貴殿転生 元の知識で本気出す   作:肉と米と愛

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長い文になりました。


88話 これからの道

 

 

 

 

 

 

 

 

 温かい……

 

 

 

 「んん……?」

 

 背中に柔らかく温かい物が張り付いてる感触で、俺は目覚めた。

 

 

 

 体が痛い。

 筋肉痛に近い……というか、これは筋肉痛か?

 

 「ん?」

 

 バキバキの体を起こそうとした時、俺は何者かの腕に抱きしめられている事に気づいた。

 

 雪のように白く、傷一つ付いていない美しい腕。

 

 そして後ろからは、生暖かい息を吐く音がする。

 

 誰だ?

 

 俺は抱きしめれている腕をそっと離し、ゆっくりと後ろを振り返った。

 

 

 「ア……アリエル?」

 

 そこには、服を一枚も着ていないアリエルが、俺の視界を埋め尽くしていた。

 

 そこでようやく、俺は昨日起きた出来事を思い出す。

 そして思い出すと同時に、後悔が襲ってくる。

 

 やってしまった………

 

 いや違う、確かにアリエルとそういうのをするのが嫌だった訳ではない。

 むしろ大歓迎だ。

 

 しかし、俺はサテラに話し合えと言われた。

 こんなぶっ飛んだ事しろとは言われてないし、して欲しくもないだろう。

 

 ああ、サテラになんて説明すれば……

 

 

 「んん………」

 

 あたふたしていると、アリエルが薄く目を開いた。

 

 「ア……アリエル、おはよう」

 

 「ヘルス……?おはようござい……ッ!」

 

 アリエルも、事態の深刻さを理解したようだ。

 

 真っ白な布団でその美しい体を隠し、恥ずかしそうに俺を見ている。

 

 そこからしばらく、俺達は何も言わず、ただただ静かな時間が流れていく。

 

 「あ、あの……ヘルス……?」

 

 「はい!」

 

 アリエルが突然俺の名前を呼び、俺は思わず飛び上がるように返事をした。

 

 「こんな事になっておいて、今更だとは思うのですけど、本当にいいのですか?」

 

 「いいって……何がだ?」

 

 その言葉で、アリエルの頬が更に赤くなる。

 

 「その、私を……妻にするというのは……」

 

 「はッ!!」

 

 そうだった!

 そこが一番肝心なところなんだった。

 

 「ひゃッ!ヘルス!?」

 

 俺はアリエルに近づき、彼女の体を抱きしめた。

 

 「当たり前だろ?ここまで来たんだ。今さら無理だなんて言わせねぇぞ?」

 

 「……サテラはどうするんですか?彼女は私を許さないかも知れませんよ?」

 

 「大丈夫だ。サテラは俺が説得するから」

 

 「ですが……」

 

 「それよりもお前には、この国の為にやるべき事が残ってるだろ?」

 

 アリエルは王女になる存在だ。

 俺との問題でこれ以上悩んで欲しくない。

 

 「とりあえず、詳しい事は夜に話そう。もちろんサテラも入れてな。そっちの方が長く話せるし、丁度いいだろ?」

 

 「……分かりました」

 

 アリエルは少し悩んだ末に、それを承諾してくれた。

 俺も昼からは大事な用事がある。

 お互いやる事を終えてから、ゆっくり話し合った方がいいだろう。

 

 そしてその後、俺とアリエルは着替えを済ませ、他の人達にバレないよう静かに別れた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「相変わらず、腰が抜けるほどの高さだな」

 

 下を見れば、町を歩いている人達が米粒の様に小さく、そしてゆっくりと移動しているのが分かる。

 

 「景色を堪能している余裕はありません。早くついて来てください」

 

 地上を眺めている俺を、背中に真っ黒な翼をつけた女性がせかす。

 彼女はシルヴァリル、ペルギウス直々の配下だ。

 

 そしてここは空中要塞ケィオスブレイカー。

 ペルギウスの家だ。

 

 俺がここに来た理由は三つ。

 

