貴殿転生 元の知識で本気出す   作:MENOUENOTANKOBU

65 / 71
65話 聖地での決闘 

 

 

 

 

「3人とも、準備はいいか?」

 

俺は手に木刀を握りながら、3人に確認をとる。

 

「いいわよ!」

 

「後悔しないでくださいね?」

 

「……ふう」

 

エリス イゾルデ ニナは互いに顔を見合わせ、各々が一番戦いやすい構えをとった。

 

「全く……馬鹿な事するねぇ」

 

「へへ、いいじゃねぇか。これくらいの傲慢さが丁度いい」

 

水神と剣神は離れた場所で座りながら、俺たちの決闘を見学している。

 

剣聖二人と水王一人、本来ならば圧倒的にこちらが不利な状況。こんな無謀な戦いをする事になったのには、深い深い理由がある。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

エリスがルーデウスに会うと決めた後、俺は話を戻して、水神と北帝に再度王都へ来てもらうよう頼み込んだ。

 

断られる事も想定していたんだが、意外にも彼らは協力的だった。

 

「某以外の北神三剣士が王都に揃っているのならば、こちらから出向く他ないでしょうな」

 

「あたしもダリウスには借りがある。本人は忘れてるかもしれないが、恩は返さなくちゃ、ミリス様に顔向けできんさね」

 

北帝はともかく、ダリウスが水神に借りを作っていたとは驚きだった。昔から姑息な奴で、水神になる前の彼女に、借りを作っていたのか、純粋に昔はいい奴だったのかは知らんが、水神が仲間になった事に変わりはない。

 

「けど、条件とまではいかないが、一つ頼みを聞いてもらえるかい?」

 

「勿論だ、できる限りの事はしよう。本当、できる限りだが……」

 

水神からの頼み、それは俺が可能な事なのだろうか?

 

「まあそんな警戒する事はないよ。ただあんたと、うちの孫娘で手合わせをして欲しいんだよ」

 

「わ、私ですか!?」

 

突然の指名に、イゾルデは跳ね上がった。

 

「手合わせ……か?」

 

「こいつは、あんたと同じで王級になったばかりなんだけどね、まだまだ爪が甘い所が多いんだよ。オーベールだと実力が違いすぎるし、ニナやエリスとはもう飽きるほどやってきたんだ。これ以上伸びる事はないだろうね」

 

なるほど、だから同じ王級で、尚且つあまり戦った事のない北王級の俺は、イゾルデの成長を促すのに最適って訳か。

 

「分かった、そういう事なら、喜んで受け入れよう」

 

「そうかい、感謝するよ」

 

俺としても、久々にイゾルデと戦ってみたい気持ちはあった。自分の実力を知るのにもいい機会だ。

 

「なら、私もやるわ!!」

 

その時、一人の女が声を上げた。

 

エリスだ。 

 

その隣にいたニナは、突然のエリスの奇行に驚いている。

 

「エリス!?あんた何言って……」

 

「ヘルスもそれでいいわよね!」

 

「あ、ああ、構わないが……」

 

距離感と言うものを知らず、俺の目の前にまで詰め寄ってくるエリスの気迫に負け、俺は承諾してしまったが、まあいい。二人になった所で俺のやる事は……

 

「な、なら、私もやります!」

 

「え……えぇ」

 

エリスに負けまいと、ニナも声を張り上げて参加の意思を表明した。しかし、流石に3人は……

 

「すまないが……3人は……」

 

俺が断ろうとした時、離れた場所に座っている剣神から、凄まじい殺気が飛んできた。

 

『断ったら殺す』

 

絶対にそういう意味だろう。

 

「……はあ……分かった。3人ともやってやるよ……」

 

俺がそう言うと、剣神から出ていた殺気はスッと消え、俺の中で止まっていた時間が動き出す。

 

しかし3人か……1人ずつ相手してやってもいいが、これからはきっと多対1の戦いも出てくるだろう。ならばこういう所で一度、戦術を確認をするのもありかもな。

 

「ただしこちらからも条件がある。戦うならお前ら3人、まとめて来い」

 

『!?』

 

俺がそう言うと、周りにいた剣聖達が騒ぎ始めた。

 

「そんな無茶な……!」

 

「相手は剣聖と水王だぞ!?」

 

「自身の力を過信すぎてる……」

 

 

 

 

 

「腰抜け共は黙ってろよ」

 

無理だなんだと言いまくる剣聖達を、剣神は一言で黙らせた。

 

「へへ、こいつらを同時に相手しようなんて、最高じゃねぇか」

 

剣神は満面の笑みを浮かべながら、俺に木刀を投げる。

 

受け取った木刀は通常の物より重い、中に金属でも入ってるんだろうか?

