貴殿転生 元の知識で本気出す   作:肉と米と愛

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後半はほぼ戦闘です


82話 泥沼対馬骨 前半

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『フンッ!』

 

 ヘルスから放たれた斬撃が、パウロの耳を切り落とす。

 

 「……クソッ!」

 

 「パウロ!一旦下がれ!」

 

 パウロは顔をしかめ、ギレーヌに担がれながらサテラの元へ後退した。

 

 「あぁギレーヌ、すまねぇ……」

 

 「気にするな。それよりも、まだやれるか?」

 

 サテラに耳を止血されているパウロは、苦笑しながらも剣を強く握った。

 

 「当たり前だ。ルディの準備ができるその時まで、絶対に耐え抜いてやる……」

 

 「……そうだな、じゃあ早く立て!エリスを1人にさせるな!」

 

 「分かってる!行くぞ!」

 

 ギレーヌとパウロは左右に別れ、1人でヘルスと対峙しているエリスのカバーに向かって行った。

 

 俺はそんな3人を何度も確認しながら、用意していた何枚ものスクロールを地面に置き、魔力を流し込んでいく。

 早く……早く準備しなくちゃ……

 

 『何を企んでるのか知らんが……邪魔だな』

 

 「ッ!? 待ちなさい!」

 

 ヘルスはそう呟くと、戦っていたエリスを吹き飛ばし、俺の方へと走り始めて来た。

 

 「氷霜撃(アイシクルブレイク)!」

 

 『……ッチ』

 

 しかし横から放たれたサテラの氷霜撃により、ヘルスは壁に激突する。

 

 「サテラ!ありがとうございます!」

 

 「こっちは大丈夫だから!早く準備を!」

 

 『……小賢しい』

 

 ヘルスは舞っている煙の中から飛び出してくると、大きく息を吸う動作をした。

 

 『魔術とは、こうやって使うのだ……!』

 

 次の瞬間、ヘルスの口から無数の紫の球が吐き出される。

 あれは、毒玉?

 そんな魔術聞いた事もないが、絶対に当たれば無事では済まされないだろう。

 

 「大火球(エクソフレイム)!」

 

 サテラは俺達に向かってくる球の数発を大火球で相殺したが、数が多すぎる……

 残りの数発が俺に向かって飛んできた。

 

 「ルーデウス!危ない!」

 

 「ルディ!」

 

 ダメだ。ここで俺が防御をする為に魔術を使えば、今までスクロールに流していた魔力が無駄になり、また1から魔力を流し始めなければならない。

 しかしシルフィは遠いし、恐らくサテラも間に合わない。

 

 みんなには申し訳ないが、ここは一度中断するしか……

 

 「招け……前龍門」

 

 その時、目の前にドラゴンの形をした鏡が現れる。

 

 当たる寸前だった球が、次々と鏡の中へと吸い込まれる様に入っていく。

 

 「全く、何処までも世話のかかる連中だ……」

 

 俺が呆然としていると、一人の男が前に出て来た。

 

 

 輝かしい銀髪。

 全身から立ち上がる王者の気配。

 間違えるはずもない、彼は、甲龍王ペルギウスだ。

 

 なんで彼がここに?

 

 「ペルギウス……様?」

 

 俺が静かに呟くと、ペルギウスが深いため息をつく。

 

 「今回だけだ。今回だけは特例として、一度だけ手を貸してやる」

 

 ペルギウスは前に浮いている龍の形をした鏡へ手を伸ばす。

 

 「開け、後龍門」

 

 そう言い終えた瞬間、鏡の中から、先程俺に放たれた紫色の球がヘルスに向かって打たれた。

 

 ボン!

 

 『グフッ!』

 

 球がヘルスに直撃すると、球はその場で激しく爆発した。

 ヘルスは上半身の大部分が消え、再生に手間取っている様子だ。

 毒ではなく、爆弾だったのか?

 

 あれが俺に当たっていたかと思うと……背筋が凍る。

 

 「おい……」

 

 「は、はい!」

 

 ペルギウスが顔だけをこちらに向け、俺を睨みつけながら話しかけて来た。

 

 「まだ貴様の奥の手とやらは使えぬのか?」

 

 「い……いえ!お陰様で、準備が整いました」

 

 状況が上手く飲み込めないが、ペルギウスが助けてくれたおかげで準備は完了した。

 俺はスクロールに両手を置き、召喚の合図である魔力を送った。

 

 

 スクロールが光りながら消滅すると共に、地面から俺の求めていたモノが姿を現す。

 

 「これは……また随分と気味の悪いモノを作ったな」

 

 ペルギウスは不愉快そうな表情をしながら、後ろへと下がって行く。

 

 さあ、用意は出来た。

 

 「ヘルス、これが最終ラウンドですよ」

 

 俺の切り札

 

 『魔導鎧』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 俺は素早く『魔導鎧』の中に入り込み、戦闘体制に入ろうとした。

 しかしヘルスはまだ再生をしている途中、ならば今のうちにできる事をしよう。

 

 「父さん!エリス!ギレーヌ!」

 

 まずは剣術に長けた3人

 

 「父さん達は、外にいる先程の化け物達の駆除をお願いします!」

 

 「はあ!?」

 

 パウロは信じられないといった表情で俺を見て来たが、そんな事後回しだ。

 次は……

 

 「サテラとシルフィは、アリエル様と水神、ピレモンとルーク先輩を避難させてください!」

 