 一つはペルギウスに、今回の騒動を謝罪し、アリエルが無事王になれる事を報告する為。

 ペルギウスは俺を毛嫌っていた為、中々空中要塞へ入れてくれなかったが、ルーデウスとナナホシが色々とやってくれたおかげで、ようやく招き入れられたという訳だ。

 

 二つ目は、そのルーデウスとナナホシと話をする事。

 彼らは俺と同じ日本出身、そこでルーデウスがナナホシ帰還の手掛かりを探すという名目で、話し合いの場を設けたいとの事だった。

 

 そして最後の三つ目。

 

 龍神オルステッドとの対面だ。

 正直一番気乗りしないし、会いたくもないのだが、奴はアリエルが王になる為に一番頑張っていたと、ルーデウスが言っていた。

 

 感謝ぐらいは……しなければならないだろう。

 いや、しなかったら何をされるか分かったもんじゃないからな。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペルギウスとの面談は省略させてもらおう。

 

 特にハプニングが起きた訳でもないからだ。

 俺は熱心にペルギウスの機嫌を取ろうとあれこれ話したのだが、あいつは、「ああ」「そうだな」「ご苦労」など一単語ぐらいの返事しかせず、ただただ気まずい時間だけが過ぎていっただけだった。

 

 

 

 もうちょっと愛想良くしてもいいんじゃないか……

 まあでも、『もう一人の俺』が散々何かやらかしたんだろう、仕方がない。

 

 

 そうして後悔しているうちに、いつの間にかナナホシの部屋に着いていた。

 

 

 

 

 トントン……

 

 「はーい」

 

 気の抜けた返事がドアの奥から聞こえる。

 

 「お邪魔しま……?」

 

 「あ……」

 

 ドアを開けると、髪がボサボサのナナホシがいた。

 明らかに寝起きって顔だ。

 

 

 その姿に、俺は思わず笑ってしまう。

 

 「お前……それ……プッ!」

 

 「仕方ないでしょ!朝弱いのよ、私!」

 

 ナナホシは顔を赤らめながら、急いで髪の毛を整え始めた。

 

 「すまんすまん、いかにも女子高校生って感じでついな」

 

 そう言ったが、彼女の年齢では、もう高校生とは到底言えないのではないか?

 

 フィットア領が転移した時にここに来たのだとしたら、そこから十年……つまりもう……

 

 

 ………いや、これ以上考えるのはやめておこう。

 女性の年齢に触れるのは、前世でも今世でもタブーだ。

 

 

 ナナホシが一通り身支度を整え終わった後、俺はナナホシにお茶を渡された。

 

 「そういえば、ルーデウスの姿が見当たらないが、どこにいるんだ?」

 

 「さあ、ちょっと待ってて欲しいって言われたんだけどね」

 

 なんだ、急用でも出来たのか?

 まあ、あいつは繋がりが多いからな、多忙なんだろう。

 

 「すいません、遅れました」

 

 丁度その時、ルーデウスが部屋へ入ってきた。

 右手に皿を持っており、その上には何か乗っている。

 それと同時に、部屋中に甘く焼けた匂いが広がった。

 

 「あぁ……」

 

 その匂いに、俺は思わず感嘆の声が漏れてしまう。

 

 懐かしい、なんだこの匂いは……

 朝食は食べてきたはずなんだが、匂いを嗅いだだけで、食欲がそそられてしまう。

 

 「ルーデウス……それは…?」

 

 「ああ、これですか?フフ」

 

 ナナホシの問いに、ルーデウスは笑みを浮かべ、持っていた皿をテーブルに置いた。   

 

 「これは……」

 

 「嘘でしょ……?」

 

 皿の上に乗っていた物、それを見た俺とナナホシは、思わず口を手で押さえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黄金に輝くふんわりとした物体。

 周りからは湯気が立ち込め、誰が見てもこれは至高の逸品と答えてしまうだろう。

 

 

 

 

 

 「卵焼き……」

 

 日本人には馴染みある究極の朝食、卵焼きだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 「んん……美味い……!」

 

 「日本食なんて、いつ振りかしら……!」

 

 俺とナナホシの箸が止まらない。

 

 ほんのりと甘く、ほんのりと塩辛い、まさに絶妙なバランスで作られた卵焼き。

 

 下手したら、前世で食った物よりも美味いんじゃないか……?