 

「けどよ、本当に勝てんのか?」

 

「勝てない戦いを挑む程、俺は愚かではない」

 

俺は3人とも以前に戦った事がある。全く勝てなかったイゾルデはともかく、ニナとエリスの行動パターンは既に分かっている。

 

それに今の俺には再生能力がある。この木刀が通常よりも威力が高いとはいえ、相当良いところに入らなければ、即座に回復できるだろう。

 

つまり勝機は十分にあるのだ。

 

「へへ、そうこなくっちゃな。じゃあお前ら、早速外に出ろ」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

そう言う訳で、今こうやって3人と決闘をする形となっている。

 

深い深い理由とか言ったが、訂正しよう。完全に俺の傲慢さでこうなった。

 

しかしさっきも言ったが、俺は負ける気なんてない。絶対に勝つ、それだけだ。

 

 

「では、始めますよ?」

 

決闘の合図をするのは、史上最年少で剣聖になったジノ・ブリッツ

 

彼もまた、エリス、ニナに続く相当な実力者だ。本人にやる気はなさそうだが、成長性はダントツでこいつだろうな。

 

「始め!!」

 

ジノが言うと同時に、エリスの姿が消えた。

 

想定通り、最初に動くのはエリス。

 

しかし速い!人間って初速でこんな動けんのか?

 

「でやあぁ!」

 

「ッぬお!?」

 

俺が木刀でガードを取るよりも速く、エリスは俺の目の前に現れ、腹に向けて剣を振る。

 

俺に体を武装色で硬化させる暇など無く、無防備な状態でモロに攻撃を喰らった。

 

ボキボキ

 

これは……肋骨あたりが逝ったか?

 

吹き飛びながらも体制を整え、俺は再び剣を構える。

 

「こりゃあまた、一段と速くなったな」

 

「私、前とはもう違うんだから!」

 

流石、剣神から直々に教えを受けていただけはある。以前のエリスとは比べ物にならない程強くなっている。剣聖と言われてはいるが、もう剣王と遜色ないレベルだ。

 

だが、成長したのは、俺も同じ事。

 

「じゃあ、次はこっちから行かせてもらうぞ?」

 

「いいわ……来なさい!!」

 

俺はしゃがみ込み、体をエリスの方へ向ける。

 

"剃"

 

俺はその場から消え、次の瞬間にはエリスの目の前に来ていた。

 

「な!?」

 

人体を武器に匹敵させる六つの体技の六式。

 

その内の一つである剃は、瞬時に地面を10回以上蹴りを入れ、その反動を使い、爆発的なスピードを出す。簡単に言えば、高速移動だ。

 

剃の他にも、俺は鉄塊、風脚を習得している。

 

実践で使うのは初めてだが、まあまあ上出来だろう。

 

「まずは一人」

 

予想外のスピードに対応できないでいるエリスの腹に、死なない程度の力を込め、剣を振り斬ろうとした。

 

しかし、それはエリスと俺の間に入って来たイゾルデに止められた。

 

イゾルデは俺の剣を受け流し、流れるような動きで、俺の頭へ剣を当てる。

 

「鉄塊!」

 

「水神流奥義 流!」

 

ガチガチに固めた鉄塊のおかげで、ダメージは抑えれたが、俺は再度吹き飛ばされてしまう。

 

「気をつけてくださいねエリス、今のを返せたのはまぐれに近いので……」

 

「分かってるわ!」

 

攻撃特化のエリスに、防御特化のイゾルデ、厄介なコンビだ。

 

でも待てよ?一人足りない。ニナはどこだ?

