるかもしれない……

 

「そうですか……麒麟がヘルスだったのですね……」

 

アリエルは俯きながら呟く。

 

「あの、ずっと言わずにいた事、申し訳……」

 

俺が謝ろうとした時、俯いていたアリエルからは、涙が溢れ出ていた。

 

「生きていたんですね………あの人は……」

 

アリエルは涙を隠す為、手で目を覆うが、それでも涙は止まらない。

 

「怖かったんです……彼が……もし死んでいたらって考えたら……」

 

「アリエル様……」

 

「どれだけ探しても見つからなくて……もう無理だって諦めかけていました……でも……彼は、ずっと私の側に居てくれてたんですね……」

 

 

 

アリエルはその言葉を言い終えると、声を上げて泣いてしまった。

 

ルークも涙目になりながら、アリエルの肩に手を置いている。

 

「ルーデウス……それに叔父上、真実を話して頂き、本当に……ありがとうございました……」

 

「俺達の方こそ、ずっと黙っていて申し訳ありませんでした」

 

ルークは返事をせず、頷きだけを返し、涙をポロポロと流し始めた。

 

泣いている二人を見て、パウロは俺に囁いてきた。

 

「ルディ……俺は、後悔はしてねぇぜ?」

 

「ええ、俺もそうです」

 

俺達はヘルスの秘密を話してしまった。けど後悔はしていない。

 

アリエル達は、ヘルスを本当に大切に思ってくれていたんだ。

 

アリエル達は、ヘルスに何かをしてしまったのかもしれない。でももうその罪は、十分償った。

 

ヘルスが帰ってきたら、俺の方からも、一言言っといてやろう。

 

 

もう一回、ちゃんと話し合えってな。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

アスラ王国王都から、少し離れた場所にある森の中。

 

真夜中にも関わらず、一台の豪華な馬車が歩いている。

 

「全く、こんな夜中に呼び出すとは、ピレモンも偉くなったものだな」

 

豪華な馬車の中に居るのは、アスラ王国第二王子、ハルファウス。そして彼を支持する数名の貴族と、一人の護衛。

 

「ハルファウス王子、言いたい事もあるでしょうが、これは王になる為に必要な政略。どうか会談の際……」

 

「分かっている、しかし奴はもうノトス家当主ではない筈。何故そんな者にわざわざこちらから会いに行かなくてはならんのだ?」

 

「ピレモン卿は当主の座から降りたとは言え、いまだに凄まじい発言力を持っています。彼の持つ人脈を使えば、第一王子、グラーヴェル様と並ぶ程の力をつける事ができるでしょうね」

 

馬車に入ってから、一言も発していなかった護衛の一人が、独り言の様に呟いた。

 

その護衛は、かつてヘルスに剣術を教えた師匠とも言える存在。

 

彼はヘルスがノトス家を出奔した同時期に、第二王子の護衛を任された。

 

「その通り、護衛にしては政争をよく理解しているな」

 

「この程度、何年も護衛していれば分かってきますよ……」

 

彼はそう呟いて、馬車の外を眺める。

 

彼としても、ノトス家とは良好な関係を結びたかった。以前仕えてた者達との戦いは避けたいというのと、単純にヘルスに会ってみたいという気持ちがあったのだ。

 

彼はヘルスに剣術を教えながら、彼の剣の才能を見出していた。

 

本人はそんな才能はないと言い、剣術から別の戦い方へと逃げてしまったが、彼には凄まじい才能があると、護衛は信じていた。

 

そんな男が、最近になってノトス家に戻り、突如として当主になったと言うのだ。

 

噂によれば、北神三剣士の内、二人を相手取り、圧勝したのだという。

 

そんな彼についた二つ名「『氷王』ヘルス」

 

 

自分が知らぬ間に、随分とお強くなられましたね……

 

 

 

 

パカラッパカラ

 

外の方から、馬の走る足音が聞こえた。馬車を引く馬ではない、別の、もっと大きな足音だ。

 

「な、なんだ?」

 

「少し確認してきます」

 

護衛は馬車を止め、外へと出る。

 

パカラッパカラ

 

暗闇の中から、足音だけが聞こえくる。

 

その音はこちらへ凄まじいスピードで近づいてくる。

 

「不気味ですね、私には構わず先に進んで………」

 

その瞬間、月の光に照らされ、微かに明るかった空が、何かに覆われた様に真っ暗になる。

 

護衛が咄嗟に上を見上げると、そいつはいた。

 

下半身は馬、上半身は人間の、不気味な生物。

 

そいつは刀の鞘を握り、馬車の方へと向かう。

 

「逃げ……!」

 

護衛が言い終える前に、馬車は縦から一刀両断されていた。

 

パキパキ

 

馬車は斬られた箇所が、凍結している。その中から、真っ二つに斬られた貴族の一人が出て来た。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

馬車からは、次々と貴族が出て来て、我先にと逃げようとしている。

 

「助け……ッぐあ!」

 

「ッぐはぁ!」

 

逃げ惑う貴族を、男は淡々と斬り伏せていく。

 

助けなければ!

 

「どりゃあぁぁぁ!」

 

「ん?」

 

護衛は男に向かって飛び、渾身の一撃を放つ。

 

ガキィィン!

 

金属のぶつかり合う音が、静かな森に響く。

 

数十メートルを超える男と、平均男性の身長よりも、やや高い護衛との力の差は、明白だった。

 

しかし、護衛は見た、男の顔を……

 

「ッ!?あなたは………ぐ!」

 

護衛は押し返され、木へと衝突する。

 

「師匠………」

 

男も、護衛の正体に気付いた様だ。

 

「ヘルス様、何故あなたが……ここに?」

 

謎の生物の正体、それは自らが会いたいと望んでいた、ヘルスだったのだ。

 

「………すいません」

 

ヘルスはそう言うと、護衛の前から消え、逃げ惑う貴族達を次々と斬りつける。

 

 

 

 

数分後に生き残っていたのは、護衛と、第二王子だけとなってしまった。

 

「あ、あいつはなんなのだ!」

 

「王子!私の後ろに隠れていてください!」

 

王子を自身の背後に隠し、戦闘体制を取る。しかし、木に衝突したせいで、骨は何本か折れており、とても戦える状態ではない。

 

ヘルスはゆっくりと護衛達の方へ歩いてくる。

 

シュルルルル

 

巨大だったヘルスの体は小さくなり、護衛と同じくらいのサイズになった。下半身も馬から人間へと変わっている。

 

「師匠、彼を引き渡してください。そうすれば、あなたも彼も無事で済みます」

 

「残念ですが、それはできませんね……こちらにもプライドというものがありますので」

 

護衛は分かっていた。ここで王子を引き渡せば、ヘルスの言う通り殺されはしないだろうが、彼は幽閉されてしまだろう。そうなれば、死ぬよりも辛い目に遭う可能性だってある。

 

「師匠、そんなの命に比べればどうでもいいじゃないですか……あなたはここで死ぬべきではない」

 

「フフ、今更殺すのが怖いのですか?違うでしょう?」

 

護衛は薄く笑いながら、剣を構える。

 

ここで勝たなければ、ヘルスを救わなければ……

 

「なんで、なんでみんな、こうなんだよ……」

 

ヘルスもやる気になったのか、ゆっくりと剣を構え始めた。

 

 

 

 

 

二人の戦いに、合図をする必要はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手遅れかもしれないんですけど一応

  • 戦闘描写たくさん
  • 話し合い、イチャイチャたくさん
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