 「え!?」

 

 サテラとシルフィもパウロと同じ顔をする。

 

 「ルディ、本気で言ってるの!?それじゃあルディは一人……」

 

 「みんなお願いだ!信じて欲しい」

 

 『魔導鎧』はタイマン特化の性能。

 それ故に仲間との連携を取るのが難しく、下手な手助けは返って邪魔になってしまう。

 自分でも無茶だとは思っているが、この『魔導鎧』は以前とは違い、あのオルステッドからの改良も受けている。

 勝機は十分にある。

 後はここでみんなが各々の役目を果たしてくれれば、被害は最小限に済むはずだ。

 

 「分かったわ!!」

 

 みんなが黙り込む中で、エリスの大声が会場に響き渡る。

 

 「何してるのよギレーヌ!パウロ! 早く行くわよ!」

 

 「エリス、お前いいのか!?ルディを一人に……」

 

 「ルーデウスは凄いんだから!だから大丈夫よ!」

 

 「は、はあ!?」

 

 説得する気など一ミリもないであろうエリスの発言に、声を荒げるパウロ。

 そんな彼の肩に、ギレーヌは手を置いた。

  

 「ギレーヌ…お前もルディを一人にするのに賛成なのか?」

 

 「……私はルーデウスとエリスを信じる。お前はどうする?」

 

 「………」

 

 「息子の覚悟を、無碍にするのか?」

 

 その言葉に、パウロの体が一瞬震えた。

 

 「……はあ」

 

 パウロは深いため息を吐くと、自分の胸を叩いた。

 

 「ルディ、本当に気をつけろよ?」

 

 「もちろん分かってますよ。父さん」

 

 俺の返答に満足したのか、パウロは薄く笑った後、会場の上を向く。

 

 「おい!そこの北神三剣士……今はニ剣士か?まあいい、お前達もついてこい!」

 

 パウロの視線の先、そこにはダリウスが潰され、呆然と立ち尽くしている『光と闇』のウィ・ターと『双剣』のナックルガード達が居た。

 

 「ナ、ナクル兄ちゃん。あいつ……俺達を呼んでるよ」

 

 「ガド、言われなくても分かってる」

 

 「………」

 

 「お前ら!ここで突っ立って事の成り行きを見ているだけか、北神流の誇りを賭けて市民を救うか、二つに一つだ!選べ!」

 

 誇り

 その言葉を聞いて、北神達の動きが固まる。

 

 「北神流の……誇り……」

 

 「ナクル兄ちゃん……」

 

 『双剣』のナックルガードの二人は下を向きながら、どちらを選択するか悩んでいる。

 

 「……分かった、協力しよう」

 

 しかし、『光と闇』のウィ・ターは違った。

 

 「本来守るべきはずのダリウス様は死に、北神三剣士のオーべールは四肢を切断され惨めな姿になっていると聞く。これ以上醜態を晒す事になれば、弟子達に示しがつかん」

 

 ウィ・ターは落としていた自身の黒い盾と剣を拾い上げ、その体をパウロの方へ向けた。

 

 「ナクル、ガド、行くぞ。北神三剣士……いや、北神流の誇りを守る為に……」

 

 『……うん!』

 

 ウィ・ターの言葉に後押しされ、ナックルガードの二人も剣を拾う。

 

 「よし! じゃあお前ら、行くぞ!」

 

 パウロが出口へ走り始めると、エリス、ギレーヌ、ナックルガード達もその後を追って行く。

 

 「ピレモン卿と水神様は、我に任してくれ」

 

 「助かる。じゃあ私達も行くよ、シルフィ」

 

 「うん……ルディ、頑張ってね!」

 

 「ええ」

 

 ウィ・ターが気絶しているピレモン卿と、縛られて大人しくなった水神を、シルフィがアリエルとルークをそれぞれ担ぎ、それをサテラが護衛する陣形へ変化しながら出口へと消えて行った。

 

 ペルギウス達もいつの間にかいなくなっている。  

 恐らく、精霊達を引き連れて空中要塞へと避難してしまったのだろう。

 

 

 そうして会場に残ったのは、俺とヘルスだけ。

 

 ヘルスは長い再生を終え、首の骨を鳴らした。

 

 『……理解できんな』

 

 「何がですか?」

 

 俺が聞き返すと、ヘルスはため息を吐きながら、刀を俺に向けてくる。

 

 『何故俺の邪魔をする?平穏に生きたいのだろう?俺をここで止めなくとも、お前はその道を進む事が出来たはずだ』

 

 「それは……ヘルス、あなたを助ける為ですよ」

 

 ヘルスの表情は変わらない。

 

 『愚かな奴め、お前はこいつの本当の正体を知らない』

 

 「ええ、そうですね。確かに俺はヘルスの事、まだちゃんと理解出来ていません」

 

 でも、俺はそれでも、ヘルスを助けたい。

 

 「だから今度こそ、あなたの中にいるヘルスを引きずり出して、もう一度話し合おうと思います」

 

 『イカれているな。全く……無駄な時間を過ごした』

 

 ヘルスの腕と刀が、真っ黒に染まっていく。

 

 「そうですね。じゃあやりましょうか」

 

 俺もそれに合わせて、待機させていた『魔導鎧』を起動させる。

 

 「やりましょう。人生初の親友との……喧嘩ってやつを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




イゾルデ「わ、私は……?」
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