 

俺がニナを探そうとした時、背後から人の気配がしている事に気づいた。

 

咄嗟に後ろに剣を向け、振り向こうとしたが、時すでに遅し。

 

「光の太刀!」

 

ニナによって放たれた光の太刀により、ガードを取ろうとした俺の右腕は、ありえない曲がり方をして折れた。

 

俺は落としかけた剣を左手で持ち、ニナに向け剣を振ったが、利き手ではない為か、軽く避けられてしまい、ニナはエリスとイゾルデの方へ下がった。

 

その時、視界がぼやけ、俺は地面に倒れた。イゾルデから喰らった頭の一撃が、今になって響いたのだろう。痛みが感じなかっただけで、ダメージは蓄積していたのだ。

 

 

しかし、全く気づかなかった……

 

人間、戦う時には必ず殺気が出る。エリスがいい例だ。あいつは常に殺気がダダ漏れで、隠す気すらない。イゾルデですら、攻撃の瞬間には殺気がでている。

 

しかしニナは、攻撃の動作をする時も、攻撃をする時も、全く殺気を漏らさなかった。

 

覇王色も、武装色も使えるのに、見聞色だけ未だに使えない俺にとって、透明人間のようなニナは天敵とも言えよう。

 

攻撃自体が難しいエリス、イゾルデコンビに、どこから来るかも分からないニナ。

 

想像以上にまずい、負ける可能性大だ。

 

「勝負あ……」

 

パキパキパキ

 

ジノが試合終了の合図を言う前に、俺はゆっくりと立ち上がる。

 

「私の渾身の光の太刀でも、まだ立ち上がるの?」

 

「落ち着いてくださいニナ、ダメージは絶対に入っているはずです」

 

残念だが、そのダメージも既に回復してしまった。しかしこのままでは埒が明かない。俺も必殺技を使わせて貰うとしよう。

 

俺は3人に向け、剣を振る構えをとる。

 

「何か来るわね」

 

それにエリスは何かを察知したのか、俺に向かい走って来た。

 

イゾルデとニナも、互いに防御の体制に入る。

 

 

俺の握る木刀は武装色で覆われ、周りからは紅色の覇気が溢れ出始めている。

 

 

 

……今だ

 

俺はその瞬間、構えていた剣を全力で放った。

 

神避(かむさり)!!」

 

ドン!!!

 

「ッガハ!」

 

俺から放たれた横薙ぎの斬撃が、エリスに衝突する。

 

エリスを貫通した斬撃は、そのままイゾルデの方へ飛ぶ。

 

「こ、これは受け流せ……!」

 

エリスに当たっても尚威力の衰えない斬撃を受け流せず、イゾルデも吹き飛ばされた。

 

斬撃が消える頃に立っていたのはニナただ一人。

 

「な、何が起きた……あ……」

 

同様するニナに背後から軽く剣を振ると、呆気なく気絶してしまった。

 

「しょ、勝負あり!」

 

その言葉を言うと同時に、ジノはニナに向かって走り、手当を行っている。

 

俺は試合終了の合図がされても、しばらくはその場に立ち尽くしていた。

 

「……ふう」

 

危なかった……

 

再生能力というチート能力まで持っていたのにも関わらず、必殺技を使わなければ俺は勝てなかった。

 

いや、そんな俺を追い込んだ彼女達を凄いと称賛するべきか?

 

「へぇ、やるじゃねえか」

 

剣神は愉快そうに笑いながら、近くに倒れていたエリスを見る。

 

「正直、エリスがお前に一撃を入れた時点で、お前が負けると思っていたんだが、まさか奥の手を持ってるなんてな」

 

「そうかい?あたしゃあ最初からこの坊やが勝つと思ってたよ」

 

水神は特に面白みもなさそうな声で言った。

 

「イゾルデ……あんたにはまだまだ教える事がありそうさね」

 

「ボスはやっぱり凄いニャ!」

 

立ち尽くしている俺は、リニアから背中を叩かれた。

 

「剣聖二人と水王と同時に戦って勝つなんて、子分のあちしも鼻が高いニャ!」

 

「ギリギリだったけどな……」

 

俺はそのまま水神の方へ向き、木刀を落とした。

 

「さあ水神、これで満足か?」

 

「ああ、むしろ十分すぎる程だね」

 

水神にはどうやらご満足頂いたらしい。結構結構。

 

 

こうして、俺の剣の聖地での決闘は幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手遅れかもしれないんですけど一応

  • 戦闘描写たくさん
  • 話し合い、イチャイチャたくさん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。