 

 「どうですか?シルヴァリルさんに頼み込んで、特注の卵とか調味料を持ってきて貰ったんですよ」

 

 「いや、これは調味料とか、素材でどうこうできるレベルを超えてるぞ……!」

 

 ルーデウスは冒険者時代、料理を担当する事が多かった。

 しかしその時は、多少美味いと感じる程度だったのに、今じゃあ感動で涙がでるレベルだ。

 

 前世では、料理人とかでもやっていたのだろうか?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 ナナホシと俺の腹が満たされ、しばらくルーデウスの料理の腕を称賛していた。

 

 

 

 

 

 『さて、じゃあそろそろ本題に入りましょうか』

 

 ルーデウスが日本語でそう言い、俺とナナホシの会話が止まる。

 

 

 『とりあえず確認しますが、ヘルスは俺やナナホシと同じ、日本から来たという認識でいいですか?』

 

 『ああ、間違いない』

 

 ルーデウスの問いに、今度は嘘偽りなく、はっきりと答えた。

 

 俺が即答すると、ルーデウスの顔が少し暗くなる。

 

 『……じゃあ、何故俺とナナホシが初めて会った時、それを教えてくれなかったんですか?』

 

 『………すまない』

 

 その言葉に尽きていた。

 言い訳をする気も、開き直る気もない。

 

 『あの時は、自分が受け入れられるのかって、勇気が足りなかったんだ………』

 

 『勇気……ですか』

 

 ルーデウスが下を向く。

 

 『その、ルーデウス。多分ヘルスも、悪気があって貴方にこの事を伝えなかったわけじゃないのよ』

 

 この状況の悪さを汲み取ってくれたのか、ナナホシがフォローに入ってくれた。

 

 『だから、あんまり気を落とさなくても……』

 

 『分かってます、ヘルスはそうやって人を傷つけたりはしませんから…………でも』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ちょっと残念です。俺がそんなに信用されてないなんて』

 

 ルーデウスは顔を上げ、不満そうな顔でこちらを睨む。

 

  『……すまない』

 

 心の底からそう思っている。

 

 もしあの時言っていれば、未来は変わっていたかもしれない。

 

 こんな面倒な事にならなかったかもしれない。

 

 俺の勝手な我儘で、ルーデウス達に迷惑をかけていたんだ。

 

 

 これは到底、許される事ではじゃない。

 

 しかし……

 

 『……仕方ないですね。今回だけですよ?』

 

 ルーデウスから返ってきた返答は、「赦し」だった。

 

 『え?』

 

 ルーデウスの言葉に、俺は気の抜けた声を出してしまう。

 

 『本当に……許してくれるのか?』

 

 『まあ他にも、色々と言いたい事はありますが、これだけは約束してください!』

 

 ルーデウスは俺を指差す。

 

 『これからは、同じ日本人として、俺達に隠し事はなしです』

 

 『隠し事は……ナシ……?』

 

 俺が復唱すると、ルーデウスが頷く。

 

 『ええ、家族関係や友人関係。性癖だって隠し事は一切なしです』

 

 『……流石に性癖は、言いたくねぇな』

 

 『ちょっと……』

 

 俺が呟くと、横で飲んでいたお茶を飲んでいたナナホシが顔を赤らめていた。

 

 そうだ、この部屋には永遠の女子高校生がいたんだった。

 

 『ええ、性癖は流石に冗談です。まあ、つまり俺が言いたいのは、なんでも一人で抱え込まずに、俺達に気軽に相談してくださいってことですよ』

 

 『相談か……』

 

 そうだな。

 

 思い返せば、俺はルーデウスから相談をされる事はあっても、相談をした事はなかった。

 

 相談する余地は、幾度となくあったのにも関わらず……

 

 裏を返せば、俺は心の底からルーデウスを信用できていなかったんじゃないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『………分かった。じゃあこれから、サテラやアリエルに相談出来なそうな時は、遠慮なく質問させてもらうよ』

 

 『ええ、是非そうしてください』

 

 ルーデウスの表情が、やっと晴れた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三人で話を終えた後、俺はルーデウスに連れられ、シャリーアから離れた小屋のような場所に案内された。

 

 人気のない森の奥にある廃村の中央にある、不気味な小屋。

 

 俺はルーデウスに、これから暗殺されるのだろうか?

 

 「なあルーデウス、ここは……?」

 

 「……この小屋の中に、オルステッド様が待っています」

 

 龍神オルステッド。

 

 その名前に、背筋が凍る。

 

 俺の意思じゃないとはいえ、奴とは一度殺し合いをしたのだ。

 

 入って早々殺される……なんて事は、ないよな?

 

 「安心してください。オルステッド様は顔こそ恐ろしいですが、本当はとても穏やかな人ですから」

 

 「……聞こえているぞ、ルーデウス・グレイラット」

 

 小屋の中から発せられたその声に、ルーデウスは体を跳ね上がらせる。

 

 「ま、まあ!立ち話もなんなので、早速入りましょう!」

 

 少々焦り気味のルーデウスが小屋の扉を開けると、中にある椅子に座り、こちらを睨みつける男が一人。

 

 「久しぶりだな、ヘルス・ノトス・グレイラットよ」

 

 「……ああ、アリエルとサテラが世話になったな、龍神オルステッド」

 

 

 

 

 恐怖。

 

 たった一つの感情が、俺の心を埋め尽くす。

 

 奴の発する言葉の一つ一つが棘のように、俺の心臓に刺さる。

 

 「身構えるな……というのは無理があるだろうが、別に俺はお前に危害を加える訳ではない」

 

 「そうか……」

 

 しかし、俺は決して警戒を緩めない。

 

 オルステッドはそんな俺の態度を見て、深いため息を吐いた。

 

 「………まあいい。早速だが、お前に頼みたい事がある」

 

 「頼み?」

 

 あの龍神ともあろう男が、俺に頼みだと?

 

 龍神が出来ないのなら、俺には到底出来ないと思うが……

 

 「内容を教えてくれ」

 

 まあまずは、詳しい事を聞かなくては。

 

 俺が聞くと、オルステッドは手を俺の前に出し、指を二本上げた。

 

 「一つ。これからはルーデウスと共に、俺の目的である、ヒトガミ打倒を手伝ってくれ」

 

 「それはつまり、ヒトガミを殺せって事か?」

 

 「違う」

 

 オルステッドは首を横に振る。

 

 「お前達が生きている間に、奴に会う事はできん。俺が頼みたいのは、その過程……奴を殺す為の準備だ」

 

 ヒトガミ。

 

 確かにムカつく奴ではあったが、あいつには一応借りがある。

 利用されたとはいえ、あいつはサテラを救う方法を教えてくれた。

 

 「………」

 

 「ヘルス」

 

 俺が考え込んでいると、ルーデウスが一冊の本を渡してきた。

 

 「信じられないかもしれませんが、これは未来から来た俺が持ってきた日記です」

 

 「………は?」

 

 突然そんな事を言われ、思わず気の抜けた声が出てしまう。

 

 未来だと?

 

 未来から過去へ戻る魔法、そんなもの聞いた事がない。

 

 「ヒトガミ打倒を手伝うかどうかについては、この日記を読んでから決めるといい」

 

 オルステッドも続けてそう答えた。

 

 手渡された日記。

 

 確かに、未来から来たという程に年季が入っており、やや汚い。

 

 中を少し確認すると、思わず俺は顔をしかめた。

 

 「……なんというか、読みにくいな」

 

 字が汚くて、上手く読めない。

 

 「すいません、まさか人に見せることになるとは思ってなくて……」

 

 ルーデウスがそう言うという事は、やはり彼自身が書いた物で間違いはないのか……

 

 「分かった。数日くれ、ヒトガミの件についてはその後に決める」

 

 「ああ、では二つ目についてだが」

 

 オルステッドが挙げていた二本の指が一本減る。

 

 

 

 

 

 「アリエル・アネモイ・アスラ、彼女の護衛をお前が信頼できる、尚且つ強固な者にしろ」

 

 「……当たり前だろ」

 

 当たり前で単純すぎる頼みに、俺はそう答えてしまった。

 

 王女だぞ?

 そこら辺の兵士達に護衛をさせる訳ないし、見ず知らずの奴らに任せることもない。

 

 「ていうか、なんでそんな事聞くんだ?」

 

 「……本来なら、ここまで事が運べばアリエルが王になる事は確実だ。だが今回は、ルーデウス、ナナホシ、そしてお前という異質な存在が現れ、本来の歴史とのズレが生じている。これ以上未来が変わる可能性は低いが、保険はかけておきたい」

 

 急にペラペラと話し出すオルステッド。

 

 しかしその話の中に、気になる事が一つ。

 

 「あの、本来の歴史ってなんだ?」

 

 オルステッドはあたかも、未来を知っている様な口ぶりで話をしていた。

 そこが引っかかったのだ。

 

 オルステッドは少し考え込んだ素振りを見せた後、ゆっくりと口を開いた。

 

 「まあ、いいだろう」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 その後、オルステッドから語られた話は、耳を疑う程に信じられないものだった。

 

 甲龍暦330年の冬。

 中央大陸北部にある、名も無き森の中。

 龍神オルステッドの人生は、そこから始まる。

 

 寿命……タイムリミットはそこから200年。

 

 その200年の間にヒトガミを殺害、または行動不能に出来ていなければ、彼は人生をやり直すことになる。

 

 

 

 

 

 言わば、タイムリープとでも言おうか。

 

 それは龍神オルステッドが死亡した場合も然り。

 記憶は保持したままだが、その間に築いてきた関係や物などは全て消え、一からやり直しとなる。

 

 

 オルステッドはそんな事を、100回以上、つまり2万年も繰り返していた。

 

 ……頭、おかしくなるだろ

 執念もここまで来ると……いや、やばいな。

 

 「ルーデウスは、知っていたのか?」

 

 「ええ、つい先日」

 

 俺はオルステッドの方を見た。

 

 殺意が込められたような恐ろしい目だが、その話を聞くと、彼の目を見ても同情の気持ちが湧いてくる。

 

 200年を、何百回も繰り返す。

 

 そりゃあ、こんな目にもなるよな。

 

 しかしそうか、ヒトガミを無力化しない限り解けない秘術……

 もはや呪いとも言っていい。

 

 ヒトガミの奴、一体何をしでかしたんだ?

 

 

 

 「……もうすぐ日が沈む頃だ。数日後またここへルーデウスと共にこい。その時に答えを聞こう」

 

 オルステッドの言葉で、一先ずはお開きとなった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 ルーデウスと別れ、王都へ戻り、サテラ達が待つ部屋へ行く道中、俺は今日の出来事を整理していた。

 

 今日といっても、ほぼオルステッドとの会話の事なのだが……

 

 オルステッドの秘術

 ルーデウスから渡された未来が書かれた日記

 

 信じがたい話だったが、どちらの話も理にはかなっている。

 

 そしてできるならば、俺はルーデウスの味方でいたいし、協力者でありたい。

 

 「だけどまあ……」

 

 気づけば、俺はサテラがいる部屋の前にいた。

 

 今すべき事は、目先の事だよな。

 

 

 

 

 

 「それで、どうだったんですか?」

 

 「それはもう……凄かったです」

 

 サテラの部屋からは、アリエルの声が聞こえる。

 

 どうやら、俺が一番遅い到着のようだ。

 

 

 

 

 俺も考えなければならないな。

 

 

 

 これからについて。

 

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